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天使のシャンソンを聴く、銀座の老舗“マ,ヴィ” 
 東京・銀座5丁目の街なかに、文学者・北村透谷や島崎藤村をなど多くの文化人を輩出した泰明小学校がある。関東大震災で壊れたがそれを復興、アーチ型の趣のある外観で、東京都歴史的建造物に指定されている。隣接する数寄屋橋公園は当時、この小学校の災害避難広場として作られたものだという。
 かつて、この小学校近くにシャンソンライブハウス “マ,ヴィ” (銀座5丁目)があった。マダムは、日高なみさん。この世界では彼女のハスキーボイスを知らない人はいない。古風なレンガつくりの内装、頑丈でぬくもりのある木のテーブルと椅子。35年以上昔、パリの有名なシャンソン・バーのスタイルを、そのままそっくりに仕上げたものだそうである。以来、内装は変えていない。移り変わりの激しいこの銀座で、何十年ぶりにやってきた客も「昔と少しも変わっていない」と感激する。もちろん、出演する歌姫たちは、当時のことは知らない。
直木賞作家・なかにし礼さんも来訪、自ら唄う時も
 銀座には、昔から著名な作家が出入りする文壇バーが多くあるが、以前はそのひとつであった。その名残か、作家・藤本義一さんの夫人、シャンソン歌手の藤本とき子さんは、この店の歌姫のひとり。また、売れっ子作詞家から転進の直木賞作家・なかにし礼さんもやってくる。「時には娼婦のように」は、自ら唄ってヒットさせたように、気が向くと、ここでマイクを持ち、唄うこともあるそうだ。
手話でシャンソンを伝える、橘妃呂子さん
 そのなかでレギュラー・アーチストのひとり、橘妃呂子さんは、三船プロに所属。舞台やドラマなどに出演していたが、名古屋シャンソンコンクールで金賞を獲得、“天使のような歌声”といわれ、歌唱力を評価された。キャリアのわりにはまだ若手である。
 「シャンソンの本場からシャルル・アズナブールさんが来日するのですが、私は彼の持ち歌の『声のない恋』を手話を用いて、秋のコンサートで歌います」という。橘さんは、かつて日本テレビの手話劇でろうあ者の恋人の役を演じたこともあり、ことさら想い入れがあるようだ。コンサートには、毎年150人から200人のファンが集う。美声と楚々たる容姿で、彼女に夢を託すのか、女性ファンが多い。