「映画」としてどうなのか分かりません。「アトラクション」としてどうなのか分かりません。

でも、これを映画館で上映できる映像作品に仕上げてくれた大勢の人達に感謝します。

3Dというギミックはありますが、CGは特に無し。どうやら私はアナログをリアリティと認識する人間のようで、本物っぽいシャープなリアリティ満載の最近のCG多用作品は「映画」として認識しにくいようです。

「ジュラシック・パーク」は大丈夫。「ツイスター」も大丈夫。案外「マトリックス」も大丈夫(作品の世界そのものがデジタルだからかな)。「スター・ウォーズEP1」は微妙。「タイタニック」はOK。「ハリー・ポッター」からダメになったかな…。「アバター」は苦手。「シャーロック・ホームズ(ガイ・リッチー監督版)」は2作とも所々OK&所々ダメ。「猿の惑星 創世記」はOK。「リンカーン/秘密の書」になるとクライマックスの列車チェイスが興ざめしてしまって、「シャーロック・ホームズの素敵な挑戦」の列車チェイスで脳内補完していました。もっと言うとキートンの「大列車追跡」の方がワクワクします。どれも、あくまでCGに関しての話です。(3Dも関係なく。)とにかく不満はあっても、それはそれとして作品を楽しんでいるので、問題はないですが。

で、この作品の場合、CGではなく肉体が頑張っているので素晴らしい!ワクワクし、ニコニコしながら見ました。シルク・ドゥ・ソレイユに関しては舞台裏などを過去に少し翻訳してきた事もあり、周辺情報があり、期待や予想がありました。その全てがこの作品を楽しむのにプラスに作用しました。モントリオールにある本部の人達。ラスベガスのBeatles Loveの公演に関わる人達。統一感がありながら個性的なメイクを仕上げていくプロセス…。

空中が水中になり、水中が宇宙になる。色々な見どころがある上に、超人(&鳥人)達の超絶演技。

バレエでも新体操でも京劇でもなく、何だか分からないですが、人が飛ぶと宇宙が見えます。

人間にとって最も重いのが「重力」なのだと実感します。蚊でも飛べるのに人間は飛べない。この作品の中では、そんな人間達が、かなり飛びます。

宇宙からは遠い地面から数メートル。せいぜい十数メートルの高さですが、重力から解放され、単なるジャンプより長く宙を飛んだり歩いたり、色々します。地上すれすれの宇宙遊泳。

それでも宇宙遊泳なのです。それを最新の技術が遠慮気味にサポートして映像として仕上げてくれた。ああうれしい。

と思いながら鑑賞していて、前に訳した「ホフマン物語」を思い出しました。あの作品を映像化した人達が、この作品を見たら何と言うのかな、と。きっと感動し、祝福するんじゃないかな。60年ほど前に彼らが目指したかったものが、この作品に近い気がしました。

本物のサーカスも、もちろん素晴らしいですが、いつまでも残る映像としてここまで完成したものになったのは感動ものです。映像は映像でも作り手のこだわりは本物だから。