院長のひとり言

【2018年11月9日に医療法人ハートフルのホームページに掲載された記事です】


以下の文章は病院の総意ではなく、私の個人的な考えですが… 

皆さん、岡 潔という方、ご存知でしょうか?戦前から戦後にかけて活躍した偉大な数学者で、湯川秀樹等に大きな影響を与えた方です。文化勲章まで受章されました。数学的な仕事は、「多変量解析関数論」というノーベル賞級の仕事らしいのですが、詳しいことは私には解りません。昭和53年、76歳で亡くなられましたが、晩年は人間の心の研究に没頭し、非常に面白い主張(発見)をされておられます。今回はこの題材に致しました。岡先生の研究によりますと・・・

人の心は、「知、情、意」の3つの部分からなっています。知とは知恵、知識、等であり、何か事を成そうとする時には、欠かせない能力です。意とは、意欲の事で、何か事を成そうとする意思の事です。これがないと、何にもする気が起きないロボトミーの状態です。これら2つは前頭葉に宿り、人間の欲望、願望、目的に合わせて全力で働きます。

一方、「情」は頭頂葉に宿っています。「情」とは何かと言いますと、愛情、友情、感情、真情、等の事です。例えば、親子の間には強い愛情があります。相手とつながる感性です。相手の喜びが自分の喜びとなり、相手の悲しみが自分の悲しみと実感してしまう感性です。情が湧くことで、知らず知らずのうちに相手とつながってしまい、相手を幸せにしたくなってしまいます。相手を幸せにすることで自分が幸せになりたい、というエネルギーが情なのです。この頭頂葉に宿る「情」が起動すると、前頭葉に命令が行きます。どういう方法で情を満足させるかの作戦を立てるのが前頭葉です。前頭葉に宿る、知恵や知識を総動員し、作戦を立てます。そして、起動されたエネルギーを持続させるため、同じ場所にある前頭葉の、意欲と持続力が働きます。人間は、これら3つがうまく連関して事を成し遂げた後に、言い知れぬ幸せを感じるらしいのです。

ところが、時に、前頭葉だけが進化した人間が発生します。とにかく、自分の得になる事しか頭が働きません。そして、前頭葉に宿る、知恵、意欲等が、すばらしく能力が高いため、大成功しますが、いつまでたっても幸せになりません。もともと「情」の部分が無いため、どんなに金持ちになっても、どんなに偉くなっても、頭頂葉が満足しないからです。こう言う人の事を、情がない・・なさけない・・・と言います。

一方、頭頂葉のみが異常に発達した偉い人もいます。周防大島で子供を発見した「ボランティアおじいさん」です。とにかく、可哀想な人がいると、いても立ってもいられなくなり、利害得失を越えて人助けをしてしまう人です。同じものをみても感じる量が違うのです。私の個人的な見解では、人類の進化バージョンだろうと思います。もともと、人類は旧皮質だけであったものが、徐々に、新皮質が発達し、前頭葉から頭頂葉と、進化しているように見えます。

医療はどうでしょうか。患者さんをみて、全く情が湧かなければ、仕事は面白くもなんともありません。患者さんとの間に、人情、愛情、友情等が湧いてきたら、しめたものです。仲良くなったら、本気でリハをしてしまうのです。そして、患者さんの笑顔が、知らず知らずのうちに自分の笑顔になってしまい、そういう情のエレルギーのもとに、前頭葉が働き、知恵と意思で患者さんを元気にしていくのです。

病院に例えれば、前頭葉は経営で、頭頂葉は病院の理念です。「地域のために 地域ともに」は、情に働きかけた部分ですが、非常に非論理的です。「地域のために 地域とともに」やったとて、一見、経営とは何の関係もありません。しかし、情に働きかけ、情が起動したら、前頭葉が活発に働き始め、結果的に3つの心が満足することになり、病院も職員も地域も幸せになるのです。だからこそ、全国の病院が理念を大切にするのです。


では、情の及ぶ範囲はどこまでなのでしょうか?もちろん、人によって「情の深い人」「情の薄い人」さまざまです。しかし、世界的に見た場合、日本人は特に情にあつい民族のようです。家族、友人、地域住民を越えて、日本人全体に対して家族意識を持っているのです。まるで、日本人全体が竹の根でつながっているように、隣に立っている竹を、自分の細胞の一部のように感じてしまい、隣の竹の喜び悲しみを自分のものとして捉えてしまうのです。

しかし、多民族国家ではそうはいきません。情の及ぶ範囲はせいぜい家族か友人であり、それ以上は広がりません。情のない関係は、前頭葉のみが働く世界で、利害関係のみです。どちらが強いか、どちらが儲かるかです。もちろん、人権とかヒューマニズムとかのきれい事は言いますが、結局、前頭葉の価値観の中で、損か得かで動いています。

世界は今、戦争の真っ只中です。岡先生は、「このままでは世界は核戦争で滅亡するだろう。しかし、日本人の情の概念が世界に広がれば、かすかに生き残る道があるかもしれない。」と言って、昭和53年、亡くなられました。そして40年、世界の子供たちは日本アニメに魅せられました。その中身は、情のオンパレードです。愛情、友情、苦情、強情、欲情、情が移る、情を通じる、情にもろい・・・等々。

医療も同様です。世界が日本の医療制度に憧れています。それは、「情」を基本とした、非常に、非論理的な、幸せな世界です。世界の手本となるリハビリテーション病院、それは、「地域のために 地域とともに」を高々と掲げた私たちの病院なのです。この道を、共に歩みましょう!

(おまけ)
「表情」とは表にあらわれる情のことです。だからこそ、友情が生まれます。医療現場ではマスクが当たり前のようになっていますが、皆さん、できるだけ情をあらわして、患者さんとの間に友情や愛情をつくりあげていって下さい。怒った顔、笑った顔、トボケタ顔、全てが大切なのです。

【2018年10月11日に医療法人ハートフルのホームページに掲載された記事です】


以下の文章は病院の総意ではなく、私の個人的な考えですが… 

私たちが目指すリハビリテーション病院とはどんな形のものなのでしょう。結論から言えば、三次ピオーネを目指そうという、私なりの考え方を述べてみたいと思います。

全国には、すばらしいリハ病院がたくさんあります。東京には地下1階地上8階ベッド数173床の初台リハ病院があり、埼玉には、東京近郊の大ベッドタウンを控えた霞ヶ関南病院があります。岡山には吉備リハ病院、高知には近森病院等々、いろいろな形のすばらしい病院があります。では、私たちはどのような形の山に登るのが一番いいのでしょうか?

企業でも病院でも成功する組織は、立地条件に根ざした特色のある形をとっています。私たちの立地条件とは、「100万都市の近郊に付随した都会型新興住宅地と旧来の農林漁業を中心とした伝統ある地域の混合型の中にある120床の民間病院」と言えます。そのような条件の中、1000万人口の東京都下の病院を真似て、一大資本投下をして設備日本一の病院をつくっても、患者数の面でもベッド数の面でも追いつきません。それをやろうとして行き詰まったのが高知の○○病院です。一方、脊髄損傷で有名な岡山の吉備リハビリテーション病院はどういう病院なのでしょう。ベッド数150床と規模はさほど大きくはありませんが、ここは、厚労省肝いりで創設された労働者のための労働者健康安全機構が設立した独立行政法人です。言い換えれば、資本投下は国ですし、利益がでても税金は免除されています。例え岡山の田舎でも、特化したリハで国を支えています。それぞれすばらしい病院なのですが、どうも、私たちの登る山としては条件が違いすぎます。

こうして見て行きますと、自分たちの足りない点ばかりが目に付きますが、私たちには利点はないのでしようか?そんな事はありません。大変な利点があります。それは、私たちの地域は、都会型新興住宅地と農林漁業の伝統ある地域との混在型という点です。都会では崩壊してしまった家族の支え、地域の支えがまだ残っている地域であるにも関わらず、過疎にもならず、人口は20-30万規模の地域がバックにあるという点です。具体的に言えば、在宅を支える家族、在宅死を受け入れやすい地域、訪問看護、地域包括ケアシステムの構築が容易な条件を兼ね備えているのです。そうです。国が目指している全ての条件を兼ね備えている地域なのです。

おかげで私たちの病院は、ここ2−3年、ベッド稼働率は97-8%を維持しています。他府県の回復期病院は、今、空きベッドの多さに頭を抱えているようです。何故なのでしょうか?そうです。私たちの進む方向が間違っていないからです。当初から理事長が掲げた理念「地域のために、地域と共に」が地域の方々から圧倒的に支持されているからなのです。もちろん、理事長一人が偉いわけではありません。職員一人一人が「この地域を支えるんだ!」という意識を共有しているからこその結果なのでしょう。地域を支えるのは、病院だけではできません。回復期期限がすぎて仕方なく在宅に帰っておられる患者さんの日常生活を支える各種のサービス、訪問看護、訪問診療を併せ持っているハートフルアマノの仕組み全てが、地域の方々に支持されているのです。この形で日本一になれば、全国から見学がくる回復期病院の手本となり得るのです。

私たちが目指す「日本一のリハビリテーション病院」とは、三次という片田舎で成功させた三次ピオーネだと思うのです。自分たちの欠点を長所に変えて、自分たちだけのオリジナルを作り出す事です。医療で言えば、全ての疾患の患者さん(脳血管、骨折、心臓等)を受け入れ、退院後もしっかり面倒見ていく地域に密着した仕組みです。これこそが、日本全体の手本になるのです。これこそが日本一の病院だと思います。

【2018年4月26日に医療法人ハートフルのホームページに掲載された記事です】


以下の文章は病院の総意ではなく、私の個人的な考えですが… 

まずは、新入職員へのメッセージです。

今年も、わがハートフルアマノには26人の新人を迎えることができました。人手不足の時代、他病院ではいくら募集をかけても集まってくれない中、たくさんの優秀な新人が新たに仲間になってくれたこと、本当にありがたいことです。

私たちの理念は、「地域のために、地域と共に」です。わかりやすく言えば、「地域を支えると共に、自分たちも成長しましょう」という意味です。「廿日市の患者さんのお手伝いをしながら、病院も成長、職員一人一人も成長しましょう」という意味なのです。私たちは、今では、広島県を代表するようなリハビリテーション病院に成長しています。地域には「アマノに入院してリハビリをしたい」と言う方がたくさんいらっしゃいます。何故なら、職員一人一人が患者さんから絶大な信頼を得ているからです。別の言い方をすれば、あなたたちの目の前の先輩達は、一人一人が広島県を代表するプロなのです。

江戸時代から、日本の企業(商家等)の仕事は、社会に貢献するとともに、商家が繁盛し、従業員が人としても技術者としても成長することが一番とされてきました。一人前になれば独立させ、社会の隅々まで質の高い商品を行きわたらせ、社会を維持してきたのです。そしてその人達が、もとの商家とともに影で支えあうことにより、300年.400年という伝統のある企業がたくさん生まれたのです。

私たちハートフルアマノも、その方針で、職員を育てることを大切にしてきました。皆さんの前には、人間的にも技術的にも手本となるような先輩達がそろっているはずです。早く、すばらしいと思える先輩を見つけ、まずは真似をして、大きく成長してください。そして、一日でも早く、病院を支え、廿日市を支え、日本を支える人間になって下さい。一緒に頑張りましょう!

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