昔、外信のディレクターをしていた時、造幣局へ取材に行きました。「日本の紙幣の原料にマニラ麻が使われているんだよ」という、マニラ支局からのレポートの日本側の素材を集めに行ったのです。お金を印刷しているところを見るのは不思議な気分でした。「そうだよね。お金も印刷するんだよね。新聞を印刷してるみたい」なんて思っていました。裁断時の「キュイン」(文字で表現しにくい音だけど)みたいな音が印象的で、「今のキュインで5000万円できたのか」とか思ったり。で、途中で見たのがお金の山。20億円。1万円札1000枚で10センチ。それを5山横に並べ、ピラミッド状に積むと1億。それが10山2列で20億。何枚あるんだ…。20万枚。焼きたてパンみたいに並んでいます。

不思議です。一生働いても手にする事のないお金が1分くらいキュインしてると出来る(って、印刷工程はもっとあるわけですが)。というか、生きるためにお金は必要だけど、そのお金を稼ぐ事に振り回されて生きるって、どういう事なんだろう…。地球にはお金より命が先に存在していた事は間違いないわけで…。

目の前のテーブルに積まれた20億円を見ていて、そんな気がしました。