この本は、リチャード・クー氏の最新のバランス・シート不況の分析の本ですね。
バランスシート不況とは、「資産価値が暴落するなどして債務超過(バランスシートがつぶれた状態)となると、企業は財務内容を修復するために収益を借金の返済にあてるようになるため、日銀が金融緩和を行っても企業による資金調達が行われなくなり、設備投資や消費が抑圧されて景気が悪化すること。」である。(コトバンクから引用)
今回は、世界がバランスシート不況に陥っていると主張していますね。
基本的に、「バランスシート不況には、財政政策が有効で、金融政策は無効!」としています。
以下、各章のまとめです。
第1章「バランスシート不況の概念」と題して、バランスシート不況になったら、個人も企業も民間は債務の最小化に動くので、政府が財政出動することが大事で、バブル経済崩壊後の日本では、財政出動の景気対策が有効だったとしている。
第2章「金融政策と量的緩和の罠」と題して、バランスシート不況では、資金需要がないので、金融政策は意味がないとしています。
第3章「バランスシート不況化の米国経済」と題して、アメリカもリーマンショックで、バランスシート不況になり、金融政策だけ対応できず、財政政策でも対応したとしている。
第4章「アベノミクスに宿る可能性」と題して、安倍政権は、財政出動だけなく、投資減税や一括償却をして、20年のバランスシート不況のトラウマをなくすべきだとしている。また、為替レートは95円から100円が望ましいとしている。
第5章「ユーロ危機の真相と解決」と題して、ユーロ危機をもたらしたのは、ドイツのITバブルが原因としています。解決案として、マーストリヒト条約をバランスシート不況に対応させるには、同不況に陥った国に財政出動を義務付けるだけではなく、EUやECBが当該国に、お墨付きを与え、必要なら、支援するというところまで、踏むことが大事としている。
第6章「中国経済が直面する問題」と題して、日米欧とは違って、中国は財政政策で、バランスシート不況を乗り越えたとしています。ただ、問題はリーマンショックに急増した地方政府への貸し出しだとしています。また、1:国内消費がGDPの35%しかない。2:所得格差が広がっている。3:沿岸部の賃金が急騰している。4:インフレが顕在しているの4つの問題があるとしています。
また、ルイスの転換点という「一国が工業化を進めている上で、それまでの農村の労働力が全て、都市部の工業などに吸収された地点」であり、それは、現在の中国に当たるとしている。
そして、ルイスの転換点と生産年齢人口比率のピークが同時に来たことも問題であるとしている。
さらに、法治国家をめざし、腐敗や法制度を不備からくる不確実性を排除するべきだとしている。
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