IMG_20160828_0031_1IMG_20160828_0001_1<文芸誌「中部ペン」第23号(表紙:小林陽子)とグラビア紙面。>
 趣味の世界でのペンクラブは、世間にいろいろあるが、「日本ペンクラブ」を別にすると、地域の文学コミュニティとしての「中部ペンクラブ」には、文学的な普遍性をもった作家たちの特性が色濃く出ている。《参照:あいちWEB文学館サイト
  雑誌「中部ペン」第23号(2016年)が発行されたが、それによっても、同人雑誌に執筆する作家たちの参加者の多さ、規模の大きさがわかる。職業作家との交流も盛んで、文学的な価値観の共通性をもつところが、読者層の厚みというものを感じさせる。文学コミュニティとして地域的な個性をもって存在感を強めている。
 具体的には、巻頭言の駒瀬銑吾(「北斗」同人)「合評会へ押しかけ」では、異なる同人誌のいくつかが行っている合評会に、参加して意見を述べるということが実行されていることが記されている。三田村会長の発案だそうである。このことで、そこの同人会員以外の読者目線の受け止め方が、理解でき読者像の明確さを生み、それが作品に反映されてくるはずである。このことは、伝統的なスタイルの文芸同人誌グループにとって、「言うは易し、行う難し」の典型的な課題であった。そのために、書き手の読者像想定が同人仲間の視線だけに向けられてしまい、「所詮は仲間内のもの」という作品イメージ評価につながっている傾向がある。
 また、「中部ペン」第23号には名古屋出身のパロディ風を得意とする小説家で、第9回吉川英治文学新人賞受賞の清水義範講演録「名古屋の生活と文化」というテーマで、地域の特性を述べたものが掲載されている。
 こうした地域特性と読者層の文学性が合致した特性が、今回の第29回中部ペンクラブ文学賞受賞作品にあらわれている。
 受賞作は阿部千絵「犬が鳴く」である。この作品は、伝統的な文芸同人誌にはない、文学的な芸術性、抽象性の強く出たもので、描写は具体的、感覚的であるが、そのなかに複雑な象徴性をもっている。このような作品を受賞作にできるところに、「中部ペンクラブ」の個性的な持ち味を感じるのである。次回はこの受賞作の評価のされかたと、同人誌文学についての現況を眺めてみたい。(つづく)