・・・スピンオフ特別篇・・・
110
そっか。
おばあちゃんにも
おばあちゃんが、居たのね。
あたりまえのはずなのに
初めて知ったような不思議な気持ち…。

「だから、おばあちゃん
 裁縫、上手なのね。」(薫)

「うへへ~。
 まだまだだぁ~。」(おばあちゃん)

おばあちゃんの笑顔、可愛い。

「ばあちゃんにも、ママが、居たよぉ。
 いつも明るくってね~。
 いつも、ニコニコしてたぁ。
 ばあちゃんのママは
 お料理が、とっても上手くってね~。
 ばあちゃんのママみたいになりたくて
 ばあちゃん
 頑張ったぁ~。」(おばあちゃん)

「だから、おばあちゃん
 お料理も、上手なのね。」(薫)

「何とか、食える程度にな。
 うへへ~。」(おばあちゃん)

湯舟から上がって
私の髪を洗ってくれるの。

「ばあちゃんの、ばあちゃんも
 ばあちゃんの、ママも
 天国に行っちまった時は
 ホントに悲しくってよぉ~
 そのまま、アトを追いかけて
 ばあちゃんも天国に
 行きたくなったぁ。」(おばあちゃん)

そんなの、困るよぉ。
私が生まれてこれなくなっちゃうわ。

「ばあちゃんの、ママが
 天国に行っちまった時
 ばあちゃん
 川に、身投げしたよ。」(おばあちゃん)

ええっ!?

「でも、死ななかった。
 薫のじいちゃんが、助けてくれたんだ。
 きっと、ばあちゃんのママが、天国から
 じいちゃんを、プレゼントしてくれたんだ。
 だから、結婚したんだ。」(おばあちゃん)

そんなコトが…。

「薫のじいちゃん
 とっても男らしくってね~。
 普段は、あんまり、笑わないけれど
 思いやりが深くってね~。
 ばあちゃん、幸せだったよ~。
 戦争から帰ってきた時ゃ
 片手と片脚なくしてたけども
 野良仕事、誰にも負けなかった。
 でも、そのケガが元で、早くに天国
 行っちまったぁ~。」(おばあちゃん)

おじいちゃんに、会ってみたかったな。

「ばあちゃん、悲しくってなあ。
 1ヶ月くらい、泣きとおしたよぉ。
 じいちゃんのアトを追って
 死んじゃおうと思ったけれど
 そん時ゃ、薫のパパ
 ばあちゃんのオッパイ欲しくて
 泣いてたさ。」(おばあちゃん)

シャワーをかけてもらって
顔をあげた時
目の前に、おばあちゃんの笑顔があったの

涙を光らせた、可愛い笑顔があったの。

「誰のアトも、追いかけなくって
 ばあちゃん、本当に、良かったよぉ。
 だって今、こおんなに可愛い
 薫が居るんだもん。」(おばあちゃん)

「きゃははっ\(^o^)/
 おばあちゃん
 くすぐったいよぉ~。」(薫)

「くすぐってるんだもん。
 あったりめえだぁ~。」(おばあちゃん)

「きゃははっ\(^o^)/
 きゃははっ\(^o^)/」(薫)

・・・・・

ああ…。
こんなに笑ったのは、久し振りねぇ~。

じいちゃんが、今、生きてたら
 そりゃ、奇跡だ。
 ばあちゃんの、ママが、今、生きてたら
 そりゃもう、妖怪だ。
 ばあちゃんの、ばあちゃんが
 今、生きてたら
 そりゃもう、デタラメだ。
 うへへへ~。」(おばあちゃん)

た、確かに、そうなのかも、ね。

真っ白な泡をたてて
私を大事そうに洗ってくれる
おばあちゃん

「人は生まれて、人は死ぬんだ。
 そりゃもう、神様が作ったキマリさ。
 人間なんかが
 どうこうデキるもんじゃねえよぉ。
 遅いか、早いかの、違いさ。
 うへへへ~。」(おばあちゃん)

おばあちゃんって、不思議…。

そんなコト、他の誰かに言われたら
ひっぱたいてやるのに…。

おばあちゃんに言われると
どういう訳か、素直に聞けるのよね。

「誰でも、天国に行っちまう時
 残された人に、何かを教えてゆくもんだ。
 ばあちゃんのばあちゃんは
 ばあちゃんに、縫物上手になれと教えた。
 ばあちゃんのママは
 ばあちゃんに、料理上手になれと教えた。
 そして、じいちゃんは、ばあちゃんに
 パパを守れと教えた。」(おばあちゃん)

「だから、今の、おばあちゃんが
 あるのね。」(薫)

「うん。薫は賢いなあ。
 そのとおりだよ。」(おばあちゃん)

おばあちゃんって、不思議…。

そんなコト、他の誰かに言われたら
見え透いたオセジとシラケるのに…。

おばあちゃんに褒められると
どういう訳か、素直に嬉しいのよね。

「ばあちゃんだって
 近いウチ、死んじまう。」(おばあちゃん)

「ヤだ。そんなコト、言わないで。」(薫)

私、おばあちゃんに、しがみついたの。

ヤだよ、ヤだよ。
もう、誰にも、死んでほしくないよ。

そうだわ。
おばあちゃんを洗って
ピカピカにしてあげたら
あと100年くらい、生きてもらえるかも。

「薫は、ばあちゃんから
 何を学んでくれるかねぇ。
 うへへへ~。」(おばあちゃん)

「何を学んだら良いの?」(薫)

「それは、薫が
 見つけ出すモノさ。」(おばあちゃん)

学校に行けば教科書があって…。
だから何を学べば良いか
迷わないで済むのに…。

「んだってさ。
 ばあちゃんが死んじまった時さ。
 パパと薫で、学ぶコト、きっと違うよぉ。
 おんなじだったら、そりゃ、もう
 ぱんぱかぱぁ~んだ。」(おばあちゃん)

そっか…。

人それぞれ、なのね。

あ…。

おばあちゃん、もしかして…。

泣いてばかりいないで
荒れてばかりいないで
ママから何を学ぶのか
捜してみろって言ってるのかしら。

「ばあちゃんの、じいちゃん
 死んじまった時
 ばあちゃんの、ばあちゃんが
 教えてくれたさ。
 いつも、いつでも
 笑っていなさいってね。
 じいちゃんが好きなのは
 泣き顔じゃなくて
 笑顔なんだってね。」(おばあちゃん)

「そんなの、ムリよぉ。」(薫)

「うんにゃ。
 だから、ばあちゃん、大笑いしたさ。
 だって、ばあちゃんの、ばあちゃんが
 こおんなふうに
 したんだよぉ~。」(おばあちゃん)

「きゃははっ\(^o^)/」(薫)

そんな、やめてぇ~。

石鹸の泡に包まれてるから
余計にくすぐったじゃないのぉ~。

「きゃははっ\(^o^)/」(薫)

ひ、ひぇ~。

「薫ちゃんの笑顔
 可愛いねぇ~。」(おばあちゃん)

「きゃははっ\(^o^)/」(薫)

うんぎゃ~。やめてぇ~。

・・・・・

次の日、私
久し振りに学校に行ったの。

だって、私なりに、反省したんだもん。

何だか、みんな、とっても静かね。

どうやら、私のママが亡くなったコト
先生が、みんなに、話したみたい。

傷つけるコトのないようにって
言ったんだって。

だから、みんな、ヨソヨソしいのね~。

そんな息が詰まるような閉塞感も
私のイライラを増殖させてゆくの…。

「薫ちゃん、ちょっと、痩せたね~。」

仲良しの咲ちゃん
私の顔色を伺いながら
恐る恐る、言葉をかけてきたの。

そういえば、お葬式以来
あまり、何も、食べてなかった気がするわ。
昨夜の夕食、久し振りだった気がするもの。

「身体の調子は悪くないの?」

仲良しの祐子ちゃん
私の身体を気遣いながら
恐る恐る、言葉を続けたの。

何よ、何よ。2人とも…。
そんな他人行儀な言葉なんか、要らないわ。

いけない、いけない。

イライラが募るばかりね。

みんなにはママがいるから
私の悲しみなんか、誰にも判らないのよ。

結局、その日
誰かから何か言われたのは、その2つだけ。

放課後になって、私は校門に走っていった。

まるで、プールの底で
碁石拾いをしてた時のように
抑鬱の中で息を止め
放課後という名の水面に
慌てて顔を出したよう…。

校門には、おばあちゃんが、待っていたの。

「さあ。
 パパ
 迎えに行くよぉ。」(おばあちゃん)

・・・・・

救急車で運ばれてから、ずっと
パパと会ってなかった。

意識が戻りました…と言われて
面会できたのは
おばあちゃんだけだった。

だから私、パパに、謝れていないの。

今日こそは、今こそは…。

「ごめんなさいっ!!」(薫)

病室に入った途端
何もしないで、何も見ないで
私は、床に、土下座したの。

パパパパ
 本当にごめんなさいっ。
 私、悪い子でしたっ。」(薫)

 はドコにいるんだ?」(パパ)

あらやだ。
まだ、ベッドに、寝ているの?
それじゃあ見えないわね。

「床にへばりついて
 土下座してるよぉ。」(おばあちゃん)

「そんなコト、するな。
 立ちなさい。」(パパ)

見えないんじゃ
土下座も意味がないわね。

私、神妙な顔をして立ったの。

パパ、ごめんなさい。」(薫)

「パパも、言葉が、荒かった。
 謝るコトは、何もないよ。」(パパ)

何よ、何よ。
とっても弱々しい声ね。
本当に退院できるの?

「薫ちゃん
 今日は、ちゃんと
 学校に行ったんだよ。」(おばあちゃん)

顔の腫れは…引いてるのね。
でも…でも…
こんなに顔が小さかったっけ?
それに何だか、顔色が青白くない?

「そうか。偉いな。
 、良い子だぞ。」(パパ)

良い子?
違うのよ。私は悪い子。
だから今、こうして
パパが入院してるんじゃないの。

何だか、久し振りに
パパを見た気がするわ。
何て小さくて弱々しいのかしら。

「おばあちゃん
 パパ、死んじゃうの?」(薫)

「なあに言ってるぅ?
 今、退院すんだよぉ。」(おばあちゃん)

「心配かけたな。
 パパは大丈夫だぞ。」(パパ)

パパぁ~。」(薫)

私、安心して、嬉しくて
パパに抱きついたの。

「あ、いてて…。」(パパ)

「きゃ。」(薫)

でも、一瞬で、離れちゃった。
痛いの?そんなに痛いの?

「家に帰っても
 2~3日は安静にして下さいね。
 打撲は完治してませんから。」

看護師さんの、優しい笑顔…。

そっか。

私は、そんなにも
パパを痛めつけてしまったのね…。

・・・・・

家に帰ってから
パパは、テレビを観ているの。

観ている…というより
心を虚ろにして
テレビの画面に顔を向けて
一瞬にして様々に変化する映像の光に
溶け込んでいるみたい。

私のせい…なの…かしら…?…

「何を観ているの?おもしろい?」(薫)

テレビの前のソファ。
パパの隣に座って
身体を寄せて甘えてみたの。

だって、以前のように
甘えたかったんだもん。

「ひ…。」(パパ)

まるで電気が走ったように驚いて
パパが立ち上がっちゃった。

「狭かったな。ごめん。」(パパ)

そう言って、別の椅子に座っちゃった。

・・・・・

晩御飯の時…。

「今日のお味噌汁は
 薫ちゃんが
 作ったんだよぉ~。」(おばあちゃん)

「おお、そうか。
 、凄いな。」(パパ)

心のないフラットな声で、ぽつりと言うと
また、テレビ画面に、心を奪われるの。

テレビの音が大きいのに
どうして、こんなにも
沈黙を感じるのかしら?

そんな私を救ってくれたのは
おばあちゃん

近所で見かけた犬が【ワン】と吠えないで
可弱く可細く
【ううぅ~ん】と吠える話をしてくれて
私、思わず、笑っちゃった。

「うう~ん…なの?」(薫)

「うんにゃ。もっと、こう…何ていうか…
 ううぅ~ん…って感じ。」(おばあちゃん)

「きゃははっ\(^o^)/」(薫)

おもしろ可笑しく笑って、ふと見ると
パパは、やっぱり、テレビの人…。

「御馳走様。食欲なくて、ごめん。」(パパ)

立ち上がって、部屋に引きこもっちゃった。

ご飯も、おかずも
少しだけ減っていたけれど
お味噌汁、全然、減ってなかった。

(04へ)

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