IMG_0510_1IMG_0509_1<第29回コスモス忌(詩人・秋山清忌)で、文壇バー「風紋」のマダムとして知られる林聖子さん(左)が、父親の林倭衛(画家)の想い出や、大杉栄との親密な関係や、詩人秋山清などとの交流を語る。聞き手は、作家で評論家の森まゆみさん(左)。10月21日、都内にて>
 アナーキズム詩人・秋山清をしのぶ第29回「コスモス忌」のイベントが10月21日、東京・築地本願寺講堂で開催された(コスモス忌世話人会・坂井てい氏主催)。今回の企画は、文壇バー「風紋」のマダムである林聖子氏(89)に、「私が出会った人々」をテーマに評論家の森まゆみ氏がインタビューをしたものもの。
IMG_0521<林聖子氏はインタビュー後のパーティでも、坂井ていさんたちと歓談>
 林聖子氏は、父親が大杉栄と親しくしていた画家の林倭衛(はやし、しずえ)。《参照:(公財)八十二文化財団ギャラリー
 母親が病弱なせいもあって、新潮社や筑摩書房に勤めてたりするが、水商売の経験を積んで、文壇バー「風紋」のマダムとなって長い。お母さんが太宰治と親しく、聖子さんは太宰の「メリークリスマス」という短編のモデルになっている。次回では、森まゆみ氏が作成した詳細な林家の年代記によって、その概要を紹介しよう。
 秋山清は、詩のなかで「風紋」を題材している。
〜〜〜〜 ☆ 〜〜〜〜
ふっ飛んだ屋根瓦は家主が直しに来ます。
たおれたキャベツはどうしましょう。
根もとは穴がおおきくひろがり
ごろごろごろごろと
かぼそい腰つきで
ひとばんじゅう身もだえ
つかれきって
ぐったりと起きあがれない。
キャベツ畑の彼方を郊外電車がすべる。
チン、チン、チン、チン、チン、踏切がなる。
キヤベツも
キャベツ畑も、息の根をとめたまま。
     ○
おどろきました。わずか五日間です。
キャベツは一せいに起きました。
一個の落伍もなく
葉はいきいきと天を指して
中心の球形はかたく、かたく
一七六五四個が自力更生しました。
明るくさわやかなキャベツ畑です。
彼らははげんでいます。
個はうつくしくいさましく
群はひかって健康でおだやかです。
へっちゃらって顔つきで葉末に朝露を溜めています。
まったく、ぼくらも、自律主義でゆきましょう。
どうです。近いうち「風紋」あたりで一杯。
ーー戯謡 1966
「台風通信」(秋山清『ある孤独』一九六七年)より。
IMG_0510_2<森まゆみ氏プロフィール=1954(昭和29)年東京都生れ。早稲田大学政治経済学部卒業、東京大学新聞研究所修了。出版社勤務を経て、1984年、地域雑誌「谷中・根津・千駄木」創刊。2009年まで編集人を務める。2014年、『「青鞘」の冒険女が集まって雑誌をつくるということ』で紫式部文学賞を受賞。2017年、『子規の音』(新潮社刊)、『暗い時代の人々』(亜紀書房刊)、『楽しい縮小社会:「小さな日本」でいいじゃないか』(筑摩書房刊、共著)を上梓。
  編著に『吹けよあれよ風よあらしよ一伊藤野枝選集』があるほか、『長生きも芸のうち岡本文弥百歳』、『断髪のモダンガールー42人の大正快女伝』、『海はあなたの道一越境のKOREN/JAPANES』、「鴎外の坂』、『「谷根千」の冒険』、『自主独立農民という仕事一一佐藤忠吉と「木次乳業」をめぐる人々』、『明るい原田病日記:私の体の中で内戦が起こった』、『森のなかのスタジアム新国立競技場暴走を考える』など、著書多数。>