ちょっとほっと一息つきたいなというときは、この人の本を読みたくなります。

今回の主人公は、両親を亡くし、尾瀬の荷物運び・歩荷(ぼっか)を営む祖父に育てられた江藤瞬一くんです。
高校を卒業し、祖父から東京にでた方がいいと勧められ、上京。
この流れだと、普通大学行ったりするんじゃないかと思われますが、瞬一の場合は、とりあえず上京。
そしてアルバイトをして、自分の行くべき道を探すという流れになってます。
そんないい加減でいいのかと心配になるところですが、この本を読んでいると、そういう、行き当たりばったり的なところも、なんだかいいなと思ってしまいます。


両親は瞬一が9歳の時、火事で亡くなってしまいました。
瞬一はその時、友達の家に行っていたのですが、両親は家の中にいると思い込み、息子を助けようとして亡くなったと推測されます。
瞬一は、自分のせいで両親が亡くなったのではないかという思いと、火事を目撃したトラウマを抱えているのですが、そういう事実も淡々と語られていることがいいなと思いました。
誰にでも、それぞれ大なり小なり訳ありの過去を抱えて生きているのですから。

アパートの隣人と仲良くなったり、アルバイトで友人ができたり、ささやかですが順調に東京で暮らす瞬一。
突然祖父が上京してきて、祖父との楽しい時間を過ごし・・・・・ここら辺で、このおじいちゃん長くないのかな?と気づいてしまいました。
自分の死期を悟って会いにきていたんですね。
朴訥でいいおじいちゃんでした。

隣人を助けたことで、火事のトラウマを克服し、祖父の言葉「人を守る人間になれ」という言葉通り、消防士になろうと決意。

単純だけど、いいお話でした。
「ひと」で舞台となった「田野倉」のコロッケを食べるシーンもでてきて、懐かしかったです。

私も田舎から誰一人頼る人もなく上京してきた人間なので、当時のことを思いだしながら読みました。
自分も様々な人との出会いによって、今があるんだなと気づかされました。


にほんブログ村