※記事中の画像は考察のために用いたものであり、アニメのキャプション画像の著作権は権利者様に帰属します。何か問題がありましたらご連絡いただければと思います。



 こんにちは。あおいです。このところ例年通りの引きこもりライフを満喫していたのですが、たまにはお出かけでもするか、ということで『咲―Saki―』阿知賀編の舞台である奈良県は吉野に行く計画を立てております。そして、その過程でひとつ思いついたことがありました。 阿知賀編の主人公である阿知賀女子の選手たちひとりひとりの造型や能力に、吉野の景物、神社仏閣とその祭神・本尊などの影響が見られるのではないか、ということです。

 かつて当ブログでは阿知賀の大将をつとめる高鴨穏乃ちゃんの能力と、吉野と熊野を結ぶ山伏たちの修行の道「奥駈道」および吉野の金峯山寺の金剛蔵王権現像の関係について書きました。(深山幽谷の化身って?という記事を参照のこと)。そしてこの記事を書いてから二年以上が過ぎたいま、同様のことが他の選手にもいえるのではないか……という気がしています。今日はその中でも、副将の鷺森灼ちゃんの能力と「吉野の寺院およびその本尊」との関わりについての仮説を示してみたいと思います。


◆ジャファーさんの仮説◆
 灼ちゃんについての元ネタ考察は、すでにアルカ茄子のジャファーさんが行っています。ジャファーさんは、灼ちゃんの憧れの存在である赤土晴絵のキャラクターモデルを「住吉三神」とした上で、灼ちゃんのそれを、住吉三神と縁の深い神功皇后と考えています。そして灼ちゃんの「ボーリングキャラ」、「筒子多面張・ボーリング待ち」について、以下のように推測しています。


前回の赤土さんの元ネタではサラっと流しましたが、筒子キャラになった理由は、恐らく神功皇后と関わり深い住吉三神の名前にある「筒」からの連想でしょうか。
あるいはそれは初期構想では赤土さんの特徴だったのかもしれない。

それがボーリングになった理由は今一よく分からない。
(三筒の絵柄なんかはボーリングピンの残り方によく似てる気もしますが。)
アニメ監督さんの提案でボーリンググローブを嵌めるキャラになったらしいですが、それが神功皇后が武神だから小手的なアイテムとして発想→ボーリングになったのか?
最初からボーリングキャラとして設定されてて、キャラ付けをはっきりさせる為そうしたのか?

一応、神功皇后にはボールのようなアイテムを手に入れる話はあります。

仲哀天皇紀、豊浦津にて「皇后、如意珠(にょいのたま)を海中に得たまふ」。
(読んで字のごとく願いが叶う珠らしいのですが、このアイテムの描写はこの後一切無し。)

推測として

「如意珠」+「筒」(神名から)+「グローブ」(武神的キャラ付け?)
→筒子多面張・ボーリング待ち
(アルカ茄子―灼ちゃん元ネタ探し


◆如意輪観音の右手に注目!◆
 ただし問題は、「ボールのようなアイテム」を持っている存在はほかにもいるということ。また、灼ちゃんの名前に用いられた「灼(あらた)」という字はジャファーさんも仰っているように「神仏の霊験が大きいこと」を表すものですが、「ボールのようなアイテム」を持った霊験「灼」かな存在というところから連想されるのは、神功皇后よりもむしろ、観音菩薩の変化身のひとつである「如意輪観音」ではないでしょうか。 「如意」とは、この菩薩の持物であり、全ての願いを叶えることができる「如意宝珠」を指します。(神功皇后が得た如意珠との関係については調べていません。すみません)

 この如意輪観音を本尊とする寺院は吉野山にも存在します。中千本にある浄土宗の寺院・塔尾山椿花院如意輪寺(とおのおざんちんざんいん・にょいりんじ)がそうです。如意輪寺と金峯山寺、松実館のモデルであるさこや、憧ちゃんの実家のモデルである吉水神社の位置関係についてはこちらの地図をご確認ください。

 如意輪寺の如意輪観音は春に開帳される秘仏であり、その姿ははっきりわかりません。しかし一般公開されている如意輪観音像は決して少なくありませんから、如意輪観音がどのような姿で彫刻される、あるいは描かれるのか、ということは分かります。そして注目すべきは、灼ちゃんと如意輪観音像はともに「右手」に珠を持っており、しかもその珠を持つ手つきが酷似しているということです。
 
 灼ちゃんは右手でボウリングの球や筒子を掴むわけですが、こちら(観心寺の如意輪観音像)やこちら(奈良国立博物館蔵・絹本著色如意輪観音像)を見てください。これらの如意輪観音像は六つの腕を持っていますが、その右手の一本は胸の前で如意宝珠を持ち、また一本は外側に垂らして数珠を持っています。すなわち右手でいくつもの「珠」を持っているわけですね。
 さらに数珠を持っている手に着目してみると、人差し指と小指をぴんと伸ばし、中指と薬指を曲げてそこに数珠を掛けている。この手つきはボーリングのボールを持つとき、そして灼ちゃんがボーリングのボールに見立てた筒子をツモるときのそれによく似ています。
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 ボーリングのボールを持つときには、中指と薬指をボールの穴に入れます。灼ちゃんの右手はそれを意識したもの。そういうわけで、如意輪観音の数珠を持つ右手と同じようなかたちになっているわけですね。
 というわけで、彼女の「ボーリング」や「筒子他面張」に、如意輪寺の本尊であるところの如意輪観音の右手が持つ、如意宝珠や数珠のイメージが重ねられている可能性は高そうです。ただジャファーさんの説も間違いではないというか、いろいろなイメージが複合されているのかも、と思っています。

◆「聖地巡礼」と「敬意」について◆
 最後に。
 今後も余力があれば他のメンバーと吉野の神社仏閣との関わりについての仮説を示してゆこうと思っていますが、『咲』の「聖地」を訪れる際にひとつ頭に置いておいてほしいのは、金峯山寺の金剛蔵王権現像も、この如意輪観音像も、信仰の対象として作られ、長きにわたって多くの人々の崇敬を集めてきたということです。そうした存在を元にした「美少女キャラクター」を快く思わない(あるいは冒涜的と感じる)人がいてもおかしくはありません。また、これらの寺院を訪れる中には、静かに祈りたいという思いを抱いている人も少なくないはずです。
 そういうわけで私は、咲キャラの元ネタを考察し、このように世界に公開することにかなりの躊躇いを持っていたりします。神仏や神社仏閣とキャラクターの結びつきが周知されてしまうと、それが思わぬところに波及してゆくこともあるものだから。


 『咲』の「聖地巡礼」として神社仏閣を訪れた場合には、まずそこが信仰の場であることを念頭に置き、それに相応しい振る舞いをしていただきたいな、と思っています。自分の信仰の有無はとりあえず脇に置いておいて、神仏やそれを信じる人たちへの「敬意」を忘れないでいてほしいな、と。お堂の中や境内でキャラ名を叫ぶ、萌え語りをする、なんて論外です。そういうことは信仰の場を出てから、『咲』という作品とそのファンに好意的な立場をとっている旅館やお食事処などでお願いします。
 ファンのマナーが悪くなると、『咲』聖地としての吉野を支えてくださっている方々の肩身が狭くなるかもしれません。そういうわけで、「聖地巡礼」の際にはご一考いただけたら幸いです。

 なんか説教臭くなっちゃいましたね……ううむ……  
 あっ吉野に行ったら吉野葛のお菓子を買いたいんですよ!オススメがあったらコメント欄でご教示ください!

 それでは。