

文学のおくりものー昌文社
針鼠の本棚にはいくつかのシリーズ物がはいっているが、番頭が大学の頃出版され始めた昌文社の「文学のおくりもの」は、古典でもあり、だけど肩肘を張らないで、人の一生の一場面を切り取った、読んだあとにほっこり後味が長引くいい話ばかり集めている。いい作家たち、いい訳者たち、それにいい挿絵の本である。
1971年から1980年まで、四期、28冊出版され、古本屋などで全て揃えた。一番最初の作品「タンポポのお酒」はレイ・ブラッドベリーである。ブラッドベリーはSF作家の中で一番好きだったこともあり、このシリーズが目に留まった。二期の最初も「ハロウィーンがやってきた」でブラッドベリーである。イタロ・カルヴィーノ、ジャン・コー、ナット・フェンホス、などこのシリーズで出会った作家たちはたくさんいる。
とても気に言っていた証拠に、全ての本に作ったばかりの蔵書印をおしてしまった。今では蔵書印を押すなどという本に対する破壊的な行為はしない。若気のいたりだが、自分だけのもの、手放したくないという当時の気持ちのあらわれでもある。本は世の中に出回ったほうがいい、墓場まではもっていけない。あたりまえのことを今頃気がついて蔵書を整理しているのだが、蔵書印があると読む人によっては気持ちの悪いものだろう。
一方で、売れないのならもう一度読み見返しをするかと思えたことは、蔵書印のおかげでもあるかもしれない。
ちょっと似たようなシリーズとして、早川書房の「異色作家短編集」があったが、全部てばなしてしまった。短編好きな筆者には、あれも惜しいことではあった。
このシリーズの表紙は一見コンピューター的モダンなデザインだが落ち着いていてとてもいい。ブックデザインは国東照幸である。タイポグラフィストといってよいのであろう。シリーズ全28冊並べてみるととても面白い景色になった。
さらに、本の中の挿絵がいい。絵を描いているのは当時先端を行く感覚派の人たちだ。それを見るだけでも楽しい本である。
昌文社はサイのマークで有名である。サイのイラストは装丁家の平野甲賀だそうで、ただなぜサイなのかということに関してはわかっていない。ネットには社長がサイに似ていたからじゃないかという面白いことも書かれている。それだけで宣伝になる。このサイのマークは1983年からで、1971年から1980年にかけて出版された「文学のおくりもの」にはサイのマークはない。このシリーズにサイのマークは似合わないような気がする。
ともあれ、読んだのは最初の頃のものだけなので、棺桶に入るまで古書店には売らず、時々本棚から引き出して読もうと思っている。
以下のブログ等もあります。
漫画、イラストのブログ
「アホラ サロン」
四コマ漫画「コロニャン」、前頭虫語録、アホラ画廊 掲載
http://hedgehog0808-ahora.blog.jp/
星空文庫
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茸小説 :作者(草片文庫)https://slib.net/a/23111/
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