・・・1月30日・文句さんとの特別対談・・・
072
「え~ん!。・゚(゜´Д`゜)゚・。」(さくら)


「え~ん!。・゚(゜´Д`゜)゚・。」(すみれ)


2人は、大泣きです。


(何て無防備な泣き方なんだ。
 5歳児どころか、3歳児だぞ。)


「ま、そうなるわな。」(元亭主)


判っていたコトとはいえ
収拾のつかない事態に、困惑を隠せません。


「ずっと待ってたんだもの。
 思いきり泣かせてあげましょう。」(愛)


「そうだな。」(元亭主)


(悪党野郎にしちゃ、寛容じゃねえか。)


ところが…


その寛容とやらは
所詮、元亭主ですから
1分が、限界だったようです。


(ははは…。やっぱりな。)


「馬鹿野郎!」(元亭主)


「ひっ…」(さくら)


「ひっく…」(すみれ)


(何も怒鳴るコトねえじゃねえか。)


静かに近寄り、2人のそばで、しゃがみました。

気づいたようにして毛糸のパンツを隠した千尋
スカートを整えて座り直しました。

(でも、悪党野郎の怒鳴り声は
 
千尋ちゃんの心も、連れ戻したようだな。)

元亭主は、さくらの頭を、優しく撫でました。


「普段の良い子ぶりは、どうした?
 そんなコトじゃ、サンタが来ねえぞ。」(元亭主)


そして、すみれの頭も、優しく撫でました。


「何の為に、ママに会いたかったんだよ?
 ガキみてえに泣いて困らせる為か?」(元亭主)


「そっ…そうよっ、すみれちゃんっ。」(さくら)


「うんっ。さくらちゃんっ。」(すみれ)


はたと気づいたように立ち上がった
さくらすみれに手をひかれて
千尋も、力なく立ち上がりました。


(やれやれ…。手間世話かけさせやがって。)


さっさと退散した元亭主
距離を置いて見守ります。


「ママ、おかえりなさい。」(さくら)


「おかえりなさい、ママ。」(すみれ)


千尋の手を握り締め
涙の笑顔で、膝を曲げました。


(おお。ちゃんとデキたな。)


サンタと出会った時の為に
夢に習って一生懸命練習した
淑女のお辞儀【カーテシー】でした。


2人にとっては
究極最大の【お出迎え】の秘奥義でした。


(可愛いじゃねえか。
 何とも可愛いじゃねえか。)


「ちょ、ちょっと待ってよ!
 何なの?これ?やってられないわね!」(千尋)


でも、千尋は、娘達の手を振り払って
言い放ったのです。


生演奏が停まって
しいんとした空気が凍りつきました。


「だいたい、貴女達、誰なのっ?
 私、ママじゃないわよっ。」(千尋)


(あ~あ。
 子供のヒネと違って
 大人のヒネは、タチ悪いぞ。)


こんなに興奮して
こんなに泣き喚いている女性を
いったい、誰が
どんなふうに静められるというのでしょう?


「今日は何なのっ!?
 全員で私をハメる会なの!?」(千尋)


誰が何を言っても
無責任なお節介になるのが、セキノヤマです。


「冗談じゃないっ。私、帰るわっ。」(千尋)


ソコに居合わせた誰もが
そんな戸惑いに、微動だにできませんでした。


「千尋様の、バカぁ!!」(景子)


ところが
叱咤は、意外なトコロから、飛び出しました。


(ありゃま。)


「さくら様が、すみれ様が、御可哀想ですっ!!
 わぁ~ん。・゚(゜´Д`゜)゚・。」(景子)


(大泣きかよ( ゚Д゚))


もう25歳のはずなのですが
まるで幼児のような大泣きです。


さくらすみれも及ばないほど
純真無垢な涙です。
優子藍子涼子も、手がつけられなくて
オロオロするばかりです。


(わ!すんげえな!
 あんなに暴れるから、パンティ見えちゃったぞ。)

思わぬトコロからの最強の叱咤
威を削がれたようになった千尋です。

脱力して崩れそうになりましたが
幸治が肩を抱いて支えてくれました。


藍子涼子に手伝ってもらって
中島が純白のソファを用意しました。
他のイスと違って、3人掛けの特別です。


幸治は、その真ん中に
千尋を静かに座らせました。


アンタマ。私、間違えた?」(さくら)


「おかえりなさいって言ったから
 ママ、怒ってるの?」(すみれ)


「???」(さくら)


「???」(すみれ)


さっきまでの純真無垢な泣き顔じゃなくて
相手を思うあまり、状況を心配するあまりの
何とも複雑なベソかき顔です。


(久しぶりに逢えた大好きな母親なんだ。
 間違いも、へったくれも、あるかよ。)


まるで助けを求めるかのように
しがみついてきた2人を
元亭主が、同時に抱っこしてやりました。


(そうだぞ。そういう時は、抱っこだ。
 よくぞ、2人同時に、抱っこした。)


「大丈夫だ。大丈夫。
 少し驚いて、少し間違っちまっただけだ。
 おめえ達の
ママは、多分
 宇宙一優しくて、宇宙一強え。」(元亭主)


(なかなか良いコト言うじゃねえか。
 悪党野郎、変わったな。)


「何なのよ、何なのよ。」(千尋)

興奮から醒めた第一声です。
みんな、千尋を注目しました。

「私の娘は、たまみとむつみなの。
 名前だって違うじゃないの。
 完全に人違いでしょ。」(千尋)


(苦し紛れの戯れ言を…。
 顔を見りゃ判るだろうに。)


「ママ、私、たまみよ。
 さくらという名前は
 アンタマに貰ったの。」(さくら)


「ママ、私、むつみよ。
 すみれという名前は
 アンタマに貰ったの。」(すみれ)


「違う名前をつけるコトで
 2人を守っていたんです。」(愛)


「今までの悲しい生活から決別して
 春の花のように希望に満ちた生活となるよう
 祈りを込めたんです。
 判ってあげて下さい。」(恋)


「貴女が愛を込めた名前を
 ないがしろにした訳じゃないんです。
 判ってあげて下さい。」(夢)


(おお。
 
も、さすがに真剣だな。)


「…判ってるわよ。判ってる…そんなコト。
 自分の娘だもの。
 名前が変わったって、顔が変わったって
 見間違うもんですか…。」(千尋)


(あれ?認めたか?)


「今更なのよ、今更なの…。」(千尋)


黒髪を乱し、悲痛な顔で
しくしく泣き出してしまいました。


「自分の勝手な都合で、地獄に落としておいて
 自分の勝手な都合で、地獄に置き去りにした…。
 連絡もしなかったし、捜そうともしなかったし
 助けようともしなかった…。」(千尋)


(まあ、事情が事情だからな。)


「そんな女が、今更
 どうして、母親ヅラできるのよ?」(千尋)


(本人としては、そう思うのも、道理かもな。)


「ママ。
 ママは、私のコト、嫌いなの?」(さくら)


無言で首を左右に振り、頭を抱えます。


幸治のおかげで、身体は、元気になったわ。
 優子ちゃん、藍子ちゃん、涼子ちゃん
 景子ちゃんのおかげで、心も、元気になったわ。
 まるで、娘のように
 あっけらかんと、元気になっちゃった。」(千尋)


まるで、元気になったコトが
最悪の罪であるかのように
俯いて、頭を抱えています。
白い手が指が乱した長い黒髪で
表情を伺い知るコトができません。


「娘達は、地獄で泣いてるだろうに
 私だけ、贅沢三昧だった。
 本当は、私こそ
 地獄に落ちるべきなのに…。」(千尋)


(それだって、千尋ちゃんにしてみれば
 周りが勝手にお膳立てしたコトだもんな。
 ホントは多分
 ホームレスの苛酷な環境に敢えて身を置いて
 1日でも早く生命を終わらせて
 本当の地獄に向かおうと
 していたんだろうからな。)


「予定外だった…。
 こんなに元気になっちゃうなんて
 予定外だったの。
 だからこのまま、何もかも忘れて
 全くの別人として
 生きていこうと思ってたんだから…。」(千尋)


(【ウソ】のようにも
 【ホント】のようにも聞こえるな。)


「娘達のコトなんか
 忘れてたんだから…。」(千尋)


(それは、完全に、見え透いたウソだな。)


「女、間違うな。」(元亭主)


沈黙を破ったのは、今度は元亭主でした。


(こら。今、デリケートな問題なんだ。
 悪党は黙ってろ。)


「どんなにヒネくれようが
 どんなにネジくれようが
 
【忘れたフリ】というウソで
 時間を埋め尽くそうが
 おめえが、腹を痛めて産んだ事実は
 変わらねえだろが。」(元亭主)


(ありゃま。
 悪党にしちゃ、マトモなご意見ね。)


「安易なコト、言わないでよっ。
 私、何もかも忘れて
 何もかも捨てようとしてたのよっ。
 他人のあんたに、男のあんたに
 何が判るっていうのよっ。」(千尋)


(こおゆうデリケートな問題で
 【他人】とか【男】とかのワードを出されると
 もう、お手上げだよな。)


「…ようとしてたが
 忘れられなかったろ?
 捨てられなかったろ?」(元亭主)


(お?言うじゃねえか。)


「…………」(千尋)


確かに、さっきまでは
別れたままになっている娘達のコトを
幾度となく思い出していた千尋です。


(逢えるはずもねえという安心感が
 【古い記憶と戯れた】に
 過ぎねえのかも知れねえがな。)


「確かに俺様は、他人だ。
 それも、世間から疎まれるチンピラだ。
 算数の問題も判らねえバカたれだ。
 だから、何を言っても
 おめえの心にゃ届かねえだろうな。」(元亭主)


(よく判ってるじゃねえか。)


「でもな。バカにされるのを覚悟して
 敢えて言ってやるよ。
 おめえ、間違ってる。」(元亭主)


(悪党なりのプライドをボロボロにしてまで
 頑張って食い下がるじゃねえか。)


「……何が…よ?…
 何も知らないくせに。」(千尋)


「おう。何も知らねえさ。
 語られたって、聞きたくもねえな。」(元亭主)


(ははは…。言いやがる。)


「だけどな。
 ここにいる2人の女の子は
 世界で一番、おめえのコトを知ってるぞ。
 全部知ってて、その上で
 おめえを慕い、おめえを愛してるんだ。
 それもまた、紛れもねえ真実だぜ。」(元亭主)


(…何だか、判らねえが…。
 悪党野郎も、変わったね~。
 口答えにも動じず
 淡々と、切り込んできやがる。
 真剣なんだな。)


「でも、私には、母親の資格なんて…」(千尋)


「四角も三角もねえよ。
 親ってのはな
 勝手に自然に成るモンじゃねえんだ。
 まして、踏ん張って頑張って
 ヤセ我慢して成るもんでもねえ。
 自分を呼んで、自分を求めて
 自分を慕ってくれる子供に
 親にしてもらうんだ。
 こんな俺様だって、この2人から
 どれだけたくさん教えられたか…。」(元亭主)


(…言うじゃねえか。)


「…詭弁だわ。」(千尋)


「難しい言葉でケムにまくなよ。
 自慢じゃねえが、俺様は、頭が悪いんだ。
 難しい言葉は、勘弁してくれ。」(元亭主)


(ソコで、ギャグかまして
 どうするよ…(;´д`))

「この2人、暑くてノビちまうのに
 一生懸命、パンツ穿いたんだぞ。
 必死になって服を着たんだぞ。
 何でか判るか?
 ママに褒めてもらいてえからだ。」(元亭主)


そういえば…といった顔で
千尋は、2人を見つめました。


確かに、千尋の知ってる2人は
真冬でもパンツを穿いただけで
汗びっしょりになってしまう異常な体質でした。


いつも全裸でいるコトが
大好きな2人でした。


それは


冷たいモルタルの壁に
首輪で繋がれる生活がもたらした
悲しい習慣でした。


「この2人、5月に1年生から始めて
 一生懸命、勉強したんだぞ。
 今、もう少しで、3年生が終わるんだ。
 何でか判るか?
 ママに褒めてもらいてえからだよ。」(元亭主)


「今度、4年生って
 そういうコトだったのね。」(千尋)


(160へ)


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