日記の編集、発刊、その後の一連の広報活動が、昨年どうにか半ばおわりました。それに伴って私の日記「夢半ば」のブームも影が薄くなり始めました。そして私は、日記を出版の拘束から解きほぐされ、自由になった割には何の理由もなく、部屋に閉じこもって私は気が塞ぐようになりました。
  この気持ちってなんだろう、一定の習慣になっていた創作を止めてしまった自分への罪業感、体が遊びになれていない自分、何をしても満足しない。あんなに待っていた
  二時間もののドラマさえ見ても満足しない、こんなことしていていいかしらと思ってしまった。 
日記に関わっていた、ものすごく忙しかった日々、追いかけられる編集、または企画しなければならない自分に慣らされて、もう元に戻れないのに、虚脱感ばかり体を犯していた。きっとあまりにも課題が多い生活を2年余もしてきたので体にこびりついた過大評価の眉薬、1年前に戻りたくなった。
  そして書かない自分は、何を手にしたらいいのか分からなくなって、そのあおりで、評価されないのを他人のせいにして、自分は不幸せだとネガテイブになって生き方まで否定し始めていた。
  私って本当に日記を編集して、出版までこぎつけた人なんだろうかと疑うようなってきた、おかしなジレンマ。どうすれば日記を世に出す前の自分に戻れるのか、分らない。
  日記「夢半ば」編集の時のように過酷な課題、原稿の選択、資料の探し、エッセイの追記などないフリーな生活を手にすると、私の存在さえ不確かになってきた。
  日記を世に出す闘い、むき出しの自己肯定、過去の記録への挑戦などという麻薬に毒されてしまって、その名残で、半年おかしくなっていた。いつの間に創作する自分まで、嘘っぽくなってきた。
  しかし、もう去年の今頃には戻れないと自分を納得させた。そして私の創作年齢も、最果てまで来ているのに、このまま朽ちていいだろうか、「日記『夢半ば』4巻」の編集などに酔っていていいだろうか、という自分への対抗心、本来の闘争心が湧いてきた。
  その月日を経た暮れごろから、そして年の明けた今年になって書きたいという意欲が日に日に高まってきた。ライフワークと謳ってきた創作や編集はもう限界だなどと甘ったれていていいわけがないと自分を叱咤激励する声が聞こえてきた。
  62年間の日記「夢半ば4巻」の出版が、多くの読者にとどかなかったとしても、自己満足しただけでもいいじゃないか、働く女性の歴史を残せただけでもいいじゃないかと、心の声が響き、いつの間にか、平常心に戻してくれた。評価されない自分を、人生を拗ねていたのでは、「日記を書き続けた実力」を捨て、世を斜めに見て、心を閉ざしてしまっていいわけがない、まだまだ、読者に届くもの、実力があるじゃないか、と自分を信じ、書き残そうと闘志がわいてきた。
  正月過ぎ、日が伸び始め、春の光を瞼の中に感じると、次の作品の構想が私の中に見えてきて、PCを打つ手が早くなり出した。この分では、4月には、新しい作品が形になりそうだと、今から胸がドキドキし始めた。
日記の編集とは全く違った社会派的な作品(もちろんフィクション)が動き出し、1冊の本になりそうだ、またまたへこたれていませんと、私はこの紙面を借りて読者にメッセージを送りたくなりました。
  私のあくなき作家魂・気迫が、春待たずに心に充満し始めて来ましたので、今年もよろしくお願いいたします。
☆〜〜著書「夢半ば」と作家・小野友貴枝(おのゆきえ) プロフィール〜〜☆
PC100003_1<1巻 女の約束は〜思春期日記(14歳から25歳まで)/2巻 女の一念は〜青年期日記(26歳から55歳まで)/3巻 女の仕事は〜壮年期日記(56歳から65歳まで)/4巻 女のストリーは〜成人日記(66歳から75歳まで)>
 神奈川県秦野市在住。1939年、9人兄弟の五女として栃木県に生まれる。1962年、神奈川県立公衆衛生看護学院を卒業し、保健婦の国家資格取得。神奈川県職員となる。主に保健福祉分野に従事。1964年に結婚。3人の子どもを育てながら勤めを続ける。2000年、平塚保健福祉事務所保健福祉部長として定年退職。
IMG_20170123_084313_1<神奈川県の「タウンニュース」1月21日号掲載の「人物風土記・小野友貴枝」の誌面より>
 同年6月、日本看護協会常任理事に着任。2004年、秦野市社会福祉協議会会長、国立東京第一病院附属高等看護学院の「東一同窓会」会長などを務める。
 文学活動にも精力的に取り組み、秦野文学同人会代表、日本ペンクラブ会員。主な著書に『秘恋の詩』(叢文社、2001年)、『秘恋竹取ものがたり』(同、2003年)、「那珂川慕情』(同、2006年)、『恋愛不全症』(同、2008年)、「秘恋』(同、2010年)、「愛の輪郭(短編・掌編)』(日本文学館、2012年〉、銀華文学賞入選作を収めた『65歳ビューポイント』(同、2013年)がある。               
■関連情報=☆小野友貴枝さんが出版体験を講演=女性の日記から学ぶ会(千葉)
「風恋洞」44号を発行 | 秦野 | タウンニュース
タウンニュース・人物風土記
私という存在は、肉体より日記の中にあった