※記事中の本編及びアニメのキャプション画像は考察のために用いたものであり、その著作権は権利者様に帰属します。何か問題がありましたらご連絡いただければと思います。

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 ktkr!

 こんにちは、あおいです。『咲―Saki―』第144局[烈火]はみなさまお読みになられたでしょうか。その中で有珠山高校三年・獅子原爽くんの能力が明らかになりました。あまり時間もないので取り急ぎ、気になるところだけメモっぽく記しておこうと思います。なお、ほぼネット上で拾える情報をまとめただけで、きっちり調べたわけではありません。

◆爽くんの能力◆
1、色のついた「雲」を自分や相手に仕掛ける。それによって自分や相手に特定の牌が来る/来ない ようにするなど、何らかの効果を生み出すようである。現段階で判明している雲の色は赤、黒、黄(なお二回戦で使った黒と黄は戻っていない)で、更に色の判明していない二色の雲がある。つまり五色の雲を使役する能力者。本局で登場した「赤い雲」は、雲を仕掛けられた者に字牌が行かないようにする効果を持つ。
※「私的素敵ジャンク」のhannoverさんから、後述の「赤い雲」の性格を考えればむしろ「雲を仕掛けられた者に数牌しか行かなくなる」と見るべきでは?というご指摘をいただきました。そちらが妥当だと思います。これについてはしののぬさんのブログ、「麻雀雑記あれこれ」で詳しく検討されていますのでご参照ください。→麻雀雑記あれこれ―獅子原爽の「赤い雲」に関する諸考察
これ、修正するよーってお話をしてからずっと忘れてしまっていて、本当にすみませんでした…

2、 雲のみならず、「カムイ」という(アイヌの?)女性の姿をした存在を複数使役。それによって相手に(自分にも?)呪いをかける。末原さんに「呪いをかける」目的で差し向けられたのは「寿命の支配者(パコロカムイ)」。
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3、末原さんは「素直すぎた」ので「(雲、あるいはカムイに)取り込まれ」たが、ネリーはそれを躱すことができた。


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 するとこの全国編アニメEDに出てきた「赤い海っぽいもの」は実は赤い雲で、爽の後ろにたたずむのは「寿命の支配者」だと思われます。

◆「雲」って?◆
ふたばの咲スレですでに指摘がなされていますが、南北海道のアイヌに伝わる創世神話に登場する、「五色の雲」が元ネタでしょう。
 
Wikipedia―天地開闢(アイヌ神話)

 これは1858年夏に、タツコプ・コタン(現夕張郡栗山町字円山)の83歳になるエカシ=おじいさんが松浦武四郎のために夜通し炉辺で詠ったユーカラを記録したものだそうです。爽くんの能力と関係しそうな箇所を以下に示しておきますね。

 昔、この世に国も土地もまだ何もない時、ちょうど青海原の中の浮き油のような物ができ、これがやがて火の燃え上がるように、まるで炎が上がるように、立ち昇って空となった。そして後に残った濁ったものが、次第に固まって島(現北海道)となった。島は長い間に大きく固まって島となったのであるが、その内、モヤモヤとした氣が集まって一柱の神(カムイ)が生まれ出た。一方、炎の立つように高く昇ったという清く明るい空の氣からも一柱の神が生まれ、その神が五色の雲に乗って地上に降って来た。

 この二柱の神達が五色の雲の中の青い雲を(現在の)海の方に投げ入れ、「水になれ」と言うと海ができた。そして黄色の雲を投げて、「地上の島を土でおおいつくせ」と言い、赤い雲をまかれて、「金銀珠玉の宝物になれ」、白い雲で、「草木、鳥、獣、魚、虫になれ」と言うと、それぞれのモノができあがった。
 
  その後、天神・地神の二柱の神達は、「この国を統率する神がいなくては困るが、どうしたものだろう」と考えていられるところへ、一羽のフクロウが飛んで来た。神達は「何だろう」と見ると、その鳥が目をパチパチして見せるので、「これは面白い」と二柱の神達が、何かしらをされ、沢山の神々を産まれたという。
 
 沢山の神々が生まれた中で、ペケレチュプ(日の神)、クンネチュプ(月の神)という二柱の光り輝く美しい神々は、この国(タンシリ)の霧(ウララ)の深く暗い所を照らそうと、ペケレチュプはマツネシリ(雌岳)から、クンネチュプはピンネシリ(雄岳)からクンネニシ(黒雲)に乗って天に昇られたのである。また、この濁ったものが固まってできたモシリ(島根)の始まりが、今のシリベシの山(後方羊蹄山)であると言う。


 というわけで、爽が使った「赤い雲」は「金銀珠玉の宝物」を招来するもの…みたいです。

 さて、民俗学者・中山太郎の『日本巫女史』にアイヌの女性についての以下のような記述があります。
「金田一京助氏の研究によると、……アイヌ族の民俗として、男子が他部落の男子と戦争する際には、各部落の女子は後陣に出で立ち並び、一種の呪術として口々から吐息して敵陣に吹きかける。
「金田一氏は、此の所作をするアイヌの女子が、巫女であるか否かに就いては説明されていぬが、私の考えるところでは、其の古いところに溯れば、必ずや巫女(アイヌではツスという)がその任に当ったことと信じたい。従って諏訪大明神絵詞に現われた頃になれば、巫女の仕事でなくして、普通の女子の遣る事になっていたのであろうが、それにしても誦呪するときだけは、全く巫女の心持になって、一方には敵兵を詛い、一方には味方を励ましたものと見て差支ないようである。」

 つまり五色の雲は爽くんの吐息であり、それが「敵兵を詛い(相手の手牌を縛ったり)」、「味方を励ました(自分の手牌を縛ることで特定の牌を集まりやすくする)」りするものとして機能しているものなのではないかと。いや『日本巫女史』の記述を信じていいのか知らんけど。とりあえず、なんか……ミントの香りがしそうですね……?


 なお、「五色の雲」は仏教にもよく登場するもので、西方の極楽浄土から阿弥陀如来が、極楽往生するひとを迎えにやってくるさまを描いた図像(来迎図といいます)にも描かれたり。彩雲、瑞雲と呼んだりもします。帝国海軍の偵察機の名前にも使われてますね、彩雲や瑞雲。

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「五色の雲とカムイを放って突撃、これだ」

 ……お前は呼んでない。


◆カムイとは?◆
 取り急ぎウィキペディアの解説を。

Wikipedia-カムイ
「カムイ(kamuy, 神威、神居)は、アイヌ語で神格を有する高位の霊的存在のこと」
「アイヌ民族の伝統的な世界観では、カムイは動植物や自然現象、あるいは人工物など、あらゆるものにカムイが宿っているとされる。一般にカムイと呼ばれる条件としては、「ある固有の能力を有しているもの」、特に人間のできない事を行い様々な恩恵や災厄をもたらすものである事が挙げられる。そして、そういった能力の保持者或いは付与者としてそのものに内在する霊的知性体がカムイであると考えられている。
カムイは、本来神々の世界であるカムイ・モシリ (kamuy mosir) に所属しており、その本来の姿は人間と同じだという。……そしてある一定の使命を帯びて人間の世界であるアイヌ・モシリ (aynu mosir) にやってくる際、その使命に応じた衣服を身にまとうという。例えばキムン・カムイ(kim un kamuy, 山にいるカムイ)が人間の世界にやってくる時にはヒグマの衣服(肉体)をまとってくる。言い換えれば我々が目にするヒグマはすべて、人間の世界におけるカムイの仮の姿ということになる。」
 「カムイの有する「固有の能力」は人間に都合の良い物ばかりとは限らない。例えば熱病をもたらす疫病神なども、人智の及ばぬ力を振るう存在としてカムイと呼ばれる。このように、人間に災厄をもたらすカムイはウェン・カムイ(wen kamuy, 悪しきカムイ)と呼ばれ、人間に恩恵をもたらすピリカ・カムイ(pirka kamuy, 善きカムイ)と同様に畏怖される。カムイという言葉は多くの場合にただ「神」と訳されるが、このような場合は「荒神」と訳すべき時もある。例えばカムイコタンとは「カムイの村」という意味だが、多くは地形上の難所などであり、「神の村」というより「恐ろしい荒神のいる場所」とした方が実際のイメージに近い。」

※アイヌ出身の学者である知里真志保の「アイヌ語学」には、「カムイ」がそもそもは神というより「悪魔」を意味した語である、という記述が。「アイヌ語のカムイは古くは悪魔の意味ですから、カムイコタンというのは、実は「悪魔のいるおそろしい場所」の意味なのであります。」

 なおこの知里真志保の著作『えぞおばけ列伝』には、ベンベ(今の虻田郡豊浦町)に蜘蛛と竜蛇を憑神にもつ有名な巫女がいた、という記述があったりします。その憑神は「縁あって人間の女の魂の上に/憑神となって/人間の身の上に/何か難しい事件が起るたびに/その原因を明かし明かし/してやっているのだが」と述べています。爽くんとカムイの関係を考える上で重要かもしれない。
 そしてこの『えぞおばけ列伝』によれば思い合うふたりがよろしくすることをアイヌの言葉で「ウコパウチコル」、その際に感極まって泣くことを「パウチチシテ」と言うそうなので、何卒よろしくお願いいたします。

◆雲とカムイの関係◆
 いちおう別個の能力なんですかね。先述した南北海道のアイヌの天地開闢神話に、カムイが五色の雲に乗って下ってきたとあることと関係?
 
◆なんで雲もカムイも減ってしまうん?◆
 南北海道の自然に宿る存在だから、本州まで「連れてくる」ことはできても一度使って失われたら再生・補充はできないのかもしれないですね…。北海道ではチカちゃん相手に普通に使ってますし、県予選でも赤い雲を使ったみたいですね。あとは、相手が強すぎるとそのちからに打ち負けて失われてしまう、とか…?ネリーに「喰われた」可能性も?

 そういえば、稲田浩二編『アイヌの昔話』(ちくま学芸文庫)の解説に面白いことが書いてありました。アイヌの昔話の中に、本州において良く知られている「猿蟹合戦」によく似た「魔神の来襲」という話があります。主人公は蜘蛛の女神で、臼、杵、蜂、蛇などの力を借り、彼女に惚れて我が物にしようとする魔神を撃退するというもの。それについて稲田氏は「アイヌ族のタイプでは、主人公のくもの女神がよこしまな魔神に襲われるとき、援助者たちは女神の家に待ち構え、来襲した魔神を攻撃し撃退する。これに対し日本民族のそれは、援助者と子蟹は仇の家にひそんでいて、帰ってきた仇を攻め殺している。」と述べています。
 爽くんの能力はこのようなアイヌの伝承の特質を元ネタとした、「特定の場所でこそ最大限効果を発揮する」タイプなのかも。衣ちゃんのちからが満月の夜に最高潮になるように、爽くんも「カムイ」の息づく北海道でこそ万全のちからを発揮できるのかもしれません。

◆なんでミッション系の有珠山の大将がアイヌのカムイを使役してるの?大丈夫なの?◆ 
 近代以降、アイヌ文化の保全に携わったのがキリスト教の宣教師であったこと。そしてその宣教師が有珠の地と縁が深かったことが反映されているような気がします。

 有珠の地とも縁の深い宣教師として、イギリス人の聖公会宣教師、ジョン・バチェラー(1854-1944)がいます。彼はアイヌにキリスト教を宣教するいっぽう、アイヌ語やアイヌの民俗、宗教についての研究を行いました。伊達市に生まれたアイヌ女性、向井八重子を養女にしてもいます。
 八重子たちは彼を記念し、1937年、伊達市有珠町に有珠山の噴石で作られた「バチラー夫妻記念堂」という教会堂を建てています。

 あと、有珠山とは関係ないですけど、前掲したアイヌ出身の学者・知里真志保の姉、幸恵(ゆきえ。1903-1922)は19年の短い生涯の中で『アイヌ神謡集』という書物をまとめています。その彼女の日記にはキリスト教に心惹かれ、教会に通っていたという記述が見えますし、ちょくちょく聖書の引用が行われていたりして。

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 すっごくざっくり情報をまとめました。半分以上は自分のためです。文章が変かもしれないけど見直す時間はないので……適当にスルーしてあげてください。考察や薄い本にご活用くださいませ。
 あと過去の考察については正直、忘れていただけると助かります。