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時折書房

時折書房が目指すは定常開放系。コメント&TB大歓迎。

23 7月

香山リカ『50オトコはなぜ劣化したのか』



弱っているからだと心には直に響く。
内容(「BOOK」データベースより)
かつて50代の男性といえば、間違いなく「おとな」だった。しかし、いま周囲を見渡すと、その世代の幼さ、頼りなさが目立つ。年齢に不似合いな動機の犯罪や、公共の場所でキレる、家族に愛想を尽かされる「50オトコ」が報じられることが多くなった。さらにこの世代で気になるのは、社会人としての自覚のなさ。知識もあり、機転も利くのだが、世の中に貢献したり、公に発言したりする気概が感じられない。このままでは世代の谷間に埋没して社会から忘れられ、迫り来る“老後”にただ怯えるだけになる。
何だか思いっきり疲れました。
最近いろいろとネガティブな方向で話題の香山リカさんの最近著を手にしようと思ったのは、そんな鬼女による現在の言葉に対する怖いもの見たさが昂じから、それに、題名に何だか素知らぬ振りができない何かを感じたから、だったでしょうか(本当?)。
地道に50オトコ道を行く最近の私ですが、香山さんの言うような「50オトコ」像に自分自身を重ねざるを得ないような箇所も散見されましたが、でも、ある程度冷静に読み進めていくと、根拠が不確かで感情的な発露としか思えないような筆致が伏流しているという印象で、「劣化」と言われても、うーん、何だかなーという感じでした。
ただ、本当に、何カ所かでドキリとはしました。例えば、こんなところ。熟年離婚を真剣に考えるシズカさんが登場します。
 自分のこれまでの人生、残りの人生について真剣に考え、自分らしい人生をまっとうしたい、と考える妻。深層心理学者ユングは、人間の中年期から老年期の心の課題は「いかに自分らしさを磨き上げ、完成させて行くか」、つまり「個性化」だと述べたが、シズカさんは人生の後半で、まさに「個性化」に取り組もうとしているとも言える。
ところが50オトコ夫のほうは、これまで職場で長いあいだ努力を重ねてきて、それなりに結果を残し、家族もきちんと養ってきた、という自負とともに、すでにこの時点で「人生の大きな目標は達成できた」という満足感を抱いているのだろう。
人生の完成はまだまだこれから、と考えている妻と、自分の人生はすでにほとんど完成した、あとはこれを維持するだけ、と考えている50オトコ夫。(p.171)
「人生の完成」などというイメージは果たしてあるのか、という感じがしますが、少なくとも、ここに挙げられたような、男と女の中年期/老年期に対するイメージの隔たりはリアルに響いてきました。
老いてどんどんしぼんでいく男と老いてますます盛んになっていく女。
実際、現在の私も、あるべき大人像の劣化版という感じで自己評価しているところはあります。今回、言いがかり的な非難のシャワーを全面に浴びてみて、うん、劣化を食いとどめようとしたり、上向きに軌道修正させようと試みたりしながら、果敢に五十代を疾駆していきたいものだと、謙虚になるのでした。ファイト。
22 7月

原晋『魔法をかける〜アオガク「箱根駅伝」制覇までの4000日』



原監督がかけた「魔法」とは何だ?!
内容紹介
'16年箱根駅伝で39年ぶりの完全優勝を果たした著者による「初の自伝」。箱根出場歴がない、元中国電力営業マンの異色監督は学生たちに何を語りかけたのか。その言葉、トレーニングの秘密が明かされる。3年目の廃部危機を乗り越え、33年ぶりの箱根出場、そして制覇へ。叩き上げの営業マンが指導者として栄光を手にするまでの笑いと涙の全記録がここにある。指導者やランナーなどの陸上関係者・箱根ファンはもとより、営業の現場で活躍するビジネスマンや新たな生活をスタートする新入社員、学生、就活生らにも響く言葉が満載。
う〜む、原晋監督の自叙伝というべきか。
メディアで報じられていた断片から想像するとおり、おもしろい方でした。
実は、この本、ちょっと前に読んでしまっていて、香山リカの『50オトコはなぜ劣化したのか』を読んで暗い気持ちになり、今朝の通勤からは、原晋監督の『逆転のメソッド〜箱根駅伝もビジネスも一緒です』を快調に読み進めています。というか、今のところ、『魔法をかける アオガク「箱根駅伝」制覇までの4000日』で読んだものとほぼ同内容で、あらら、どうしましょう、という感じです。
箱根駅伝好きの私は、毎年この大会を見るたびに学生ランナーの走りに刺激されて自分も走りたくなり、実際走り始めたこともここ10年くらいの間に3度ほどあったくらいです(いずれもすぐ挫折していましたが)。昨年の青山学院大学初優勝も熱いドラマとして記憶に残っています。その圧倒的な強さと明るさに戸惑いすらした覚えがあります。そして、今年の箱根における連覇にしても、さらにその数か月後の東京マラソンでの躍進にしても、青学らしい強さと明るさをまざまざと見せつけ、東洋駒沢早稲田が輝いていた時代を一気に遠い過去へと後退させるような、まさに画期的な躍進ぶりでした。そして、その秘密を躍進の総合プロデューサーである監督が「魔法」というタームで種明かししてくれる!まさにワクワク読書、になるはず、でした。
読んでみて、正直なところ、肩透かしを食らった感は否めません。いえいえ、原晋監督、確かにおもしろいおじさんでした。想像した以上に人間臭さを感じました。一直線に脚光を浴びる舞台へと躍り出たわけでは決してなく、紆余曲折、七転び八起きあっての躍進というドラマは、大変興味深いものがありました。
ただ、あれれ、「魔法」はどこにあったの?という感じなんですね。
監督就任後なかなか勝てなかった時代が続きました、「伝説の営業マン」のノウハウで青学が強くなったという感触がリアルに響きませんでした、何か強い運のようなものをもっている人だということは伝わってくるのですが。
この方、箱根連覇した後も、メディアに向けていろいろな提起、提言をなさっていましたね。「時の人」だからこその発言権を遠慮なく行使しようというあっけらかんとした抜け目のなさに、おおおっ、こういう人なのかと思ったこともありました。ちょっと、保留。今読んでいる原監督二冊目本を読み終わったら、もう少し具体的に中身に入り込んでみようと思います。
しかしながら、adidas adizero takumi sen boost 2、俄然欲しくなりました。
13 7月

三浦しをん『風が強く吹いている』again

風が強く吹いている (新潮文庫)
三浦 しをん
新潮社
2009-06-27


アルムの山へ帰ってこい、ハイジ。
内容紹介
箱根駅伝を走りたい――そんな灰二の想いが、天才ランナー走と出会って動き出す。「駅伝」って何? 走るってどういうことなんだ? 十人の個性あふれるメンバーが、長距離を走ること(=生きること)に夢中で突き進む。自分の限界に挑戦し、ゴールを目指して襷を繋ぐことで、仲間と繋がっていく……風を感じて、走れ! 「速く」ではなく「強く」――純度100パーセントの疾走青春小説。
そして、『風が強く吹いている』を再読するのでした(そういえばマンガ版もかつて愛読していました)。
登場人物が長い距離を走ってさえいれば何でも楽しく読める今の私からすると、ズッドーン、これはおもしろくないはずがありませんでした。実は、Amazonプライムの会員である私は、最近ビデオのリストの中に映画『風が強く吹いている』を発見、思わず2時間ちょっと凝視してしまいました。そして、あの鮮烈な世界が蘇ると同時に、映画版をみるのは初めてだったものですから、あれれ、原作に比しての物足りなさがどっと自分のうちに溢れ出てきたのでした。ストーリーが簡単に流れすぎる(もともと単純なつくりではありますが、エピソードの積み重ね方と絡ませ方は執拗なまでに丁寧になされていたはず)、それに、それぞれの人物造形がちと浅すぎる、そして、ハイジと走の走る意味をめぐるドラマが淡泊すぎる、、、いつしか三浦しをん作の小説を読みたく読みたくなっていたのでした(ところが、家にあるはずの単行本がなくなっていて、文庫本を買い求めての再会=再読でした)。
さて、8年前にただひたすら純粋な青春小説として味わったドラマは、ランナーとして(初心者ですが)読み返してみると、新たななまなましい感想が付加されてもいきました。
前にはそこまで気にならなかった非現実感が色濃く具体的にせり出てきました。最初に読んだときも当然感じたことではあったのですが、その時は、この奇跡のファンタジーの前に現実感など全く不要!と思いながら読み進められていたのですが、いやいや、自分が5km、10km、20kmと走っている感覚からすると、寛政大学の初心者ランナーたち、あまりに速すぎます、というか、あまりに短期間に速くなりすぎです。ハイジ、私もコーチしてくれ!
再会した記念に、一カ所引いておきます。
「この三カ月、きみの走りを見て、俺はますます確信した」
 と清瀬はつづけた。「きみには才能と適性がある。だからね、走。もっと自分を信じろ。あせらなくていい。強くなるには時間がかかる。終わりはないと言ってもいい。老人になってもジョギングやマラソンをする人がいるように、長距離は一生かけて取り組むに値する競技なんだ」(p.205)
ハイジ、ぼくも、がんばるよ(「ぼく」たって)。
12 7月

小野田正利『普通の教師が普通に生きる学校―モンスター・ペアレント論を超えて』



拳そのものではなくて、拳の源にあるものは何かを見ること。
内容紹介
学校の先生、保護者のみなさん、「相手が分かってくれない」と思っていませんか?全国津々浦々をまわって、先生たちを元気づける講演を行っている、小野田正利・大阪大教授が、豊富な事例とともにトラブル回避の方法を伝授! 学校と保護者の間に生じる「トラブル」や「紛争状況」を、どうやって解決していくか。双方の間の意識の「ずれ」を解消するために、互いに何ができるのか。 本来であれば、子どもの成長をともに喜びとし、目的とする学校と保護者はどこでボタンの掛け違いをしてしまうのか。「お父ちゃんが学校に怒鳴りこんできたのは、本当は別の理由だった」(「父ちゃんの愛情弁当」)。「話がまとまりかけた頃に、校長先生がつい漏らしてしまった不注意な一言で…」(「その『ひとこと』で座り直す」)など、豊富なエピソードを基に、学校の先生が、生き生きと活躍できる学校環境をつくりあげる秘訣が満載です。
ある必要があって、こんな本を読んでいました。この一冊だけじゃありません。『悲鳴をあげる学校〜親の“イチャモン”から“結びあい”へ』『親はモンスターじゃない!〜イチャモンはつながるチャンスだ』『イチャモン研究会〜学校と保護者のいい関係づくりへ』『それでも親はモンスターじゃない!〜保護者の向き合い方は新たなステージへ』と、この方の書かれたもののほとんどを読み続けました。題名を見ればこの方がどんな方がだいたい想像がつくと思います。教育学者としてはかなりめずらしい保護者クレーム研究家で、学校と家庭の双方が幸せになるためのあるべき関係のかたちについて説かれている方なんです。
実際、学校サイドに足を置いて長年過ごしてきた感覚からすると、保護者はいろいろと変容したのは間違いないでしょう。でも、それと同じ程度には社会も変化している、逆に、学校は、それと同程度ほどには変化していない、そんな現実があるのではないでしょうか。
小野田先生、こうおっしゃいます。
 学校が決めたことに、親や子どもは素直に従って当然だ、という時代はとうの昔に過ぎ去っている。ようやく対等にモノが言える時代になったとことを大切にしたいと思う。“学校の論理だけが善ではない”――この当たり前のことに立ち返ることが必要なのである。親の言っていることにも道理があるかもしれないのだ。(p.64)
私が小さいころ(「私が教員になりたての頃」とはじめに書いてみましたが、書き直しました)、学校とは、教師とは、無条件の権威、無条件に尊ばれるべきもの、だった気がします。ところが、今や、学校と教師は、保護者や地域社会から、むしろ不信=不審という色眼鏡で見られる存在となり果てています。教員の側からすると、実際いろいろと大変なことが増えてきているわけでしょうが、ただ、実際問題、この状況とは、学校と保護者とがようやく当たり前の関係になっただけ、本来あるべき是々非々というスタートラインに立たされただけ、と考えるべきなのではないかと思います。いや、あうてそう考えていくことからしかこの状況は好転していかないのではと、感じるのです。
教師がプロであるということ。
保護者が保護者として当然のこととして我が子を第一に考えて言動するのに対して、教師とは、プロとしての教師とは、そのことを前提にして、その当該児童生徒が健やかに成長できるような対応、支援ができる存在のことをいうのでしょう。そこで、相手と同等の立場に身を置いて我を張ることで、その児童生徒を苦しめていて、何がプロだというのでしょう。
 よく講演などで、私は「拳そのものではなくて、拳の源にあるものは何かを見ること」の大切さを訴え続けています。教師はいきなり保護者から拳を突き上げられると、どうしてもその拳そのものを見てしまうことが多くあります。特に、怒っておられる場合には、その振り上げた拳が目の前に迫っている感じなので、拳そのものしか見えません。
 しかし、ちょっと遠ざかって見てみると、拳につながっている腕が見え始め、次に身体全体(ホンネ)が見えてくる。それが「この父ちゃんの怒りの源にあるのは、教師のミスなのだろうか、それとも仕事場での満たされない思いが重なっていることも関係しているのだろうか?」とか「母ちゃんの悲しみの背後には、子育ての不安もあるのかな? 家庭の中での嫁姑関係の難しさもあって、やり場のない思いが学校に『助けて!』という意味で来ているのかな?」と、さまざまに推し量る中で、解決の出口が見えてくるように思えることは多くあります。(pp.194-195)
教師は簡単にプロ教師になれるものじゃないですね。まず、プロの自覚とはどかんなことを自覚することなのかを学ぶところから始めなければなりませんね。ほとんど自戒の学習でした。
7 7月

堂場瞬一『チーム』

チーム (実業之日本社文庫)
堂場 瞬一
実業之日本社
2010-12-04


学連選抜という切り口からよむ箱根駅伝。
内容(「BOOK」データベースより)
箱根駅伝出場を逃がした大学のなかから、予選で好タイムを出した選手が選ばれる混成チーム「学連選抜」。究極のチームスポーツといわれる駅伝で、いわば“敗者の寄せ集め”の選抜メンバーは、何のために襷をつなぐのか。東京~箱根間往復217.9kmの勝負の行方は―選手たちの葛藤と激走を描ききったスポーツ小説の金字塔。巻末に、中村秀昭(TBSスポーツアナウンサー)との対談を収録。
実は私今の生活の中心はランニングになっていて、私、はまったらはまるタイプなんです。このブログだって、はまっていた期間(2009年から21013年まで)は更新更新また更新みたいな日々、軽く年間300冊は読んでいましたもの。
私がランニングにはまるようになったきっかけは、あるダイエットアプリを何となく使うようになって体重がみるみる減ってきて、そうなると、もっともっといい意味でダイエットしたいと思うようになり、そこから、ランニングがはじまり、ワンダーコアが始まったりしたのでした(昨年の春頃のことです)が、それからは、体重などどうでもよくなり、走ることに引き込まれていき、この4月に10kmレースデビュー、6月にも10kmレース走り、8月にもエントリー、9月にはいよいよハーフマラソンです。今日も仕事をさぼって(嘘です)15kmほど気持ちよく走ってしまいました。
さて、そんな私なんですが、実は、箱根駅伝に前からしびれていました。これを見るたびに走り出していました。でも、走り始めた回数と同じだけ挫折し、続かなかったのですが、まあ、それはいいとして、それくらいの箱根ファンなんです。箱根モノとしては、三浦しをんさんの『風が強く吹いている』は私の中で忘れられない一冊ですが、これ、学連選抜に焦点を当てた箱根モノです。実は、私が読書マニアだった頃に出た本ではあったのですが、私は、箱根ファンの私はその時はスルーしました。学連選抜にスポットを当てた箱根モノというのが、限度を超えた「変化球」に感じられたのです、たぶん。ですが、月日は流れて、今、長距離走が扱われてればそれだけでおもしろく読める自分の読書体質に気付いてしまったものですから、読みましたよ。楽しく読めましたよ。ありがとうございます。
正直思ったところとしては、ドラマは、いろいろと雑でした。細かく指摘しようと思ったらいくらでも疵があります。最近毎回こういう感想がさしはさまれます。すみません。
でも、通勤時間に読みつなぐこの読書がいとおしくていとおしくてたまりませんでした。滑走感、疾走感。ランナーが息づいているだけでいいんです。題名の「チーム」とかいう、解題的な主題論的磁場などどんなに安っぽくても、筋肉と呼吸の感触を楽しめているだけで、ああ、もういい本なんです。やられてますね。
この小説には続編の『チーム2』があることを知りました。すぐ読みたいです。でも、『風が強く吹いている』もガツンと読みたくなりました。実は、読もうとして家の書庫(!?)を捜索したところ、買ったはずの単行本がないのです。困って、今日、BOOK OFFで460円で文庫本を買いました。ああああ、どんな読書ライフなんだ!
5 7月

堂場瞬一『キング』

キング (実業之日本社文庫)
堂場 瞬一
実業之日本社
2015-08-01


マラソンを生きるということ。
内容(「BOOK」データベースより)
五輪男子マラソン代表・最後の一枠の選考レースまで四か月。日本最高記録を持ちながら故障に泣き、復活を期する天才・須田が最有力とされる中、優勝経験がなく“万年三位”の青山に正体不明の男が接触、「絶対に検出されない」ドーピングを勧めてきた。青山は卑劣な手段を一旦は拒むが…。ランナーたちの人生を賭した勝負を活写する傑作長編!
熱いドラマでしたね。
ストーリー展開や人物造形に粗いところもありましたが、そんなことをほとんど気にせずに熱く一気に読み進めることができました。
青山、須田、武藤。それぞれ大なり小なりの挫折を経験してきた大学同期30歳のランナー三人がオリンピックを賭けて一つのレースを走る。そのドラマの緊迫感は、一流のランナーの研ぎ澄まされた感覚や筋肉と同質のようなものとして感じられるとともに、42.195kmを走るというマラソンという競技が、本当の意味での総合力を試されるという恐ろしさすら覚えました。
勝つべくして勝つ、よく聞くフレーズですが、マラソンにおいては、その「勝つべくして」という方程式を成り立たせるためには本当にすべてがそろわなければならない、そして、その「すべて」の途方もなさというものを、須田や武藤がたどった軌跡と結末を思い浮かべたとき、ああ、もう何とも言葉が出てきません。
堂場さんの作品は、実はこれより前に『チーム』を読んでいたのですが、『チーム2』もあることを知りました。読んでみます。
29 6月

宮下奈都『羊と鋼の森』

羊と鋼の森
宮下 奈都
文藝春秋
2015-09-11


宮下奈都さんの新境地ですか?
内容(「BOOK」データベースより)
ゆるされている。世界と調和している。それがどんなに素晴らしいことか。言葉で伝えきれないなら、音で表せるようになればいい。ピアノの調律に魅せられた一人の青年。彼が調律師として、人として成長する姿を温かく静謐な筆致で綴った、祝福に満ちた長編小説。
シンプルで強い物語。読み終えたとき自分に響いた響き方がこんな感じでした。
実は、この本より前に重松清『たんぽぽ団地』と絲山秋子『薄情』をすでに読んでいて、どちらもそれなりに面白いものではあったんですが、ついこちらに来れないでいました。それが、するするするっと、宮下奈都さんの、この本屋大賞第一位作品を取り上げたい気分になってしまった次第です。
この物語を読んでいる最中、私は、この物語の必然的な訴えとして、何やら音のようなものを感じるようなところがあったのですが、音ともに読者である私の中に絶えず響いていたのは、空気感のようなもの。においや湿気や温度といった、いろいろな要素が溶け合った空気感とでもいうべきものが、私の中に響いていました。途中で、そのことに気づいた私は、あっ、そうか、と一つの納得感にたどりつきました。というのは、これ、「ピアノの調律に魅せられた一人の青年」の出身地のイメージが、先ごろ読んだ宮下奈都さんの『神さまたちが遊ぶ庭』というエッセーの舞台となった北海道トムラウシとまるでぴったり重なるように造形されていたんですもの。北海道を愛する夫の希望で、福井からトムラウシに移り住んだ宮下家五人の、大自然に抱かれた一年間の記録がつづられた、小説よりもおもしろいノンフィクション=エッセーの世界を思い描きながら読むことができて、私には、「羊と鋼の森」の質感がなんだかリアルに感知できるような読書ができていたような気がするのです。
宮下さんの新境地かな?
物語の作法に何か変化を感じます。作者が物語をいじっている感じがしない。ある存在のリアリティが先にあって、それが動くべくして動いていった結果、物語が生まれる、ような感じ?
今後が楽しみですね。
19 6月

金哲彦『ウォーキングから始める 50歳からのフルマラソン』



どんな人生が待っているんだろう?
内容紹介
プロ・ランニングコーチの金哲彦氏が教える、50歳を越えた人がウォーキングから始めてフルマラソンを完走するまで。運動が苦手な人でもできるように、まずは「体年齢のチェック」をし、「体幹」の意味と重要性を理解していただき、「体幹」を使った立ち方と歩き方から始めて走り方をマスターしていただくまでが最初のステップ。
「体幹」を使って走れるようになったところで、いよいよ実践。「体幹」ウォームアップで、筋肉を目覚めさせたら、「健康増進」「ハーフマラソン」「フルマラソン」など、目的に合わせたトレーニングメニューを考案しているので、ビギナーから経験者まで、幅広い人に活用してもらうことができます。また、ランニング後のストレッチ方法まで掲載しているので、アフターケアも万全。巻末には折り込み付録として、「3ヵ月でハーフマラソンを走りきるメニュー」「3ヵ月でフルマラソンを走りきるメニュー」もついています。
題名に惹かれてつい読んじゃいましたが、この本じたいは、私の選択ミスだったかもしれません。もう初級を脱しようとしつつあるかなというランナーである私(本当?!)からすると、はいはい、みたいな内容ばかりで、フルマラソンというのも、今の自分が思い描く達成とはちょっと違っている感じがしました。
さて、本日は、生涯二度目のレースに出走してきました。川俣ロードレース大会、10km男子50歳代、28位(100人弱のエントリーでした)、46分33秒。PB更新です!地道にがんばります。
12 6月

里見蘭『彼女の知らない彼女』

彼女の知らない彼女
里見 蘭
新潮社
2008-11


パラレルワールドとビルドゥングスロマン。
内容(「BOOK」データベースより)
パラレルワールドからやってきた男に、「君は、すごいんだ」って言われた。私には、気付いていない可能性があるんだってさ。金メダルが狙えるくらいの―だから、走ってくれないかって。「私」の影武者として、あっちの世界で。信じてみよう、この人の言葉を。素人だけど、走ってみる。42.195km。2016年、東京オリンピックを目指して。本気を出しもせずに、生きているつもりでいるのはもうやめた。並行世界の「私」のために、私自身のために―。第20回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。
確かについていくのが難しいほどの奇想天外さです。でも、私はゆうゆうついていけました。パラレルワールドというか、多元的宇宙論というか、「地図とスイッチ=ジミ、ひまわり、夏のギャング」的世界観というか、そういうものを、私は、何となく(普段意識するようなことではありませんが)大事にしているところがあるのです。また、ビルドゥングスロマン系はそれだけで10%楽しく読めてしまえるところもあります。
夏希の葛藤にもう少しうまくクローズアップしたり、夏希と夏子の不可避的なニアミスを設定したりするなど、このドラマに深みを与えるポイントはいくらでもあったのに、、、みたいな残念さもありましたが、ランニング指南書のように活用できる部分もあり、私も、苦手なLSDを真剣にやってみようかなとも思いました。ははは。
11 6月

桂望実『RUN!RUN!RUN!』

RUN!RUN!RUN!
桂 望実
文藝春秋
2006-11


どうして「RUN!」が三つある?
内容(「BOOK」データベースより)
目標はオリンピックの金メダル。箱根駅伝は通過点、仲間なんか必要ないはずだった…。天才ランナーを揺さぶる血の秘密。
ランナーの小説を読みあさっています。
おもしろくないものまでおもしろいから、不思議です。とはいえ、これは、これはっ、小説として、作品として、どうなのよという読み終わり方になっちゃいますね。この人、初めて、でした。キラキラした題名から何となく私が読みたそうな作家さんじゃないんだろうなと予想はしていたんですが、やはり当たってましたね。
ただ、まあ、何というか、一種の現実逃避的読書ですね。
この本に帰ろう。
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