福岡県の文芸同人誌「海」第二期16号は、通巻では83号となる有力同人誌です。読ませる作品が満載で即座に感想を書きたくなりました。
  中野馨「機縁因縁」という小説が引き込まれます。新聞記事の殺人事件を下敷きにした作品です。
  大村人志と日野真理の二人の若者が犯した保険金目当ての殺人事件。駐在所巡査の心境を多く書き込んでいます。
  事件記事の表現に類似した記述が、登場人物や推移と俯瞰的な全体像を上手に扱えて、真迫力の作品になっています。
  若い恋人同士の結びつきを善意に扱い凶悪殺人の別面を読者に読ませる手腕に乗り深く読み込みました。
  下級警官の人生と、官僚組織の歪みも読ませるし、多面的な作品進行が無理なく読める構成に感心ましした。
  作者の意気込みも良く分かり、良い題材を上手に処理する方法には、作者から判断を任せられてしまいました。
 巻頭の言葉から巻末の運営報告まで覇気が漲っていて、文芸同人会の一つの有り方を読み取らせて貰いました。
  編集発行人の有森信二氏は以前「文学街文庫」で一緒になり、ずうっと送付を受けてきたので親密感もあります。
  が、美装で160頁の同人雑誌を運営する実態は今一つ判りません。情熱だけでは継続出来ないだろう。
  12人の同人一覧が載っています。各同人から12000円の同人費で運営出来るのだろうか。頁千円の加算もあるが。
  文芸同人誌「相模文芸」は50万円程度、「群系」は80万円程度の製作費と通信費などの運営費が必要になっているのです。
  寄贈誌も20程あるらしく返送にも費用が必要でしょう。「文芸同志会」にも送ってきています。あとがきには会員が全国に散在し意思疎通に苦労している実態や加入要請も掲載されています。
  翻訳も掲載したり、一人で三作品も掲載したり、苦心の跡を見るにつけ乗り越える情熱を感じます。
  良好な同人関係をもてる方の加入を募るという文に運営担当者の苦労が分かり文芸に書ける気負いも感じます。
  私は「相模文芸クラブ」発足時に、普遍的な運営手法を求めて無難な市民友好会的な処に活路を求めました。
  無料の施設での月例会で懇親すれば、会費納入も納得し多数の会員から多額の集金が出来るのです。
  集金の過半は同人誌作成費に使えるので掲載費は頁千円となり、多数の作品が集まるという事です。
  一人で二作品以上は掲載出来ず、広く多くの作品で全員参加の実感をと規則を作っています。
  高齢化で意欲減退に直面したら「海」の製作・運営はどうなるのでしょうか。個人負担を貫くのでしょうか。
  町田文芸交流会では様々な運営を行う会同士が経験交流も行います。個人が支える実態も良く分かります。
  送られてくる全国の同人誌の運営実態も興味があり、人間の集団としての文芸同人会を追求しています。
  同人誌「文学街」は月刊です。森主宰の情熱を引き継ぐ人は現れるのでしょうか。多くの文芸同人誌を観察中です。
☆町田文芸交流会事務局担当・住所〒252−0235神奈川県相模原市相生2-6-15、外狩雅巳方。
■関連情報= 詩人回廊「外狩雅巳の庭」
北一郎「外狩雅巳『二十八歳の頃』の読み方」抄録
穂高健一ワールド・サイト「寄稿・あなたの作品」コーナー(9月1日付)
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 外狩A 外狩雅巳(とがり まさみ)=1942年、旧満州生まれ。仙台で中学卒業後、商店住み込み店員となる。その後、単身上京。工場労働者として労働運動に力を入れる。同人雑誌を中心に地域の市民文芸文化振興と小説執筆での作家活動を行う。
(著書参照:「この路地抜けられます」「十坪のるつぼ」)