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時折書房

時折書房が目指すは定常開放系。コメント&TB大歓迎。

29 6月

宮下奈都『羊と鋼の森』

羊と鋼の森
宮下 奈都
文藝春秋
2015-09-11


宮下奈都さんの新境地ですか?
内容(「BOOK」データベースより)
ゆるされている。世界と調和している。それがどんなに素晴らしいことか。言葉で伝えきれないなら、音で表せるようになればいい。ピアノの調律に魅せられた一人の青年。彼が調律師として、人として成長する姿を温かく静謐な筆致で綴った、祝福に満ちた長編小説。
シンプルで強い物語。読み終えたとき自分に響いた響き方がこんな感じでした。
実は、この本より前に重松清『たんぽぽ団地』と絲山秋子『薄情』をすでに読んでいて、どちらもそれなりに面白いものではあったんですが、ついこちらに来れないでいました。それが、するするするっと、宮下奈都さんの、この本屋大賞第一位作品を取り上げたい気分になってしまった次第です。
この物語を読んでいる最中、私は、この物語の必然的な訴えとして、何やら音のようなものを感じるようなところがあったのですが、音ともに読者である私の中に絶えず響いていたのは、空気感のようなもの。においや湿気や温度といった、いろいろな要素が溶け合った空気感とでもいうべきものが、私の中に響いていました。途中で、そのことに気づいた私は、あっ、そうか、と一つの納得感にたどりつきました。というのは、これ、「ピアノの調律に魅せられた一人の青年」の出身地のイメージが、先ごろ読んだ宮下奈都さんの『神さまたちが遊ぶ庭』というエッセーの舞台となった北海道トムラウシとまるでぴったり重なるように造形されていたんですもの。北海道を愛する夫の希望で、福井からトムラウシに移り住んだ宮下家五人の、大自然に抱かれた一年間の記録がつづられた、小説よりもおもしろいノンフィクション=エッセーの世界を思い描きながら読むことができて、私には、「羊と鋼の森」の質感がなんだかリアルに感知できるような読書ができていたような気がするのです。
宮下さんの新境地かな?
物語の作法に何か変化を感じます。作者が物語をいじっている感じがしない。ある存在のリアリティが先にあって、それが動くべくして動いていった結果、物語が生まれる、ような感じ?
今後が楽しみですね。
19 6月

金哲彦『ウォーキングから始める 50歳からのフルマラソン』



どんな人生が待っているんだろう?
内容紹介
プロ・ランニングコーチの金哲彦氏が教える、50歳を越えた人がウォーキングから始めてフルマラソンを完走するまで。運動が苦手な人でもできるように、まずは「体年齢のチェック」をし、「体幹」の意味と重要性を理解していただき、「体幹」を使った立ち方と歩き方から始めて走り方をマスターしていただくまでが最初のステップ。
「体幹」を使って走れるようになったところで、いよいよ実践。「体幹」ウォームアップで、筋肉を目覚めさせたら、「健康増進」「ハーフマラソン」「フルマラソン」など、目的に合わせたトレーニングメニューを考案しているので、ビギナーから経験者まで、幅広い人に活用してもらうことができます。また、ランニング後のストレッチ方法まで掲載しているので、アフターケアも万全。巻末には折り込み付録として、「3ヵ月でハーフマラソンを走りきるメニュー」「3ヵ月でフルマラソンを走りきるメニュー」もついています。
題名に惹かれてつい読んじゃいましたが、この本じたいは、私の選択ミスだったかもしれません。もう初級を脱しようとしつつあるかなというランナーである私(本当?!)からすると、はいはい、みたいな内容ばかりで、フルマラソンというのも、今の自分が思い描く達成とはちょっと違っている感じがしました。
さて、本日は、生涯二度目のレースに出走してきました。川俣ロードレース大会、10km男子50歳代、28位(100人弱のエントリーでした)、46分33秒。PB更新です!地道にがんばります。
12 6月

里見蘭『彼女の知らない彼女』

彼女の知らない彼女
里見 蘭
新潮社
2008-11


パラレルワールドとビルドゥングスロマン。
内容(「BOOK」データベースより)
パラレルワールドからやってきた男に、「君は、すごいんだ」って言われた。私には、気付いていない可能性があるんだってさ。金メダルが狙えるくらいの―だから、走ってくれないかって。「私」の影武者として、あっちの世界で。信じてみよう、この人の言葉を。素人だけど、走ってみる。42.195km。2016年、東京オリンピックを目指して。本気を出しもせずに、生きているつもりでいるのはもうやめた。並行世界の「私」のために、私自身のために―。第20回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。
確かについていくのが難しいほどの奇想天外さです。でも、私はゆうゆうついていけました。パラレルワールドというか、多元的宇宙論というか、「地図とスイッチ=ジミ、ひまわり、夏のギャング」的世界観というか、そういうものを、私は、何となく(普段意識するようなことではありませんが)大事にしているところがあるのです。また、ビルドゥングスロマン系はそれだけで10%楽しく読めてしまえるところもあります。
夏希の葛藤にもう少しうまくクローズアップしたり、夏希と夏子の不可避的なニアミスを設定したりするなど、このドラマに深みを与えるポイントはいくらでもあったのに、、、みたいな残念さもありましたが、ランニング指南書のように活用できる部分もあり、私も、苦手なLSDを真剣にやってみようかなとも思いました。ははは。
11 6月

桂望実『RUN!RUN!RUN!』

RUN!RUN!RUN!
桂 望実
文藝春秋
2006-11


どうして「RUN!」が三つある?
内容(「BOOK」データベースより)
目標はオリンピックの金メダル。箱根駅伝は通過点、仲間なんか必要ないはずだった…。天才ランナーを揺さぶる血の秘密。
ランナーの小説を読みあさっています。
おもしろくないものまでおもしろいから、不思議です。とはいえ、これは、これはっ、小説として、作品として、どうなのよという読み終わり方になっちゃいますね。この人、初めて、でした。キラキラした題名から何となく私が読みたそうな作家さんじゃないんだろうなと予想はしていたんですが、やはり当たってましたね。
ただ、まあ、何というか、一種の現実逃避的読書ですね。
7 6月

金哲彦『走る意味 命を救うランニング』



走る意味、生きる意味。
内容紹介
箱根駅伝5区「山登りの木下」で名を馳せた金哲彦。早大中村清監督との訣別、在日としての葛藤、ガン闘病、復活のサブスリー、長距離界のカリスマが初めて明かす衝撃の書。すべてのランナー必読!
いろいろな意味でずしりと重たい一冊でした。
昨日の朝から通勤と昼休みの時間を利用してざっと駆け抜けるように読みました。
走る意味、ですか。
今の私は、とりあえず備忘録的に次のようなところを引いておきます。
 タイムというのは、追いかけていくものではなくて、後からついてくるものなのです。
 そうすればケガも少なくなりますし、何よりそのほうが楽しめる。タイムに縛られてしまうのは、頭だけで計算し考えるからでしょう。走っているのは肉体なのに、どうして頭だけでコントロールしようとするのでしょうか。(略)
 タイムを一回計算したなら、もう一度身体に戻る。今身体がどういうふうになっているかというところに感覚の柱を戻して、やっぱりあくまで身体主体で走る。もちろん頭は使いながらですが、あくまでも走るのは身体だということを忘れないで欲しいと思います。(pp.286-287)
走ることで身体ととことん向き合っています。もっと向き合いたいと思います。走ることで私の生きる意味を耕していくように。肥沃な意味の光景が広がるように。
1 6月

坂井希久子『ウィメンズマラソン』

ウィメンズマラソン (ハルキ文庫)
坂井 希久子
角川春樹事務所
2016-02-12


ランランラン。
内容(「BOOK」データベースより)
岸峰子、三〇歳。シングルマザー。幸田生命女子陸上競技部所属。自己ベストは、二〇一二年の名古屋で出した二時間二四分一二秒。ロンドン五輪女子マラソン代表選出という栄誉を手に入れた彼女は、人生のピークに立っていた。だが、あるアクシデントによって辞退を余儀なくされてしまい…。そして今、二年以上のブランクを経て、復活へのラストチャンスを掴むため、リオ五輪を目指し闘い続ける。このままじゃ、次に進めないから―。一人の女性の強く切なく美しい人生を描く、感動の人間ドラマ。
あああ、とっても楽しく読ませていただきました。通勤電車(乗り継ぎあり)の1日1時間弱で読みつなぐには恰好の読み物でした。
いや、小説として批評するような視点に立てば、相当いろいろとネガティブなことばが出てきそうなものではあるのですが、今の私・・・あまりそういう欲求が作動せず、とにかく、走ることに心を奪われていて、走ることに絡んでさえいれば、むむむむむっ、関心意欲態度が50%はアップしてしまうような状態・・・からすると、作品の巧拙より、とにかく走る人のドラマそのものに、惹きつけられます。
とはいえ、ラスト、う〜ん、そうか、みたいな感じ。
泣いちゃった・・・とかいう感想に接すると、んんんっ、甘いんじゃないの!とか思ってしまう自分はやはりいる。過渡期?どうなんだろう。
26 5月

森美樹『主婦病』

主婦病
森 美樹
新潮社
2015-03-20


主夫病。
内容紹介
欲望、猜疑、諦め、嫉妬……私も患っているのだろうか、〈主婦〉という病を。部下の男との情事の最中に倒れた夫、その裏切りを受け止め切れない妻。自分には無関心な夫の知らない世界に飛び立とうと、テレクラのバイトで金を貯める主婦。願った子供が授からなかったために、好きな夫と距離を取ってしまう妻――揺れる関係に悩み、こじらせ、もがく女達を描く、第12回R-18文学賞読者賞を含む連作短編集。
通勤の地下鉄&電車の中で読みました。ブックカバーなどないので、表紙をしっかりガードするのは大変でした。
今手元に齋藤環さんの『人間にとって健康とは何か』という新書があって、明日の朝から読み始めようと思っているんですが、「みんなビョーキ」のこの世界において、健康/病気ということを官能的に考えさせてくれる楽しい一冊でしたね。明日、もうこの本を読めないんだと思うと、残念でたまりません。数日間の隠微な愉悦でした。主夫の私の病をグリグリ刺激してくれましたもの。

あっ、半年ぶりの更新でした。生きてました。
29 11月

桐野夏生『夜また夜の深い夜』

夜また夜の深い夜
桐野 夏生
幻冬舎
2014-10-08


変な小説を読んじゃいました。
内容紹介
どんな罪を犯したのか。本当の名前は何なのか。
整形を繰り返し隠れ暮らす母の秘密を知りたい。
顔を変え続ける母とアジアやヨーロッパの都市を転々とし、
四年前にイタリア・ナポリのスラムに住み着いた。
国籍もIDもなく、父親の名前も、自分のルーツも、わからない。
母と口論し外に飛び出すと、「MANGA CAFE」と書かれた
チラシを手にする男に呼び止められた。絶対に本当の名前を
教えてはいけないという母のOKITEを初めて破って、私は
「マイコ」と答えた。
私は何者?
私の居場所は、
どこかにあるの?
魂の疾走を描き切った、苛烈な現代サバイバル小説
ごめんなさい。こういう小説を求めている方もいらっしゃるのでしょうが、私はそうでもにかったので、とりあえず最後までお付き合いいたしましたが、はい、それだけです。小説から離れているから、ですかね。謙虚に次に向かいたいと思います。
23 11月

森絵都『ラン』

ラン (角川文庫)
森 絵都
角川書店(角川グループパブリッシング)
2012-02-25


ラン。
内容(「BOOK」データベースより)
9年前、家族を事故で失った環は、大学を中退し孤独な日々を送っていた。ある日、仲良くなった紺野さんからもらった自転車に導かれ、異世界に紛れ込んでしまう。そこには亡くなったはずの一家が暮らしていた。やがて事情により自転車を手放すことになった環は、家族に会いたい一心で“あちらの世界”までの道のりを自らの足で走り抜く決意をするが…。哀しみを乗り越え懸命に生きる姿を丁寧に描いた、感涙の青春ストーリー。
読み終えて、森絵都さんって本当に作家なんだなあ、という感慨がありました。
大人のファンタジーです。
ただ、苦さの中にも楽しくこの本を読むことができたのは、最近、私自身がランニングにはまっているから、でした。いやあ、走ることって、超スポーツですよね。もともと「道」志向の強い私ではありましたが、ランニング、私にとっては、人生と同フレームで語られるようなところがありますね、最近は。
私のファンタジー・晩年編はどう展開していくんでしょうか。
10 11月

池井戸潤『下町ロケット2 ガウディ計画』



夢はあるか!
内容(「BOOK」データベースより)
ロケットから人体へ―佃製作所の新たな挑戦!前作から5年。ふたたび日本に夢と希望と勇気をもたらすエンターテインメント長編!!
 TBS『下町ロケット』みてます。
 池井戸潤作品の中で最も爽快な一冊だと思っていましたから。
 さて、最近本を読む習慣がほとんどなくなってしまい、書店に立ち寄ることもなくなっていたのですが、たまたまある目的からふらっと立ち寄ってみた近くの書店に平積みになっていたこの本を見つけて、思わず買ってしまいました。
 こちらもまた夢とプライドをめぐる熱いドラマ、です。
 今回は、相手の敵失により結果を得るような展開で、澄み切った爽快感は前作ほどではなかったかなと思いますが、でも、佃製作所という奇跡の会社の像はくっきりと残りました。
「お前ら、いい仕事したな」
 心からふたりをねぎらった。
 すると――。
「それはそうと、社長、ちょっとこれ見てもらえませんか」
 立花が見せたのは、一枚のデッサンであった。「一村先生から、例の血栓シュレッダーに関する所見をもらったんで、イメージをスケッチしてみたんです。感じとしては、心臓バイパス手術に使うステントのようなもので――」
 思わず、佃は苦笑する。
 もう次のことを始めてやがる。
 会社は小さいが、夢はでかい。
 それでこそ――人生だ。
 自分のやりたいことさえやっていれば、人生ってのは、そんなに悪いもんじゃない。
第一、オレがそうだ。
耳を傾けながら佃は、押し寄せる充足感に包まれていった。(p.368)
 夢がドライブさせる人生、夢が原動力となって成長する人間。
そして、夢の駆動力によって人を成長させる会社、佃製作所。
夢は他人に与えてもらうものでは決してなく、その夢を自分の中でしっかりと育てていくこともなかなか難しい。このドラマの中では、ガウディ計画の行方というドラマを紡ぐ縦糸に、たくさんの人物の夢にかかわるエピソードがドラマの横糸として編まれていました。その人物を動き出させた原点としての夢の行方・・・が。人を突き動かす原動力のようなものが、夢であるか、それともその他のものであるか、これって、人生の質を考えたとき、結構大事なポイントなんでしょうね。夢を語る、語り続ける大人像にあらためて思いを馳せてみます。まだまだ先はうんと長いのですから。
 まさに、「坂の上の坂」的人生ドラマでしたね。
 テレビドラマも楽しく観ていきます。きっとドラマでも「2」があるでしょう。
この本に帰ろう。
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