合同合宿後に和は咲の家に行き、咲の料理を食べたことがあって個人的には美味しくて好きな味だと思っています。」dreamscape19.12.22


 合宿の帰り道を、いつものように並んで歩く。次の曲がり角で和ちゃんとはお別れ。勇気を出すならーー今しかない。

 咲は唾を飲み込んだ。息を吸って、吐く。気持ちを落ち着けて、そして声を絞り出す。

「和ちゃん」

「なんですか?」

 彼女は明るい色の髪を揺らして、こちらに笑顔を向ける。

「あのーーもし今日そんなに疲れていなくて、このあと予定がなくて、それで、嫌じゃなければ、なんだけど。うちに寄っていかない?」

「咲さんの、家に?」

  一瞬真顔に戻った和ちゃんの表情、その変化を窺う。卓を囲み、感情をぶつけ合い、誰にも言えなかったことを話し、合宿で一緒に過ごし、県予選の控え室で寄り添って眠り、そして合同合宿でも一緒にーーそんなふうに長い時間を過ごしてきたはずなのに、すごく怖い。当然だ、友達を家に誘うのなんて初めてなのだから。親しい友達などあまりいなかったし、京ちゃんはハンドボール部が忙しくて帰り道が一緒になることはなかった。

 でもーーと咲は思う。思いきって声をかけてみたら、こたえてくれたのかもしれない。本性を暴かれるのが怖くて、生活空間をだれかと分かち合うことを避けてきたのは、自分だったのかも。

 麻雀にもう一度向き合うことを決めた。今までどおり本は読むけど、顔をあげてきちんと人と話すことにした。原村さんを、和ちゃんって呼んでみることにした。

 これは、つぎの一歩だ。

 和ちゃんがこちらを見つめる。そして、にこりと笑った。

「ご招待ありがとうございます、咲さん」