HEMCblog

神戸市にある救命センターのブログです。

CBRNE災害実動訓練をしました

12月を師走とはよく言ったもので、気が付いたら28日の仕事納めになっていました。月初めに自分のピアレビュー記事を紹介したのですが、今日の投稿が今年のブログ納めです。

今年のブログ納めにご紹介するのは先月末に当センターと神戸赤十字病院が合同で大々的に行ったCBRNE災害実動訓練の記事です。書いてくれた〇田先生は今や当センターの主力中の主力に成長した中堅スタッフで、外科や麻酔サブスペシャリティが多い当センターでは異色の内科専門医です。しかし重症外傷診療がウリの当センターでは内科系救急医の彼も立派な外傷医として日々の臨床でその腕を振るってくれています。そんな彼のもう一つのサブスペシャリティが中毒。そして最近は中毒のみならずCBRNE災害にも専門をひろげ、今回の実動訓練がその集大成です。

2017年に彼が中心となって防火防災委員会が開催したCBRNE図上訓練の記事がこちら↓

http://blog.livedoor.jp/hemc/archives/51239800.html


ちなみに当センターが輩出した初の救急指導医となった彼の記事がこちら↓
http://blog.livedoor.jp/hemc/archives/57593269.html

今年最後のブログ記事として○田先生の記事をお送りします。大作です。
では以下、本文ママ↓

両院合同CBRNE災害実働訓練

                               ○田正太

 

20231124日(金)この日は当センター・神戸赤十字病院にとって記念すべき日なのかもしれない。そう、両院の開設史上初めて両院合同でのCBRNE災害実働訓練が開催された日である。

2019年にラグビーW杯神戸開催に向けてのCBRNE災害対応マニュアルを作成したが、両院が承認した正式なマニュアルではなかった。もちろんその頃からCBRNE訓練の構想はあったが、所謂コロナ禍によって大規模な実働訓練を行う機運はここ数年萎まざるを得なかった。

そんな時、昨年の神戸赤十字病院ER(以下、日赤ER)への化学剤に曝露された船員が4walk-inで来院されたことを契機に、潮目が転換したように思う。

今年度の初頭からCBRNE対策に関して両院で議題に挙げることが不自然でなくなり、5月には○藤淳先生と共同でなぎさモーニングレクチャーにてCBRNEの講義を行った。研修室が満員となるほどに聴講を頂けたことから、そのまま日赤ERへ少人数のCBRNE傷病者が来院した時の初期対応シミュレーション開催へ持っていくことができると確信した。しかしながら開催に向けての障壁は少なくなかった。日赤ERを訓練使用する場合、2か月前から輪番日を外す算段を整えなくてはならず、その他の調整事項などもあり開催は夏以降へ持ち越しとなった。出鼻をくじかれた格好となったが、これを機にシミュレーションに留めずに受入体制プランCCBRNE傷病者が比較的少数の際に大がかりな水的除染テントは設置せずに既存の両院除染室と必要に応じて乾的除染テントを用いて対応する計画)の実働訓練を行う方向で調整することとなった。

訓練開催に向けて10月、ワーキンググループ(以下、WG)を発足し、訓練に必要な調整や事務作業を会議で提示しつつ現状の課題等の担当者や期限を決めていった。三宮周辺で多数傷病者が発生するようなCBRNE事案ではなく、近隣の化学工場での事故というあり得るシナリオで訓練を開催することで日赤側のニーズに合致し、両院が協力しやすい雰囲気が作れたように思う。

実働訓練の1か月前にCBRNEの総論講義、2週間前にレベルC防護服着脱・除染研修を行い、3日前には事前勉強会と称して図上訓練を事前に行った。実働訓練に参加する過半数の方がこの図上訓練に参加してくれた。タッチペンで直接記載も可能な大型モニター“Elmo-pad”2つ有する施設の利点を活かし、図上訓練はHEMC史上初めてデジタル形式で行った。

24日の実働訓練直前までWGでの会議を行い、当日にも訓練内容のテコ入れを図った。実働訓練自体は予定通り1740分、近隣の農薬工場から日赤ERwalk-inで来院する設定で開始した。傷病者を安全に屋外へ出しつつHEMCへ診療応援を依頼し、簡易型のレベルC防護服(迅速性を優先して体幹部・靴は化学災害非対応のPPE)のHEMCスタッフが応援に来るというシナリオであった。その後は乾的除染テントを展開するピロティへ自力歩行できなかった傷病者を移動させ、設置したテント内での乾的除染(脱衣・拭き取り)、据え付けの除染室での水的除染を行い、各診療エリアで対応するというものであった。途中本物のドクターカー出動と受入があったものの、大きなトラブルはなく訓練は終了した。

 
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各エリア・役割での反省点はもちろんあったかとは思うが、これらについては今後アンケート結果を集計し、今後の訓練マニュアルを改善していきたいと考えている。訓練の開催に関する反省点としては、やはり11月下旬では少し寒かったように思う。薄着であった傷病者役はもちろん、屋外エリアの担当者にも寒さがストレスであったと思われ、開催時期については今後十分に配慮する必要があると感じた。






今回の訓練にはWGスタッフの努力をはじめ多くの方々の支援が必要であった。今後さらなる大きな訓練を行うのであればさらなる支援が必要と考えられ、今回の訓練に向けて徐々に広まったCBRNEの輪を土台に、持続可能かつ有意義な訓練を開催していきたいと思う。

最後に、訓練の開催に関わって下さった方々および訓練開催中に病院診療を支えて下さった方々に深く感謝いたします。今後ともよろしくお願い致します。


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多施設合同ピアレビューをしてみました

先週の救急医学会の東京が汗だくになるほど暑かったと思ったら、とうとう12月になってしまいました。2023年もあと少しですね。

今日は先月に初めて多施設合同ピアレビューを行ったので、その記事をお送りします。
では以下、ほぼ本文ママ↓


1回兵庫県多施設合同ピアレビューを行いました

                          救急部 松山 重成

まだ暑さが残る今年の11月初旬に記念すべき第1回兵庫県多施設合同ピアレビューを当センター第1研修室で行いました。

「いったいピアレビューって何やねん?」という人がほとんどだと思うので、最初にピアレビューとその意義について簡単にご説明します。

           語源は同僚(ピア)による相互評価(レビュー)

           外傷診療の質の評価のために主に死亡症例に対して行う

           ISSと来院時バイタルサインから算定する予測生存率(TRISS Ps≧0.5の予測外死亡がPreventable Trauma Deathかどうかをピアレビューによって判定する

           施設内で行う事もあるが、第三者を交えた多施設で行う事がより望ましい

           地域外傷診療システムを構築、重症外傷を集約化する外傷センターを実現するための第一歩

という事で、神戸ひいては兵庫県の地域外傷診療システムを構築して、当センターが地域の基幹外傷センターとしてさらに進化するための一丁目一番地がこのピアレビューなのです。えっへん!


2023-11-24

 

そこで兵庫県Acute Care Surgery研究会に参加しているはり姫、県加古、淡路の各救命センターと合同で今回のピアレビューを企画したのですが、このピアレビュー、実はごく一部の先進的な地域を除いて全国的にもほとんど行われていません。当然、僕を含めて関係者全員がPTDを判定するピアレビューをやったことがなく、いちから手探りで準備をしました。いくつか関連する文献をあたって「劇的救命」で有名な八戸救命が行っている症例検討形式を採用し、指導役も兼ねてゲスト判定医に東京から高名な外傷外科医の○先生をお招きしました。

 

今回の対象症例として昨年4月からの修正予測外死亡(予測外死亡から 80才上およびGCS≦5の急性硬膜下血腫を除いたもの)で止血術を要した体幹外傷の2例をセレクトしました。たまたま2例とも主治医だった○村先生にプレホス、初療、手術、ICUなど、各フェーズでの診療内容をプレゼンしてもらい、既定の問題点リストに沿って検討しました。司会の僕を除いて、○先生、災害医師2名(○集院先生・○部先生)、はり姫医師2名で、PTDか否かを多数決で判定しました。

症例検討は後出しじゃんけん上等の会なので、ああすればよかった、こうすればよかったという意見があれこれ出るのですが、臨床経験が極めて豊富な○先生やはり姫の○平先生の「でも、それが出来たとしても死亡転帰は避けられない」というお言葉で2例とも全員一致でnon-PTDとなりました。めでたし、めでたし。

次回ははりま姫路医療センターでの開催を予定しています。

 

(今回は会場の写真がありません。悪しからず)

へむくが20周年を迎えました(その③)

11月も半ばとなり、時期外れの夏日続きから一気に冬に突入しました。皆様、体調管理は大丈夫でしょうか。9月から3回に分けてお届けしたへむく20周年記念記事もいよいよ今回が最終回です。
本ブログ初登場の石原センター長のお堅い文章で大変たいへん恐縮ですが、その分楽しそうな写真でお楽しみください。

では3回に渡った本シリーズの最終回です。
以下、ほぼ本文ママ↓


神戸港クルーズ船ルミナスで大祝賀パーティーを開催しました
                        センター長 石原 諭

 

8月1日兵庫県災害医療センター(HEMC)は神戸赤十字病院の移転とともにHAT神戸で開院し、創設二十周年を迎えました。

 

世間では長かったコロナ禍がようやく明けましたが、当センターが受けた甚大な影響も計り知れず、鵜飼前顧問、中山前センター長の退官祝宴は延期、当センター主管の第 25 回日本災害医学会で神戸港クルーズ船上での会長招宴はキャンセルとなってしまいました。運営会社のご厚意によりキャンセル料が免除されたことで、学会運営に対する経済的打撃 は免れ、赤字決算を避けることができました。この借りをお返しし、現職員と以前勤務された OB OG の皆さんと共に、開設二十周年と延期になっていた鵜飼先生・中山先生の御退官を皆でお祝いするため、去る86日クルーズ船ルミナスでの大パーティを開催しました。


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出港直後、乾杯の発声とともに松山バンド(シゲ&アミーゴ)の賑やかな音楽で開宴。鵜飼先生の「Ale Ale Ale」に引き続き、小澤先生の以前にもパワーアップしたお洒落なお話のうちに明石海峡大橋に到達。快晴の下、船上デッキから全員で瀬戸内の風景を満喫しました。その後石原からHEMC近況の報告とともに来賓の山下神戸日赤院長、鍵本・栗岡神戸消防前・現局長、八木兵庫県病院局前副局長、山下兵庫県健康福祉部長からご挨拶をいただき、矢形先生から現役・OB職員の紹介、川瀬先生の中締め、大トリに中山前センター長からのメッセージをいただきました。クルーズ時間は2時間半の予定でしたが、予想通り時間が足りず接岸したあとも中山先生のプレゼンは続き、災害医学会の感動PVで締めくくられ、退室時に記念品を幹部と事務職員から参加者全員にお渡ししてお開きとなりました。


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一部は二次会、三次会になだれ込んだグループもあったようですが、職員の日頃の行いでしょう。クルーズを満喫できる絶好の好天に恵まれ、本当に懐かしく楽しい会でした。次回は5年後かなという声もありましたが、やっぱりこういう会は時々必要ですね。

 

最後に時間の関係で○田医師、○田看護師の司会コンビから言えなかった締めの言葉で結びとします。

「皆様、本日は炎天下に神戸まで足をお運びくださいましてありがとうございました。事前準備に携わってくれました事務の方々、本日の資機材搬入など協力してくれた病院救命士、他多くの方の陰の支えでこのような素晴らしい会が無事開催できました。その方々へ改めて大きな拍手をお願いいたします。これにて、兵庫県災害医療センター開設20周年記念船上パーティー、お開きとなります。皆様、ありがとうございました!」


船上パーティ全体写真写真3

 

 

 


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