・・・1月30日・文句さんとの特別対談・・・
072
(詳しく…って、が女装してるコトもか?)


…はい。


(小学生の女の子に苛められたってコトもか?)


…はい。


がホームレスだったコトもか?)


あ、それは、とっくに、知ってたようです。


(何でだよ?)


「まあ。それは大変だったわね~。
 
孝さん、ここでは、誰も笑いませんよ。
 ここでは、みんなが、あなたの、味方。
 安心して下さいね。」(祥子)


「…………」


(あんなに綺麗で可愛い女の子達だったのに…。)


(げ?
 もしかして、あの小6の女の子達のコトか!?
 まだ、そんな、タワゴトを言ってるのか!)


は、すっかり
女の人が、信じられなくなっていました。
だから、どんなに優しい言葉をかけられても
耳に入りません。


(あれこれ、混ぜこぜにするな!)


僕にかまうな!…って感じで
若菜の背中にしがみついたまま
うなじに顔をうずめてしまいました。


若菜ちゃんにだけは
 まだ、心を許してるのか。)


何しろ、大親友ですからね~。
しかも、助けにきてくれましたし…。


(特別という訳か。)


「あ、私は
 佐々岡祥子(しょうこ)っていいます。
 今、32歳です。
 祥子ちゃんって呼んでね。」(祥子)


その声に、ふと
若菜と同じような匂いを感じました。
うなじから顔をあげた
ちょっぴり驚いたようにして祥子を見ます。


(幼児特有の鋭敏な感覚か?)


「僕、孝…。あのね、とっても怖かったの…。」


それだけ言うと
また、うなじに顔をうずめて
しくしく、メソメソの、続きです。


(幼いガキにでもなっちまったか?)


「まあ、孝さん。」(祥子)


孝ちゃんって、呼んであげて下さい。」


「え?いいの?」(祥子)


(このお姉さんにしてみりゃ
 は明らかに年上だからな。)


うなじに顔をうずめたまま
が、コックリ、頷きました。


「わ!?震えてるの!?」(祥子)


何げなく触れた祥子が驚いて
の背中をさすってあげました。


(何だって?震えてるのか?)


「相当怖かったようなんです。」


(やれやれ…。)


若菜が、を、ここまで、おぶってきた理由は
3つもあったんです。


ひとつめ。
慣れないハイヒールで、足を痛めてしまった…。


ふたつめ
怖くて怖くて
震えが止まらないので歩けなかった…。


みっつめ
助けられた安心感で脱力して
歩くどころか
立てなくなってしまった…。


でも本当は、4つめの理由があって
実はそれが、一番大きくて…。


(何だ?そりゃ?)


1秒でも、1mmでも
若菜から、離れたくなかったようです。


(うわ。精神的に退行してねえか?)


「あの…済みません。
 トイレ、お借りしても、いいですか?」


「え?どうぞ、どうぞ。
 孝ちゃん、若菜ちゃんが…」(祥子)


「あ…。離れるの、ムリだと思いますよ。
 何しろ私、大親友で、ママなんです。」


「まあ、盛りだくさんなのね、うふふっ…。
 でもね、おんぶしながら、おしっこするのも
 ムリだと思うわよ。」(祥子)


(ご尤も。)


孝ちゃん、若菜ママが、おトイレなんだって。
 背中から降りて、待っていようね。」(祥子)


(うわ。まるで保育園の保母さんだな。)


「………やだ。」


(ガキめ!)


「どうして?」(祥子)


「………若菜ちゃんと、離れたくないの。」


(やれやれ、重症だな。)


「あら。それなら、ちょうど良かったわ。
 祥子ちゃんのトコロに、おいで。
 抱っこしてあげる。」(祥子)


(おいおい、本気かよ?)


「………どうして?」


「だって、祥子ちゃんも
 孝ちゃんのママなんだもん。」(祥子)


(うわ。いきなり、ママが、増えちまったぞ。)


何でもアリですね~(;´д`)


「………ホント?」


「ホントよ。
 祥子ちゃんの、目を見てごらん。
 ね?ウソ言ってないでしょ?」(祥子)


(ホントは、何の説得力もねえのに
 幼いガキ限定で不思議な説得力を発揮する
 【魔法のセリフ】の代表例だぞ。)


「僕、重いよ?」


「平気、平気。
 祥子ちゃんは、若菜ママより、小っちゃいけれど
 とっても力持ちなのよ。」(祥子)


半袖を捲りあげて
細い腕で力コブを作って微笑みます。
力コブなんて、全然出ていないのに
何とも得意げに微笑んでみせます。


不思議な親近感に騙されて
は、祥子ちゃんに、抱っこされました。


「わ。何か、奇跡を見る感じ…。
 さすがは、祥子さんですね。」


(確かに、凄え。
 こんな短時間に手懐けちまうなんて
 匠の技だな。)


「それじゃあ、ちょっと、お願いしますね。」


若菜は、トイレに飛び込みました。
本気で、おしっこ限界だったそうです。


(ははは…。)


「うわぁ~、こんなに震えて…。
 可哀想に…。もう大丈夫よ。」(祥子)


確かに若菜よりも小さい感がありますが
ふっくらふんわりと受け止められて
とっても良い匂いがします。


ああ、何と、心地よいのでしょう。


(浮気者だな。)


「!!」


(何だよ?)


恐怖で5歳児並の精神年齢にまで
弱体化したからこそ、判るコトもあるようです。


祥子ちゃん
 祥子ちゃんは、祥子ちゃんなの?」


(おいおい。質問が意味不明だぞ。)


「せ~かいっ。
 祥子ちゃんは、祥子ちゃんなのよ。」(祥子)


(…通じてるらしい。)


祥子ちゃんは、ママなの?」


(今度は、質問らしい質問だが…。)


「それも、せ~かいっ。
 祥子ちゃんは、ママなのよ。」(祥子)


(何か、安直過ぎねえか?)


ところがですね~。


脆弱な5歳児同然となったには
誰が味方で誰が敵なのかを
瞬時に確実に見抜く能力みたいなモノが
とっても敏感になってまして
今の会話だけで、祥子
若菜並みに信頼してしまったようです。


(どっちも安直で
 ちょうどバランスとれてる訳か。)


「ふぅ~。危なかったですぅ~。」


だから、若菜がトイレから出た時には
もう、は、祥子から
離れられなくなっていました。


「あ、若菜ちゃ~ん。
 今日はもう、診療時間が終わったので
 入口の扉を、閉めてきてくれる?」(祥子)


「はぁ~い。」


(随分と気軽な間柄なんだな。)


「そうか、今日はもう、お仕舞いか。」(恭平)


その声を聞いて
診察室から、大きな大きな大男が現れました。


(熊か!?熊なのか!?)


驚いたが、更に強く、祥子に、しがみつきます。


「あ、あら?
 んもう、ダメじゃない。
 いきなり現れたら怖いでしょ。」(祥子)


「おや。怖がらせたか。済まんな。」(恭平)


「ひっく…。えっく…。ふぇ~ん。」


何というコトでしょう。
突然現れた大男の恐怖に
メソメソ泣きが、大泣きに変わってしまいました。


(情けねえなあ。
 ただ現れただけで叱られて泣かれたこの男も
 気の毒になあ。)


だって、ホントに大きいんです。
ゴリラか、怪獣か…。


(確かに巨大だな。
 身長が高い
若菜ちゃんが、小さく見えるぞ。)


「大丈夫。大丈夫よ。
 孝ちゃんは、祥子ちゃんが
 守ってあげるからね。」(祥子)


祥子は、泣いているを、更に強く抱きしめて
頬と頬を寄せて、愛しそうにしました。


(まるで本当の母子だな。)


「孝、俺を見れるかな?」(恭平)


怪獣が吠えました。


(うわ。)


…と、思ったのですが
よくよく聞けば
何と優しくて柔らかな声なのでしょう。


(何だ、そうか。)


「孝、俺が、そんなに怖いかな?」(恭平)


そんなふうに言われると悔しいので
怖いけれど、必死に我慢します。
それに何故か
怖がっていたら、失礼な気がしたからです。


ホームレスというだけで
バカにされて、ゴミ扱いされて、蔑まれたです。
大きな身体というだけで
怖がって縮こまっていたら
も、そんなつまらない人達に
仲間入りしたコトになると思ったからです。


(ガキのように泣いてる割にゃ
 マトモなコト考えるじゃねえか。)


抱っこされたままのが、大男に、振り向きます。
でもまだ祥子に、ピッタリしがみついたままです。
祥子の優しい手も、を守ってくれています。


(でもさあ
 もしかしたら、この2人、夫婦だろ?)


さすがは文句さんですね~。
ハナシが早いです。
恭平と
祥子は夫婦さんでした。


「俺は、佐々岡恭平。42歳。
 この歯医者さんのオヤジをしてるよ。」(恭平)


(随分と歳の離れた夫婦だな。)


な、何て優しい声なのでしょう。
しかも、頭の中に心の中に、直接響くような
不思議な魅力を纏っています。


女の人からは到底得られない
底知れぬ安心感に驚いた
恭平と名乗った大男に
とっても興味が湧いてきました。


自分から降りようとしているのを
祥子が敏感に察知して
を、降ろしてあげます。


痛い両足、震える両脚…。
まるで、今初めて歩いた赤ん坊のような足取りで
たどたどしく、一歩、また一歩…。


でも、自身は、決して難儀していません。
まるで、大きな安心に吸い寄せられるかのように
無心になって恭平に近づいていきます。


手を貸さず、じっと待ち構えていた恭平
が、飛び込みました。


「よおし、よく来たぞ。」(恭平)


幼い子供にするかのように
ひとたび、高い高いをしてから
を抱っこしてくれました。


ああ、何という安心感なのでしょう。
すべてを許され、すべてを認められ
すべてを守られた気分になります。


「震えを止めてあげるよ。」(恭平)


でも、もう、止まってました。


強く優しく抱きしめられます。
まるで【濃厚な生命の海】
優しく沈んだ気分です。


(カリスマ…か。
 この
恭平という男
 強くて個性的なカリスマ性を
 纏っているんだな。)


「…あ。」


若菜が驚きます。
やっぱり…といった表情で
祥子が微笑んでいます。


の顔が、見る間に、安らいでいったのです。


「え!?何で何で!?」


(あはは…。
 若菜ちゃんの頭の上に
 ?マークがいくつも浮かんでねえか?)


「あのね、あのね…けほ、こほ…。」


震えがとまって、心が落ち着いた
恭平の腕の中で、何かを話そうと一生懸命です。


「落ち着いて。落ち着いて。
 …そう。ゆっくり息をしよう。」(恭平)


言われるままに深呼吸しました。
【濃厚な生命の海】が、肺の中に満たされて
身体中を癒すようです。


(すんごい【心霊の癒し】だな。)


「あのね、僕ね、もうね…。」


どうしてでしょう?
新しい涙が溢れ出してきます。
言葉が、遮られます。


「…うん。…うん。
 5時間かかっても、10時間かかってもいいぞ。
 俺は、じっくり、待ってるから
 ゆっくり喋ろう。」(恭平)


「あ…。ははは…。」


まるでそれが
世界一おもしろい冗談のように聞こえて
は、思わず笑ってしまいました。


(いちいち心霊をくすぐられるんだろう。)


そういえば、孝は
くすぐられるのが弱点ですものね。


(い、いや。
 この場合…
 それとは、ちょっと、違うと思うぜ。)


「ははは…。」(恭平)


一緒になって笑ってくれる近い顔が
こんなにも嬉しいのは、何故なのでしょう?


(それにしても、この男、何者なんだ?)


あれ?忘れちゃいました?
歯医者さんです。


(それは判ってらいっ。)


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