04d5886f.jpg<第18回東京国際ブックフェアで講演する大沢在昌氏>
 若い人と話をしていると「本よまないの?」「本は読みたいの。読まないといけないと思っているし、読みたい」。「何で読まないの」。「本屋さんに行ったら、あんなに本がいっぱいあって、どれをよんだらいいかわからないの。でも(店の人に)訊けないの」。薬屋さんで薬について訊くように訊けないのですね。
 もちろん、薦めることに大変さはあると思います。書店員さんにとって難しい問題です。その人がどんな生活をしているかなどわからないですから。
 でも、お客さんの情報を蓄積して、そこで薦めた本が面白かったら、必ずその返事は帰ってきます。こうして書店と読者との会話交流ができる。これはネット書店や電子書籍にはないものです。アマゾンのブックレビューは、好き勝手なことを書いて、うんざりするのですが、面白いのか面白くないのか、本当にわかっているのかよ、と思うのもあります。大体がケチをつけたいのが書いている気がします。
 日本人というのは、がまん強いし、礼儀正しいし、謙虚だなと思うのは、小説の担当をした編集者がブックレビューに投稿しないといいうのが、何かこの業界での不文律になっているようなのです。自分が担当したのだから、これは面白い今年の最高傑作なんて書いてもいいのに書かない。ブックレビューは悪口が多くて、たまにほめるのもあるけでも最高傑作五つ星というのはない。結局三つ星くらいに落ち着く。実情はそうでしょう。人それぞれ、誰も傑作と思うのはそうない。
 電子書籍がパソコンからダウンロードしないで、本体でダウンロードできる電子書籍ができるようになるようです。そうなれば私も興味があります。
 この変化は過度に恐れる必要はないと思いますが、いずれは紙の書籍と5対5になるくらいの時代がくるかも知れない。それが5年後か10年後かはわかりませんが、なるでしょう。
 現実にリアル書店にもその影響はあると思います。雑誌がコンビニで売られていちばん影響を受けたのが町の本屋さんでした。でもそれに同意したのが出版社であり、取次ぎでした。いずれにしてもそれぞれの立場で、生き残るということをしなければなりません。
 電子書籍が版元に利益をもたらすようになれば出版社も電子書籍をやるでしょう。本屋さんに気兼ねをしつつ、あるいはその振りをしつつ、それをやらざるを得なくなる。
 現実に読書用専用端末を買った人は、電子書籍を沢山買うというデータは、アメリカでも日本でもどうやら同じようです。
 これは本が好きで懐に余裕のある中高年にはあるでしょう。若い人より中高年が大半でしょう。つまり爆発的な流行にはならない。
 専用端末を持つことが流行になって、皆が端末を持つということにはならないと思う。だけど、あるとき気がつくとある程度普及している。都市部の人が2割、3割持っているとか、まわりの人がもっている、やがてそういう時がくると思っています。
 出版社はそこに備えて、出版契約書と電子書籍化の包括契約書を大体用意してきます。私が紙の本を出すときの契約書に、だいたい電子書籍にする権利も当社で、というものを用意してきます。しかし、大沢オフィスはそれをしていません。作品個別でしか契約をしません。現実に大沢オフィスが電子書籍に同意したのはまだまだ少ないです。3人全部あわせてもまだ10冊とかそんなレベルだと思います。
 これは個人的な感じですが、出版社の姿勢が防衛的で、電子書籍をこれから売ろうという攻撃的なスタンスでない。
 ここに、書店さんに対する気兼ね、電子書籍を売りまくっているという風に思われたくない、というものがあるようです。