2007年03月31日

さくらん / 蜷川実花監督作品

sakuranこれは写真家の蜷川実花が初めてメガホンをとった映画です。僕は以前からニナミカの写真が大好きだったんで、写真での独特な色彩感覚が、映画では果たしてどんな風に表現されるのか、かなり興味がありました。

いやもう、予想通りというか予想以上の蜷川ワールド。もう、色が爆発してました!(笑)
蜷川実花の写真ってのはとにかくビビットなんですよ。レッド、イエロー、グリーンといった原色の絵の具を、チューブからひねり出してそのまま塗りたくったような強烈な色合い。そのトーンは映画でもまったく変わってませんでした。

とにかく、一コマ一コマどの場面を抜き刷りにしても、そのままグラビアでイケちゃうようなスタイリッシュな映画。
さすが写真家が撮った映画だなあと思ったのは、構図的に全く無駄がないんだよね。花魁姿のバックに映り込む階段が、漆黒の地色にさっと鮮やかな朱色がひいてあったりしてて、細部まで非常に凝った絵作りをしてるなあと思いました。

主演の土屋アンナがまたカッコいいんだ、これが。演技どうこうは別にして、これほど強烈なビジュアルを持った若手女優ってのもなかなかいないかも…。艶やかさと下品さのボーダーすれすれを歩く美しさを感じました。存在感あるなあ、土屋アンナ。ある種パンク的ですらあるね。あ、実際にバンドやってんのか、彼女(笑)。

この映画は、これまでの花魁を描いた作品、たとえば「吉原炎上」とか、そういうのと比べちゃうとダメだと思うんですよ。時代考証は甘いし、遊女の情念が匂ってくるような感覚も希薄ですから。
でも、蜷川実花はそういう映画を撮りたかったんじゃないと思うんだよね。なんてのかなあ、花魁という和的なものに自分の得意とする色付けを施して、ひとつの非現実世界を作り上げてみたかったんじゃないかと思うんです。ある意味プロモーションビデオ的なアプローチというかね…。

僕は、蜷川さんが土屋アンナを主演にした意図がよくわかります。だってさ、彼女がハーフだから言うわけじゃないけど、現実的な話、江戸時代にあんなバタ臭い顔した花魁がいたわけないじゃん(苦笑)。
でも、それが映画の中だと全然違和感ないんだよね。音楽監督は椎名林檎なんだけど、彼女の音楽だって純粋な邦楽なんかじゃ全然ない。ジャズっぽい要素が多分に入ってましたから。でも、それもバッチリはまってましたからね。
要するに、この映画の吉原は現実の吉原じゃないんです。蜷川実花が作り上げたニナミカ的花魁世界。そこのところをわかって観ないと、全然つまんない映画になっちゃうんではないかと僕は思いました。

ただ、木村佳乃が扮した情念を抱えた花魁は、ちょっと描き方が不十分だったような気がしないでもありません。そういうのはほら、吉原炎上での西川峰子とか、先達にスゴイ人がいっぱいいたわけだからね。木村佳乃も頑張ってましたが、うーん…。
もともとこの人は、健康的すぎてこういう役柄には合わないんじゃないでしょうか?演技から女の業みたいなものはあんまり感じられなかったなあ。
むしろ、僕は菅野美穂に凄みを感じました。何があったか知りませんが、ど、どうしちゃったの、菅野?(笑)。匂い立つような色香と鈍い情念を見事に放ってて、まあお見事。ヤバイ、ヤバイ(笑)。
ミスキャストとまでは言いませんが、木村と菅野の役柄を入れ替えてたら全然印象変わってただろうなあ、なんてこともちょっと思いました。

原作は安野モヨコの漫画。監督は蜷川実花。音楽が椎名林檎。キャストも女性が多くて、この映画はいろんな意味で女性上位の作品だと思います。そのせいもあるのか、R-12指定でエロチックなシーンも多いのに、僕自身はあんまり官能的な気分にはなりませんでした。単純に美しい、カッコいいという感じ。やっぱり、男の目を通すのと通さないのとでは、同じものを撮っても仕上がりが違ってくるんだなあ…。
たぶん、この映画は男と女でも感じ方がかなり違うように思います。付き合いはじめにこんな映画に連れてったら、下心があると思われて引っぱたかれそうだけど(苦笑)、付き合いの深い女性と一緒に観て感想を言い合ったりしたら、なかなか過激な夜を過ごせそう(笑)。

とにかく、色彩感覚を非常に刺激されましたね、僕は。
久々にフィルムで写真を撮ってみたくなりましたよ。AGFAみたいな強烈に発色のいいフィルムをカメラに詰めて、日常風景をざらりと切り取ってみたい。そんな感じ。アート欠乏症にはとても効き目がありました(笑)

hendrix69 at 11:06│Comments(2)TrackBack(0)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by RE2O   2007年03月31日 20:14
アート欠乏症と言いつつ、いいタイミングで
アートな映画に出逢ったようですねえ〜。
この映画、前から気になってたんですけど、
HAGAさんのをスクリーンで観たくなっちゃいました。

蜷川実花はよく知らないんだけど、
お父さんの芝居は好きで観てましたね。
っていうか『近松心中物語』が好きでね。
なんか予告を観てると、通じるものを感じました。

そうそう、ようやくDVDで『嫌われ松子…』観たんですよ。
いやあ〜ロックな映画でしたね。
これ観た直後も『さくらん』観たくなったんですよ。
やっぱり、観なきゃっ!
2. Posted by Y.HAGA   2007年04月01日 10:22
◆RE2Oさん
この映画は強烈な色彩感覚が命みたいなところもあるので、できれば大きなスクリーンで見たほうがいいと思います。正直言って、全体の編集とかはイマイチのところもあったような気がするんですが、そこはそれ一作目ですからね。お父さんの感想も聞いてみたいところです(笑)。
『嫌われ松子…』、中谷美紀、凄かったでしょ?オレ、今の邦画界は絶対女性上位だと思います。存在感のある女優さんがゴロゴロしてますよね。

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プロフィール
Y.HAGA
1965年生まれ。高校時代にROCKに目覚めて以来、いまだに思春期が終わらない。相も変わらずライブハウスに通い続ける日々。妻1子2。仲井戸“CHABO”麗市ファンサイトcafe HENDRIXの管理人。
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