これでよろしくて?
38歳への「これでよろしくて?」
内容(「BOOK」データベースより)
上原菜月は38歳。結婚生活にさしたる不満もなく毎日を送っていたのだが…。とある偶然から参加することになった女たちの不思議な集まり。奇天烈なその会合に面くらう一方、穏やかな日常をゆさぶる出来事に次々と見舞われて―。幾多の「難儀」を乗り越えて、菜月は平穏を取り戻せるのか!?コミカルにして奥深い、川上的ガールズトーク小説。
 『風花』を読んだ時と似たような感じ。
 ただ、『風花』の主人公のゆりさんにも感じた記憶があるのですが、今回の川上弘美作品的主人公の菜月さんも、設定された年齢からすると相当ぼんやりしている方で、それまでの38年間はどうしてそんなふうにぼんやりできていたんだ?! と意味もなくつっこんでみたくなるような、そんなもどかしさ。23歳くらいならいいのかと言われても困るし、そのぼんやりしたたたずまいこそが、川上弘美わーるどの住人の証しだと言われれば、まさにそうなんでしょうが、うーん、でも、なんだか、その非現実感というか、一人陥没地帯的なあまりのぼんやりさに、背景そのものがファンタジーでないリアルワールドである分、なんだか、せまってくるものを感じにくく仕上がってしまったかなと感じました。
 ただ、運命に導かれるように、とでも形容したくなるような感じで入会する『これでよろしくて? 同好会』といらいらする現実が並置されていくスタイルは、それなりの緊張感をつくりだすのに成功はしていた思います。38歳の菜月にとって、まさに、自分自身の奥に潜んでいる何物かが呼び寄せた、これしかないという形をした救世主的同好会だったとは言えるのでしょう。終局に、「おばけ」がキーワード化してきて、実は私たち「おばけ」だったのよときたときには、おいおい、そんなふうにつないじゃのう?とびっくりしながらも、まあ、うまくつながることはつながるんだろうけどなと、いったん納得してしまったほどでした。
 「おばけ」におびえる夫婦、家庭。
 そうか。結婚生活って、というか、生きてゆくことって、おばけの連続なんだ。
 同好会の面々の言葉を聞きながら、わたしはようやくわかった気がした。
 こわがるから、出るんだ。
 気にするから、見えるんだ。
 スキマの影におびえて見えるおばけ。(p.302)
 感じはわかりますでも、共感度は65%くらいかな。(我が家のおばけのリアル度はもっと高いような気はしますが・・・)というのも、悩める38歳・菜月が300数ページかけて見出したこたえにしては、なんだか普通というか、川上弘美さん、そんなくらいでよろしくて? とつっこみたくなるような気がしないでもないんですね。
 ただ、『これでよろしくて? 同好会』の女性たちの食欲には、何でも相対化していく切れ味鋭いおばけ軍団らしい爽快さが貫かれていて、ほほえましいものでした。
「チキンカツとメンチカツと白身魚のフライは頼みました。今日は揚げもの気分だって、全員が」
「揚げもの気分」
 わたしは笑った。みんなも、ひとしきり笑いさざめく。(p.288)
 もうすぐ老人と呼ばれるような女性たちも含めて、みんなで揚げものをばりばり食うこいつらの、妙なパワーだけが、なんとなくリアルでした。