June 09, 2007

バックナンバー2006:対三菱水島FC戦@栃木SC通信

左サイドバック高野は空いていた縦のスペースへとパスを送る。弾かれたように飛び出したのは途中出場の茅島だった。躊躇なく縦へと仕掛ける。

栃木SCのスピードに乗った攻撃に対し、三菱水島FC(三菱水島)のDF陣は後手に回る。終盤に差し掛かり蓄積した疲労が出足を鈍らせた。後方から加速してゴール前に突っ込んできた交代出場の永井を掴まえきれなかった。

DFをあっさりと持ち前のスピードで振り切った永井。茅島の左からのクロスをヘディングで突き刺した。豪快に。

後半41分、先制点にして値千金の決勝弾が決まった。

「前半0―0で(折り返し)そのまま終わってしまうのかな」と思った高橋監督だが、「カヤ(茅島)、永井の切り札で1点を取って勝ち切ろうというプラン」が面白いようにはまった。最終戦、しかもホームでの試合を劇的な勝利で飾ることができた。

戦況を読み交代カードを切る高橋監督の采配も見事だが、その期待に応える選手もまた素晴らしい。互いの深い信頼関係が勝機を手繰ったと言える。

Jチーム対策として練り上げた、守備的な4バックをベースに失点を先に許さず、数少ない好機をゴールへと繋げるサッカーは確立されたと言っていいだろう。永井、茅島の投入で攻撃モードに切り替え、一気に押し切ってしまうカタチは栃木SCの“必勝パターン”となった。中断期間を経て取り組んできた「後期終盤戦用サッカー」の典型的な試合だった。

「4バックを敷き相手に攻撃をさせて、疲れたところで後半勝負もあり」

高橋監督は三菱水島戦と同じく1―0で勝った流通経済大学戦後に、4―4―2(4―5―1)の手応えを口にした。ひとつの試みは結実した。

さて、今季、栃木SCの引き分けは昨年同様に9だった。“ドローキング”と揶揄された昨シーズンの1位(15チーム中)を脱したものの、トップ3の引き分け数が今年は4.5、昨年3.6だったことを考えれば多い。この数字から透けて見えてくることは、選手と監督が口を揃えた「勝ちきれない」、「取りこぼしが多い」ということになる。

キャプテン横山は「失点数を減らすこと。1―0で勝てるチームを作り上げたい」と来季の抱負を語った。失点数は少ないに越したことはない。ただ、試合数が4増加したにもかかわらず、失点数は32から35と僅かに3増えただけである。ところが、得点数は60から50と10も減少した。こちらの方が問題であり、むしろ取り組むべき課題である。

「いい試合をするが点が取れない。得点数が少ない」

今季を振り返り不足している部分は、と問われた際に、高橋監督が挙げたのはやはり得点力だった。だが、栃木SCには20試合で14ゴールを挙げた若林(シーズン途中で大宮アルディージャに移籍)のような絶対的なストライカーは存在しない。エース吉田賢太郎が居るが、佐川急便東京SCの躍進を支えた大久保ほど爆発的な得点力は望めない。来季の補強は更にままならない。コンビネーションを高めることで補える部分もあるが、それにも限界がある。

だからといって、優勝争いが出来ない訳ではない。好例がある。昨シーズンのJFLを制し、J2昇格元年に9位という好成績を残した愛媛FCである。得点力には乏しいが、安定した守備を売りにしている。JFLでも得点は5位だったが、失点は1位タイだった。2桁得点をマークしたのは、ひとりだけだった。

人材に制限があり、大幅な戦力補強が非現実的な以上、来シーズン栃木SCが目指すのは「アグレッシブでスピーディな攻撃的サッカー」よりも、退屈でブーイングを浴びることを覚悟の上で「いい守備からいい攻撃に繋げる」結果重視のサッカーということになる。

堀田は言う。「1―0で勝ち切る。1―0で勝てるのが本当に強いチーム」。優勝を本気で狙うならば、殴り合い上等の魅力を兼ね備えた3―6―1に別れを告げ、ある程度の計算が成り立つ4―5―1の完成度を高める必要があり、我々はそれを受け入れる準備をしなくてはならないだろう。器用に両方を使いこなせれば良いが、それは困難だ。

今季作り上げたベースに来季どれだけの上乗せができるのか。オフの過ごし方が重要となってくる。新体制になるのか、高橋体制が継続されるのかは定かではないが、既に来季へ向けての戦いは始まっている。勝利の歓喜に浴するのは今日だけ。明日からは優勝を見据えた日々が待ち受けている。休んでいる暇などない。


前節、アウェイのYKK戦で連勝が3で止まった栃木SCは、後期に入り栃木県グリーンスタジアムでは2勝3敗1分けと負け越している。それだけに、三菱水島を迎えたホーム&リーグ最終戦では勝利を観衆に届け、星を五分に戻したいところ。

「ミックスして最強のメンバーを組む」と公言した高橋監督が選んだスタメンは次の通り。GK原、4バックに高野、横山、照井、遠藤、中盤の底に堀田、種倉、左に只木、右に久保田が入り、ワントップ吉田賢太郎の下に西川が控えた。4―4―2の変形である4―5―1を選択した。

元栃木SCの石川大がベンチ入りをした三菱水島も、システムは4―5―1だった。

「最終戦だったので上がっちゃいました。なんとか攻撃の方でチャンスを作れるように。前半は相手が引いていたので僕が上がればチャンスになるかな、と」

原則的に禁止されているオーバーラップを左サイドバックの高野は仕掛けた。3分にはパス交換から吉田賢太郎のクロスを引き出し、13分には自ら上げたクロスを吉田賢太郎がヘディングシュートした。「あまり効果的ではなかったですね」と謙遜したが、「個人の判断」でリスクを冒した姿勢は尊かった。

だが、高野のオーバーラップは諸刃の剣となってしまう。右のウイング気味に構えた菅にサイドを2度も崩されてしまう。照井のシュートブロックもあり大事には至らなかったが、留守しがちだったスペースを狙われた。

「前期とは違った。パスを繋ぎ、サイドチェンジを織り交ぜ、オーバーラップをしてきたことには戸惑わなかった」としながらも「組織的だった」とは横山。最後尾の4人が統率のとれたラインを形成し、中盤の選手はスペースを消しつつ、前線からプレスを掛けて来た。トップの松岡大輔、トップ下の高松、右の菅は豊富な運動量で栃木SCを苦しめた。15分にはカウンターから高松にタメを作られ、背後から回り込んだ川口にシュートを食らう。結果的にはサイドネットを突いたが肝を冷された。

吉田賢太郎のクロスから西川のボレーシュート、久保田の低い弾道のミドルと好機を作った栃木SCだが、段々と失速していく。

「スペースがなかった。ポゼッションをしたが攻めあぐんだ。パスがずれてしまいフィニッシュまで行けなかった」(高橋監督)

ゴール前で複数が絡んでダイレクトパスを繰り出し、久保田がサイドチェンジを行い、一旦サイドに預けてから裏を突くなど、工夫が見られたが、あまりにも綺麗に崩そうとする意識が強かった。そのためにフィニッシュまで持ち込むことができなかった。

シュートが打てない時間が続くと、流れは一層悪くなる。足元へのパスが目立ち、尽くパスカットされた。受け手と出し手の呼吸のズレも目に付くようになる。パスがワンタイミング遅れたことで、三菱水島は容易に守備を整えることができた。拙攻が繰り返される。スタンドのフラストレーションは高まっていった。

インターセプトから久保田が得意の左足一閃。が、ミドルシュートはポストに嫌われ、リバウンドからゴールを狙った西川のシュートもラインギリギリでGK永冨にセーブされてしまう。後半立ち上がりの好機を逸する。すると、栃木SCの攻撃はパタリと止んだ。

「我慢すべきところを1発で行ってしまった。個人のミス」と悔いた高野。左サイドを13、14分と攻略され川口、渡辺にシュートされてしまう。相手のシュート精度の低さに救われるも、軽い守備はいただけなかった。

そろそろ、だろう。背番号25の出番を待ちわびるスタンドがざわつき始めた。後半15分、西川アウト、永井イン。永井は左に配され、只木は中央に回った。永井は登場すると間もなく挨拶代わりに突破からのシュートを披露する。これで悪しき流れは払拭された。

息を吹き返した栃木SCは素早い攻守の切り替えが可能になる。永井はド派手なパフォーマンスが災いし、対面の三宅に縦を切られてしまう。持ち味が半減する。しかし、中央に只木が入ったことで起点が構築され、イニシアチブは栃木SCが握ったままだった。その只木。スルーパスに抜け出し千載一遇の好機を迎える。完璧に1点もののシーンだったが、シュートタイミングを逃したことでDFに阻止される。

手にした流れの中でゴールを奪いたい栃木SCは、久保田を下げて茅島を投入し、更に攻撃力を強化した。「自分の間合いが取れるようになってきた」茅島はFKのクイックリスタートから飛び出す。前方を見遣り低いアーリークロスを入れた。これに爆走してきた永井があわせる。先ほどの只木と同様にゴールを割っても不思議ではなかったが、大きく吹かしてしまう。これも永井の魅力のひとつ、といってしまえばそれまでなのだが、決定的だっただけに溜息が漏れた。

絶好機を潰しても下を向かないのが永井と茅島の特徴でもある。永井はミドルを、茅島はえぐってからクロスを佐野に供給するなど持ち味を発揮。三菱水島ゴールを脅かした。

そして、迎えた41分。高野の縦パスを受けた茅島が上げたクロスから永井がヘディングシュートを叩き込んだ。サポーター席の真下まで駆け寄った永井。胸を叩くアピールでサポーターを刺激した。

「絶対に決めたかった」強い気持ちが、失敗をした状況と酷似したシーンでも永井を後押しした。

リードした栃木SCは石川大に恩返しをされそうになり、松岡大輔にもシュートされるが体を張ったDFで凌いだ。

ファイナルスコア1―0。僅差ではあるが大事な最終戦で栃木SCは勝利を収めた。会見では厳しい表情を崩さなかった高橋監督だったが、試合後のセレモニーでは「大勢のサポーター、観衆に勝利をプレゼントできてよかった」と胸を撫で下ろしていた。

引き続き開催されたサイン会は大盛況だった。昨シーズンは雨にたたられ早々にお開きとなったが、今シーズンは短いコンコースには収まりきらないほどの長蛇の列が形成された。スタッフは対応に大慌て。嬉しい悲鳴が聞こえてきた。マスコミ関係者も選手のコメントが取れないほど賑わった。

J2準加盟申請にあたり資金、環境等の問題を抱える栃木SCであるが、県民の認知度を高め、更なる支援を受け、ファンとの距離を縮めるためにも、毎回とは言わないまでも年に数回は最終戦のようなサイン会や握手会を開けないのだろうか(足利市開催の際には必ず行われる)。地道な活動であるが、凄く大切な、欠かすことのできないイベントであることを再認識させられた。グリーンスタジアムとの兼ね合いもあるのだろうが、僅かな時間でもファンと選手が接する機会を増やしてもらいたい。サインをする選手、それをもらう子供達の無邪気な笑顔が忘れられないから。

JFL後期第17節 栃木SC1―0三菱水島FC 栃木県グリーンスタジアム 観衆3252人

〈栃木SC〉GK原、DF高野、横山、照井、遠藤、MF堀田、久保田(→茅島)、種倉、只木、FW西川(→永井)、吉田賢太郎(→佐野)

〈三菱水島FC〉GK永冨、DF三宅、荒井、野村、松岡宏晃、MF渡辺、山下、菅(→石川大)、高松、川口(→檜垣)、FW松岡大輔



hehe0821 at 01:07コメント(0)トラックバック(1)JFL☆栃木SC☆ | JFL☆栃木SC☆ 

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