仲井戸“CHABO”麗市
2009年06月13日
Monthly CHABO vol.12 ｢南青山夜会｣ 仲井戸“CHABO”麗市 with 梅津和時 and たつのすけ / 2009年6月13日（土）南青山MANDALA
いきなり物販の話から始まるのもなんだけど（笑）、オレ、このライブから発売されることになったNEW Tシャツ、すごくいいと思うんです。“元気になる”というコンセプトで作られているらしいんだけど、これは間違いなく“あの出来事”から元気になろうということでしょう。そういう願いをこめてグッズを作ったスタッフの気持ちがまず素晴らしいと思ったし、周りもそうなんだから、CHABO自身も今きっとそういう風に自分を奮い立たせているんだろうと思った。
この日のライブ、心ならずも清志郎への追悼ライブとなってしまった先月からまだ20日しか経っていない。だけど大丈夫。きっとCHABOはCHABOらしい元気なステージをやって、マンスリー・ライブの有終の美を飾ってくれるだろう。オレはそう確信していた。そして、その期待にCHABOは十分すぎるほど応えてくれたのだ。それが何より嬉しかった。
因みに、このTシャツをデザインしたのは、久原大河さんという人。梅津さんや新井田さんのフライヤーでもお馴染みのイラストレーターだ。オレ、この人のことは前から注目していて、絵のタッチとか、絶対CHABOに合うと思っていたから、ついに大河さんデザインのグッズが実現したのはすごく嬉しい。どういう経緯でCHABOのチームに関わることになったのかはわからないが、おそらく大河さんも“あの出来事”の後、かなり思うところがあったんだと思う。イラストもかなり凝っていて、たとえばギターのネックの「GIBSON」のロゴが「CHABOSAN」になっていたりしている。CHABOも、MCで“夜中にじっくり見て確かめてくれぃ！”とか言ってたな…（笑）。
はっきりしたコンセプトがあるし、これは今までのCHABOグッズの中でも群を抜いて素敵な逸品なんじゃないだろうか。オレなんか、2種類とも買っちゃったもんね（笑）。願わくば恵美社長、大河さんとのコラボは一回こっきりじゃなく、是非これからも続けてください。で、今度は是非CHABOの顔を描いてもらってくださいよ！やっぱし、大河さんの魅力は人物画だと思いますんで。
しまった、物販の話が長くなっちまった（苦笑）。
ライブは予定の18時から10分遅れでスタート。今回は仕事帰りで会場への到着が遅れてしまったため、席はずーっと後ろ。来賓席のすぐ前で見ることになった。なんとか席を確保してほっと一息。ジン・トニックをひっかけてると、開演直前に竹中直人さんと三宅伸ちゃんがすーっと入ってきた。そんでオレのすぐ斜め後ろの席へ…。うーん、後ろは後ろで緊張するなあ（苦笑）。
オープニングはCHABO独りによる「ねぇ HISAKO」。CHABOが6月にだけやる曲だ。ギブソン・ナイロン弦の柔らかい音色が優しく響く。今この時にこの曲を聴けて、なんかほっとした。
それが終わると、CHABOは一年かけてやってきたMANDALAマンスリー・ライブを改めて振り返り、来てくれたゲストの事などを丁寧に紹介する。いつも思うんだけど、CHABOってこういうところがすごくきちんとしてるよね。つくづく真面目な人なんだなあって思う。
梅津さんは2曲目から登場。プリントシャツの襟をスーツの上に出してサックスを手にした梅津さん、粋だなあ〜。今年還暦を迎えるってCHABOにさんざんからかわれてたけど、とてもそんな歳には見えない。早くこんな小粋なおじさんになりたいぞ、オレも（笑）。
ドブロを手にしたCHABOは「You Gotta Move」を弾き出す。これは先月もアンコールで歌われた曲だけど、印象が全然違って聴こえた。5月は落ち込む気持ちをなんとかアップさせようとしているCHABOの葛藤が見えような感じだったが、この日は堂々とした前向きなタッチ。梅津さんのブライトなサックスもずいぶんと助けになっていたと思う。
続けてもう1曲ブルースを。いきなりの「Everyday I Have The Blues」だ。たつのすけも登場してきてピアノを弾き出すとブルースが勢いよく転がり出した。最近はアンコールでよく演奏される盛り上げ曲なんだけど、あえて序盤に持ってきたところにCHABOの前向きな意思を感じる。
続けて課題曲「BLUE MOON」を挟み、このマンスリー・ライブから生まれた「ねえ神様」。歌われている内容は盗難にあったギター達を思う気持ちが溢れ、切ないものではあるんだけど、軽いレゲエ・タッチのアレンジが悲しみに沈むだけではないCHABOの意思を反映していたと思う。
いつもと同じようにカバーもたくさん演奏された。
特筆すべきはビートルズのカバーが2曲演奏されたこと。まず、これは初めてのお披露目だと思うんだけど「Honey Pie」。曲の頭ではイントロのSEを真似してみせたんだけど、いまいちお客さんには伝わんなかったみたい（苦笑）。CHABOは苦笑しながら“ホワイト・アルバム、聞いてくれ〜ぃ”と一言。
もう一曲はなんと「All My Loving」。ど真ん中のカバーですね、これは。フライングキッズの浜崎貴司のライブにゲスト出演した時に生まれたものらしいが、よかったぞ〜。
そのほか、カーティス・メイフィールドや、ポーグスの「フィエスタ」、キンクスの「アルコール」等が演奏された。特にポーグスのカバーは、梅津さんのサックスの音色がケルト音楽っぽい雰囲気を十分に醸し出していて素晴らしかった。
中盤のポエトリー・リーディングは、いつもより長めで構成もよく考えられた見応えのあるものだった。
まずは梅津さんとCHABOの2人だけで「慕情」。オレ、これを持ってきた理由がなんとなくわかるような気がする。いなくなってしまった誰かを偲びつつ、これからの日々に踏み出そうとする想いを、この詩にこめたかったんだろうな、CHABOは。そして「はぐれた遠い子供達へ」。この2編がポエトリー・リーディングでセレクトされたのはあまり記憶にない。やっぱり“想い”だろう、CHABOの。
「ヒッチハイク」は梅津さんがピアノでバッキング。たつのすけも加わっての「HUSTLE」と続き、悲しみに暮れた日々から表へ飛び出そうぜ、そんなCHABOの明確な決意が表明された。
「64年型タイプライター」はステージが赤い照明に照らされ、CHABOの言葉と梅津さんのフリーキーなサックスが絡み合う。いいぞ、CHABO！サイケでロックなCHABOが戻ってきたんだ。普段はへヴィな詩に席で固まうオレだけど、この日ばかりはなんだか嬉しくなってしまったなあ（笑）。
昨年、梅津さんが演歌のカバーを集めて出したというアルバムにちなんで、「りんご」という詩も読まれた。梅津さんの吹く「リンゴの唄」は強く心に余韻を残した。誰でも知ってる曲だけど、なんかブルースみたいだなあと改めて思ったりして。
珍しいところで、ナイジェリアのアサという女性ボーカリストのカバーもあった。曲名は忘れちゃったけど、後半CHABOは叫んでたぜ。“悲しみをぶっ飛ばせ！”って…。
そして、間髪いれずにリズムマシーンが鳴り出すと、「ハイウェイのお月様」が。
オレ、マンスリー・ライブの最終回ゲストが梅津さんでほんとに良かったと思う。やっぱりこの2人はツーと言えばカーなんです（笑）。コンビネーション抜群で、純粋に音楽の力だけでぐいぐい観客の集中力を引き揚げてしまう。それに加えて、たつのすけのキーボードがいっそう色彩のある空間を生みだしていた。
そうそう、なんと梅津さんがボーカルをとった曲も披露された。これはカバーだったんだろうか。「ベトナミーズ・ゴスペル」と紹介され、梅津さんの朴訥なボーカルがとても素敵で、深く心に染みた。
ちょっとしんみりしてきたかな、と思ったら、ここでまたリズムマシーンが鳴り出し、マーサ&バンデラスの「Dancing in the street」が勢いよく始まる。これまでのマンスリーでも何度か演奏された曲だが、この日はこれまでで一番のノリの良さ。CHABOと梅津さんによる客席乱入も飛び出した。これは嬉しかったなあ！、自分はもちろん、後ろのほうの席のお客さんは立ち上がってCHABOに声援を送っていた。みんな笑顔、笑顔、笑顔。
ほんと、先月とは全然違う。CHABOがこんなに元気なステージをやってくれている！オレはただただ嬉しかった。当たり前だが、まだ全然悲しみが癒えたわけじゃないだろう。それはCHABOだけじゃなく、ここに集まったみんなだってそう。だけど、とにかく、とにかく前へ進もうじゃないか。悲しみを明日への活力に変えようじゃないか。あの乱入は、そんなCHABOの強く確固な意思だったのだ。もう一度言うけど、ほんと嬉しかった、あの乱入は。
嬉しさはまだ終わらなかった。次に飛び出したのは、なんと「キモちE」！！！
いつものように立ち上がって踊る人もいたりして、すごい盛り上がり。最後はタオルを頭に巻き、なぜかそこにライトをつけた（笑）ギターテックの鈴木マチャミが3人のプレイを止めに入るという流れでエンディング。うーん、最高！元気なCHABOが見られると確信してはいたけど、ここまでやってくれるとは！
後半はじっくりと清志郎に捧げたカバーを。
前回のライブでも演奏されたグラハム・ナッシュのカバー「Southbound Train」はやっぱり効いたなあ〜。オレ、白状するとこの時だけはぽろっと涙をこぼしてしまった。もうCHABOのライブでは絶対めそめそしないと決めてたんだけど、畜生、ダメだった…（苦笑）。
この曲は、あの輝いていたバンドでの日々が歌い込まれている。そして、ポケットいっぱいの“アイデア”だの“世間知らず”だの、わかる人にはわかる清志郎ワードがさりげなく散りばめられているのがたまらない。やっぱこれはなあ…。クるよなあ…。くぅ〜っ…。
本編最後は「ガルシアの風」。今この時期に歌うことに葛藤があったとCHABOは言っていた。おそらく“どうにもならぬことなど何もない”みたいな達観したフレーズを、今歌う気持ちにはとてもなれないってことなんだろう。でも、せめて歌ぐらいはポジティブにと“あえて”歌うことにしたとCHABOは言っていた。
たつのすけはアコーディオンを手にし、梅津さんのサックスとともに優しくCHABOを包む。曲の後半で梅津さんはステージを降り、ゆっくりと客席を歩きながら楽屋へ消えていった。それを追うようにたつのすけも楽屋に消え、なおもサックスとアコーディオンが山びこのように聴こえてくるという、なんともドラマチックなエンディングであった。
アンコールではRCサクセションの曲が立て続けに演奏された。
まずは「いい事ばかりはありゃしない」。やっぱり、RCナンバーを奏でる梅津さんのサックスは最高だ。
そして、驚きの「国立市中区3-1(返事をおくれよ)」！ビビった！清志郎も最近はやってなかった最初期のRCナンバー。オレなんか歌詞も思い出せないぐらいご無沙汰（苦笑）。そうそう、聴いていて、高校時代のダチが“国立市中区3-1 忌野清志郎様”でファンレターを出したことを突然思い出した。その手紙はなぜか返送されて来なかったんだ。だから、清志郎のもとに届いてると信じてたんだよ、そいつは。どうしてんのかなあ、今頃。どっかの空の下、オレと同じように訃報を悲しんだのかなあ…。
そしてそして、驚きの「スローバラード」！
泉谷やエレカシと共演したライブでもさわりの部分を歌ったことはあったけど、フルで歌ったのは初めてだと思う。たつのすけの生ピアノも素晴らしかった。梅津さんのサックスは言わずもがな。うん、これは梅津さんがそばにいたからこそ歌えたナンバーだったのかもしれない。歌う前、“オレはボーカリストじゃないから…”なんて謙遜してたけど、これはもう歌の上手い下手じゃない。想いの大きさがひしひしと伝わってきた。
曲が終わると、いつまでもいつまでも、本当にいつまでも鳴り止まない大きな拍手が起こった。オレ、この日は観客も本当に素晴らしかったと思う。こんなにあったかいライブをCHABOと一緒に作り上げたこの日の観客の一員でいられたことを誇りに思ってしまうぐらいだ。梅津さんも感激したのか、CHABOの後ろに下がってそっと涙をぬぐう。その姿に思わずこっちもほろり…。
そして、今のCHABOの心境を最も色濃く反映しているような「After The Storm（嵐のあとで）」。“友だちが奪われて寂しい、君の笑顔が曲がり角から表れてくるような気がする”と切々と歌うCHABOの姿は胸に迫った。
最後が近付き、CHABOは一年間世話になった南青山MANDALAのスタッフ、自身のスタッフの面々を一人ひとり紹介した。
思えば、この一年はほんとうにいろんな事があった。オレなんかどうしてこうも神様はCHABOに試練を与えるのか、と怒りにも似た気持ちを覚えたぐらいだ。そんな激動の一年を、CHABOはここMANDALAでマンスリー・ライブを行いながら、淡々とやり過ごしてきたのだ。
たぶん、CHABOはMANDALAでの一年をずっと忘れないだろう。オレもここで折々のCHABOを感じられたことをずっと憶えていると思う。いいハコだったなあ、南青山MANDALA。願わくば、CHABOにはぜひまたここでライブをやって欲しいものだ。
最後は、3月のPIT INNでの梅津さんとのライブ「新宿夜会」で生まれたという「祈り」。清廉なムードの流れる中、何度も天を指差すCHABO。
いつものように「What a Wonderful World」が流れる中、3時間20分の長いライブは終わった。
3人がステージを去った後には、グラハム・ナッシュのオリジナル「Southbound Train」が流れ、お客さんもほとんどの人が席を立たずにじっと聴き入っている。そして曲が終わるとまた大きな大きな拍手が…。
ああ、なんと言ったらいいんだろうか、この余韻を…。Leyonaがよく言うMUSIC IS MAGIC、それはこういうことを言うんじゃないだろうか。素晴らしかった。本当に素晴らしい夜だった。いつまでもいつまでも余韻が残った。マンスルー・ライブの有終の美を飾るに相応しい、本当に素晴らしいライブだったと思う。
この夜は、CHABOだけでなく、観客もとりあえずは前に進み始めたってことを実感できた時間だったと思う。自分にとっては、ある意味先月の追悼ライブ以上に重要な夜となった。そう、この日のライブの余韻は“あんなこと”からそれぞれが日常に帰っていく過程を、CHABOの歌を通して観客一人ひとりが確認していた時間だったのではないかと思うのだ。
大河さんがシャツに描いたメッセージで言うならば“CHABO JUMPS AGAIN, AND YOU?”ってこと。生きることは悲鳴とイコールなのかもしれない。生きることとは日々何かを失っていく事とイコールなのかもしれない。でも、でも、とりあえずは生き続けようじゃないか。歌い続けようじゃないか。一時の強がりであっても笑い続けようじゃないか。ステージのCHABOを観ていて、そういうことって人生にはとても大事なことなんだと気付かされた。
もうすぐ夏が来る。いなくなってしまった人たちのためにも、残されたオレたちは精一杯の日々を生きていかなきゃな…。
そうですよね？ Dear 忌野清志郎…。
2009年05月23日
仲井戸CHABO麗市 monthly CHABO vol.11 CHABO SOLO 「COVER Night !!」/ 2009年5月23日（土）南青山MANDALA
CHABOは男らしかった。そして、何よりもプロフェッショナルだった。オレはそう思う。“あのこと”があって間もないライブ。無二の親友の逝去。どう考えたってCHABOの気持ちが乱れていないわけはない。このところ、CHABOの公式サイトにはCHABOを心配するファンの声が多数寄せられていた。僕だって心配だった。CHABOが望むんだったら、事前から告知されていた“Cover Night”の体裁を変えてもいいと思ったし、なんだったら最悪ライブを中止にしてくれたっていいとさえ思っていたぐらいだ。
でも、一方でCHABOならきっとやるだろうなという確信もあった。音楽を作ってギターを弾き歌うことを、誇りを持って“仕事”と言い切り、一本一本のライブを大事にするCHABOならば、絶対に何があってもステージに立つだろうと…。
果たしてそのとおりになった。しかもライブ冒頭で、最初から告知してあった“Cover Night”という枠は守ると約束した上で、昨日・今日の2日間を忌野清志郎への追悼ライブにすると、はっきりと宣言したのだ。そして、3時間10分の長いステージを見事にやり遂げた。
あっぱれだと思った。男だと思った。素晴らしいミュージシャンシップだと思った。この難しい時期に自分の仕事をきっちりとこなし、かつ天に眠る親友をしっかりと見送ったCHABOを、僕は一人の男として心から尊敬する。今日はミュージシャンとしてはもちろん、一人の男としてのCHABOの生き様を見せてもらったように思う。
いつもとは違い、賛美歌が流れる中をサングラスをかけたCHABOが登場。その瞬間、客席からは長い長い拍手が起こった。そうだ、みんなわかっているのだ。この日どんな気持ちでCHABOがステージに立っているのかを…。よくぞステージに出てきてくれた。頑張れ、CHABO。俺たちが付いてる。何が起ころうと、俺たちは最後までCHABOを見届けるぞ。そんな拍手だったんじゃないのかな、あれは。
冒頭はジョン・レノンのカバー「Oh My Love」のインストだった。ギブソンのナイロン弦を滑るCHABOの手がかすかに震えている。でも、オレは演奏の出来なんてどうでもいいと思った。この夜は特別なものなんだから…。
エルトン・ジョンの「ユア・ソング」。これは先月のポンタさんとのライブでもやっていたけど“ここにいるはずの君がいない…”という意味が以前とはがらっと変わってしまったことに気付き、早くも胸が締め付けられるような気持ちになってしまった。それでも、その後のMCでCHABOは“エルトン・ジョンの曲はこれと「なんとかロック」しか知らない”と言って笑いをとってくれ、ほっと肩の力が抜けたんだけどね。
ライブ本編はすべて洋楽のカバー。憶えてるところだと、「ハートに火をつけて」（これはドアーズ版じゃなくて、スペイン人みたいな名前のシンガーの方のバージョン）、マリアンヌ・フェイスフルの「アズ・ティアーズ・ゴー・バイ」、サイモン＆ガーファンクルの「四月になれば彼女は」、アレサ・フランクリンの「小さな願い」、キャロル・キングの「君の友だち」、スティービー・ワンダーの「太陽の当たる場所」、ルシンダ・ウイリアムスの「アー・ユー・オーライト」等が演奏されたはずだ。
改めて思ったんだけど、最近のCHABOはカバーを本当に多く歌ってきた。そして、気が付くとその日本語詞はみんな清志郎への想いが溢れたものばかりなのだ。
「太陽の当たる場所」では“太陽のあたる場所へ、君を連れて行こう。オレの肩につかまればいい…”。「小さな願い」では“朝起きると顔を洗う前に奇跡が起きることを願う”。「君の友だち」では“本当に辛い時、友だちとして自分は何が出来るだろう…”。ほんとうに、どれもこれも親友の身を案じる気持ちをストレートに歌いこんだものばかり。最近のCHABOの中で、如何に清志郎を想う時間が多かったかがよくわかる。
「アズ・ティアーズ・ゴー・バイ」はジャガー&リチャーズの作だが、MCでは清志郎からRCへの加入を薦められた留守電のバックに“アンジー”が流れていたというエピソードを話した。“あいつなりに一生懸命考えたんだろうな。バカだよな…”と、ぼそっとつぶやくCHABO。そのさり気なさにかえって喪失感の大きさが感じられ、たまらない気持ちになった。
個人的には、この日が「Cover Night」という枠のライブでかえって良かったと思う。
だって、追悼ライブに奏でられる曲がCHABOのオリジナルだったら、この後聴く時もしばらくはそのイメージを払拭できなくなってしまうだろう。それは辛い。あまりにも辛すぎる。
実は今、僕にとっては「夢介」がそんな状態なのだ。聴きたくて聴きたくてたまらないのに、どうしても清志郎の闘病とその後の死というフィルターを通して曲を聴いてしまう自分がいる。辛くて最後まで聴き通せないのだ。もう、そんな曲がこれ以上増えて欲しくない。まして、かけがえのないCHABOのアルバムでそんな思いを味わうのは絶対に嫌だ。
RCや清志郎、それにCHABOの曲は、僕にとってライブで聴くためだけの音楽ではない。日々の暮らしのいろんな場面で流れる生活のための音なのだ。そんな大事な歌たちが悲しみのベールを纏ってしまうのは辛い。すごく辛いんだ。そういった事態がCover Nightという枠があったおかげで回避できたと思ったのである。本当に勝手なファンの思い込みなんだけどね…。
でも、もしかしたらCHABO自身もそう思っていたかもしれないと思うのだ。最近のCHABOのオリジナルの中にも、清志郎との関係を歌ったと思われるものはあるにはあるが、癌の再発が告げられてから書かれたものは僕の知る限りない。
これは想像でしかないのだけれど、あまりにも辛い出来事を前にした時って、詞は書けても曲はなかなかできないものなのではないだろうか。だからCHABOは、自分の今の言葉に近いフィーリングの歌を探し、既存の楽曲に自分の想いを託す作業をしたんだと思う。最近のカバーの多さはそんな理由があったんじゃないだろうか。
この日のライブ本編で一番辛かったのは、ポエトリー・リーディングとその後に奏でられた中盤の何曲か。
ポエトリーは2本だった。最初は短い詩「バス停で待ってる」。そして次がエッセイ集「一枚のレコードから」の中から「カフーツ」の朗読だった。これは本当に聴いてて辛かった。暑かった1994年夏の思い出とともに、ザ・バンドの名盤「カフーツ」の話が語られるんだけど、この夏、清志郎とCHABOは本当に特別な夏を過ごしたことを思い出さずにはいられなかった。日比谷野音での一夜限りのライブ、GLAD ALL OVERに向けてのかけがえのない日々。北海道でのテレビ収録、清志郎の家でのリハーサルの日々…。蝉の鳴き声をバックに語られる宝石のような時間の断片を、CHABOは必死にかき集めているように見えた。2人とも大好きだったというザ・バンド。カバーされたのは「ムーン・ストラック・ワン」だったろうか…（違っていたらゴメンなさい。ここら辺はあまり自信がありません）。
後半はもう、ストレートな想いを吐き出した言葉の連続。
がんばっているけど、君の不在を受け止められないんだ。
夏がまた嫌いになりそうだ。
今は音楽も聴けない。あの頃のことを思い出してしまうから…。
涙を流して何度も天を指差しながら歌うCHABOは、本当に悲痛だった。僕はこの日は絶対に客席で涙を流すまいと思っていたんだけど、後半はダメだったなあ…。あのCHABOが、音楽を何よりも大切に思うCHABOが、それすら傍に置けないほど打ちのめされている…。そう思うだけで胸が潰れそうだった。
作者は忘れてしまったけど、「ハート・ライク・ア・ホイール」の歌詞も心に刺さった。CHABOはこんな風に歌っていたのだ。
“心はまるで車輪のよう。折り曲げてしまったら、直すことは出来ない”
アンコール。僕の心は複雑だった。CHABO、もう十分だよ…。もうゆっくり休んでくれよ…。僕はためらいながら手を叩いていた。でも、アンコールはあったのだ。CHABOは出てきた。いつものように…。
ドブロを手にしたCHABOは、清志郎の思い出がいっぱいだというサム・クックのカバー「ユー・センド・ミー」（間奏に“ティーンエイジャー”や“モーニングコールをよろしく”のフレーズを挿入）、少しづつでも前に進もうとする意思を示そうとするかのような「ユー・ガッタ・ムーブ」、そして、清志郎が闘ったブルースにケリを入れるかのようなローウェル・フルスンの「エブリデイ・アイ・ハブ・ザ・ブルース」をプレイした。
その後は、なんとRCサクセションの、忌野清志郎のカバーだった！
まず最初。MCでCHABOは言った。“君ぼく”と。「君が僕を知ってる」だ。演奏終了後、CHABOは堂々と「日本が生んだミディアムテンポのR&Bの最高傑作だ！」と叫んだ。そのとおりだと思う。そして、そう言い切ってしまえるほど誇りを持ってこの曲を演奏しているということに、改めてCHABOの歩んできた道の長さと、RCサクセションというバンドの偉大さと、清志郎というソングライターのデカさを感じた。
カバーはこれで終わらなかった。「いいことばかりはありゃしない」、そしてなんと「雨上がりの夜空に」が演奏されたのだ。
後から聞いた話だと、「雨上がり」は前日はなかったらしい。実際CHABOはこの日照明の後藤さんに“後藤、ゴメン。やっぱりこれを挟む！”と言っていたから、関係者も知らなかったことだったんだと思う。
しかし、なんと悲しい「雨上がり」だったことか…。コブシを振り上げながら悲しみの涙に暮れた「雨上がり」。でも、僕は今思うんだ。CHABOが清志郎がいなくなった今もこの曲をやってくれた。そのことだけで意味があるんだと。
曲が終わった後のこの曲の歌詞に関するエピソードも印象に残った。どういう話かっていうと、この曲がシングルバージョンとアルバムバージョンとで歌詞が違うこと、それが担当ディレクターのオヤジの意見でそうさせられちゃったということ、そして今でも若手バンドとイベントでこの曲をやると、シングルバージョンで覚えてくるバンドがけっこういるんで、合わせると歌詞が違っちゃうという話だ。
そして最後に、“だけど俺たち、「違う！」って言えねえんだよな…。RCっぽいだろ？”ってぼそっと言ったのが、何故かすごく心に残った。この日のライブで唯一CHABOが表情を緩めた瞬間だ。やっぱりRCの話をするのは楽しいんだろうなあ。客席の僕らはもう泣き笑いだ。
なんか、オレは嬉しかったんですよ。CHABOがこの期に及んでこんな話をしてくれるってことが。これはCHABOが、自分のライブにくる客がRCというバンドのカラーをよく知ってくれているということを知っているという前提があってこそ、CHABOがファンを信用してくれているからこそできる話だと思うからだ。
セルフカバーは「夜の散歩をしないかね」で終わった。後半の裏声にオレはびっくりした。僕はこれまで何十回もCHABOのライブを見てるけど、あんなCHABOの声は初めて聴いた。あの声は清志郎そのものだと思った。
最後の最後はグラハム・ナッシュの「嵐が去った後」。ここでもCHABOの歌詞はあまりに赤裸々。言葉の一つ一つが胸に突き刺さった。心が痛かった。だって、CHABOは切々とこう言うんだよ。
君に会いたいんだ。話があるんだ。友だちが必要なんだ。友達を突然奪われて悔しい…。
最後の最後、CHABOは清志郎宛ての手紙を読んだ。
その中でCHABOははっきりと言っていた。
「なあ清志郎、歌い続けること、だよな？」
3時間10分。CHABOはやり遂げた。やり遂げたのだ。オープニングと同じように賛美歌の流れる中ステージを去るCHABOに、いつまでも拍手は鳴り止まなかった。
こうしてCHABOにとっても、ファンにとっても特別な夜は終わった。
僕はこの日、よく一緒にライブを観ている同年代の友だちと一緒だった。彼は9日の葬儀式に行けなかった（行かなかった）んだけど、“これでやっと自分の中で区切りが付いた気がする”と言っていた。
僕も同じ気持ちだ。僕は葬儀式にも行ったけど、なんて言ったらいいんだろうか、あの葬儀式はGODとかKINGとか言われているパブリック・イメージの忌野清志郎の送別みたいなタッチで、今回の追悼ライブは、RC初期から清志郎を見ている人が抱いている清志郎のイメージ、かつて僕たちと近いところで歌っていた清志郎＝栗原清志への追悼みたいなタッチがあったと思う。
これは個人的な感じ方なんだけど、僕は以前からCHABOのライブで感じる観客のタッチは、清志郎のそれよりも、かつてのRCのファンに近いような感じがしていた。だから、なおのことこの夜をそう感じたのかもしれない。巧く言えないけど、明らかに葬儀式のあの感じとは違う空気が観客側にあったと思う。これは、RC時代から清志郎とCHABOをずっと見続けている人ならきっとわかってもらえる感覚なんじゃないだろうか。
もうひとつ思ったことがある。できることなら、明日からはもう清志郎のことで泣かないようにしようと思った。少なくともCHABOのライブでは、CHABOの見えるところでは、オレは絶対に涙を見せないようにしようと強く思う。
清志郎がこの世にいないのは寂しい。白状すると、僕は今でも家族が寝静まった後、独り酔い潰れてめそめそしたりする夜があるのだ。清志郎がこの世にいないという現実は、僕が思っていた以上に僕自身をを打ちのめし続けている。
でも、このライブを観ていて、当たり前の話だけど近しい人たちの悲しさはそれ以上なんだと気が付いたのだ。CHABOの悲しみの大きさは僕らの想像を絶するものがある。それは決してCHABOと「共有」することはできない。だったら、本当に辛いと思っている人に辛く悲しい顔を見せるのは、ただ悲しみを増幅させるだけなのではないだろうか。
僕らができる、忌野清志郎への最大の供養は、あまりにも月並みな結論かもしれないけど、やっぱり彼が残した作品をずっと聴き続けることだと思う。だって、僕らと清志郎との関係はあくまでミュージシャン対リスナーなのだから…。この関係は100年経っても変わらない。
ならば、僕は今までどおりに、死ぬまで清志郎の曲を聴き続けよう。当たり前のことかもしれないけど、そんなことを今更ながらに思った。
だからCHABO、今はまだ辛いだろうけど、これからもずーっとRCの歌を、清志郎の作った歌の数々を歌い続けてくれよ。
大丈夫。きっといつかは僕らも笑って聴けるようになるから。ゆっくりと、ゆっくりとでいいから、いつかのあの夏へ帰ろうぜ…。ねえ、CHABO…。
2009年04月12日
Monthly CHABO vol.10 仲井戸“CHABO”麗市 with 村上"ポンタ"秀一 「You've got a friend.」
この日のマンスリーは開場時間が30分以上も押しました。これは最近のCHABOのライブでは久しくなかったこと。久しぶりのポンタとのライブってことで、かなり細かくリハをやったんでしょうか？待ち時間には俳優の中尾彬・池波志乃ご夫妻が来場する場面に遭遇したりなんかして。うーん、CHABOと中尾彬、全然イメージ合いません（苦笑）。ポンタさん目当てだったのかなあ？中尾さん。
予定開演時間を20分ほど過ぎた頃、場内にジェームス・テイラー版の“君の友だち”が流れてCHABOが登場。この曲は7年前に青山円形劇場でポンタのライブにCHABOがゲスト出演した時にエンディングで流れた曲。なので、なんだか僕はあの時の続きみたいな錯覚に襲われました。
オープニングは久しぶりな感のある「幻想の旅人の唄」。この曲だけCHABO一人の演奏で、2曲目以降はすべてポンタを交えての共演となりました。
デュオの一曲目はむちゃくちゃ久しぶりの「HIMAWARI」。これをライブでやるのはHEART of SOUL BAND以来じゃないか？あの時はクラプトンを意識して派手にストラトを弾きまくっていたCHABOだけど、この日はぐっとテンポを落とし、アコギでポイントだけを爪弾くようなシンプルなアレンジを聴かせてくれました。この曲のアレンジに象徴されるように、ポンタも派手に叩きまくるというよりも、多彩な音色を使ってじっくりとCHABOの楽曲を盛り立てるようなドラミングに終始してました。
ポンタさん、かな〜り痩せたんじゃない？風の噂ではまた病気したなんて事も聞くし、ちょっと心配。青山円形劇場の時も直前に肺炎を患った話しをしてて、その時は煙草をスパッと止めたって言ってたのに、この日はステージで葉巻スパスパなんだもん（苦笑）。まあ、表情は明るくてCHABOとのやり取りも軽妙で元気そうではあったけど。
僕がこの日のセットで印象に残ったのは、やっぱ歌詞が立ってて映像が目の前に浮かんでくるような楽曲ですね。
具体的にいうと「さまざまな自由」とか「セントルイス・ブルース」、それから「ジャングル」とかかな。「さまざまな自由」は雨音のSEがイントロに続いてポンタさんのドラムが入ってくるのがなかなかスリリングだったな。「セントルイス・ブルース」、これは前にやったときのも今だに印象に残ってるんだけど、2人がやるとなんか明治の画家が描く洋画の中の世界みたいな映像が浮かぶんだよね。日本でもセントルイスでもない、正に幻想の港町みたいな…。
そんな感じだから、ポエトリーリーディングもいつもとはちょっと違うタッチがありました。びっくりしたのは、「ヒッピー・ヒッピー・シェイク」をここでやったことです。CHABOの楽曲の中でも最もソウルっぽいノリを持つこの曲を、まさか朗読でやるなんて…。でも、これがよかったんですよ。あらためてこの曲の歌詞の強さっていうか、シュールさが際立って耳に残りました。
それと、本編ラストの「ガルシアの風」も印象に残ったなあ。CHABOは「BLUE MOON」をマンスリーライブの課題曲と称して、その時のゲストといろんなアレンジで演奏しますが、実は「ガルシアの風」も裏課題曲で、ゲストによって大幅にアレンジが変わる曲のひとつなんです。この日は1番の歌詞をポエトリー調でやって、ポンタが様々な音色でバックアップしたんだけど、とても良かったです。なんか演劇的な要素を感じました。
あと、この日はカバーが異常に多かったように感じました。それも、同世代であることを意識してか60年代後半から70年代にかけてのものがほとんど。ちょっと挙げてみてもピーター＆ゴードンの「愛なき世界」、ドアーズの「ハートに火をつけて」、アレサ・フランクリンの「小さな願い」、サイモン＆ガーファンクルの「4月になれば彼女は」、それにエルトン・ジョンの「ユア・ソング」、マーサ＆バンデラスの｢ダンシング・イン・ザ・ストリート｣、アンコールではライブのタイトルにもなっていた「君の友だち」。
誤解を恐れずに言うと、今回演奏されたカバーは僕的にはどれもイマイチでした。はっきり言うと「愛なき世界」以外はどれも苦しかったです。
あのねえ、ちょっと最近CHABOの取り上げるカバーは直球すぎます。で、楽曲が直球であればあるほどそこから脱するのは大変だと思うんですよ。キーボードのリフとジム・モリソンのクールな低音が耳に残る「ハートに火をつけて」、アレサの圧倒的な絶唱に心打たれる「小さな願い」、こんなのをアコギで弾き語ること自体無茶ですって。他のカバーにしても、もう少し歌い込んでからやって欲しかったなあ。
こんなもんじゃないでしょ、ほんとのCHABOって。あまりにもフラットな歌い方で悲しくなりましたよ、ワタシは。「君の友だち」なんて俺が歌った方がイイんじゃないかとすら思ったぐらい（苦笑）。
うーん、厳しいことを書きましたが、これはこの日のカバーが最近になくキツイと感じたから（オリジナルを聴いたことがない人はまた違った感想を持ったかもしれませんが…）。来月のマンスリーはCHABOのソロで全曲カバーのライブですよね。これは相当気合入れて演って欲しいと思います。
中盤では突然ポンタのドラム教室が始まったり（これ、別料金だそうです（笑））、「DREAMS TO REMEMBER」ではギターテックのマチャミさんもサイドギターを弾いたりと、終始リラックスした中でのライブでした。
最後の最後は、青山円形劇場で共演した時と同じで、ポンタがヴォーカルを取る「おやすみ」。
その後、2人で肩を組みながら客席の声援に応え、サッチモの「この素晴らしき世界」が流れて深々とお辞儀。2人が顔を上げると客席はスタンディングオベーション…ってのがいつものマンスリーのお約束なんですが、この日はなぜか2人が肩を組むと立ち上がっちゃう人が何人もいて、結局お辞儀前にスタンディングオベーションという珍しい風景が展開されました（笑）。
ところで、CHABOとポンタといえば、LOSERやHEART of SOUL BANDなどバンド形態での共演が多いので、この日もエレキでバリバリ…みたいなノリを期待してた人がけっこう多かったみたい。でも、僕は最初からそうはならないと読んでました。円形劇場の時も、ドラムのフルセットを3つも持ち込んでたポンタに対し、CHABOは最初から最後までチェット・アトキンス一本だったからね。僕も、あの時は“1曲ぐらいエレキで絡んで欲しかった…”と思ったりもしたんだけど、今考えてみるとあれはわざとそういう絡みでやったんだと思うんです。つまり、2人は最初からバンド的なノリは想定していないと思うわけ。
ポンタはCHABOの資質の中の“言葉”の部分を高く評価しているわけでしょ。だから、それを引き立てるドラミングをやりたいんだろうし、CHABOもポンタのそういうところを気に入ってるんだと思うんだ。実際、ポンタは歌い手のバックで叩くことでは定評のある人ですからね。
久々に再会した2人が、お互いの良いところをリスペクトしつつ音を出すのを楽しんでいる…。この日のライブはそんな場になっていたと思います。
予定開演時間を20分ほど過ぎた頃、場内にジェームス・テイラー版の“君の友だち”が流れてCHABOが登場。この曲は7年前に青山円形劇場でポンタのライブにCHABOがゲスト出演した時にエンディングで流れた曲。なので、なんだか僕はあの時の続きみたいな錯覚に襲われました。
オープニングは久しぶりな感のある「幻想の旅人の唄」。この曲だけCHABO一人の演奏で、2曲目以降はすべてポンタを交えての共演となりました。
デュオの一曲目はむちゃくちゃ久しぶりの「HIMAWARI」。これをライブでやるのはHEART of SOUL BAND以来じゃないか？あの時はクラプトンを意識して派手にストラトを弾きまくっていたCHABOだけど、この日はぐっとテンポを落とし、アコギでポイントだけを爪弾くようなシンプルなアレンジを聴かせてくれました。この曲のアレンジに象徴されるように、ポンタも派手に叩きまくるというよりも、多彩な音色を使ってじっくりとCHABOの楽曲を盛り立てるようなドラミングに終始してました。
ポンタさん、かな〜り痩せたんじゃない？風の噂ではまた病気したなんて事も聞くし、ちょっと心配。青山円形劇場の時も直前に肺炎を患った話しをしてて、その時は煙草をスパッと止めたって言ってたのに、この日はステージで葉巻スパスパなんだもん（苦笑）。まあ、表情は明るくてCHABOとのやり取りも軽妙で元気そうではあったけど。
僕がこの日のセットで印象に残ったのは、やっぱ歌詞が立ってて映像が目の前に浮かんでくるような楽曲ですね。
具体的にいうと「さまざまな自由」とか「セントルイス・ブルース」、それから「ジャングル」とかかな。「さまざまな自由」は雨音のSEがイントロに続いてポンタさんのドラムが入ってくるのがなかなかスリリングだったな。「セントルイス・ブルース」、これは前にやったときのも今だに印象に残ってるんだけど、2人がやるとなんか明治の画家が描く洋画の中の世界みたいな映像が浮かぶんだよね。日本でもセントルイスでもない、正に幻想の港町みたいな…。
そんな感じだから、ポエトリーリーディングもいつもとはちょっと違うタッチがありました。びっくりしたのは、「ヒッピー・ヒッピー・シェイク」をここでやったことです。CHABOの楽曲の中でも最もソウルっぽいノリを持つこの曲を、まさか朗読でやるなんて…。でも、これがよかったんですよ。あらためてこの曲の歌詞の強さっていうか、シュールさが際立って耳に残りました。
それと、本編ラストの「ガルシアの風」も印象に残ったなあ。CHABOは「BLUE MOON」をマンスリーライブの課題曲と称して、その時のゲストといろんなアレンジで演奏しますが、実は「ガルシアの風」も裏課題曲で、ゲストによって大幅にアレンジが変わる曲のひとつなんです。この日は1番の歌詞をポエトリー調でやって、ポンタが様々な音色でバックアップしたんだけど、とても良かったです。なんか演劇的な要素を感じました。
あと、この日はカバーが異常に多かったように感じました。それも、同世代であることを意識してか60年代後半から70年代にかけてのものがほとんど。ちょっと挙げてみてもピーター＆ゴードンの「愛なき世界」、ドアーズの「ハートに火をつけて」、アレサ・フランクリンの「小さな願い」、サイモン＆ガーファンクルの「4月になれば彼女は」、それにエルトン・ジョンの「ユア・ソング」、マーサ＆バンデラスの｢ダンシング・イン・ザ・ストリート｣、アンコールではライブのタイトルにもなっていた「君の友だち」。
誤解を恐れずに言うと、今回演奏されたカバーは僕的にはどれもイマイチでした。はっきり言うと「愛なき世界」以外はどれも苦しかったです。
あのねえ、ちょっと最近CHABOの取り上げるカバーは直球すぎます。で、楽曲が直球であればあるほどそこから脱するのは大変だと思うんですよ。キーボードのリフとジム・モリソンのクールな低音が耳に残る「ハートに火をつけて」、アレサの圧倒的な絶唱に心打たれる「小さな願い」、こんなのをアコギで弾き語ること自体無茶ですって。他のカバーにしても、もう少し歌い込んでからやって欲しかったなあ。
こんなもんじゃないでしょ、ほんとのCHABOって。あまりにもフラットな歌い方で悲しくなりましたよ、ワタシは。「君の友だち」なんて俺が歌った方がイイんじゃないかとすら思ったぐらい（苦笑）。
うーん、厳しいことを書きましたが、これはこの日のカバーが最近になくキツイと感じたから（オリジナルを聴いたことがない人はまた違った感想を持ったかもしれませんが…）。来月のマンスリーはCHABOのソロで全曲カバーのライブですよね。これは相当気合入れて演って欲しいと思います。
中盤では突然ポンタのドラム教室が始まったり（これ、別料金だそうです（笑））、「DREAMS TO REMEMBER」ではギターテックのマチャミさんもサイドギターを弾いたりと、終始リラックスした中でのライブでした。
最後の最後は、青山円形劇場で共演した時と同じで、ポンタがヴォーカルを取る「おやすみ」。
その後、2人で肩を組みながら客席の声援に応え、サッチモの「この素晴らしき世界」が流れて深々とお辞儀。2人が顔を上げると客席はスタンディングオベーション…ってのがいつものマンスリーのお約束なんですが、この日はなぜか2人が肩を組むと立ち上がっちゃう人が何人もいて、結局お辞儀前にスタンディングオベーションという珍しい風景が展開されました（笑）。
ところで、CHABOとポンタといえば、LOSERやHEART of SOUL BANDなどバンド形態での共演が多いので、この日もエレキでバリバリ…みたいなノリを期待してた人がけっこう多かったみたい。でも、僕は最初からそうはならないと読んでました。円形劇場の時も、ドラムのフルセットを3つも持ち込んでたポンタに対し、CHABOは最初から最後までチェット・アトキンス一本だったからね。僕も、あの時は“1曲ぐらいエレキで絡んで欲しかった…”と思ったりもしたんだけど、今考えてみるとあれはわざとそういう絡みでやったんだと思うんです。つまり、2人は最初からバンド的なノリは想定していないと思うわけ。
ポンタはCHABOの資質の中の“言葉”の部分を高く評価しているわけでしょ。だから、それを引き立てるドラミングをやりたいんだろうし、CHABOもポンタのそういうところを気に入ってるんだと思うんだ。実際、ポンタは歌い手のバックで叩くことでは定評のある人ですからね。
久々に再会した2人が、お互いの良いところをリスペクトしつつ音を出すのを楽しんでいる…。この日のライブはそんな場になっていたと思います。
2008年12月22日
麗蘭2008「継続は力なり。」...ってか。 / 12月22日（月）東京・Shibuya O-EAST
俺ねえ、今年の麗蘭はぜ〜ったいロックモード全開になると思ってたんですよ。春から始まった南青山MANDALAの月例ライブに加え、シーナ&ロケッツの30周年ライブへのゲスト参加や「野郎共との饗宴」など、今年後半は大きなライブがたくさんあったCHABOですが、なんか夏以降はライブを重ねるごとに急速にロック化していくようなタッチがあったんだよね、CHABO。この流れだと年末の麗蘭は大爆発するんじゃないかと思ったんですよ、俺。予感的中！やっぱバンドは強力だと改めて思いましたね。
去年の麗と蘭も良かったですが、今年は早川さん・北澤さんの存在の大きさを改めて感じました。俺、北澤さんがポール鈴木さんとチェンジした時から、このバンドは第二章に入ったと思ってるんですよ。具体的に言うと、以前の麗蘭ってのは、基本はCHABOのアコギ＋蘭丸のエレキで、そこにパーカスの鈴木さんのポリリズムっぽいビートを絡めて無国籍な香りを付けたユニットだったと思うんだよね。骨太なロックをストレートにやるというより、CHABO＋蘭丸のデュオをバンドスタイルでバックアップする感じ。あくまでも主役は2人だったと思うんだ。去年の麗と蘭という2人だけのスタイルが、初期の麗蘭をなんとなく思い出させたのは、そのせいもあったと思うんです。
今の麗蘭はもっと4人ががっぷり組み合ってますよね。ユニットじゃなくて骨太のロックバンドに変貌してます。俺、鈴木さんと北沢さんのチェンジは、CHABOがこの4人でオーソドックスなロックをやる決意を固めた表れだと思ってんですよ。それが今年はより強力に出てたように思いました。
この日、CHABOが一番使ったのは黒のストラトとGODINだったんじゃないのかな。エレキの印象が強烈に残ってます。僕の記憶が正しければ、CHABOはお得意のチェット・アトキンスを一回も使わなかったんじゃなかったかな。これってすごく珍しいと思うんですよ。
でも、そういう気分だったんだと思うんだよね、CHABOは。エレキでバリバリ攻めたかった。俺、思いましたよ。やっぱ、この4人はもっと頻繁にやってくれなきゃ駄目だっ！今の日本でこれだけ骨太のロックをストレートに鳴らしてるバンドってそうそうないんだからさ！
個人的なことを言うと、今年は京都に行けないんでこれが最初で最後の年末の麗蘭でした。当日はあいにくの雨でしたが、そんなの屁でもなかったっす。会場のShibuya O-EASTは見易くて音がいいことも前から知ってましたから、楽しみで楽しみでしょうがなかったんだ、この日が。
オープニングは「麗蘭のテーマ」。俺、この曲聴くと、いっつもゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウトに入ってるストレイ・キャット・ブルースを思い出すんです。ミドルテンポのブルースですね。
そして、ファンキーなアレンジになった「ミッドナイトブギ」。ファンなら最初のほうにやることがわかってる曲だけど、アレンジを変え、早くもここでスカすCHABO。うーん、ニクイぜ！（笑）
3曲目は「Simple Love Song」。うわー、スゲエ久しぶり…。4年前の「ROCK馬鹿と知的ヒッピーを元気にするTOUR」京都磔磔初日を思い出しました。俺、あの時は運よくCHABO側最前列だったんですよ。で、僕の着てたSTAXのTシャツを見て“お前、いいTシャツ着てんなあ〜。脱げ！！”なんて突っ込んでくれたんだ（笑）。曲間でも“スタックス・レーベル！”なんて言ってくれたっけ…。久々にサビのコーラスを一緒に歌って、過ぎ去った季節のことをちょっと思ったりなんかして。でも、とにもかくにもこうしてCHABOも僕も今こうして同じ空間にいられるんだもんね。うーん、継続は力なり。…ってか（笑）。
驚いたのは、序盤で早くも「真冬の熱帯夜」が飛び出したこと。ファンなら良く知ってると思うけど、これは後半の盛り上がりでプレイされる類の曲です。MCでCHABOが“熱〜い！”って叫んだからまさか!?と思ったんだけど、そのまさかでした。ブラックのストラトをキース・リチャーズばりのアクションでジャラーン！と弾くCHABOはカッコいいことこの上なしでした！
そう言えば、この日のCHABOは異様にローリング・ストーンズっぽいノリだったように思いましたね。MCで言ってたけど、CHABOも例のストーンズの映画「Shin A Light」を見たみたい。知らず知らずのうちに影響されちゃってたのかもなあ…。この日の「真冬の熱帯夜」はまるでONE HIT(TO THE BODY)みたいだったし、驚きの「AS TEARS GO BY」のカバー（蘭丸の12弦の綺麗なことと言ったら！）も飛び出しました。アンコールではストーンズのバージョン以上に黒っぽい「ハーレム・シャッフル」もやりましたし。
中盤は椅子に腰掛けて、久々の感のある「顔」。いやあ〜、この曲聴くと、ほんと京都行きたくなるわ…。
中盤では懐かしい「真夜中のカウボーイ」が。これは、“ホームレス問題を扱った”なんて冗談ぽく言ってたCHABだけど、今年後半になってにわかに増えた、職を失い家を失った人たちへの想いがあったからこそセットリストに入ったんじゃないなと思います。CHABOってのはそういう人ですよね。
例と蘭で去年出したアルバム『1+1』からは一曲のみのセレクト。「Blue Blue」をバンドスタイルで。ゴリゴリのエレキアレンジで、デュオの時とは全然違う骨太な演奏でした。そう言えば、これはもともと例蘭のバンド用に書いた曲って言ってたもんな。こっちが本来の姿なのかも。
蘭丸がボーカルをとったのは「Blues in 回転木馬」。これがまた、いつも以上にどっしりしたアレンジになってました。テンポもちょっと落とし、よりヘビーなブルースになった印象です。続けてやったのが「あこがれのSouthern Man」で、この2曲は二人がエレキを弾きまくるわけですが、O-EASTは音の分離がとてもよく、二人のプレイがとてもクリアに耳に飛び込んできてすごく気持ちよかったです。「あこがれのSouthern Man」後半のギターバトルは、聴いてて頭の中が一瞬真っ白になったぐらい。
アメリカのオバマ次期大統領に期待をこめて演奏された「Yes We Can」も最高でした。これはニューオリンズの巨匠アラン・トゥーサンのカバーだけど、大胆なアレンジと、CHABOお得意の日本語詞でほとんど新曲と言ってもいいぐらいの印象でした。特に、ボーカルスタイルは今までにない感じ。トーキング・ブルース調って言うか、ラップっぽい早口ボーカルに世相を反映した歌詞を乗せてアジるCHABOは最高にカッコよかったです。
これは新しい「時代は変わる」になりそうですね。ここ何年か、CHABOはボブ・ディランの「時代は変わる」にオリジナルの日本語詞を乗せ、それにその年の世相を加えてましたけど、今回はそれを封印。その代わりをこれに託したんじゃないかな。うーん、イイ曲です！黒っぽくてファンキーで、実に麗蘭らしいじゃないですか！
「今夜R&Bを」は、なんかいつも以上にグッときました。曲に入る前にCHABOはまず、アール・パーマーに対する哀悼の意を表し、10月に急逝した塩次伸二さんの話をしました。そうだよなあ、なにしろ自分と同世代のギタリストですから、思うところもあるよなあ…。エンディングでは「Next year, someday, he will comeback, Mr.Sweet Soul，……清志郎！」。……。
ちょっとしんみりした感じになったけど、「ミュージック」でまた大盛り上がり。この辺からの畳み掛けは凄かったです。こんな時代だからこそ、こんな糞みたいな世の中だからこそ音楽でぶっ飛ぶんだ〜っ！みたいな、CHABOの気迫を感じました。
アンコールでもそのノリは続きます。「Get Back」はすごく大きな曲になったように思います。暗い時代に風穴を開けようとする、CHABOの強固な意志を反映したような力強い演奏でした。
そして、今月のMANDALAマンスリーライブでも演奏された、オルタナティブ・カントリーの女性シンガー、ルシンダ・ウィリアムスの「Are You Alright?」。これはここ最近のCHABOのカバー曲の中でも最高の部類に入る名曲じゃないのかなあ。
“Are You Alright?”というリフレインの後に、“君はそこにいるかい？”“眠れているかい？”“会いたいものに会ったかい？”“欲しいものは何？”“会いたいひとは誰？”“本当の望みは何？”と畳み掛けるように問いかける歌詞が、切々と胸に沁みるんですよ…。そして、エンディングでは“君はそこにいるのかい？”“生きているのがわかるかい？”と…。CHABOがいったいどんな思いでこんな詞を書いたのか、ファンならみんなわかりますよね…。
この曲が終わった後の「Hello Good-bye」も、なんだか例年以上にぐっとくる感じがしました。清志郎の復活と更なるブルースの続き。まさかの楽器盗難。CHABOにとって、今年はほんとにいろんなことがあった年だったはずです。CHABOだけじゃないよなあ、僕だって今年は波乱万丈だったし、きっと、この日雨の中渋谷に集まった人たちも、それぞれの想いを胸にしまってこの曲を聴いてたんだと思います。
人間の価値は 誰がいつ決めるのだろう
どう生きたかなのか どう生きるかなのか？
考えてみると、すごく重い歌詞だよねえ…。
最後にメンバー紹介を兼ねた「ミステリー」で、麗蘭は静かにステージから去って行きました。
最初にも書いたけど、今年はアッパーなナンバーがたくさん並び、エレキを多用したこともあって、例年以上にロックっぽい印象の残った麗蘭でした。3時間が本当にあっという間。
2009年のCHABOも、この流れのままガツン！と行くのかな。個人的にも今年後半はロックモードになってるんで、是非この調子でぶっ飛ばしてもらいたいもんだと思います。現実なんて突き抜けてしまうようなリアルなブルースをガンガンかまして欲しいな。CHABO、Jump Again！
去年の麗と蘭も良かったですが、今年は早川さん・北澤さんの存在の大きさを改めて感じました。俺、北澤さんがポール鈴木さんとチェンジした時から、このバンドは第二章に入ったと思ってるんですよ。具体的に言うと、以前の麗蘭ってのは、基本はCHABOのアコギ＋蘭丸のエレキで、そこにパーカスの鈴木さんのポリリズムっぽいビートを絡めて無国籍な香りを付けたユニットだったと思うんだよね。骨太なロックをストレートにやるというより、CHABO＋蘭丸のデュオをバンドスタイルでバックアップする感じ。あくまでも主役は2人だったと思うんだ。去年の麗と蘭という2人だけのスタイルが、初期の麗蘭をなんとなく思い出させたのは、そのせいもあったと思うんです。
今の麗蘭はもっと4人ががっぷり組み合ってますよね。ユニットじゃなくて骨太のロックバンドに変貌してます。俺、鈴木さんと北沢さんのチェンジは、CHABOがこの4人でオーソドックスなロックをやる決意を固めた表れだと思ってんですよ。それが今年はより強力に出てたように思いました。
この日、CHABOが一番使ったのは黒のストラトとGODINだったんじゃないのかな。エレキの印象が強烈に残ってます。僕の記憶が正しければ、CHABOはお得意のチェット・アトキンスを一回も使わなかったんじゃなかったかな。これってすごく珍しいと思うんですよ。
でも、そういう気分だったんだと思うんだよね、CHABOは。エレキでバリバリ攻めたかった。俺、思いましたよ。やっぱ、この4人はもっと頻繁にやってくれなきゃ駄目だっ！今の日本でこれだけ骨太のロックをストレートに鳴らしてるバンドってそうそうないんだからさ！
個人的なことを言うと、今年は京都に行けないんでこれが最初で最後の年末の麗蘭でした。当日はあいにくの雨でしたが、そんなの屁でもなかったっす。会場のShibuya O-EASTは見易くて音がいいことも前から知ってましたから、楽しみで楽しみでしょうがなかったんだ、この日が。
オープニングは「麗蘭のテーマ」。俺、この曲聴くと、いっつもゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウトに入ってるストレイ・キャット・ブルースを思い出すんです。ミドルテンポのブルースですね。
そして、ファンキーなアレンジになった「ミッドナイトブギ」。ファンなら最初のほうにやることがわかってる曲だけど、アレンジを変え、早くもここでスカすCHABO。うーん、ニクイぜ！（笑）
3曲目は「Simple Love Song」。うわー、スゲエ久しぶり…。4年前の「ROCK馬鹿と知的ヒッピーを元気にするTOUR」京都磔磔初日を思い出しました。俺、あの時は運よくCHABO側最前列だったんですよ。で、僕の着てたSTAXのTシャツを見て“お前、いいTシャツ着てんなあ〜。脱げ！！”なんて突っ込んでくれたんだ（笑）。曲間でも“スタックス・レーベル！”なんて言ってくれたっけ…。久々にサビのコーラスを一緒に歌って、過ぎ去った季節のことをちょっと思ったりなんかして。でも、とにもかくにもこうしてCHABOも僕も今こうして同じ空間にいられるんだもんね。うーん、継続は力なり。…ってか（笑）。
驚いたのは、序盤で早くも「真冬の熱帯夜」が飛び出したこと。ファンなら良く知ってると思うけど、これは後半の盛り上がりでプレイされる類の曲です。MCでCHABOが“熱〜い！”って叫んだからまさか!?と思ったんだけど、そのまさかでした。ブラックのストラトをキース・リチャーズばりのアクションでジャラーン！と弾くCHABOはカッコいいことこの上なしでした！
そう言えば、この日のCHABOは異様にローリング・ストーンズっぽいノリだったように思いましたね。MCで言ってたけど、CHABOも例のストーンズの映画「Shin A Light」を見たみたい。知らず知らずのうちに影響されちゃってたのかもなあ…。この日の「真冬の熱帯夜」はまるでONE HIT(TO THE BODY)みたいだったし、驚きの「AS TEARS GO BY」のカバー（蘭丸の12弦の綺麗なことと言ったら！）も飛び出しました。アンコールではストーンズのバージョン以上に黒っぽい「ハーレム・シャッフル」もやりましたし。
中盤は椅子に腰掛けて、久々の感のある「顔」。いやあ〜、この曲聴くと、ほんと京都行きたくなるわ…。
中盤では懐かしい「真夜中のカウボーイ」が。これは、“ホームレス問題を扱った”なんて冗談ぽく言ってたCHABだけど、今年後半になってにわかに増えた、職を失い家を失った人たちへの想いがあったからこそセットリストに入ったんじゃないなと思います。CHABOってのはそういう人ですよね。
例と蘭で去年出したアルバム『1+1』からは一曲のみのセレクト。「Blue Blue」をバンドスタイルで。ゴリゴリのエレキアレンジで、デュオの時とは全然違う骨太な演奏でした。そう言えば、これはもともと例蘭のバンド用に書いた曲って言ってたもんな。こっちが本来の姿なのかも。
蘭丸がボーカルをとったのは「Blues in 回転木馬」。これがまた、いつも以上にどっしりしたアレンジになってました。テンポもちょっと落とし、よりヘビーなブルースになった印象です。続けてやったのが「あこがれのSouthern Man」で、この2曲は二人がエレキを弾きまくるわけですが、O-EASTは音の分離がとてもよく、二人のプレイがとてもクリアに耳に飛び込んできてすごく気持ちよかったです。「あこがれのSouthern Man」後半のギターバトルは、聴いてて頭の中が一瞬真っ白になったぐらい。
アメリカのオバマ次期大統領に期待をこめて演奏された「Yes We Can」も最高でした。これはニューオリンズの巨匠アラン・トゥーサンのカバーだけど、大胆なアレンジと、CHABOお得意の日本語詞でほとんど新曲と言ってもいいぐらいの印象でした。特に、ボーカルスタイルは今までにない感じ。トーキング・ブルース調って言うか、ラップっぽい早口ボーカルに世相を反映した歌詞を乗せてアジるCHABOは最高にカッコよかったです。
これは新しい「時代は変わる」になりそうですね。ここ何年か、CHABOはボブ・ディランの「時代は変わる」にオリジナルの日本語詞を乗せ、それにその年の世相を加えてましたけど、今回はそれを封印。その代わりをこれに託したんじゃないかな。うーん、イイ曲です！黒っぽくてファンキーで、実に麗蘭らしいじゃないですか！
「今夜R&Bを」は、なんかいつも以上にグッときました。曲に入る前にCHABOはまず、アール・パーマーに対する哀悼の意を表し、10月に急逝した塩次伸二さんの話をしました。そうだよなあ、なにしろ自分と同世代のギタリストですから、思うところもあるよなあ…。エンディングでは「Next year, someday, he will comeback, Mr.Sweet Soul，……清志郎！」。……。
ちょっとしんみりした感じになったけど、「ミュージック」でまた大盛り上がり。この辺からの畳み掛けは凄かったです。こんな時代だからこそ、こんな糞みたいな世の中だからこそ音楽でぶっ飛ぶんだ〜っ！みたいな、CHABOの気迫を感じました。
アンコールでもそのノリは続きます。「Get Back」はすごく大きな曲になったように思います。暗い時代に風穴を開けようとする、CHABOの強固な意志を反映したような力強い演奏でした。
そして、今月のMANDALAマンスリーライブでも演奏された、オルタナティブ・カントリーの女性シンガー、ルシンダ・ウィリアムスの「Are You Alright?」。これはここ最近のCHABOのカバー曲の中でも最高の部類に入る名曲じゃないのかなあ。
“Are You Alright?”というリフレインの後に、“君はそこにいるかい？”“眠れているかい？”“会いたいものに会ったかい？”“欲しいものは何？”“会いたいひとは誰？”“本当の望みは何？”と畳み掛けるように問いかける歌詞が、切々と胸に沁みるんですよ…。そして、エンディングでは“君はそこにいるのかい？”“生きているのがわかるかい？”と…。CHABOがいったいどんな思いでこんな詞を書いたのか、ファンならみんなわかりますよね…。
この曲が終わった後の「Hello Good-bye」も、なんだか例年以上にぐっとくる感じがしました。清志郎の復活と更なるブルースの続き。まさかの楽器盗難。CHABOにとって、今年はほんとにいろんなことがあった年だったはずです。CHABOだけじゃないよなあ、僕だって今年は波乱万丈だったし、きっと、この日雨の中渋谷に集まった人たちも、それぞれの想いを胸にしまってこの曲を聴いてたんだと思います。
人間の価値は 誰がいつ決めるのだろう
どう生きたかなのか どう生きるかなのか？
考えてみると、すごく重い歌詞だよねえ…。
最後にメンバー紹介を兼ねた「ミステリー」で、麗蘭は静かにステージから去って行きました。
最初にも書いたけど、今年はアッパーなナンバーがたくさん並び、エレキを多用したこともあって、例年以上にロックっぽい印象の残った麗蘭でした。3時間が本当にあっという間。
2009年のCHABOも、この流れのままガツン！と行くのかな。個人的にも今年後半はロックモードになってるんで、是非この調子でぶっ飛ばしてもらいたいもんだと思います。現実なんて突き抜けてしまうようなリアルなブルースをガンガンかまして欲しいな。CHABO、Jump Again！
2008年12月12日
Monthly CHABO vol.6「Two Of Us」仲井戸"CHABO"麗市 with Dr.kyOn / 2008年12月11日（木）南青山MANDALA
素晴らしい夜でした！
オレ、CHABOのライブが終わるといつも素晴らしい、素晴らしいって言ってるから“またかよ…”って思われちゃうかもしれないけど（苦笑）、今回のは特に素晴らしかったと思うんですよ！僕的にはこれまで見てきたソロライブでも最高の部類に入ります。マジで一生忘れらない夜になりました。
開演時刻の19:30を10分ほど回り、まずはCHABOが一人で登場。珍しくカーディガンを羽織ってます。なんでも、70年代に見たジミー・クリフのライブでキーボードの人が着てたのを見てカッコいいと思ったんだとか。暑かったみたいで、すぐ脱いじゃったんだけどね（笑）。
オープニングは「スケッチN.Y.'98」。意外と言えば意外な選曲ですが、たぶんCHABOは12月のライブであることを意識して、ジョン・レノンの街だったニューヨークを歌ったこれを初っ端に持ってきたんでしょう。
この日のMANDALAはクリスマスの飾り付けでいっぱいでした。僕はステージに向かって左手後方のソファー席だったんだけど、すぐ後ろには巨大なクリスマスっぽいオブジェが飾ってあり、CHABOもステージから“すげえ…”って言ってたな。
なんと、この日だけのスペシャルカクテルまで用意されてたんです。CHABOも感激したみたいで、何度もお客さんにオーダーを薦めてました。後半ではステージに運ばれてきたカクテルをまんまお客さんにあげちゃうサプライズも。
kyOnさんが登場してきたのは2曲目から。2人の共演1曲目は、2人でギターを手にしてライブのテーマでもあるビートルズの「Two of Us」。原曲に忠実なカントリータッチのアレンジですっごく良かったです。
序盤、珍しいところでは「テニス」なんかも飛び出しました。kyOnさんはマンドリンを手に、サビのフレーズではラケットを振る仕草。CHABOに“テニス、やるの？”って聞かれて“いや、全然”って言ってたけどね（笑）。
課題曲「BLUE MOON」あたりからいよいよkyOnさんが本領を発揮し始めます。クラビネットっぽい音色で、70年代ソウルっぽいアレンジの「BLUE MOON」に驚きました。いやあ〜こんなアレンジは初めて。kyOnさん、流石だなあ…。
そうかと思うと、数年前にFUJIMASAでもやった「SOUL スーダラ節」が飛び出したりして、硬軟使い分け、2人は緩急自在にライブを楽しんる様子でした。
この2人、バンドでは何度も同じステージに立ってますけど、純然たるデュオは初めてなんですよね。とてもそうとは思えないぐらい息はぴったりでした。
kyOnさんも数曲でリードボーカルを担当。カズーを使った「青いシャツ着て」は良かったなあ…。“青〜いシャツ着て〜、青〜いシャツ着て〜”。これ、メロはダニエル・ビダルの「オー・シャンゼリゼ」なんだけど、それに村八分のベースだった加藤義明が日本語の詞を付けた曲なんですよ。kyOnさんのはカバーのカバーってわけです。加藤さんとkyOnは京都繋がりもあるし、根っこの部分で共有できてる感覚があるんだなあと思いました。
この日のCHABOはエレキをたくさんプレイしてくれました。メインに使ってたのは黒のストラトキャスター。それとギブソン335も多用。ザ・バンドのカバー「トワイライト」はその335で。曲に入る前にさり気なく弾いたフレーズが思いっきりロビー・ロバートソンしてて感激しちゃいました。
kyOnとCHABOはHEART AND SOULバンドでやった時期が濃密だったせいか、アルバムで言うと「DADA」の時代の曲が多く演奏された印象があります。久々に聞く曲もたくさん。「新宿を語る 冬」なんて、いったい何年ぶりだろう…。
あと、なんつっても「はぐれた遠い子供たちへ」。CHABO、“初めてやるかもしれない”って言ってましたけど、初期のソロライブでやってましたよね、これは。
でもエレキ・アレンジでは初めてかもなあ。リズムボックスのビートに乗っかって、ギブソンのセミアコでスライドを…。アルバムバージョンのジョージ・ハリスン・マナーそのまんまでした。ぐっときましたよ、これは！
この曲は、スタジオで煮詰まった時にずっとkyOnがそばにいてくれた思い出があるらしいんだけど、ほんとに詞が素晴らしいなあって改めて思いました。まったく無駄のない、100％ピュアなCHABOの世界が表現された歌詞。イントロのスライドにしても、CHABOの特徴であるメロの明瞭さが感じられるし、これはある意味CHABOの原点ともいうべき曲だと思うんですよね、俺は。
この時期になると必ずやってくれる「Merry X'mas Baby」も勿論やってくれました。
これがねえ、なんかすごく良かったんだよなあ…。ソロでも麗蘭でも何度も聴いてる曲ですが、この日の「Merry X'mas Baby」は今まで一番ぐっときたかも。
ポエトリーリーディングは「エレキギター�機↓供廚鯊海韻討笋蠅泙靴拭�kyOnさんがバックで弾いてたのは、スティ−ブ・ウィンウッド（というか、トラフィックですな）の「Glad」。続けて読まれた「黒人音楽」ではレイ・チャールズの「What' I Say」。この夜のポエトリーリーディングは、かなりソウルっぽいムードでした。
カバーも多かったんだけど、特に目立ったのがザ・バンド。MCでもリチャード・マニュエルに関する話が心に残りました。ツアー先で首を吊ったリチャード。そんな彼についてリック・ダンコが語った言葉。そんなリックも今は鬼門に入ってしまって…。そんな話。その後、確かリチャードに敬意を表して「ユー・ドント・ノウ・ミー」をやったんじゃなかったかな。
そうそう、ルシンダ・ウィリアムズの「Are You Alright ?」もやったっけ。それと「Christmas must be tonight」。このあたりのカバーのセレクトと、CHABOのつけた日本語詞には等身大のCHABOの気持ちが反映されてると思います。流れゆく時や去っていった人たちを慈しむような、温かく深く染み入る歌詞。
でも、kyOnがいるせいか、あまり湿っぽい感じにはならなかったんですよね。外に向かって窓を開け放つような、とても明るいタッチのライブになってました。やっぱり、kyOnさんってとても華のあるミュージシャンなんだと改めて思いましたよ。
あと、この日はアンコールが異常に内容濃かったんです（笑）。
御馴染みの物販コーナーは、もうMonthly史上屈指の面白さ（笑）。新作のパーカーに関して“このトレーナーに袋がついたやつ、なんてんだ、こういうの？”とか“このなんとかカップ（マグカップのこと）、イイだろ？買えっ！”とか、もう腹抱えて笑っちゃいました（笑）。kyOnさんも思わず“CHABOさん、面白すぎ！”って言ってたっけ（笑）。
そしてそして、客席後方から下山淳がゲストで登場！これは昨日はなかったらしいんで、ほんとにほんとにサプライズゲストだったみたいです。CHABOのギターは335。CHABOは自分のギターラックから下山さんにギターを選ばせます。下山さんがセレクトしたのは黒のストラト。夢のようなセッションは「SWEET HOME MANDALA」と「BLUES IS ALRIGHT」のメドレーでした。
下山さん、変わったなあ、いい意味で。笑顔を浮かべてギターを弾くその姿は、とても柔らかいタッチがありました。
興奮冷めやらぬうちに、今度はkyOnさんボーカルの「メリーゴーランド」。これも嬉しい驚きです。だって、ボ・ガンボスの曲にCHABOがスライドギターを乗っけるなんて10年前ならとても考えられないじゃん。“逢って嬉しくて涙…”もう、歌詞のとおりの状態になりそうだったよ、俺（泣笑）。
後半はすっかり今年を振り返るモードになってて、夏にくるりの岸田くんと一緒にやったという古井戸の「何とかなれ」とか、ギターの盗難にあった時によく聴いていたという「気分はJ.J.cale」なんかも演奏されました。「気分はJ.J.cale」はこれまでのMonthlyの中でも、最もスワンプっぽいアレンジ。kyOnさんのセンスが光ります。
あと、改めて思った。ギター盗難事件はCHABOをそうとうに落ち込ませたんだなあ…。僕の立場で言うなら子供が誘拐されちゃったようなもんなんだろうなあ…。なんとか、なんとか見つかってくれないもんですかねえ。
後半はkyOnさんが生ピアノを弾いた「いつか笑える日」とか、しんみりした曲もあったんだけど、“ギターで始まりギターで終わる”ってことで、もう一回「Two of Us」をやって、最後は「働き蜂」で軽快に締めくくりました。
いやあ〜充実した夜でした。アンコールまで含めると4時間近くという長尺ライブ。帰りは終電ギリギリになりましたが、こんだけ中身が濃かったら、たとえ家に帰れなかったとしても後悔しなかったでしょう。それこそピーコックの駐車場で夜明かししちゃうぜ（笑）。
いろいろあった年ですけど、今のCHABOはすごくいい状態に見えます。なんかさあ、今年の後半はロックモードになってきてない、CHABO？このまま麗蘭に突入するってのは、すごくいい流れを感じますぜ！
オレ、CHABOのライブが終わるといつも素晴らしい、素晴らしいって言ってるから“またかよ…”って思われちゃうかもしれないけど（苦笑）、今回のは特に素晴らしかったと思うんですよ！僕的にはこれまで見てきたソロライブでも最高の部類に入ります。マジで一生忘れらない夜になりました。
開演時刻の19:30を10分ほど回り、まずはCHABOが一人で登場。珍しくカーディガンを羽織ってます。なんでも、70年代に見たジミー・クリフのライブでキーボードの人が着てたのを見てカッコいいと思ったんだとか。暑かったみたいで、すぐ脱いじゃったんだけどね（笑）。
オープニングは「スケッチN.Y.'98」。意外と言えば意外な選曲ですが、たぶんCHABOは12月のライブであることを意識して、ジョン・レノンの街だったニューヨークを歌ったこれを初っ端に持ってきたんでしょう。
この日のMANDALAはクリスマスの飾り付けでいっぱいでした。僕はステージに向かって左手後方のソファー席だったんだけど、すぐ後ろには巨大なクリスマスっぽいオブジェが飾ってあり、CHABOもステージから“すげえ…”って言ってたな。
なんと、この日だけのスペシャルカクテルまで用意されてたんです。CHABOも感激したみたいで、何度もお客さんにオーダーを薦めてました。後半ではステージに運ばれてきたカクテルをまんまお客さんにあげちゃうサプライズも。
kyOnさんが登場してきたのは2曲目から。2人の共演1曲目は、2人でギターを手にしてライブのテーマでもあるビートルズの「Two of Us」。原曲に忠実なカントリータッチのアレンジですっごく良かったです。
序盤、珍しいところでは「テニス」なんかも飛び出しました。kyOnさんはマンドリンを手に、サビのフレーズではラケットを振る仕草。CHABOに“テニス、やるの？”って聞かれて“いや、全然”って言ってたけどね（笑）。
課題曲「BLUE MOON」あたりからいよいよkyOnさんが本領を発揮し始めます。クラビネットっぽい音色で、70年代ソウルっぽいアレンジの「BLUE MOON」に驚きました。いやあ〜こんなアレンジは初めて。kyOnさん、流石だなあ…。
そうかと思うと、数年前にFUJIMASAでもやった「SOUL スーダラ節」が飛び出したりして、硬軟使い分け、2人は緩急自在にライブを楽しんる様子でした。
この2人、バンドでは何度も同じステージに立ってますけど、純然たるデュオは初めてなんですよね。とてもそうとは思えないぐらい息はぴったりでした。
kyOnさんも数曲でリードボーカルを担当。カズーを使った「青いシャツ着て」は良かったなあ…。“青〜いシャツ着て〜、青〜いシャツ着て〜”。これ、メロはダニエル・ビダルの「オー・シャンゼリゼ」なんだけど、それに村八分のベースだった加藤義明が日本語の詞を付けた曲なんですよ。kyOnさんのはカバーのカバーってわけです。加藤さんとkyOnは京都繋がりもあるし、根っこの部分で共有できてる感覚があるんだなあと思いました。
この日のCHABOはエレキをたくさんプレイしてくれました。メインに使ってたのは黒のストラトキャスター。それとギブソン335も多用。ザ・バンドのカバー「トワイライト」はその335で。曲に入る前にさり気なく弾いたフレーズが思いっきりロビー・ロバートソンしてて感激しちゃいました。
kyOnとCHABOはHEART AND SOULバンドでやった時期が濃密だったせいか、アルバムで言うと「DADA」の時代の曲が多く演奏された印象があります。久々に聞く曲もたくさん。「新宿を語る 冬」なんて、いったい何年ぶりだろう…。
あと、なんつっても「はぐれた遠い子供たちへ」。CHABO、“初めてやるかもしれない”って言ってましたけど、初期のソロライブでやってましたよね、これは。
でもエレキ・アレンジでは初めてかもなあ。リズムボックスのビートに乗っかって、ギブソンのセミアコでスライドを…。アルバムバージョンのジョージ・ハリスン・マナーそのまんまでした。ぐっときましたよ、これは！
この曲は、スタジオで煮詰まった時にずっとkyOnがそばにいてくれた思い出があるらしいんだけど、ほんとに詞が素晴らしいなあって改めて思いました。まったく無駄のない、100％ピュアなCHABOの世界が表現された歌詞。イントロのスライドにしても、CHABOの特徴であるメロの明瞭さが感じられるし、これはある意味CHABOの原点ともいうべき曲だと思うんですよね、俺は。
この時期になると必ずやってくれる「Merry X'mas Baby」も勿論やってくれました。
これがねえ、なんかすごく良かったんだよなあ…。ソロでも麗蘭でも何度も聴いてる曲ですが、この日の「Merry X'mas Baby」は今まで一番ぐっときたかも。
ポエトリーリーディングは「エレキギター�機↓供廚鯊海韻討笋蠅泙靴拭�kyOnさんがバックで弾いてたのは、スティ−ブ・ウィンウッド（というか、トラフィックですな）の「Glad」。続けて読まれた「黒人音楽」ではレイ・チャールズの「What' I Say」。この夜のポエトリーリーディングは、かなりソウルっぽいムードでした。
カバーも多かったんだけど、特に目立ったのがザ・バンド。MCでもリチャード・マニュエルに関する話が心に残りました。ツアー先で首を吊ったリチャード。そんな彼についてリック・ダンコが語った言葉。そんなリックも今は鬼門に入ってしまって…。そんな話。その後、確かリチャードに敬意を表して「ユー・ドント・ノウ・ミー」をやったんじゃなかったかな。
そうそう、ルシンダ・ウィリアムズの「Are You Alright ?」もやったっけ。それと「Christmas must be tonight」。このあたりのカバーのセレクトと、CHABOのつけた日本語詞には等身大のCHABOの気持ちが反映されてると思います。流れゆく時や去っていった人たちを慈しむような、温かく深く染み入る歌詞。
でも、kyOnがいるせいか、あまり湿っぽい感じにはならなかったんですよね。外に向かって窓を開け放つような、とても明るいタッチのライブになってました。やっぱり、kyOnさんってとても華のあるミュージシャンなんだと改めて思いましたよ。
あと、この日はアンコールが異常に内容濃かったんです（笑）。
御馴染みの物販コーナーは、もうMonthly史上屈指の面白さ（笑）。新作のパーカーに関して“このトレーナーに袋がついたやつ、なんてんだ、こういうの？”とか“このなんとかカップ（マグカップのこと）、イイだろ？買えっ！”とか、もう腹抱えて笑っちゃいました（笑）。kyOnさんも思わず“CHABOさん、面白すぎ！”って言ってたっけ（笑）。
そしてそして、客席後方から下山淳がゲストで登場！これは昨日はなかったらしいんで、ほんとにほんとにサプライズゲストだったみたいです。CHABOのギターは335。CHABOは自分のギターラックから下山さんにギターを選ばせます。下山さんがセレクトしたのは黒のストラト。夢のようなセッションは「SWEET HOME MANDALA」と「BLUES IS ALRIGHT」のメドレーでした。
下山さん、変わったなあ、いい意味で。笑顔を浮かべてギターを弾くその姿は、とても柔らかいタッチがありました。
興奮冷めやらぬうちに、今度はkyOnさんボーカルの「メリーゴーランド」。これも嬉しい驚きです。だって、ボ・ガンボスの曲にCHABOがスライドギターを乗っけるなんて10年前ならとても考えられないじゃん。“逢って嬉しくて涙…”もう、歌詞のとおりの状態になりそうだったよ、俺（泣笑）。
後半はすっかり今年を振り返るモードになってて、夏にくるりの岸田くんと一緒にやったという古井戸の「何とかなれ」とか、ギターの盗難にあった時によく聴いていたという「気分はJ.J.cale」なんかも演奏されました。「気分はJ.J.cale」はこれまでのMonthlyの中でも、最もスワンプっぽいアレンジ。kyOnさんのセンスが光ります。
あと、改めて思った。ギター盗難事件はCHABOをそうとうに落ち込ませたんだなあ…。僕の立場で言うなら子供が誘拐されちゃったようなもんなんだろうなあ…。なんとか、なんとか見つかってくれないもんですかねえ。
後半はkyOnさんが生ピアノを弾いた「いつか笑える日」とか、しんみりした曲もあったんだけど、“ギターで始まりギターで終わる”ってことで、もう一回「Two of Us」をやって、最後は「働き蜂」で軽快に締めくくりました。
いやあ〜充実した夜でした。アンコールまで含めると4時間近くという長尺ライブ。帰りは終電ギリギリになりましたが、こんだけ中身が濃かったら、たとえ家に帰れなかったとしても後悔しなかったでしょう。それこそピーコックの駐車場で夜明かししちゃうぜ（笑）。
いろいろあった年ですけど、今のCHABOはすごくいい状態に見えます。なんかさあ、今年の後半はロックモードになってきてない、CHABO？このまま麗蘭に突入するってのは、すごくいい流れを感じますぜ！
2008年11月12日
monthly CHABO vol.5 「Late Summer」 仲井戸“CHABO”麗市 with 駒沢裕城 / 2008年11月12日（水）南青山MANDALA
今年の春から始まった南青山MANDALAでのCHABOのマンスリーライブ。
途中で「野郎共の競宴」とか「観る・聴く・読む」とかはあったけど、マンスリーライブ自体は10月はお休みだったので、MANDALAでCHABOを観るのはけっこう久しぶりな気がします。
今回CHABOと共演するのは、元はちみつぱいで日本のペダルスティール・ギターの第一人者とされる駒沢裕城さん。
2人が一緒のステージに立つのは、2005年10月8日のCHABO GO! GO!［THE Duet］以来。約3年ぶり。
俺、駒沢さんとやるときのCHABOはなんだかとてもリラックスして見えるんですよ、いつも。新谷さんとか翠川さんなんかとやる時とは全然違った感じ。タイプは違っても、同じギタリスト同士ってだけで通じ合えちゃう部分があるのかもしれません。
この日のCHABOも、駒沢さんをリスペクトする姿勢を見せていたのはもちろんですけど、駒沢さんをぐいぐい引っ張っていくタッチもあり、その辺のニュアンスは、他のmonthlyの時とはちょっと違った感じがあって面白かったです。
実はこの日って、南青山のすぐ近くで爆発事故があったんです。CHABOはこういう事をすごく気にしてしまう人。案の定、CHABOはステージに出てきてのっけからこの話をしました。オープニングが「GOOD DAY」だったのは、なんとなくこの不安な状況を跳ね飛ばそうとしたのかもしれないと思います。
でも、CHABOはとてもリラックスしてました。それは確か。まったり始まったオープニングに、最初客席はためらいがちに手拍子してましたが、そこに「お前ら、手叩くのかどうなのかはっきりしろー」なんて軽く突っ込んだりしてましたから（笑）。
駒沢さんは二曲目の「風景」から登場。ステージ右手に据えられたペダルスティールに腰掛けて黙々と演奏を始めました。
駒沢さんのペダルスチール、イイんだよなあ〜。目を閉じて聴いてると意識が宇宙まで飛んでいってしまいそう…。ロックファンにとってのペダルスティールって、カントリータッチだったりスワンプロックで使われてたり、割と南部っぽいイメージがあるじゃないですか。駒沢さんのペダルスティールはもっと独創的なんですよね。ジャンル分けできない自由なタッチをすごく感じます。音色もとても幻想的。スペイシーなタッチは、タイプは違うけどロウエル・ジョージのスライドギターと同じ匂いを僕は感じます。
ロウエル・ジョージといえば、この日は全体的に70年代っぽいっていうか、在りし日のヒッピームーブメントやフラワームーブメントへの憧憬を感じさせるような選曲が多かったような気がします。
前半に演奏された「ホーボーへ」は、駒沢さんのペダルスティールでいつも以上にノスタルジックなアレンジになっていたし、「ホームタウン」の最初と最後はSEでジェファーソン・エアプレインの「サムバディ・トゥ・ラヴ」が流れたのが、とても心に残りました。
びっくりしたのは、中盤で飛び出した「花のサンフランシスコ」のカバー。ベタといえばベタな選曲なんだけど、この日は比較的じっくり聞かせる曲が多かったので、ライブ全体に軽快な味付けを加えていたと僕は感じました。
ポエトリー・リーディングは、この日のライブテーマでもあった夏の残り香と過ぎ去った時代への郷愁が漂っていました。
「サマーホリデイ」はすごく良かった！駒沢さんのペダルスティールは、聴いてる僕をあっという間に少年時代の夏休みに連れ戻してくれました。赤ワインの心地よい酔いも手伝って、僕の頭はすっかり“あの頃の夏”（笑）。
アンコールでは、駒沢さんがいきなりの「ホワイト・クリスマス」のフレーズを。おいおい、まだ早いんじゃないの？まさか「メリークリスマス・ベイビー」でもやるのかな？と思ったら、いきなり「魔法を信じるかい？」が始まりました。
これはかな〜り意表を突かれた思いでした。個人的にはものすごく久々に聴いたような気がするなあ、この曲。
そして、演奏が終わると、清志郎の子供たち、タッペイくんとモモちゃんのコーラスが大音量で会場に流れたんです。これは観客にいろんなことを考えさせる演出でした。
そうか、町はもうクリスマスか…。清志郎、どうしてんのかなあ…。
この後、CHABOは、駒沢さんのアルバム「静かな時」を“お気に入りのアルバム”として紹介し、ライナーノーツの駒沢さんの詩をリーディング。続けて駒沢さんに向けた手紙を読むという展開に。
その間、駒沢さんはずっとペダルスティールを弾き続けてたんですが、僕が思うに、CHABOが手紙を読む段取りは、駒沢さんには知らされてなかったんじゃないかと思うんです。仮に知っていたとしても、その内容までは絶対知らなかったと思うんだよね。手紙の内容は、CHABOが同じ時代を生きてきた戦友として駒沢さんへ宛てた、限りなく慈しみに溢れた文面でした。これは駒沢さん、かなりぐっときてたみたい。
ラストは久々の「いいぜBABY」、そして「ホーボーズ・ララバイ」と「家路」。CHABOのレパートリーの中でも、“ほのぼの率”の高い3曲で長い夜は終わりました。
なんだかすごく幸せな気分にさせられた3時間半。いつにもまして一期一会的なタッチが濃厚な夜でした。
この二人は、これからもいろんな節目で同じステージに立つことになるんでしょう。こんな関係、羨ましいよなあ、ほんと。自分がCHABOの歳になった時、今日のステージでCHABOが読んだような手紙を書ける相手が、果たして何人いるんだろう…。ついそんなことを思ってしまった夜でした。
途中で「野郎共の競宴」とか「観る・聴く・読む」とかはあったけど、マンスリーライブ自体は10月はお休みだったので、MANDALAでCHABOを観るのはけっこう久しぶりな気がします。
今回CHABOと共演するのは、元はちみつぱいで日本のペダルスティール・ギターの第一人者とされる駒沢裕城さん。
2人が一緒のステージに立つのは、2005年10月8日のCHABO GO! GO!［THE Duet］以来。約3年ぶり。
俺、駒沢さんとやるときのCHABOはなんだかとてもリラックスして見えるんですよ、いつも。新谷さんとか翠川さんなんかとやる時とは全然違った感じ。タイプは違っても、同じギタリスト同士ってだけで通じ合えちゃう部分があるのかもしれません。
この日のCHABOも、駒沢さんをリスペクトする姿勢を見せていたのはもちろんですけど、駒沢さんをぐいぐい引っ張っていくタッチもあり、その辺のニュアンスは、他のmonthlyの時とはちょっと違った感じがあって面白かったです。
実はこの日って、南青山のすぐ近くで爆発事故があったんです。CHABOはこういう事をすごく気にしてしまう人。案の定、CHABOはステージに出てきてのっけからこの話をしました。オープニングが「GOOD DAY」だったのは、なんとなくこの不安な状況を跳ね飛ばそうとしたのかもしれないと思います。
でも、CHABOはとてもリラックスしてました。それは確か。まったり始まったオープニングに、最初客席はためらいがちに手拍子してましたが、そこに「お前ら、手叩くのかどうなのかはっきりしろー」なんて軽く突っ込んだりしてましたから（笑）。
駒沢さんは二曲目の「風景」から登場。ステージ右手に据えられたペダルスティールに腰掛けて黙々と演奏を始めました。
駒沢さんのペダルスチール、イイんだよなあ〜。目を閉じて聴いてると意識が宇宙まで飛んでいってしまいそう…。ロックファンにとってのペダルスティールって、カントリータッチだったりスワンプロックで使われてたり、割と南部っぽいイメージがあるじゃないですか。駒沢さんのペダルスティールはもっと独創的なんですよね。ジャンル分けできない自由なタッチをすごく感じます。音色もとても幻想的。スペイシーなタッチは、タイプは違うけどロウエル・ジョージのスライドギターと同じ匂いを僕は感じます。
ロウエル・ジョージといえば、この日は全体的に70年代っぽいっていうか、在りし日のヒッピームーブメントやフラワームーブメントへの憧憬を感じさせるような選曲が多かったような気がします。
前半に演奏された「ホーボーへ」は、駒沢さんのペダルスティールでいつも以上にノスタルジックなアレンジになっていたし、「ホームタウン」の最初と最後はSEでジェファーソン・エアプレインの「サムバディ・トゥ・ラヴ」が流れたのが、とても心に残りました。
びっくりしたのは、中盤で飛び出した「花のサンフランシスコ」のカバー。ベタといえばベタな選曲なんだけど、この日は比較的じっくり聞かせる曲が多かったので、ライブ全体に軽快な味付けを加えていたと僕は感じました。
ポエトリー・リーディングは、この日のライブテーマでもあった夏の残り香と過ぎ去った時代への郷愁が漂っていました。
「サマーホリデイ」はすごく良かった！駒沢さんのペダルスティールは、聴いてる僕をあっという間に少年時代の夏休みに連れ戻してくれました。赤ワインの心地よい酔いも手伝って、僕の頭はすっかり“あの頃の夏”（笑）。
アンコールでは、駒沢さんがいきなりの「ホワイト・クリスマス」のフレーズを。おいおい、まだ早いんじゃないの？まさか「メリークリスマス・ベイビー」でもやるのかな？と思ったら、いきなり「魔法を信じるかい？」が始まりました。
これはかな〜り意表を突かれた思いでした。個人的にはものすごく久々に聴いたような気がするなあ、この曲。
そして、演奏が終わると、清志郎の子供たち、タッペイくんとモモちゃんのコーラスが大音量で会場に流れたんです。これは観客にいろんなことを考えさせる演出でした。
そうか、町はもうクリスマスか…。清志郎、どうしてんのかなあ…。
この後、CHABOは、駒沢さんのアルバム「静かな時」を“お気に入りのアルバム”として紹介し、ライナーノーツの駒沢さんの詩をリーディング。続けて駒沢さんに向けた手紙を読むという展開に。
その間、駒沢さんはずっとペダルスティールを弾き続けてたんですが、僕が思うに、CHABOが手紙を読む段取りは、駒沢さんには知らされてなかったんじゃないかと思うんです。仮に知っていたとしても、その内容までは絶対知らなかったと思うんだよね。手紙の内容は、CHABOが同じ時代を生きてきた戦友として駒沢さんへ宛てた、限りなく慈しみに溢れた文面でした。これは駒沢さん、かなりぐっときてたみたい。
ラストは久々の「いいぜBABY」、そして「ホーボーズ・ララバイ」と「家路」。CHABOのレパートリーの中でも、“ほのぼの率”の高い3曲で長い夜は終わりました。
なんだかすごく幸せな気分にさせられた3時間半。いつにもまして一期一会的なタッチが濃厚な夜でした。
この二人は、これからもいろんな節目で同じステージに立つことになるんでしょう。こんな関係、羨ましいよなあ、ほんと。自分がCHABOの歳になった時、今日のステージでCHABOが読んだような手紙を書ける相手が、果たして何人いるんだろう…。ついそんなことを思ってしまった夜でした。
2008年10月22日
【CHABOのインタビュー】 ロック・ジェット Vol.33 (シンコー・ミュージックMOOK)
遅ればせながら、先月発売になった「ロック・ジェット Vol.33」の話題です。
毎号一組のミュージシャンやバンドを特集するこの雑誌、今回はロバート･ジョンソンの特集。ここにCHABOのインタビューが掲載されているんです。
聞き手は編集長の藤竹俊也さん。この雑誌の前身「ルーディーズクラブ」の頃から、CHABOには何度かインタビューしている人です。歳は離れていますが、CHABOと同じ新宿育ちという間柄。CHABOが生まれ育った戸山ハイツのこともよく知っているという羨ましい人物です（笑）。
インタビューは前半がロバジョンに関する話、後半がミニアルバム「Poetry」に関する話になっています。藤竹さんは大昔の戸山ハイツの写真が載ってる新聞記事を持参してCHABOの気持ちをくすぐるという反則技に出ておりまして（笑）、なかなか盛り上がった楽しいインタビューになっています。
前半のロバジョン話も面白いけど、やっぱり「Poetry」に関する話が興味深いです。なにしろ、ミニアルバム「Poetry」に関する本人のコメントとしては、これが（ファンクラブ会報を除けば）唯一のものですからね。
先日の世田谷パブリックシアターのライブで「Poetry」の世界にどっぷりと浸った直後だけに、ここで読むCHABOの言葉がなおさら強く心に響いてきました。
強く伝わってくるのは、CHABOはあくまでもこのアルバムをミニアルバムとして捉えてるってこと。これだけ濃い内容だし、収録時間的にもレコードの時代だったらアルバム一枚分のボリュームがあるのだから、藤竹さんは通常の新譜と考えていいんじゃないかって言ってるんですが、CHABOはあくまでも“企画もの”だって断言してるんですよね。
これは、作品をリリースする上でのフォーマットの問題。CHABO BANDとして、あるいは麗蘭として出すアルバムと、これとは明確に区別しておきたいっていうCHABOの意思なんだと思います。作品のフォーマットについての、アーティストとしてのこだわりを強く感じました。
インタビューは、ちょっと藤竹さん、渋谷陽一っぽい（苦笑）。しゃべりすぎの感がないではないですが、僕はCHABOの最近の曲によく出てくる“帰ろう”とか“HOME”という言葉のニュアンスについてすごく考えさせられました。そのきっかけをもらっただけで、この記事は僕にとって手応えのあるものだったと言えます。
はい、ここからは僕の意見ですよ（笑）。
Feel Like Goin' Homeに出てくる“家に帰る気分”。ポエトリーHomeの中の“帰ろう”。この二つって皆さん、同感じてます？僕はこれ、どっちも同じようなニュアンスを歌ってると思います。藤竹さんは、Homeの方にはより抽象性を増したニュアンスを感じてるみたいなんだけど、ここはちょっと僕と感じ方が違うなあ。
CHABOの歌に出てくる“HOME”とか“帰ろう”という言葉は、単純にノスタルジックな気持ちにかられていたり、ただ故郷に帰る事だけを指しているんではないと思うんだ。それは今に始まった話じゃなく、前々からそうだと思う。その一貫性は、CHABOの楽曲を理解するうえではちゃんと理解しておかないといけない…。小さなことかもしれないけど、僕はそう思います。
ちょっと話は横道にそれるんだけど、漫画「20世紀少年」で、浦沢直樹は大阪万博を日本の何かが変わり始めたきっかけのように描きました。当時、明るくまぶしい未来の象徴だった万博だったんだけど、あの日を境に日本は何かが変わってしまった。何かを失ってしまった…。あのイベントは長くゆっくりと何かが壊れていく始まりだった…。
70年代後半、音楽の世界で同じようなことを歌ってた人たちがいます。はっぴぃえんどや荒井由美時代のユーミンです。彼らはオリンピック前と後の東京で、街の風景が、人々の中の何かが、急速に変わっていく様を歌っていました。
僕は「太陽に歌って（戸山ハイツ）」や「Home」、もしかしたら「20世紀少年」も、その系譜の延長線上にある表現なんじゃないかと思うんだ。CHABOに関しては、21世紀にあえてこういうことを歌ってるってことに、強い気持ちを感じます。
CHABOが言う“帰ろう”には、時代の閉塞感を打ち破り、あの時代に失くしてしまった何かを取り返そうとする静かな意志がこめられていると思います。
そしてもうひとつ、最近のCHABOの楽曲に強く感じられる“家族”への想い。今年の夏、僕が観た幾つかの映画もそうでしたが、最近はさまざまな表現分野において家族のあり方を問い直すような作品が見られます。最近のCHABOの作品にもそれと共鳴した表現が見られるようになってきてると思います。
CHABOの言う“帰ろう”という言葉。“家族”という身近な小宇宙に対する想い。それはこの国から壊れてしまった何かを取り戻し、リアルでヘヴィすぎる現状を飛び越えるためのポジティブな意思なんだと僕は考えたいです。
昭和40年生まれの僕なのに、新宿から遠く離れた土地で生まれ育った僕なのに、これらの曲にセツない気持ちを抱いてしまうのは何故なのか…。CHABOの言葉を活字で読んで、その理由が少しだけ分かったような気がしました。
2008年10月18日
仲井戸麗市（朗読・演奏・歌）「観る・聴く・読む」 with たつのすけ（key) / 10月16日（木）東京：世田谷パブリックシアター
10月16日（木）東京：世田谷パブリックシアター
仲井戸麗市（朗読・演奏・歌）「観る・聴く・読む」
with たつのすけ（key)
開場 18:00／開演 18:45
世田谷パブリックシアターは初めて行ったんだけど、実にいい雰囲気の会場でした。椅子は可動式になってて、会場のどの位置からもステージが見易くなってます。二階席はまるで岩山に座席を作ったようなデザイン。僕は比較的前の方の席だったんだけど、これは二階で見てもいいなあ〜って思ったね。最初から演劇の舞台を想定しているせいか、ステージもこのクラスのホールとしてはかなり広いと感じました。
開演前の舞台、向かって左手奥には街灯の灯がともり、中央のスクリーンには青空の映像が映し出されています。それが開演時間が迫るにつれて徐々に変化を見せ始め、やがて空が夕焼けに染まり、日が暮れるとライブがスタート。
真っ暗になった会場に小川のせせらぎのような音が聴こえてきて、やがて響いてくるCHABOの声…。MANDARAでのマンスリーライブで披露された新曲「クエスチョン」の朗読からこの夜のライブは始まりました。
やがてステージの街灯に灯がともり、おもむろに歩いてきたCHABOが街灯の下で立ち止まると、今度は「HOME」の朗読を。R&Rのある種軽薄なノリとは180℃異なるようなシリアスさ。言葉に対する静かで強い想い。このポエトリー2連続で、観客はもう、この日のライブがいつもとはちょっと違うものになるであろうことに気付くわけです。
朗読が終わると、CHABOはステージ前方に進んでギターを手にし、今度は「久遠」を。いつの間にかたつのすけも登場していて、ステージ右手のキーボードでCHABOをバックアップ。シンセの音色はアルバム「Poetry」と同じでした。
続いてはインストの「Poetry」。ここでは、ステージ後方のスクリーンに川を下っていくようなモノクロの映像が映し出されます。その上にCHABOが実際に演奏しているギターの手元の映像がオーバーラップしていく…。なんというか、非常に五感を刺激される演出でした。
曲は更にすすみ、次は「太陽に歌って（戸山ハイツ）」。これもCHABOの声とギターだけではなく、映像が加わってよりいっそう表現に深みを増してゆきます。海の底に沈むような映像にオーバーラップされて、ありし日の外山ハイツや新宿の風景、幼い頃のCHABOの写真なんかが流されました。そして、歌詞に出てくるミュージシャンや曲のレコードジャケット…。
昭和40年生まれの、まして東京新宿からずっと遠くの地で生まれ育った僕にとり、CHABOの幼い頃の心象風景は消して同じものではありません。でも、ここに歌われる風景は高度経済成長を迎える前の古き良き日本の姿であり、この曲を聴いていると、そこから遥か遠くまで来てしまった僕らが、どこかで何か大事なものを失くしてしまったということに気付かされます。
モノは確かになかったかもしれないけど、今みたいに得体の知れない閉塞感を感じるようなこともなかった時代。最近のCHABOの曲にしばしば出てくる“HOME”とか“帰ろう”というワードは、単純にノスタルジックな気持ちに苛まれていたり、ただ故郷に帰る事だけを指しているのではないと思います。時代の閉塞感を打ち破って失くしてしまった何かを取り返そうとする静かな意志なんだと僕は思うなあ…。
あ、すいません、しゃべり過ぎました（苦笑）。
ここまでは、ミニアルバム「Poetry」の世界観を忠実に再現したステージのような気がしました。今CHABOが毎月やってる南青山MANDARAのマンスリーライブでも、6月はミニアルバム発売記念と銘打ってましたが、 なんかあの時よりもレコ発ライブっぽく感じたぐらい。
序盤は息をつくのもためらわれるほど張り詰めたステージングだったんですが、曲が終わるとCHABOは笑顔で手を上げました。ここで観客は悟ります。“ああ、今日はいつもと違うライブだけど、「今日 歌いたい唄。」「my way」のような展開ではなさそうだ…”って。
中盤は久々に「GREAT SPIRIT」からの曲が演奏されました。その中でも特に僕が好きな「Song For You」と「遙かな手紙（ニジェールから）」が選ばれたのは嬉しかったなあ…。
CHABOがこの日「Song For You」を選んだのはすごくよくわかります。言葉に対する強い想いを書いた歌ですから。僕はこの曲、後半のギターソロが大好きなんだけど、この日のCHABOはストラトキャスターではなく、GODINでそれを弾いてくれました。GODINの甘く艶のある音色が、美しいフレーズによくあってたと思います。
ただ、やっぱ思っちゃったな。これはやっぱりカースケのドラムで聴きたいって…。アルバム「Soul to Soul」に収録されてるこの曲のライブバージョン、最後のソロを盛り上げるカースケの熱いドラム、あれをいつの日かまた見たい…。強くそう思います。
「遙かな手紙（ニジェールから）」は、個人的にはこの日一番印象に残った一曲でした。歌に入る前には、この曲を書くことになったいきさつと、現在のニジェールは、実は曲を書いた当時自分が思ってた状況とはだいぶ違ってるらしい、ってなことも言った上で演奏に。こういう話をしてしまうところ、CHABOってのはつくづく誠実な表現者だと思います。
アフリカの大地を思わせるような照明、そして映し出される映像も素晴らしく、映像と演奏とが巧く調和した素晴らしい舞台でした。たつのすけのシンセの音色もアルバムでのバージョンそのまま。うーん、ぐっときましたね。こうなってくると今度は早川さんのアップライト・ベースも欲しくなって来るわけですが…。
中盤では絵本「猫の時間」の朗読が印象に残りました。CHABOはステージ奥に用意された椅子に座り、ひさこさんの描いた絵が映し出されたスクリーンを見ながら、リラックスして読んでいるように見えました。なんだか「………で、（やや間を空けて）あります」っていう口調が、なんとも味があって…。
僕、この本は持ってないんですけど、なかなか良いんではないですか。CHABOはキーちゃん（CHABOんちの猫の名前）の前では“お父さん”として振舞っているんだなあ。なんか、思わず頬が緩んでしまうような場面でした。
後半は、いつものように「ガルシアの風」も。この日はレゲエタッチではなく、オーソドックスなオリジナルどおりのバージョンでプレイされました。たつのすけのアコーディオンも素晴らしかったです。
終盤で僕が印象に残ったのは「ハレルヤ」。これ、僕の聞き違いでなければ、数年前の梅津さんのプチ大仕事に出演した時からちょっとメロディーを変えてきてると思うよ。この夜の初っ端のメロはレナード・コーエンの「Hallelujah」だよね。それにCHABOの声で「明日はきっと晴れるよ…」って…。なんか、すごくうるっとくるものがあったなあ…。
最後、再び街灯の下へ歩いてゆくCHABO。「9月の素描」、「風樹」と続いて2時間半のライブは終了しました。
アンコールはありませんでした。再びの登場を待つ拍手には、たつのすけと肩を組んでのカーテンコールで応えるCHABO。
2人がステージを後にすると、間髪いれずに大音量で「DREAMS TO REMEMBER」が流れ、スクリーンにはシカゴやイタリアを旅した時のCHABOの映像が流れました。
「観る・聴く・読む」というタイトルどおり、とても演劇的なステージでした。
僕は、この日のソロライブがどんなものになるのか、だいぶ前からいろいろ想像していたんだけど、それは半分当たって半分ハズれって感じかな…。当たったってのは、やっぱりライブハウスではできないような、綿密に構成されたスペシャルなものになったっていうこと。ハズれたのは、濃かったのは濃かったけど決して以前BOXXでやったライブのように、観客に極度の緊張を強いるほどのものではなかったということ。
でも、見終わった後に長く心の底に余韻が残る素晴らしい夜だったことは間違いないです。つい4日前にエレカシや泉谷と一緒にあれほどロックしたライブをやったばかりだというのに、それとは180℃違うアプローチのステージ。この振り幅の広さが仲井戸麗市という表現者の器のデカさなんだな、と思いました。
僕は、この日のライブ、CHABOのソロ公演っていっては少々ニュアンスが違うような気がします。「DREAMS TO REMEMBER」の時に流された映像に、この日のステージ制作にかかわったスタッフの名前がクレジットされていたことからもわかるとおり、この日は「観る・聴く・読む」というタイトルのもと、仲井戸麗市というパフォーマーの舞台を大勢の表現者たちが作り上げたもの。そんな気がしましたね。特に映像で名前の挙がっていた林ワタルさんの力は大きかったんだろうと思います。
こういう舞台は準備はきっと大変なんだろうけど、CHABOの表現形態のひとつとして、これからも折々にやっていって欲しいと僕は思いました。
仲井戸麗市（朗読・演奏・歌）「観る・聴く・読む」
with たつのすけ（key)
開場 18:00／開演 18:45
世田谷パブリックシアターは初めて行ったんだけど、実にいい雰囲気の会場でした。椅子は可動式になってて、会場のどの位置からもステージが見易くなってます。二階席はまるで岩山に座席を作ったようなデザイン。僕は比較的前の方の席だったんだけど、これは二階で見てもいいなあ〜って思ったね。最初から演劇の舞台を想定しているせいか、ステージもこのクラスのホールとしてはかなり広いと感じました。
開演前の舞台、向かって左手奥には街灯の灯がともり、中央のスクリーンには青空の映像が映し出されています。それが開演時間が迫るにつれて徐々に変化を見せ始め、やがて空が夕焼けに染まり、日が暮れるとライブがスタート。
真っ暗になった会場に小川のせせらぎのような音が聴こえてきて、やがて響いてくるCHABOの声…。MANDARAでのマンスリーライブで披露された新曲「クエスチョン」の朗読からこの夜のライブは始まりました。
やがてステージの街灯に灯がともり、おもむろに歩いてきたCHABOが街灯の下で立ち止まると、今度は「HOME」の朗読を。R&Rのある種軽薄なノリとは180℃異なるようなシリアスさ。言葉に対する静かで強い想い。このポエトリー2連続で、観客はもう、この日のライブがいつもとはちょっと違うものになるであろうことに気付くわけです。
朗読が終わると、CHABOはステージ前方に進んでギターを手にし、今度は「久遠」を。いつの間にかたつのすけも登場していて、ステージ右手のキーボードでCHABOをバックアップ。シンセの音色はアルバム「Poetry」と同じでした。
続いてはインストの「Poetry」。ここでは、ステージ後方のスクリーンに川を下っていくようなモノクロの映像が映し出されます。その上にCHABOが実際に演奏しているギターの手元の映像がオーバーラップしていく…。なんというか、非常に五感を刺激される演出でした。
曲は更にすすみ、次は「太陽に歌って（戸山ハイツ）」。これもCHABOの声とギターだけではなく、映像が加わってよりいっそう表現に深みを増してゆきます。海の底に沈むような映像にオーバーラップされて、ありし日の外山ハイツや新宿の風景、幼い頃のCHABOの写真なんかが流されました。そして、歌詞に出てくるミュージシャンや曲のレコードジャケット…。
昭和40年生まれの、まして東京新宿からずっと遠くの地で生まれ育った僕にとり、CHABOの幼い頃の心象風景は消して同じものではありません。でも、ここに歌われる風景は高度経済成長を迎える前の古き良き日本の姿であり、この曲を聴いていると、そこから遥か遠くまで来てしまった僕らが、どこかで何か大事なものを失くしてしまったということに気付かされます。
モノは確かになかったかもしれないけど、今みたいに得体の知れない閉塞感を感じるようなこともなかった時代。最近のCHABOの曲にしばしば出てくる“HOME”とか“帰ろう”というワードは、単純にノスタルジックな気持ちに苛まれていたり、ただ故郷に帰る事だけを指しているのではないと思います。時代の閉塞感を打ち破って失くしてしまった何かを取り返そうとする静かな意志なんだと僕は思うなあ…。
あ、すいません、しゃべり過ぎました（苦笑）。
ここまでは、ミニアルバム「Poetry」の世界観を忠実に再現したステージのような気がしました。今CHABOが毎月やってる南青山MANDARAのマンスリーライブでも、6月はミニアルバム発売記念と銘打ってましたが、 なんかあの時よりもレコ発ライブっぽく感じたぐらい。
序盤は息をつくのもためらわれるほど張り詰めたステージングだったんですが、曲が終わるとCHABOは笑顔で手を上げました。ここで観客は悟ります。“ああ、今日はいつもと違うライブだけど、「今日 歌いたい唄。」「my way」のような展開ではなさそうだ…”って。
中盤は久々に「GREAT SPIRIT」からの曲が演奏されました。その中でも特に僕が好きな「Song For You」と「遙かな手紙（ニジェールから）」が選ばれたのは嬉しかったなあ…。
CHABOがこの日「Song For You」を選んだのはすごくよくわかります。言葉に対する強い想いを書いた歌ですから。僕はこの曲、後半のギターソロが大好きなんだけど、この日のCHABOはストラトキャスターではなく、GODINでそれを弾いてくれました。GODINの甘く艶のある音色が、美しいフレーズによくあってたと思います。
ただ、やっぱ思っちゃったな。これはやっぱりカースケのドラムで聴きたいって…。アルバム「Soul to Soul」に収録されてるこの曲のライブバージョン、最後のソロを盛り上げるカースケの熱いドラム、あれをいつの日かまた見たい…。強くそう思います。
「遙かな手紙（ニジェールから）」は、個人的にはこの日一番印象に残った一曲でした。歌に入る前には、この曲を書くことになったいきさつと、現在のニジェールは、実は曲を書いた当時自分が思ってた状況とはだいぶ違ってるらしい、ってなことも言った上で演奏に。こういう話をしてしまうところ、CHABOってのはつくづく誠実な表現者だと思います。
アフリカの大地を思わせるような照明、そして映し出される映像も素晴らしく、映像と演奏とが巧く調和した素晴らしい舞台でした。たつのすけのシンセの音色もアルバムでのバージョンそのまま。うーん、ぐっときましたね。こうなってくると今度は早川さんのアップライト・ベースも欲しくなって来るわけですが…。
中盤では絵本「猫の時間」の朗読が印象に残りました。CHABOはステージ奥に用意された椅子に座り、ひさこさんの描いた絵が映し出されたスクリーンを見ながら、リラックスして読んでいるように見えました。なんだか「………で、（やや間を空けて）あります」っていう口調が、なんとも味があって…。
僕、この本は持ってないんですけど、なかなか良いんではないですか。CHABOはキーちゃん（CHABOんちの猫の名前）の前では“お父さん”として振舞っているんだなあ。なんか、思わず頬が緩んでしまうような場面でした。
後半は、いつものように「ガルシアの風」も。この日はレゲエタッチではなく、オーソドックスなオリジナルどおりのバージョンでプレイされました。たつのすけのアコーディオンも素晴らしかったです。
終盤で僕が印象に残ったのは「ハレルヤ」。これ、僕の聞き違いでなければ、数年前の梅津さんのプチ大仕事に出演した時からちょっとメロディーを変えてきてると思うよ。この夜の初っ端のメロはレナード・コーエンの「Hallelujah」だよね。それにCHABOの声で「明日はきっと晴れるよ…」って…。なんか、すごくうるっとくるものがあったなあ…。
最後、再び街灯の下へ歩いてゆくCHABO。「9月の素描」、「風樹」と続いて2時間半のライブは終了しました。
アンコールはありませんでした。再びの登場を待つ拍手には、たつのすけと肩を組んでのカーテンコールで応えるCHABO。
2人がステージを後にすると、間髪いれずに大音量で「DREAMS TO REMEMBER」が流れ、スクリーンにはシカゴやイタリアを旅した時のCHABOの映像が流れました。
「観る・聴く・読む」というタイトルどおり、とても演劇的なステージでした。
僕は、この日のソロライブがどんなものになるのか、だいぶ前からいろいろ想像していたんだけど、それは半分当たって半分ハズれって感じかな…。当たったってのは、やっぱりライブハウスではできないような、綿密に構成されたスペシャルなものになったっていうこと。ハズれたのは、濃かったのは濃かったけど決して以前BOXXでやったライブのように、観客に極度の緊張を強いるほどのものではなかったということ。
でも、見終わった後に長く心の底に余韻が残る素晴らしい夜だったことは間違いないです。つい4日前にエレカシや泉谷と一緒にあれほどロックしたライブをやったばかりだというのに、それとは180℃違うアプローチのステージ。この振り幅の広さが仲井戸麗市という表現者の器のデカさなんだな、と思いました。
僕は、この日のライブ、CHABOのソロ公演っていっては少々ニュアンスが違うような気がします。「DREAMS TO REMEMBER」の時に流された映像に、この日のステージ制作にかかわったスタッフの名前がクレジットされていたことからもわかるとおり、この日は「観る・聴く・読む」というタイトルのもと、仲井戸麗市というパフォーマーの舞台を大勢の表現者たちが作り上げたもの。そんな気がしましたね。特に映像で名前の挙がっていた林ワタルさんの力は大きかったんだろうと思います。
こういう舞台は準備はきっと大変なんだろうけど、CHABOの表現形態のひとつとして、これからも折々にやっていって欲しいと僕は思いました。
2008年10月12日
野郎共の競宴!!! CHABO BAND×泉谷しげる&ロードオブライブ×エレファントカシマシ / 10月12日（日） 東京：SHIBUYA-AX
野郎共の競宴!!! CHABO BAND×泉谷しげる&ロードオブライブ×エレファントカシマシ2008年10月12日（日）
東京：SHIBUYA-AX
OPEN 17:00／START 18:00
エレファントカシマシのステージが終わり、正直言って“これはヤバイ！”と思ったんだ、オレ。だって凄かったんだもん、エレカシ！
実は、僕はエレファントカシマシの隠れファン（笑）。それもコアなエレカシファンとはちょっと違って、90年代後期からのメジャーなエレカシが好きなんです。滅多に行かないカラオケでどうしてもなんか歌わなきゃいけないハメになった時、オレはこの時期のエレカシを歌うことにしてます（笑）。そのぐらい好きなんすよ、エレカシ。
あんまり賛成してくれる人はいないんだけど、CHABOの書く曲のテーマと宮本の詞って共通するものがあると思ってるんですよね、俺。白状すると、最新アルバムも発売と同時に買っちゃってます…。そんな僕にとって、この夜のエレカシのセットはあまりにもツボでした。
この日のエレカシはサポートなしの純正4人。
アコギを手にしたミヤジが「夏の夜にいつの日か輝こうぜっていう、そんな曲やります」っていうと、いきなり「今宵の月のように」だっ！
この時点で、もう心の中では“うぉーっ！”だったんだよ。なにしろ、ミヤジの声が凄くて…。あのーロックバンドのボーカルでも、何歌ってんだか全然聞き取れない人っているじゃないですか。この人の場合、言葉の一つ一つが叩きつけるように耳に飛び込んでくるんですよね。清志郎とかもそうだけど、ボーカリストとしての声の力が並じゃないんです。なんかもう、最初から圧倒されてしまいました。
支えるバンドも最高！途中からベース、ドラム、ギターと順番に入ってくる様が、もう身震いするほどカッコよし〜。ストレートすぎる言い方ですが“いいロックバンドだなあ〜”ってしみじみ思いました。
2曲目はなんと「悲しみの果て」。ちょ、ちょ、ちょっと待てっ！こんな超名曲、こんなに軽くやってくれちゃってイイのか？この時点で、僕はもう完全にミヤジに心奪われてしまいました。
3曲目からは、この日競演の先輩に敬意を表し、まずは泉谷しげるのカバーで「狂走曲21番」。
次がなんとRCのカバー！エレカシは僕と同世代のバンドで、彼らがRCサクセションに影響されたことはいまさら言うまでもない事実ですが、「RCがいつも俺の中では一番のバンドでした」なんていう宮本のストレートな言葉ははじめて聞きました。
そんでもって飛び出したのが、なんと「よそ者」！う、嘘だろ〜っ！ぶっ飛びました！しかも、ミヤジはこれを完璧に自分の歌にしていたんです。ギターの石くんは、感無量の表情で泣きそうな顔して弾いてるし、バンド全体が渾身の気合を入れてプレイしてる感じがしましたね。ほんと、聴いてるこっちもぐっときました。
石くん、CHABOが弾いてたあのむせび泣くようなフレーズも完璧に再現していたし、あの時代、彼らも「BLUE」を何度も何度も聴いたんだろうなあ…。
その後、「昔、高校生の時に石くんが公園でこの曲のコーラスを練習してました」というMCのあとにやったのは…。「チャンスは今夜」！ミヤジ〜、お前何考えてんだ〜っ！（笑）俺は夢を見てるんじゃねえだろうなあ…。
カバーが終わると、ミヤジが再びエレキを手にし、今度はニューアルバムから3曲。「さよならパーティー」「新しい季節へキミと」「笑顔の未来へ」、そして「俺達の明日」。STARTING OVERは近年のエレカシの最高傑作だといわれてますが、ほんとどれもいい曲ばっか。
ここで会場はほっくらムードになるわけだけど、それで終わりにしないのがミヤジのミヤジたるところ。「じゃあ、アンコールやります！」って言って（このパターンは泉谷の持ちネタですよね）、間髪入れずにやったのが超ヘビーな「ガストロンジャー」。ミヤジは目玉をひん剥き、ステージを徘徊して「己の化けの皮、剥がしてみろ！」と客席を挑発しまくります。狂ったようにステージを暴れ回り、客席を凍り付かせて袖に引っ込みました。スゲエ…。
エレカシのパートは時間にすると30分ちょっとぐらいだったんだけど、強烈でした！僕的には大満足。後から思えば、持ち時間に合わせる為か、若干イントロを短くしたりもしてたんだけど、思いっきり内容の濃いステージで、ほんと素晴らしかったです。
で、冒頭の感想になるわけ。ステージチェンジの合間、マジで“これはヤバイ！”って思っちゃったんですよ。あまりにもエレカシが凄かったんで、これはCHABOも泉谷も食われるぞっ！ってな…（苦笑）。
テンパったエレカシが見られたのはすごく嬉しいんだけど、“頑張れCHABO、負けるな泉谷！”みたいな変な感覚にとらわれ、一人で焦ってました（苦笑）。
さてー、お次は泉谷しげる&ロードオブライブ。おっさん、大丈夫か〜っ?!
泉谷、さっそくペットボトルの水を客席にぶちまいて与太りながらの登場です（後で客席から水を投げ返されてましたが）。
バンドは4人編成。泉谷とギターの藤沼伸一以外はレコーディングのメンバーとは違うみたいでしたが、このバンドに関しちゃあ、泉谷&藤沼のコンビさえいれば、あとは誰だっていいような気がするなあ（苦笑）。
藤沼、久々にその姿を見ました。カーゴパンツに黒いシャツとキャップをかぶったその姿はまるで土方のおっさん（笑）。だけど、なんか異常にカッコいいんだ、これが！
ギター、相変わらずスゲエ！キックオフは新譜からの「業火」と「すべて時代のせいにして」だったんだけど、2つともリフがむちゃくちゃカッコいい曲なんです。それを更にアルバムの100倍ぐらいカッコよく、ゴリゴリ、ゴリゴリ弾きまくるわけです。
「すべて時代のせいにして」は燃えたっ！泉谷も唾を飛ばし、弦を切らんばかりの勢いでアコギをぶっ叩いてました。
俺、実は泉谷の曲ってあんまり詳しくないんだけど、この日やった曲はみんな知ってました。「野良犬」「褐色のセールスマン」「眠れない夜」…。なんか見てて身体が熱くなっちゃいました。
たぶん、10年前だったらここまで熱い気持ちにはなれなかったと思うんです。それは、裏を返せば僕もおっさんになり、泉谷の歌の世界がわかる歳になったってことなんだろうけどね。でも、40を超えてこそ熱くなれるロックってのもあるんだなあと強く思いましたよ。エレカシの熱さとは似て非なるものがあったんです、泉谷の歌には。
惜しげもなく定番を演奏する泉谷、ついには「春夏秋冬」までやってくれて、僕はもうゲップが出そうでした。
そんで、引っ込まずにその場でアンコール。「時よ止まれ 君は美しい」。この曲はもう大好き！おっさんの域に足を突っ込みかけた男が、一人の女を熱病みたいに愛してしまった。身体も心も日々衰えてゆく…。だけど愛さずにはいられねえ。もう戻れねえ。これが最後の恋なんだ〜っ！みたいな…。
狂おしさ、セツナさ。中年男の純愛をこれほど赤裸々に歌い上げた歌ってそうそうないと思うよ。ずばり名曲だと思います。俺、スパイスマーケットでやった曲の中で、これが一番記憶に残ってるもん。
泉谷は観客を無理やり立たせてサビをハモらせます。そして、自分もステージを暴れ回り、腕立て伏せをやったりマイクをぶん回したりしてボロボロになってステージを後にしました。スゲエぞ、泉谷！あんたやっぱしスゲエぞっ！
さあ、いよいよ後はCHABO BANDを残すのみ。フランク・シナトラの「夜のストレンジャー」が流れる中、ついに4人がステージに現われました。久しぶりのCHABO BAND！CHABOは黒地に水玉の入ったベストを羽織っていつもよりお洒落な感じ。やっぱ、特別な夜っていう感じなのかなあ？
一曲目は、ライヴタイトル「野郎共の競宴!!!」を連呼するインスト。ちょっとヒッピー・ヒッピー・シェイクみたいなソウルっぽいアレンジで、早くもCHABO BANDらしいグルーヴが。
続いて「Sha-La-La」。CHABOのギターはGODIN。ちょっとスィートなタイプのR&Rなんで、GODINの艶やかな音色が良く合ってました。そして「気分がいいので高校時代に演奏していた曲を…」ってんで「Time Is On My Side」。
熱心なファンの人はわかったと思うけど、ここまでは先日のシナロケ30周年ライブに客演した時と同じメニューだったんです。俺、正直言ってここまでは冷静に見てました。あ、このパターンか…。なんてね（苦笑）。
ところが、ところが、この後が凄かったっ！CHABO、なんと競演者の曲をそれぞれカバーするって言い出したんです。はっきり言ってこれはまったく予想外の展開。まあ、泉谷の曲ならわかんないでもないけど、CHABOがエレカシをやるって…。
泉谷のカバーは「流れゆく君へ」。これは「泉谷はいい曲いっぱいあるけど、これはベスト3に入るぐらい好きな曲」って言ってたなあ。
エレカシのカバーはなんと「冬の朝」！新譜の中でも地味目な曲なんだけど、すごく良かった！って言うか、これ、詞がCHABOの世界観そのもの。こういう曲を見つけるCHABOのセンスに感動しちゃったよ、俺は。
メロディーはCHABO流R&B風味に変えてあったんだけど、ちゃんとバンドアレンジされてて、改めてCHABO BANDの懐の深さを思い知らされました。そして何より、終盤にCHABOの弾いたスライドのソロが絶品！これはねえ、エレカシファンも絶対グッときたと思うよ。
すごく感動しました。そして、改めてミヤジとCHABOとのソングライターとしての共通項を感じました。日常の何気ない風景の中に漂う人生の深い叙情。そういったものをさり気なく描くってことで、この2人は日本屈指の詩人だと思います。
それぞれのカバーをやる前、CHABOが詞を朗読したのも良かったなあ。やっぱCHABOは“言葉の人”なんですねえ。このカバー2連発で、完全にフロアはCHABOの世界に引き込まれました。
そして「このメンバーじゃないとできない曲を…」と言って始まったのが「花園神社」。真っ赤な照明。浮遊するキーボード。空気をつんざくストラトキャスター！この後の「早く帰りたい PART �供廚盍泙瓠▲汽ぅ吋妊螢奪�なCHABOが大爆発！すげえ、スゲエ！
バンドの演奏も凄かったんだけど、なんつってもシビれたのはCHABOのギターです。この日はソロがいつもより長めで、黒のストラトをメインにフリーキーなフレーズを弾きまくってました。最近はこれほどエレキをメインにしたステージはなかっただけに、完全にシビれましたよ、オレは。
なんつうか、CHABOは完全にスイッチが入った状態になってましたね。BOOKの頃の“漆黒の怒り”が渦巻くようなダークモード。こんなCHABOを見るのは久々。逆に言うとこういうモードのCHABOを引き出せる装置はCHABO BANDが一番なんだなあ、なんてことも思いました。
この時点で、もう勝負あった！って感じ。この競演は頭ひとつの差でCHABOの優勝です！（笑）
ところが、ところが、本当のサプライズはこれからだったのだっ！
「今日はオレの歌で我慢してくれ〜」と言って、イントロを焦らしまくると、なんと「雨あがりの夜空に」が飛び出しました！
弾かれたように立ち上がる観客。ものすごい盛り上がり！と、突然演奏がぴたっと止んで、なんとたつのすけが「スローバラード」のイントロを！ほ、ほんとかよ〜！
オレ、この時点で頭の中が真っ白になりました。
スロバラCHABOバージョンは、歌いだしのフレーズからいきなり“悪い予感のかけらもないぜ〜”に飛ぶという超短縮版なんだけど、その“悪い予感のかけらもないぜ〜”を“One More Time!”と絶叫して何度も何度も繰り返すんです。
もうね、CHABOがどんな想いでこれを歌ってるのか、痛いほど伝わってきて涙が出そうでした。観客も腹の底からYeah〜！って言ってるし、本当のコール&レスポンスってこういうことを言うんだと思ったなあ。
最後は、興奮状態の観客を座らせ、じっくりと「ガルシアの風」を。ステージ後方に一面の星空が広がる演出が素晴らしかったです。
CHABO BANDの演奏時間は1時間30分ぐらいだったかな。でも、短くともむちゃくちゃ濃厚。大満足でしたっ！
アンコールはCHABO BAND＋泉谷しげる＋藤沼伸一で「翼なき野郎ども」。
もう最高っ！CHABO・泉谷・藤沼の豪華な3ショット、もうどこ見ていいかわかんないぞっ！（笑）
ステージの3人も観客も、笑顔がこぼれっぱなしで大盛り上がりの中、9時30ごろライブは終了しました。正味3時間。エンディングのSEでビートルズの「抱きしめたい」が流れたのが“らしいっ！”って思ったなあ。僕の回りでは観客もほとんど帰らずに、曲に併せてハンドクラッピングしてる人がたくさんいて、それもなんだか無性に嬉しかったです。
とにかく、予想を遥かに遥かに超えた素晴らしいライブでした！
書く余地がなくなっちゃったけど、冒頭にはセーターズでの演奏もあったし、泉谷もエレカシも本当に凄かったです。
でもねえ、やっぱしこの夜はCHABOのギターに尽きますっ！ロック・モードのCHABOが見られるのはなんとなく予想してましたが、あんなにサイケデリックで、漆黒の怒りモードのCHABOを見られるとは…。
幸運なことに、僕はこんなぶっ飛んだCHABOを最前列ど真ん中で観れたんです。もう、チケットの半券は一生の宝ですわ！CHABOに何度も指差してもらったし、もう感無量。
終演後、仲間数人と久々に呑みましたが、やっぱりみんな一様に興奮状態でしたね。やっぱCHABO BAND強力！麗蘭でもソロでもない最高の飛び道具なんだって改めて思いました。
CHABOは“オリンピックみたいなバンド”なんて言ってますが、やっぱこのぶっ飛び感は唯一無二。せめて一年に一回はこのメンツでやって欲しいと個人的には強く思います。
2008年09月26日
SHEENA&THE ROKKETS JAPANIK TOUR MAXIMUM SPECIAL GUEST 仲井戸"CHABO"麗市 / 9月26日（金）東京・Shibuya duo music exchange
楽しかったっ！すっごい楽しかったっ！ここんとこ、こういうストレートにロックロックしてるライブに足を運んでなかったんで、頭が空っぽになりました。ベタな感想すぎですが、やっぱロックンロールっていいなあ〜！（笑）。
冷静に思い起こしても、この日のシナロケは凄かったと思うんですよ。イベントでは鮎川さんとかシーナとかちょくちょく見てはいるんだけど、単独公演を見るのは俺、2001年10月の下北沢シェルター以来なんです。そん時のシナロケは良かったことは良かったんだけど、1時間半ぐらいしかやんなくてさらっと終わっちゃった印象なんだよね。ハイロウズじゃあるまいし、もうちょっとやっても…と思ったことは確か（苦笑）。不謹慎にも“ああ、シナロケも落ち着いちゃったのかなあ…”なんて思ってしまったわけ（苦笑）。
ところがところが、この日は気合入りまくり。はっきし言って、別のバンドみたいでした。本物のロックバンドが数限られてた80年代、シナロケってとんでもなくイカした存在だったじゃない？そのオーラは今も健在でした！やっぱスゲエんだ、シナロケって！
開園予定時刻の19:30をちょっとすぎた頃、にわかに場内が暗くなり、恒例のロケット発射のアナウンス。“ゼロ！”でバーン！と場内が明るくなってシーナ以外の4人が登場。これ、こう来るとわかっててもやっぱ興奮します（笑）。
今回は結成30周年を機にオリジナル・メンバーの浅田孟がベースに復帰したんですよ。俺、ひょっとして浅田さんがベースのシナロケ見るのは初めてかもしんないです。川嶋・浅田のリズム隊ががっちり構えてて、その前を渡邉・鮎川のツインギターが自由に暴れまわる…。うん、シナロケはやっぱしこれが鉄板。
なにしろ、4人がステージに立った時って絵になるんだわ。浅田さんのクールな面持ち、ナベさんの熱血漢ぶり、主役の鮎川さんは黒のグラサンに黒の帽子と黒のレスポール。そんでもって、鮎川さん以外の3人は黒の革ジャン。鮎川さんだけは白のジージャンなんか着てるんです。このクールさがR&Rですよ（笑）。カッコいいったらありゃしない！
はっきり言って僕は最近のシナロケのアルバムは聴いてないんで、この日のセットリストも半分ぐらいは知らない曲でした。でも、それは全然関係ありません。だって、もともとシナロケの曲はお里が知れてるものばかり（笑）。60年代のロック、ブルース、この手の音楽が好きな人なら初めての曲でもずっと聴いてたみたいな感覚になるはずです。
それでも、シナロケ・クラシックが出てくるとやっぱ興奮しますね。この日の序盤、僕的にはオープニングの「バットマンのテーマ」で“おーっ！”となって、「ビールス・カプセル」で“ガツーン！”ときました。
場内も熱くなってたなあ…。この日は意外にも椅子が用意してあったんですよ。ファン層もCHABOのファンに負けず劣らず年齢層高めなんですが（苦笑）、みんな立ち上がってノリノリになってました。何のかんの言ってもロックンロールが大好きなのね、みんな。僕もだけど（笑）。
そんなわけで、盛り上がるだけ盛り上がったところでシーナが登場してきて、またもや会場がヒートアップ！
新譜の「JAPANIC」からの曲を中心に会場を煽りまくります。シーナ、だいぶ声が変わっちゃってて、もう何歌ってんだか全然聴き取れません（苦笑）。でも、とんでもないテンションです。もうねえ、この人たちには“癒し”とか“アンチエイジング”とか関係ないんですね。はっきし言って歳はとってます、そりゃ。その辺を歩いてるおぢさんおばさんと比べれば全然若いけど、20年前を知ってる僕らから見ればやっぱりみんな歳を重ねた風貌。でもね、60になった鮎川さんやドスのきいたおばさんになった（笑）シーナが、いまだに嬉々としてロックをやってるんですよ。もう、一生これで行く！っていう心意気。それが観てる方にもガシガシ伝わってくるんですよね。
盛り上がってるところで、いきなりシーナがCHABOを呼び込みます。これがまたタメも何もなく、“え、こんなに軽く呼んじゃうの？”って感じ（笑）。
CHABO、ちょっと緊張してるような嬉しいような、なんとも言えない表情でグレッチを手に。“リハーサルもやらないし、なんてバンドだ〜（笑）”ってMCに、シーナは“そりゃそうよ、一発でキメるのよ！”このあたり、両者のアプローチの違いがよく出てますよね。
セッションの一発目はシナロケの新譜からの曲。ちょっとストーンズ・バージョンの「Love in Vain」みたいな曲調で、CHABOは凄まじいスライドを披露。これはほんと凄かった！シナロケのファンもいきなり“おおっ！”ってなもんで、CHABO、がっちり場の雰囲気を掴みます。
予想通りといったらなんですが、CHABOがやった曲はすべてカバーでした。もちろん、CHABO独自の日本語詞をつけて…。CHABOがボーカルをとった曲もけっこうあって、「Sweet Home SHIBUYA」とか、ジョン･リー･フッカーの「Boom Boom」、それにマンフレット・マンの「Sha-La-La」なんかは完全に単独ボーカルでした。「Sweet Home…」はちゃんと“30周年おめでとう〜”とかのフレーズも盛り込んであって、シナロケファン、大喜びでした。「Sha-La-La」は3年前の麗蘭ツアーを思い出します。詞もあの時と同じ。“ここ掘れワンワン〜♪”までそのまま（笑）。シナロケファン、どう思ったかなあ？変な詞だと思ってないといいんですけど（苦笑）。
凄かったのは、鮎川誠ボーカルの「Manish Boy」と「Time Is On My Side」。特に「Time Is On My Side」にはぶっ飛びました。ストーンズのカバーは多分やるとは思ってました。でも、こいつをやるとは…。“時は味方さ〜”みたいな感じの日本語詞だったかな。ブレイクんとこのシャウトもミック・ジャガーのオリジナルを髣髴とさせる感じ。カッコいいぞ、CHABO！高校時代、博多と東京で二人ともおんなじようにストーンズに夢中になってたんだなあって思うと感慨深いですよねえー。
そんなわけで、この日のCHABOはR&R全開モードでした。ソロではめったに見れない最高にエキサイティングなギタープレイ。この日、CHABOは自前のグレッチ以外に、黒のグレコのレスポールっぽい外観のギターを弾いてました。これ、ソロではあんまり見たことない気がするんだけど。ひょっとして鮎川さんに借りたとか？
CHABOが引っ込むと、後半は“これでもか！”っていう盛り上げ曲のたたみ掛け。「レイジー・クレイジー・ブルース」や「レモンティー」も飛び出しました。「レモンティー」、やっぱあのイントロが始まると血が騒ぎます。昔よりは短めの演奏になってたけど、濃度は相変わらず濃いっ！間奏の鮎川さんのソロは鳥肌もんでした。
アンコールでもサプライズがあったんです。MCでシーナが清志郎のことに触れたんですよね。“清志郎の生還を祈ります”って言ったなあ、確か。おいおい、“生還”はないだろう“生還”は…って心の中で突っ込んでたら、いきなり鮎川さんがあのイントロを！なんと「雨あがりの夜空に」！これは、後でCHABOも“聞いてなかった〜”って言ってましたから、ほんとにサプライズでシナロケ側が用意してたんだと思います。
だけど、当然ですが場内は大変な盛り上がりでした！はっきり言ってチューニングは怪しいし、鮎川さんのボーカルは微妙だし（苦笑）、CHABOは次の曲で使うつもりだったGODINを手にしてて弾き辛そうだし、色々あったんだけどそんなこと関係なし。一番の歌詞を鮎川さんが歌い切って、二番をCHABOが歌いだした時、なんだかしみじみこの日のライブに来て良かった〜って思いましたね…。80年代のライバル同士、シナロケとRC。こんな感じで21世紀も共演してくれて、おっさんになった僕らがニコニコしながら観てる…。いいよなあ〜。ほんと、いいもん見せてもらった〜。
CHABOも嬉しかっただろうし、この話は絶対清志郎にも届くと思うから、やっぱ喜んでくれると思うんだ。清志郎、絶対良くなるよ！そんで今度は清志郎も入ってのシナロケ＋RC見たいっすよ！俺、泣いちゃうよ、きっと（泣笑）。
オーラスは「Johnny B. Goode」。思わず“日テレGO,GO!”って言っちゃいそうでした（笑）。なんか、このオーラスって80年代のイベントを彷彿とさせたなあ…。R&Rオリンピックとか浅草ロックとか、あの頃ってみんなができるルーツ曲ってこれぐらいしかなくて、何時でも何処でもこれで締めみたいな記憶があるんだけど（笑）。そう思うと、日本のロックも歴史を刻みましたよね。今じゃあ、若いバンドが「雨上がりの夜空に」とかやったりするんだもんね。
いやあ〜、ほんと楽しかったです。やっぱロックンロールからは逃げられないぜっ！とか言ってみたりして…（笑）。
でもねえ、CHABOもこの日のステージで改めてそんなことを感じたんじゃないかと思うんですよ。絶対10月のCHABO BANDライブに向けてテンション上がったと思うんです。今年後半はロック小僧モードのCHABO、期待しちゃいますぜ！
冷静に思い起こしても、この日のシナロケは凄かったと思うんですよ。イベントでは鮎川さんとかシーナとかちょくちょく見てはいるんだけど、単独公演を見るのは俺、2001年10月の下北沢シェルター以来なんです。そん時のシナロケは良かったことは良かったんだけど、1時間半ぐらいしかやんなくてさらっと終わっちゃった印象なんだよね。ハイロウズじゃあるまいし、もうちょっとやっても…と思ったことは確か（苦笑）。不謹慎にも“ああ、シナロケも落ち着いちゃったのかなあ…”なんて思ってしまったわけ（苦笑）。
ところがところが、この日は気合入りまくり。はっきし言って、別のバンドみたいでした。本物のロックバンドが数限られてた80年代、シナロケってとんでもなくイカした存在だったじゃない？そのオーラは今も健在でした！やっぱスゲエんだ、シナロケって！
開園予定時刻の19:30をちょっとすぎた頃、にわかに場内が暗くなり、恒例のロケット発射のアナウンス。“ゼロ！”でバーン！と場内が明るくなってシーナ以外の4人が登場。これ、こう来るとわかっててもやっぱ興奮します（笑）。
今回は結成30周年を機にオリジナル・メンバーの浅田孟がベースに復帰したんですよ。俺、ひょっとして浅田さんがベースのシナロケ見るのは初めてかもしんないです。川嶋・浅田のリズム隊ががっちり構えてて、その前を渡邉・鮎川のツインギターが自由に暴れまわる…。うん、シナロケはやっぱしこれが鉄板。
なにしろ、4人がステージに立った時って絵になるんだわ。浅田さんのクールな面持ち、ナベさんの熱血漢ぶり、主役の鮎川さんは黒のグラサンに黒の帽子と黒のレスポール。そんでもって、鮎川さん以外の3人は黒の革ジャン。鮎川さんだけは白のジージャンなんか着てるんです。このクールさがR&Rですよ（笑）。カッコいいったらありゃしない！
はっきり言って僕は最近のシナロケのアルバムは聴いてないんで、この日のセットリストも半分ぐらいは知らない曲でした。でも、それは全然関係ありません。だって、もともとシナロケの曲はお里が知れてるものばかり（笑）。60年代のロック、ブルース、この手の音楽が好きな人なら初めての曲でもずっと聴いてたみたいな感覚になるはずです。
それでも、シナロケ・クラシックが出てくるとやっぱ興奮しますね。この日の序盤、僕的にはオープニングの「バットマンのテーマ」で“おーっ！”となって、「ビールス・カプセル」で“ガツーン！”ときました。
場内も熱くなってたなあ…。この日は意外にも椅子が用意してあったんですよ。ファン層もCHABOのファンに負けず劣らず年齢層高めなんですが（苦笑）、みんな立ち上がってノリノリになってました。何のかんの言ってもロックンロールが大好きなのね、みんな。僕もだけど（笑）。
そんなわけで、盛り上がるだけ盛り上がったところでシーナが登場してきて、またもや会場がヒートアップ！
新譜の「JAPANIC」からの曲を中心に会場を煽りまくります。シーナ、だいぶ声が変わっちゃってて、もう何歌ってんだか全然聴き取れません（苦笑）。でも、とんでもないテンションです。もうねえ、この人たちには“癒し”とか“アンチエイジング”とか関係ないんですね。はっきし言って歳はとってます、そりゃ。その辺を歩いてるおぢさんおばさんと比べれば全然若いけど、20年前を知ってる僕らから見ればやっぱりみんな歳を重ねた風貌。でもね、60になった鮎川さんやドスのきいたおばさんになった（笑）シーナが、いまだに嬉々としてロックをやってるんですよ。もう、一生これで行く！っていう心意気。それが観てる方にもガシガシ伝わってくるんですよね。
盛り上がってるところで、いきなりシーナがCHABOを呼び込みます。これがまたタメも何もなく、“え、こんなに軽く呼んじゃうの？”って感じ（笑）。
CHABO、ちょっと緊張してるような嬉しいような、なんとも言えない表情でグレッチを手に。“リハーサルもやらないし、なんてバンドだ〜（笑）”ってMCに、シーナは“そりゃそうよ、一発でキメるのよ！”このあたり、両者のアプローチの違いがよく出てますよね。
セッションの一発目はシナロケの新譜からの曲。ちょっとストーンズ・バージョンの「Love in Vain」みたいな曲調で、CHABOは凄まじいスライドを披露。これはほんと凄かった！シナロケのファンもいきなり“おおっ！”ってなもんで、CHABO、がっちり場の雰囲気を掴みます。
予想通りといったらなんですが、CHABOがやった曲はすべてカバーでした。もちろん、CHABO独自の日本語詞をつけて…。CHABOがボーカルをとった曲もけっこうあって、「Sweet Home SHIBUYA」とか、ジョン･リー･フッカーの「Boom Boom」、それにマンフレット・マンの「Sha-La-La」なんかは完全に単独ボーカルでした。「Sweet Home…」はちゃんと“30周年おめでとう〜”とかのフレーズも盛り込んであって、シナロケファン、大喜びでした。「Sha-La-La」は3年前の麗蘭ツアーを思い出します。詞もあの時と同じ。“ここ掘れワンワン〜♪”までそのまま（笑）。シナロケファン、どう思ったかなあ？変な詞だと思ってないといいんですけど（苦笑）。
凄かったのは、鮎川誠ボーカルの「Manish Boy」と「Time Is On My Side」。特に「Time Is On My Side」にはぶっ飛びました。ストーンズのカバーは多分やるとは思ってました。でも、こいつをやるとは…。“時は味方さ〜”みたいな感じの日本語詞だったかな。ブレイクんとこのシャウトもミック・ジャガーのオリジナルを髣髴とさせる感じ。カッコいいぞ、CHABO！高校時代、博多と東京で二人ともおんなじようにストーンズに夢中になってたんだなあって思うと感慨深いですよねえー。
そんなわけで、この日のCHABOはR&R全開モードでした。ソロではめったに見れない最高にエキサイティングなギタープレイ。この日、CHABOは自前のグレッチ以外に、黒のグレコのレスポールっぽい外観のギターを弾いてました。これ、ソロではあんまり見たことない気がするんだけど。ひょっとして鮎川さんに借りたとか？
CHABOが引っ込むと、後半は“これでもか！”っていう盛り上げ曲のたたみ掛け。「レイジー・クレイジー・ブルース」や「レモンティー」も飛び出しました。「レモンティー」、やっぱあのイントロが始まると血が騒ぎます。昔よりは短めの演奏になってたけど、濃度は相変わらず濃いっ！間奏の鮎川さんのソロは鳥肌もんでした。
アンコールでもサプライズがあったんです。MCでシーナが清志郎のことに触れたんですよね。“清志郎の生還を祈ります”って言ったなあ、確か。おいおい、“生還”はないだろう“生還”は…って心の中で突っ込んでたら、いきなり鮎川さんがあのイントロを！なんと「雨あがりの夜空に」！これは、後でCHABOも“聞いてなかった〜”って言ってましたから、ほんとにサプライズでシナロケ側が用意してたんだと思います。
だけど、当然ですが場内は大変な盛り上がりでした！はっきり言ってチューニングは怪しいし、鮎川さんのボーカルは微妙だし（苦笑）、CHABOは次の曲で使うつもりだったGODINを手にしてて弾き辛そうだし、色々あったんだけどそんなこと関係なし。一番の歌詞を鮎川さんが歌い切って、二番をCHABOが歌いだした時、なんだかしみじみこの日のライブに来て良かった〜って思いましたね…。80年代のライバル同士、シナロケとRC。こんな感じで21世紀も共演してくれて、おっさんになった僕らがニコニコしながら観てる…。いいよなあ〜。ほんと、いいもん見せてもらった〜。
CHABOも嬉しかっただろうし、この話は絶対清志郎にも届くと思うから、やっぱ喜んでくれると思うんだ。清志郎、絶対良くなるよ！そんで今度は清志郎も入ってのシナロケ＋RC見たいっすよ！俺、泣いちゃうよ、きっと（泣笑）。
オーラスは「Johnny B. Goode」。思わず“日テレGO,GO!”って言っちゃいそうでした（笑）。なんか、このオーラスって80年代のイベントを彷彿とさせたなあ…。R&Rオリンピックとか浅草ロックとか、あの頃ってみんなができるルーツ曲ってこれぐらいしかなくて、何時でも何処でもこれで締めみたいな記憶があるんだけど（笑）。そう思うと、日本のロックも歴史を刻みましたよね。今じゃあ、若いバンドが「雨上がりの夜空に」とかやったりするんだもんね。
いやあ〜、ほんと楽しかったです。やっぱロックンロールからは逃げられないぜっ！とか言ってみたりして…（笑）。
でもねえ、CHABOもこの日のステージで改めてそんなことを感じたんじゃないかと思うんですよ。絶対10月のCHABO BANDライブに向けてテンション上がったと思うんです。今年後半はロック小僧モードのCHABO、期待しちゃいますぜ！
