IMG_20180329_0001_1_1 <雑誌「いのちの籠」(発行・戦争と平和を考える詩の会=東京・大田区)第38号に堀場清子氏が「強姦許容社会」を発表。同会の許可を得て、転載する)
【「強姦許容社会」堀場清子】
   昨年の暮、鹿野政直ら四人の歴史研究者が発表した「戦後沖縄、歴史認識アピール」に関して、若松丈太郎氏、甲田四郎氏はじめ、『いのちの籠』同人のみなさまから、全面的なご協力をいただき、ただ感謝のほかはない。
 以来、沖縄とヤマトを繋いでの.共感帯"を創り出そうと、賛同者署名や賛同者メッセージをFAXでお送り下さるよう、お願いの手紙を書き続けた。
 やがて私方のコピー機に、真心の籠ったメッセージが積もり始めた。鹿野と私と、二人だけの努力では、どれほどの数にも届くまいと思っていたが、やがて自発的に署名集めをして下さる方々が、次々と出現し2017年12月20日現在、署名とメッセージの総数が、2124人に達した。出発時には想像も出来なかった【民意の結晶】の実現である。
 ヤマトで署名集めをしてくださった十数人のうち、男性は三人、あとはみな女性。沖縄の男性は集めてくださったが、ヤマトの男は動かなかった。世界に冠たる男女差別の國.日本で、実生活の分担度を示唆する数値ではなかろうか。それでも代表者としては、男の名を出すのが定型なのだろう。
 それら日々の遣り取りから、私たちの死命を制する『日米地位協定』を、まともに読んでいない事実に反省が生まれた。「アピール」の一人、戸邊秀明氏と鹿野が相談し、「日米地位協定をよむ会」の計画が成った。早稲川大学キャンパスで45席の会議室を借りて貰ったものの、何人の参加者があるか心配だった。結果的には60人参加で、補助椅子を出す騒ぎとなり、約半数が女性なのも嬉しかった。
 席順に全文を読み、各自が選ぶ条文について充実した報告がなされた。司会の戸邉氏が大奮闘で、4月から6月までの5回、隔週土曜日の2時〜6時、最高の知と良心の人々の迫真的勉強会となった。私は過労が続き、前年7月にドクターストップを受けながら、休息できないままにきた痛苦も、この.奇跡"の実現で報いられる想いになった。
   正面の白板には、昨年うるま市の女性が元米軍属の男に殺害遺棄された事件に抗議し、6万5千人が結集して「海兵隊撤退」を決議した沖縄の県民集会……それを報じた『琉球新報』の連続二面を掲げた。出席者の中には、勤めを休んで集会に参加した人さえいた。県民集会を高く評価しながら、その原因をなす沖縄社会の大問題、女性への性暴力直結する「刑事」の条項に対し、誰も関心を示さなかった。
 「沖縄の、この大きな社会問題をスルーしてはならない」と、私は発言した。報告者には立候補できず、申し訳なかったのだが。山本英政氏が引き受けられ、次の会で充実の報告をされた。それまでの二週間に、戸邉氏から情報が入った。多勢の女性が出席していながら、報告者とならないことに、椎野和枝氏が激怒し、「自分がやる」と通告された、と。
 椎野さんの苦戦は自明だった。せめて援護射撃ができないかと、前日、私は検索を試みた。悲劇が起きるたびに、日本政府は「綱紀粛正」を唱える。だが本気度ゼロ。単なる「念仏」に過ぎない。沖縄の女でも、ヤマトの女でも、米軍との関係に支障が起きねば、問題にもしないのが、正直な肚だ。
 私はふと思った。では、日本国内の強姦には、どう対応しているのか? パソコンの画面に、「強姦罪厳罰化」の見出しが、ズラリと出た。その一つ一つに、違う男の顔写真が付き、不可解だった。やがて、代々の法務大臣の顔と悟った。
 就任時に「念仏」さえ唱えれば、実績皆無でも非難されない。つまり、"強姦許容社会"ということか。被害女性は生涯を左右される。故に「魂の殺入」と呼ばれるが、罪は強盗より軽い。有罪でも最短の法定刑は、わずか3年。それを4年にするという程度の、「厳罰化」である。(つづく)
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