ゼロから始める都市型狩猟採集生活ゼロから始める都市型狩猟採集生活
著者:坂口 恭平
太田出版(2010-08-04)
おすすめ度:4.0
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ところで、どこに向かおうか。
内容(「BOOK」データベースより)
“都市の幸”で暮らす。そのとききみは、政治、経済、労働、あらゆるものから解放され、きみ自身にしかできない生活を獲得するだろう。
 先日あるコメントで紹介してもらった本です。読んでみました。
 ちょっと驚きました。
 で、私は何を驚いたんだろう? とあらためて考え込んでしまいました。
 ある種ホームレスとして東京を生き延びるマニュアルのように書かれている本書のまさにその具体性に対して、か? 確かに、そこに、驚きました。"海山の幸"ならぬ"都市の幸"と称せられる、都市における衣食住のさまざまなコストゼロの恩恵というものの授かり方には、実際、驚きました。
 でも、何ていうんでしょう、そういう実際的なこと以上に、都市型狩猟採集生活を実際に営んでいる人たちの感覚や、その感覚のなかに紛れもなく存在するある種清々しいといってもいいような人間らしさに、もっと驚きました。
 そして、その驚きは、たとえば、自然と次のようなレベルへの注目につながりました。
 身の回りにあるさまざまな事柄を、まったく違う視点で見つめてみる。それは都市を新たに再構築するための第一歩である。
 ぼくらの生活の背後に、普段は気づかない、無意識に何かを生み出している階層(レイヤー)が潜んでいる。そこでは誰かのためにデザインすることよりも、あらゆる人のデザインを知覚できるような解像度の高い視点をもつことが重要だ。なぜなら、都市では、同じ空間にあらゆる種類の人間、建築、道具などが同居しているからである。(pp.171-172)
 「解像度」、これ、本書のなかでひとつのキーワードとして使われているものでしたが、「解像度の高さ」の問題かどうかは、言葉の使い方の問題を含めて、ちょっと微妙には感じましたが、でも、「階層(レイヤー)」という言葉には、思いっきりハッとさせられましたね。
 私たちが思い描いている階層というものは、あくまでも最低限満ち足りているものを母集団にしてのものでしかなくって、実際、そんないろいろな虚構を剥ぎとっていくならば、そこには、今まで見たことも想像したこともなかったような新たな階層(レイヤー)がニョキニョキ顕われてくる。そう、すごく快活に、そしてもすごく人間らしく。
 と言ってみて、「人間らしく」かよっと、平凡なプライドを大事にして生きている私はちょっと食ってかかってみる、そう言ってみた私に。正直、この本を読んでぶ厚い重層的な驚きをもちましたが、その驚きが、今の自分をどんなふうに促してどこに向かわせるものなのか、想像もつきません。でも、何となく頭の中らしばらくこびりついて残る種類のもののような気もします。
 人間というものの定義づけを突き付けられるような、そんな一冊でした。
 どうでしょう、ルイくん。