キング (実業之日本社文庫)
堂場 瞬一
実業之日本社
2015-08-01


マラソンを生きるということ。
内容(「BOOK」データベースより)
五輪男子マラソン代表・最後の一枠の選考レースまで四か月。日本最高記録を持ちながら故障に泣き、復活を期する天才・須田が最有力とされる中、優勝経験がなく“万年三位”の青山に正体不明の男が接触、「絶対に検出されない」ドーピングを勧めてきた。青山は卑劣な手段を一旦は拒むが…。ランナーたちの人生を賭した勝負を活写する傑作長編!
熱いドラマでしたね。
ストーリー展開や人物造形に粗いところもありましたが、そんなことをほとんど気にせずに熱く一気に読み進めることができました。
青山、須田、武藤。それぞれ大なり小なりの挫折を経験してきた大学同期30歳のランナー三人がオリンピックを賭けて一つのレースを走る。そのドラマの緊迫感は、一流のランナーの研ぎ澄まされた感覚や筋肉と同質のようなものとして感じられるとともに、42.195kmを走るというマラソンという競技が、本当の意味での総合力を試されるという恐ろしさすら覚えました。
勝つべくして勝つ、よく聞くフレーズですが、マラソンにおいては、その「勝つべくして」という方程式を成り立たせるためには本当にすべてがそろわなければならない、そして、その「すべて」の途方もなさというものを、須田や武藤がたどった軌跡と結末を思い浮かべたとき、ああ、もう何とも言葉が出てきません。
堂場さんの作品は、実はこれより前に『チーム』を読んでいたのですが、『チーム2』もあることを知りました。読んでみます。