P5200002<草の実アカデミー主催の勉強会で、実質的に違法な捜査を行っている事例として警察が作り出した「覚醒剤11キロ密輸事件」の裁判の現情を語るジャーナリストの寺澤有氏(右)と、この事件が共謀罪法の制定前に裁判で運用されていることを語るジャーナリストの林克明氏。5月20日>
「共謀罪と、警察が作り出した覚醒剤11キロ密輸事件」をテーマにジャーナリストの寺澤有氏が講演した。主催は「草の実カデミー」の共謀罪危機への特集版である。
基調講演動画【寺澤有氏】共謀罪と警察が作り出した覚醒剤11キロ密輸事件(YOU TUBE 2017.05.20)
 司会の林克明氏は、「ま国会は共謀罪が最大の焦点となっています。戦後最悪の法案である共謀罪、そして昨年国会で改悪された刑事訴訟法。このふたつがリンクしてとんでもない事態になっていることがわかる「警察による違法おとり捜査」「ヤラセ覚醒剤11キロ密輸事件」です」とし、概要を説明した。
 【一度失敗した覚醒剤密輸を警察が助長】
 今年3月10日、覚醒密輸約11キロを密輸したとして逮捕・起訴された片山徳男被告の裁判で、東京地裁は懲役17年・罰金800万円の判決を言い渡した(元暴力団組員の片山徳男被告(69)が、2014年4月に自分の妻とその友人らを運び屋として、営利目的で密輸したなどとして起訴された事件)。
  国会の最大の焦点は「共謀罪」だが、この覚醒時代密輸事件を探っていくと“共謀罪時代”の警察捜査手法や裁判における問題点が浮かび上がってくる。
 2014年3月28日までに、タイ人Aは、タイから日本へ覚醒剤密輸計画があることをタイ警察に密告した。そこでタイ警察は日本の警察に知らせ、日本警察とタイ警察が連携して、わざと輸入させて日本で摘発することにした。
 覚せい剤はタイから密輸されたのだが、現地の運び屋タイ人Bが11キロの覚醒剤を所持していたものの、犯意を失ってブツをホテルに置いたまま逃げてしまった。そこに来たタイ警察が覚醒剤を押収して10日間警察が保留した。密輸に失敗したのだから、事件はこの時点で終わったのである。
 ところが、タイの捜査官が逃げた運び屋Bを装って、片山被告の共犯者が滞在するホテルまで11キロの覚醒剤を届け、日本に運ばせた。つまり、いったんゼロになったところから、警察官が運び屋となって犯罪を作り上げた。
【「匿名証人=自称警察官」の恐ろしさ】
  このような、泳がせ捜査が違法かどうかが裁判の争点だった。しかし、もう一つ重大なのは、この裁判では匿名証人が認められ、警察官と称する男が証人尋問で調べを受けたことだ。
 匿名だから裁判長は、「検察がいう本人に間違いないですね」という旨をひとつ質問しただけですんだ。厳重な衝立により証人の全身は隠され、姿も見えない。
  被告人も、弁護人も、傍聴者も、裁判官も、誰もその人物の素性を知らない。だから“自称警察官”としか言いようがないのだ。この“名無しの権平証人”は極めて危険ではないだろうか。
  実は2016年5月の国会で「刑事訴訟法の一部を改正する法律」が成立した。その中身は盗聴の大幅拡大、司法取引導入など様々な問題がある。いま議論されている共謀罪の橋渡しとなる警察捜査フリーハンド法といっていいシロモノだ。
  このときに匿名証人が認められるようになったのである。弁護人にすら素性を知らせなくてもいいのだから、今回の裁判のように捜査官が匿名証人として出廷したり、警察協力者(司法取引に応じた人など)が素性を全くしられずに出ることも可能になったわけだ。
 おそらく改正施行後の「匿名証人第一号」が、今回の覚醒剤密輸事件の裁判だろう。これまで述べたような捜査手法や裁判が常態化したところに共謀罪が成立すればどうなるのだろうか。
 警察の不祥事等を長年追及してきたジャーナリストの寺澤有氏に話してもらった。
 質疑応答動画【林克明・寺澤有氏】共謀罪と警察が作り出した覚醒剤11キロ密輸事件(YOU TUBE 2017.05.20)