さてお待ちかね?のスタージャックエクスプレス第一話のその2です。
はじめての方はその1をお読み下さいね。
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説明しておかなければなるまい。『スタージャックエクスプレス』とは、フリーの映画やテレビ編集のスペシャリストが集まって作られた特殊(スペシャル)なビデオ製作チーム。各個人の特殊な撮影・編集能力に寄って、通常では困難な撮影や編集をハイクオリティに、しかも信じられない短い期間でやってのけるチームの名前なのだ。別名『銀河特急便』とも言われている。
「ごめんさい」と泣きながら謝る今回のヒロインに選ばれた薫。慰める数人のスタッフだが、今までの苦労を写真誌のスクープに寄って水の泡にされたスタッフは内心呆れ気味。
しかもそのカリスマスタイリストの過去の歴史を知っているからなおさらだ。
いつの間にかヘイジも傍からいなくなっている。
冷めた雰囲気のスタジオを尾田プロデューサーがビデオテープを持ち退出する、食い下がる様に前野監督が色々言ってるが、無視しドアを開ける。
そこへ黒塗りのワンボックスカー(シボレーアストロの特注車)が急ブレーキで土煙を上げながら止まる。
運転席の窓が電動で開く。そこには無精ひげを蓄えた、いかにも無骨そうな男、公文伝八がいた。この個性派集団をまとめる銀河特急便の社長なのである。
尾田が「コレよ。お願い」とテープを運転席の公文に渡す。
「『銀河特急便』(スタージャックエクスプレス)ですね」と受け取る公文
「スポンサーからの変更点は伝えてあるわね。ヨロシク」
公文は座席の間から後部座席に座ってる男へテープを渡す。
そして後部座席のドアがスライドし、呆然としてる前野監督が無理やり車に押し込められる。
「君らが…スタージャックエクスプレス…」前野が車の中で見たのは…
「いつもお世話になってまーす」先ほどまで前野監督の下で雑用をしていたヘイジだ。本当は消沈した薫の傍に居たかったのだが、ここへ戻らなければならなかったのである。
他にも番組のテロップやCGを制作している今年入社したばかりの今井慎平。
五分もあればその動画にあった最高のBGMを作り上げる作曲もこなす音響の斉藤玲。
女性を撮らせたら天下一品の腕を持つと噂される、AVあがりのスケベカメラマン大谷一樹。彼は自分が撮影したすべてのタイムコードを覚えており、オッケーテイクの動画をプレビュー(視聴確認)しなくても探し出す事ができるのだ。
そして都内の道ならあらゆる道を知り尽くしどんな交通状態でも最短の道を検索できるカーナビ要らずの運転手兼雑用係兼社長の公文伝八。前野にとって下請けとして仕事してる顔なじみのメンバーであった。
日頃は目立たないが、特殊技能をもった彼らは、特急便依頼の時にだけ、スタージャックエクスプレスの顔へと変わるのである。
「コレを付けて」ヘイジが監督に前野に無理やりヘッドセット(ヘルメットにメガネが付いてるSFチックな機械)を付けられる。「な…何を」
何が行われてるかわからぬままヘッドセットを付けられ、強引にドアを閉められ、車は急発進していく。
ここは新EDOTV(エドティーヴィ)テレビ局前だ
急ブレーキと共に先ほどのでかい車が玄関前に止まる。何事かとあわてて警備員が出てきて車へ駆け寄る。
横のスライドドアが開き、その中から監督がとぼとぼとした足取りで車から降りる。悪い夢を見た後の倒れそうになった前野を警備員があわてて抱きかかえる。
公文社長は「はいお待ち」顔の横に指を立ててチャオの形。まるで出前でも届けたような軽い仕草だ。そしてギアをドライブに入れ勢い良く車を出発させる。
この騒ぎに玄関近くにいたテレビ関係者が集まり「何事か?」と、心配そうに取り囲む。
「前野さんこの度は大変でしたね。突然の変更でどうします?。放送日まで時間が無いですよ。少なくとも明日までにはなんらかの形にしないと」
「どう考えても間に合いません!いったん総集編か何か入れてごまかしますか?」
薫の不祥事、スポンサーに寄る変更の意向はテレビ局全体に伝わっていた。皆心配そうに集まってくる。
「済んだ」とポツリと前野
「え?なにが」
「もう編集は終わったよ。」とテープを出す。
「あれは…」と言いながら監督は車に載ってテレビ局に付くまでの出来事を語りだす。
真っ暗に仕切られた車の中の編集室。多くの機材がならんでいる。その中で点滅する機材のメーターやLEDだけが見える。まるで宇宙空間にいる様。
「ナンだこのヘンな機械は」と前野
「一緒にスタージャックエクスプレスの宇宙船に載って亜空間へ行くのです」SF映画の宇宙船に載ってる艦長の様な、いやB級なパルプ誌のヒーローになっようなヘイジ口調だ。
「亜空間て何を言ってるんだ」
「フフフ」と不気味に笑うヘイジ。「銀河特急便イグニッション…テイクオフ!」と言いながらダイヤルを押しながら回すスイッチを入れる。
そうするとヘッドセットの画面にワープしてるような映像が写しだされる。
しばらくした後その空間の奥からたくさんの撮影が終わった動画の一部が現れてくる。
このワンボックスの中にポスプロ(撮影後編集)のシステムが詰め込まれているのである。いろんな機械がワンボックスカーの隠し天井から降りてくる。意識は機械を操作してるのではなく、コンピューターが作り上げた空間の中で作業をしている。
普通はどんなに早くても編集室に撮影済みテープをもって帰ってからの編集になるが、銀河特急便の彼らはスタジオからテレビ局へ帰る時間をも利用して編集の手間を減らすシステムを作り上げていたのだ。
ようやく状況が掴めだし自問しながら戸惑う前野をよそに、ものすごい速度でバーチャルな動画を直接手で掴むイメージで編集して行くヘイジ。
「これはNGカットですね」素手で画面を引っ張ってくる。要らないカットは実生活のそれの様にゴミ箱に丸めてポイだ。当然やり直しになるアンドゥはそのコミ箱に捨てた動画を拾う事になる。保留の動画は手の届くどの空間でも良い。ピンチ(クリップ)やピンで止めて置く。マウスやキーボードを扱う編集スピードとはまるでかけ離れたダイレクトな感性でそこにある動画を扱っていくのだ。
前野はコンピューターで作られたサイバースペースの亜空間に立ちすくみながら編集作業をポツンと見ている。
やっと空間にも慣れたのか「あぁこの2つ後のシーンがオッケーテイクだ」思い出した様にヘイジに告げる。
「後は、シンペーに」
「ここをこうやって…」コンピューターの特殊効果を専門に扱ってる慎平がこの亜空間に入り込んできた。『SNOWEFFECT』と書かれてる箱(フォルダ)に手を入れ、紙吹雪を散らすように手を開き、まるでマジックの様に紙吹雪を出す。その吹雪がヘイジの前の編集中の画面に掛かると画面の中にリアルな吹雪が吹く。紙ふぶきがマジックの様に本当の粉吹雪へと変わっていく
本来なら特殊効果にはとてつも無くCGの計算時間(レンダリング)がかかる。細かい雪のシーンならなおさらだ。しかしヘイジと慎平で編集専用にOSから作られた銀河特急便のこのシステム。スパーコンピューターを遥かに凌駕する、動画処理専門のエンジンを積んだゲームコンピューターを並列に並べ処理し、どんな複雑な合成でもレンダリング時間ゼロのリアルタイムで動画に効果を付けて行く。本来なら数日かかる処理を今見ている目の前で終わらせてしまった。
公文の知ってるどのコースを使ってもテレビ局までもう少し時間がかかりそうだ。「まだ時間が余ってますね。もし以前撮影していた結婚後のシーンがあれば入れ込めますよ。もう仕上げちゃいます?」とヘイジ
「あぁだったらやって見たい事がある」と、今までの編集を見て思いついたのか前野からの提案があった。
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長文お読みくださりありがとうございました。
無事放送できるのか、監督からの提案とは?
次回1話最終回のその3をお待ち下さいね
はじめての方はその1をお読み下さいね。
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説明しておかなければなるまい。『スタージャックエクスプレス』とは、フリーの映画やテレビ編集のスペシャリストが集まって作られた特殊(スペシャル)なビデオ製作チーム。各個人の特殊な撮影・編集能力に寄って、通常では困難な撮影や編集をハイクオリティに、しかも信じられない短い期間でやってのけるチームの名前なのだ。別名『銀河特急便』とも言われている。
「ごめんさい」と泣きながら謝る今回のヒロインに選ばれた薫。慰める数人のスタッフだが、今までの苦労を写真誌のスクープに寄って水の泡にされたスタッフは内心呆れ気味。
しかもそのカリスマスタイリストの過去の歴史を知っているからなおさらだ。
いつの間にかヘイジも傍からいなくなっている。
冷めた雰囲気のスタジオを尾田プロデューサーがビデオテープを持ち退出する、食い下がる様に前野監督が色々言ってるが、無視しドアを開ける。
そこへ黒塗りのワンボックスカー(シボレーアストロの特注車)が急ブレーキで土煙を上げながら止まる。
運転席の窓が電動で開く。そこには無精ひげを蓄えた、いかにも無骨そうな男、公文伝八がいた。この個性派集団をまとめる銀河特急便の社長なのである。
尾田が「コレよ。お願い」とテープを運転席の公文に渡す。
「『銀河特急便』(スタージャックエクスプレス)ですね」と受け取る公文
「スポンサーからの変更点は伝えてあるわね。ヨロシク」
公文は座席の間から後部座席に座ってる男へテープを渡す。
そして後部座席のドアがスライドし、呆然としてる前野監督が無理やり車に押し込められる。
「君らが…スタージャックエクスプレス…」前野が車の中で見たのは…
「いつもお世話になってまーす」先ほどまで前野監督の下で雑用をしていたヘイジだ。本当は消沈した薫の傍に居たかったのだが、ここへ戻らなければならなかったのである。
他にも番組のテロップやCGを制作している今年入社したばかりの今井慎平。
五分もあればその動画にあった最高のBGMを作り上げる作曲もこなす音響の斉藤玲。
女性を撮らせたら天下一品の腕を持つと噂される、AVあがりのスケベカメラマン大谷一樹。彼は自分が撮影したすべてのタイムコードを覚えており、オッケーテイクの動画をプレビュー(視聴確認)しなくても探し出す事ができるのだ。
そして都内の道ならあらゆる道を知り尽くしどんな交通状態でも最短の道を検索できるカーナビ要らずの運転手兼雑用係兼社長の公文伝八。前野にとって下請けとして仕事してる顔なじみのメンバーであった。
日頃は目立たないが、特殊技能をもった彼らは、特急便依頼の時にだけ、スタージャックエクスプレスの顔へと変わるのである。
「コレを付けて」ヘイジが監督に前野に無理やりヘッドセット(ヘルメットにメガネが付いてるSFチックな機械)を付けられる。「な…何を」
何が行われてるかわからぬままヘッドセットを付けられ、強引にドアを閉められ、車は急発進していく。
ここは新EDOTV(エドティーヴィ)テレビ局前だ
急ブレーキと共に先ほどのでかい車が玄関前に止まる。何事かとあわてて警備員が出てきて車へ駆け寄る。
横のスライドドアが開き、その中から監督がとぼとぼとした足取りで車から降りる。悪い夢を見た後の倒れそうになった前野を警備員があわてて抱きかかえる。
公文社長は「はいお待ち」顔の横に指を立ててチャオの形。まるで出前でも届けたような軽い仕草だ。そしてギアをドライブに入れ勢い良く車を出発させる。
この騒ぎに玄関近くにいたテレビ関係者が集まり「何事か?」と、心配そうに取り囲む。
「前野さんこの度は大変でしたね。突然の変更でどうします?。放送日まで時間が無いですよ。少なくとも明日までにはなんらかの形にしないと」
「どう考えても間に合いません!いったん総集編か何か入れてごまかしますか?」
薫の不祥事、スポンサーに寄る変更の意向はテレビ局全体に伝わっていた。皆心配そうに集まってくる。
「済んだ」とポツリと前野
「え?なにが」
「もう編集は終わったよ。」とテープを出す。
「あれは…」と言いながら監督は車に載ってテレビ局に付くまでの出来事を語りだす。
真っ暗に仕切られた車の中の編集室。多くの機材がならんでいる。その中で点滅する機材のメーターやLEDだけが見える。まるで宇宙空間にいる様。
「ナンだこのヘンな機械は」と前野
「一緒にスタージャックエクスプレスの宇宙船に載って亜空間へ行くのです」SF映画の宇宙船に載ってる艦長の様な、いやB級なパルプ誌のヒーローになっようなヘイジ口調だ。
「亜空間て何を言ってるんだ」
「フフフ」と不気味に笑うヘイジ。「銀河特急便イグニッション…テイクオフ!」と言いながらダイヤルを押しながら回すスイッチを入れる。
そうするとヘッドセットの画面にワープしてるような映像が写しだされる。
しばらくした後その空間の奥からたくさんの撮影が終わった動画の一部が現れてくる。
このワンボックスの中にポスプロ(撮影後編集)のシステムが詰め込まれているのである。いろんな機械がワンボックスカーの隠し天井から降りてくる。意識は機械を操作してるのではなく、コンピューターが作り上げた空間の中で作業をしている。
普通はどんなに早くても編集室に撮影済みテープをもって帰ってからの編集になるが、銀河特急便の彼らはスタジオからテレビ局へ帰る時間をも利用して編集の手間を減らすシステムを作り上げていたのだ。
ようやく状況が掴めだし自問しながら戸惑う前野をよそに、ものすごい速度でバーチャルな動画を直接手で掴むイメージで編集して行くヘイジ。
「これはNGカットですね」素手で画面を引っ張ってくる。要らないカットは実生活のそれの様にゴミ箱に丸めてポイだ。当然やり直しになるアンドゥはそのコミ箱に捨てた動画を拾う事になる。保留の動画は手の届くどの空間でも良い。ピンチ(クリップ)やピンで止めて置く。マウスやキーボードを扱う編集スピードとはまるでかけ離れたダイレクトな感性でそこにある動画を扱っていくのだ。
前野はコンピューターで作られたサイバースペースの亜空間に立ちすくみながら編集作業をポツンと見ている。
やっと空間にも慣れたのか「あぁこの2つ後のシーンがオッケーテイクだ」思い出した様にヘイジに告げる。
「後は、シンペーに」
「ここをこうやって…」コンピューターの特殊効果を専門に扱ってる慎平がこの亜空間に入り込んできた。『SNOWEFFECT』と書かれてる箱(フォルダ)に手を入れ、紙吹雪を散らすように手を開き、まるでマジックの様に紙吹雪を出す。その吹雪がヘイジの前の編集中の画面に掛かると画面の中にリアルな吹雪が吹く。紙ふぶきがマジックの様に本当の粉吹雪へと変わっていく
本来なら特殊効果にはとてつも無くCGの計算時間(レンダリング)がかかる。細かい雪のシーンならなおさらだ。しかしヘイジと慎平で編集専用にOSから作られた銀河特急便のこのシステム。スパーコンピューターを遥かに凌駕する、動画処理専門のエンジンを積んだゲームコンピューターを並列に並べ処理し、どんな複雑な合成でもレンダリング時間ゼロのリアルタイムで動画に効果を付けて行く。本来なら数日かかる処理を今見ている目の前で終わらせてしまった。
公文の知ってるどのコースを使ってもテレビ局までもう少し時間がかかりそうだ。「まだ時間が余ってますね。もし以前撮影していた結婚後のシーンがあれば入れ込めますよ。もう仕上げちゃいます?」とヘイジ
「あぁだったらやって見たい事がある」と、今までの編集を見て思いついたのか前野からの提案があった。
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長文お読みくださりありがとうございました。
無事放送できるのか、監督からの提案とは?
次回1話最終回のその3をお待ち下さいね