ごぶさたしております。
ついに阿知賀編が終わりましたね。ええ・・・何週間前の話だよ、って感じですけども。
感想を書こうと思ったのですが、なかなかいいたいことがまとまらないので、まあざっくりキャラの名前や能力について、あらためて考察めいたことを。きょうの記事ではシズ重点。ほぼTwitter発言のまとめになってしまい、ほんとうに申し訳ないのですが。
シズは、吉野の山を二年間、ひとりで駆け回っていたことにより、山を支配する「深山幽谷の化身」となった、とあります。
衣ちゃんいわく「修験者が修行のために歩いた深山路 そこを修行ではなく庭のように駆け回っていた」。修験者というのはいわゆる山伏のこと。修験道という、仏教と神道がミックスされたような宗教の指導者で、山の中で修行をおこなう存在です。山伏が白装束でほら貝を吹いてる絵とか、見たことありませんか?
この山伏は天狗ともつながりがあるんですが、今回は本題に関係ないので省きます。

さて、このシズが駆け回っていた場所はおそらく、「奥駈道」であろうと思われます。すなわち、修験道の拠点である吉野・大峯と、熊野信仰の中心地である熊野三山をむすぶ、山伏たちの修行の道。くわしくはこのページなどを見てください。http://www.geocities.jp/jugemuguidekobo/okugake_intro.htm阿知賀編の外伝で、シズのお母さんが、彼女は熊野のほうまでも行ってしまうようなことを言ってましたが、アレがおそらくシズの能力の伏線だったんじゃないかな・・・
そして、山の中で「深い山のすべてと一体化しているようなそんな気分」になったシズは、バックに炎の燃える光背を出して淡を圧倒。
この光背ですけど、実は元ネタがあります。それは吉野の金峯山寺にある金剛蔵王権現の像の背後にあるもの。
http://www.kinpusen.or.jp/guide/guide_2.htm
つまりシズは山の中を彷徨って、この「金剛蔵王権現」を感得した、と考えるのがいいんじゃないかな。

この金剛蔵王権現は、七世紀、修験道の開祖とされる役小角(えんのおづぬ)という人物が、吉野の山の中で感得したものでありました。
そしてこの役小角、シズとまったく無関係の存在・・・とはいえないのです。
役小角は「賀茂役君」の家に生まれたといわれています。で、賀茂族が祀っていた神は阿治須岐高日子根命。その総本社を「高鴨神社」といいます。
もっとダイレクトに「役小角の父親は高鴨氏」と述べているサイト http://www.takaosan.info/ennogyoujya.htm もあったのですが、ソースとなる文献がちょっと見つかりませんでした。まあそーゆー説もあるってことで。研究論文じゃなくて漫画なんだし、小林せんせいがこの説を採ったと考えてもいいんじゃない?この場合、小角の子孫であるシズが先祖と同じように吉野の山で金剛蔵王権現を感得した、ってことになって面白いなって思います。
で、この高鴨神社には阿治須岐高日子根命のほかにその妹の下照比売命が祀られているんですが、この下照比売命、じつは鳥取県の倭文神社で、星神の香香背男を封じた倭文神こと建葉槌命とともに祀られてもいるんです。
というわけで、シズの名前とは、吉野の山を駆け回ることで深山幽谷の化身となり、星のイメージで描かれた「大星淡」を圧倒する、という物語展開と密接に関わっているといえるでしょう。

あ、このブログで昔、吉野山で「シズ」といえば源義経の愛妾である静御前じゃないの?と申し上げましたが、静御前も金剛蔵王権現と無縁ではありません。
南北朝~室町期に成立した『義経記』という作品があります。そこには、吉野で源義経と別れた静御前はいろいろあって山の中に放置されてしまい、ひとり山内をさまよう。そして辿り着いたのが金剛蔵王権現のお堂であった・・・という場面が。若い娘が孤独に吉野の山をさすらう、という発想の根本には、この静御前のイメージがあるのかもしれません。

次回はりゅーかについて。
もしかすると、北大阪は仏教系能力者のあつまる場所なのかもしれない?