P3070002_1P3070008<日本外国特派員協会主催の記者会見。政府の帰還政策は原発事故被害者の 人権侵害と指摘し、女性・子どもへの被害は深刻であることを語る。写真(左)は、松本徳子「避難の協同センター」代表世話人(左)、伊藤和子「ヒューマンライツ・ナウ」事務局長(中)、ケンドラ・ウルリッチ・グリーンピース・ジャパン シニア・グローバル・エネルギー担当官(右)。3月7日>
   グリーンピース・ジャパン(国際環境NGO)は3月7日、「国際女性デー」(3月8日)を前にした報告書『格差ある被害: 原発事故と女性・子ども』を発表。東京電力福島第一原発事故からこれまで6年間の日本政府の対応が、数多くの人権侵害を引き起こし、特に社会的弱者であり、かつ放射能の影響をより強く受ける女性と子どもに深刻な被害を及ぼしたこと指摘した。
  同時に、日本外国特派員協会にてその現状を説明する関係者の記者会見を行った。
P3070003<ケンドラ・ウルリッチ氏。国際環境NGOグリーンピース・ジャパンシニア・グローバルエネルギー担当。アメリカ合衆国出身。大学で環境学を学び、アメリカのNGOでエネルギー悶題を担当した。国際環境NGOであるFoE(米国)在籍時代にはサンオノフレ原発(カリフォルニア)の閉鎖を求めるキャンペーンを主導し、閉鎖に導いた。米国民主党議員のリベラル派議員のグループのエネルギー政策づくりにも関わったこともある。2015年6月より現職。>
  会見では、この報告書執筆者のグリーンピース・ジャパン シニア・グローバル・エネルギー担当ケンドラ・ウルリッチ氏が「原子力産業がチェルノブイリから学んだことがあるとすれば、広大な立入り禁止区域は『原発事故は取り返しがつかない』ということを常に人々に思い出させ、同産業の妨げになる、ということです。
だからこそ、安倍政権は帰還を促進してきました。自主避難者の住宅支援打ち切りは1万世帯以上に影響を与えます。中には、意思に反して帰還を選ばざるをえない家庭もあるでしょう。この3月の住宅支援の打ち切りや来年の賠償打ち切りは、安倍政権による帰還推進メカニズムに他なりません。明らかに、原発事故被害者に対する人権侵害です」と非難した。
P3070018<伊藤和子氏。国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長、弁護士。1994年弁護士登録、以来女性、子ども、冤罪など、人権問題にかかわって活動。2004年ニューヨーク大学ロースクール留学、2005年国連インターン等を経て2006年国際人権NGOヒューマンライツ・ナウを立ち上げ、以後事務局長として国内外の人権問題の解決を求めて活動中。>
  ゲストスピーカーとしてヒューマンライツ・ナウ事務局長の伊藤和子氏は「日本は、市民の健康への権利を謳った複数の国際人権条約の締約国です。2013年、国連『健康に対する権利』特別報告者アナンド・グローバー氏は、日本政府に対し、原発事故被害者の基本的な人権に対する侵害を是正するよう勧告しました。しかし、政府は勧告に従わないばかりか、人権侵害をもたらす政策を進めています」と指摘。
P3070016<松本徳子氏。「避難の協同センター」代表世話人。二人の娘を持つ。原発事故当時小学6年生だった次女が、事故後に鼻血、腹痛、下痢といった症状を訴えるようになったため、2011年7月に次女と二人での自主避難を決意(長女は成人して独立)。避難の協同センターは、国や自治体に対して、原発事故避難者への避難先で総合的な支援の実現を求めている。>
  また、福島県郡山市から神奈川県に避難している松本徳子氏(避難の協同センター代表世話人)は、「原発事故の時、娘は12歳でした。鼻血を出し、下痢症状など身体に異常がでました。それなのに、福島県では山下教授が『放射能の影響は、ニコニコして生活していれば、大丈夫。心配はない』と、説明しました。私は、放射能の影響は、少なければ問題がない、という説が間違っていることを学び、12歳の娘に影響が出ることを恐れて避難しました。もし、山下教授や政府が事実を告げていたら、娘は被爆の影響を避けられたのにと、残念です。」と語った。
 さらに、「4月から、避難は自己責任とされ、私たちは『国内難民』となります。国策として進めてきた原発が引き起こした原子力事故の責任を、国は果たしていません。原子力緊急事態宣言は発令されたまま、私たちは見棄てられていきます」と述べた。
  【報告書『格差ある被害: 原発事故と女性・子ども』の要旨】
  ☆ 福島第一原発事故後、ドメスティック・バイオレンスと性的暴力の増加、正式な支援ネットワークの不足、避難所の管理と復興計画の策定に意見が反映されないこと、婚姻家庭では概して男性世帯主に対して賠償金が支給されること、パートナーとの別居と離婚、放射能という汚名による結婚差別などにより、女性は男性よりも著しく大きい事故の社会的、経済的、心理的、身体的代償を背負ってきた。
  ☆ 原爆の被爆者に関する疫学的研究などで、放射線被ばくによる健康リスクが、女性、乳幼児、子ども、胎児において、成人男性よりも高いことが確認されている。
  ☆ 正確で包括的な情報の入手についての女性と子どもの権利は、事故以降、繰り返し侵害されてきた。これは、日本が批准した数々の国際人権条約で規定された人権の侵害にあたる。
   ☆ 女性たちは沈黙する被害者にとどまることなく、大きな苦難の中でも、日本政府や東京電力への法的異議申し立て、原発再稼動反対の運動への参加、情報共有の仕組み構築、市民放射能測定所の設置などの活動を率いてきた。
  なお、グリーンピースは、2月17日付けでヒューマンライツ・ナウ、国際環境NGO FoE Japan、グリーン・アクションと連名で、国連人権理事会特別報告者に東電福島第一原発事故被害者が直面している人権侵害について、検討を加えるように求める書簡を送っている。2月21日には、福島県飯舘村で実施した放射線調査の報告書『遠い日常:福島・飯舘村の民家における放射線の状況と潜在的生涯被ばく線量』(注3)を発表。3月末の同村避難指示解除で帰還するには「被ばくリスクはなお高い」と警告している。
  日本政府に向けて、賠償の継続や、住宅支援の継続および帰還政策の意思決定への住民参加を求める「原発事故被害者の人権をまもる国際署名」(注4)を2月14日から展開している。グリーンピースはまた近日、被害者の窮状を伝える文書を国連の日本に対する人権状況審査に向けて提出する予定だという。
《参照:2017/03/7 グリーンピース報告書、政府の帰還政策は原発事故被害者の 人権侵害と指摘 ーー女性・子どもへの被害は深刻