奥村幸治さん(掲載当時NPO法人ベースボールスピリッツ理事長、宝塚ボーイズ監督)
致知2010年6月号「致知随想」より
ある時、イチロー選手にこんな質問をしたことがあった。
「いままでに、これだけはやったな、と言える練習はある?」
彼の答えはこうだった。
「僕は高校生活の3年間、
1日にたった10分ですが、寝る前に必ず素振りをしました。
その10分の素振りを1年365日、3年間続けました。
これが誰よりもやった練習です」
私は現在、少年野球チームの監督を務めているが、
彼の資質がいかに特異なものであるかがよく分かる。
例えば野球の上手な子にアドバイスをすると
何をやってもすぐできるようになる。
下手な子はなかなか思うようにいかない。
ところが、できるようになったうまい子が、
いつの間にかその練習をやめてしまうのに対し、
下手な子は粘り強くそれを続け、いつかはできるようになる。
そして継続することの大切さを知っている彼らは、
できるようになった後もなお練習を続けるため、
結局は前者よりも力をつけることが多いのである。