IMG_20160809_0001_1<「法政文芸」第12号(2016年7月発行)>
 法政文芸(「法政大学国文学会」勝又浩・発行人、中沢けい・編集人)第12号の7月23日発行された。特集が「表現規制と文学」という、平和な空気の日本社会の文芸誌にしては、ほどく刺激的なテーマになっている。
 スタイルは、「国家とメディア」(筑摩書房)の著者、ジャーナリストの魚住昭氏へのインタビュー「社会のコンセンサスを問う」で、中沢けい氏が、ノンフクションにおける表現の自由の範囲などについて話をきいている。書く立場と書かれる立場の利害と、情報提供の義務感という問題。さらに日本の官僚と記者クラブの間にあるなれ合いと、記事の公平性に関する読者の思い込みなどの状況が解説されている。
 もうひとつは、「表現規制の現状」をテーマに、作家と編集者にアンケートを行っている。サンプルが少ないが、差別用語と出版社側の自主規制に関する問題について、あり得るという程度の回答を公表している。
 3つ目のテーマが、「学生レビュー」で書評である。レイブラッドリー「華氏451度」(伊藤典夫訳・早川書房)を西川喜久美、ジョージ・オーウェル「1984年」(高橋和久訳・ハヤカワ文庫)を横山桜子、谷崎潤一郎「細雪」(中央公論新社)を、若林千秋、有川浩「図書館戦争」(角川書店)を東千尋、深沢七郎「風流夢譚」(中央公論社)を谷村朋哉、萩原朔太郎「月に吠える」(思潮社)を原優佳の各学生が論じている。
 とくに「風流夢譚」「細雪」などのピックアップは、芸術表現と時代性の関係を浮き彫りにし、現代におもける世相の空気読みの雰囲気性に、視線を向けている。
 中沢教授の編集後記によると、学生編集委員会からこの特集企画が上がってきたそうで、学生たちが、文学の社会性を捉える視線の強さを示したことは、頼もしい限りだ。
 また、我々が学んだ55年館校舎の取り壊しが始まっている。自分も事前に見学に行った。入学してはじめてその教室の広さに驚き、これなら大勢の生徒が学べると、学ぶことへの平等精神の象徴のような気持ちでいたものだ。現在も見学者がやってくるという。当時は、昼間部、夜間部、通信教育部の学生たちとの交流も自然な形で行われていたものだ。とくにゼミナールでの合宿には通信性のスクリーングと合同での活動もあった、