090509
石垣のホテルにて朝7時起床。
今日は週に2回出る、朝イチ発の与那国に行くフェリーに乗るのだ。

テントを片付けたりしなくちゃいけないキャンプよりも
支度は早くできると思い込んでいたのであるが、
文明的になると、余計にやってしまうことが増えるのか、
意外にも時間がかかってしまった。

朝食はもずくソバにしてみた。
もずくが麺に上手い具合にからんで、意外とおいしい。
残った材料で、ゴーヤと豚肉チャンプルーを作ったのだけど
量が多すぎて食べきれず(時間もなかった)、
もずくの入っていたプラパックに入れて、お弁当として持っていった。

8時半にホテルをチェックアウトして、
ホテルの目の前のバス停からバスに乗って、離島桟橋へ行く。

与那国へ行く船の後悔は4時間半かかるので、お昼をまたぐため、
お弁当を買っていこうとコンビニに入ると、おにぎりが売り切れていたので
パンを一つ買っていく。

与那国と波照間行きのフェリー発着場は、他の島への乗り場と離れているので
ぐるっと船着場を回って歩いて行く。意外と遠い・・。
フェリーの乗客は、少なかった。
この与那国に行く船は「ゲロ船」と呼ばれるほど、揺れると有名らしいのだけど
でもそんなに小さい船でもないし、今回は波もおだやかだったせいか、
快適に乗っていくことができた。
そもそも与那国は土地の言葉で「どなん」と呼ばれていて、
それは「渡難」と書く。
断崖絶壁に囲まれていて、波も高く、渡るのが困難なことからそう呼ばれていたそうだ。
船は週に2回しか出ないので、欠航になったらどうしようかな
と思っていたけど、行きも帰りも穏やかな波で無事に渡ることができたので、良かった。

船の中は、小さいながらも寝っころがれる部屋と、自由に使える2段ベッドの客室もあったのだけど
じめじめしてそうだし、外は天気もいいので、ずっとデッキのベンチにいた。
そこで、本を読んだり、日記を書いたり、昼寝したり、海を眺めたり
などして、ゆっくり過ごした。
けっこう私は、旅におけるこういう移動の時間が好きで、
移動の為に旅をしているのではないか、と思うほどなのであるが、
与那国に行きたいと思ったのも、「渡難」と言われるほどのところだから、
という点で惹かれた部分は大きい。
だから、飛行機で行こう、なんてことは全く考えなかった。
飛行機なんかで行ったら、島旅の魅力半減である。

お昼頃には、コンビニで買ったパンと、お弁当に持ってきた、もずくカップ入りの
ゴーヤチャンプルーを食べた。このゴーヤ炒め、朝に作った時よりも、美味しくなっていた。
豚肉の油がゴーヤにいい具合に染みて、甘くなっていて、絶妙。
ゴーヤも味はしみこみながらも、芯はシャキシャキしてるし。
時間を置いた方が美味しくなる、ということもあるんだなー。と納得。
いや。しかしこれももしかしたら、単に室内と野外で食べる美味しさ効果の違い
の可能性もあるぞ。だって、コンビニで買った普通のチーズパンも、
めちゃくちゃ美味しかったし。

しばらく船は四方何も見えない青い海の中を走っていたのだが、
だんだん与那国島が見えてきた。
真っ青な海の中に浮かぶ、断崖絶壁の雄雄しい島。
日本の最西端までやってきたかー。
船からその、荒波の中に浮かぶ与那国島を見ていたら、
何故だかわからないけど、涙が出てきた。
一体どういう感情の涙なのか、さっぱりわからなかったけれども。

14時半に与那国に上陸。
今夜の宿は、港から離れた祖納という集落の方にある「さんぺい荘」。
集落から少し離れた小高い丘の上にあるので、景色もよく、
自然に囲まれていて、虫の声もして、なかなか良いかんじ。
こういう雰囲気のところは、好きだ。
港に迎えにきてもらった車に乗って宿まで行く。
客は、私と、アメリカ人の男性カール(うまく聞き取れていないので一応)
の二人だった。カールは、日本語はほとんど話せないので、
会話は英語でだったので、超カタコト英語の私は、まるで外国で
苦労して話ししてるみたいな気分になった。

さんぺい荘は、かなりフリーダムは宿で、食事も何もすべて自由に勝手にやるかんじ。
でもけっこうキレイで清潔なかんじで、居心地はよい。
洗濯機も自由に使えるし、シャワーも共同だけど、広くて使い勝手がいい。

宿では自転車を無料で貸してくれたので、それに乗って島を回ってみる。
しっかし与那国はけっこう広いのだ。
島のはじっこの方しか回っていないのだけど、けっこう暑いせいもあって
汗だくになって、疲れた。
さすが石垣からもけっこう離れているだけあって
那覇とか石垣と比べて、格段に暑い。

与那国の東の端っこの東崎(あがりざき)展望台まで行ってみる。
展望台のまわりには与那国馬がたくさんいた。
近寄っても特に逃げもせず、暢気に草を食べている。のどかだ。
そこら中に転がっている馬糞を踏まないように注意しつつ、
灯台の先の崖の方まで行ってみた。
すごい断崖絶壁なのだけど柵がボロボロに壊れまくっていて役に立っていない。
恐る恐る崖の下を覗いてみると、珊瑚礁のキレイな海が見えるけど
ほんっとに怖い。足がすくむ。
突き落とされたら死ぬなー、とか思いつつ。

そのまま海沿いを自転車を走らせて、名所の岩を見ていく。
海の中にすっくと立っている「立神岩(たちかみいわ)」という岩を見た。
これは名前もそうであるが、形状も、みうらじゅん的に言う「確珍犯」である。

まあそんなものを見たところで、日も暮れそうなので宿へ戻る。
宿では、夕食は1000円でつけられるというので、お願いしておいた。
時間意外は鍵のかかっている食堂が、時間になったらいつの間にか鍵が開いていて、
そこにお重に入ったお弁当が置かれていた。
そうかー。そういう仕組みかあ。
前に八重山の離島をまわったときには、民宿では必ずどこも泡盛が飲み放題だったので
今回もそうかな、と思っていたのだけど、
これでは酒は出ないのだな、と思って、町に酒を買い足しに行った。
宿には冷蔵庫もあるので、冷たいビールが飲めるのだ。

宿に戻って、シャワーを浴びて、夕食の時間を待っていたら、
カールがやってきて、「サンセットを見にいく?」みたいなことを言った。
この宿は、夕日の見える最西端までは遠いので、
自転車しか移動手段の無い今日は、夕日を見るのは諦めていたのだけど、
カールが借りたレンタバイクの後ろに乗せてくれる様子なので
乗せてもらって見に行くことにした。
「原チャリの二人乗りって久しぶりだなー。高校生以来とかか?」
なんて考えながら二人乗りして道を走っている途中、
「あれ?もしかして、原チャリの二人乗りって、違反かもしれない」
と気がついた。
が、それは違反である、ということを英語で言う語彙能力も無く、
第一こんな中途半端な道で降りても、どうにも帰れないし、
と思い、警察に見つからないことを祈りつつ、西に向かう。

「日本最西端の碑」のある、展望台には、夕日を見に人がポツポツと集まっていた。
台湾の方向に沈む、日本で最後に沈んでいく夕日は特別なかんじがした。

カールは「ここに来る前に波照間に行ったから、これで日本の最南端と、最西端を制覇した。
来年は北海道に行って、最北端を制覇するんだ!」と喜んでいた。
日本人でもそんなところに興味の無い人は沢山いるのに、
自分の国でもない国の端っこを制覇するのが、そんなに面白いのかなあ、
どういうところにその意義を感じているのか?
ということを聞きたかったのだけど、そういう感情的な話をするのに上手い言葉が見つからなかった。
うーん、こういう時に、英語をちゃんと喋れるようにしておけばよかったと悔やまれる。
「日本の最東端はどこ?」と聞かれたけど、
「うーん、北海道?小笠原?・・えーと、I don't know」
そういえばはっきり分からないなあ。
たまたま私も最南端と最西端を制覇しているけど、目指して制覇したわけでもないので
あまりそこにこだわっていなかったのだけど。
でも、その話を聞いたら突然、北海道の最北端を攻めてみたい気になってきた。

日が暮れたら、宿まで送ってもらった。
カールは外に飲みに出かけていった。
私は夕食の用意された食堂へ。ビールを飲みながら食べる。
ぐるくんの空揚げとか、お刺身とか。
意外と盛りだくさんで、けっこうお腹一杯になってしまった。
そして、昼間の自転車こぎが思いのほか疲れたのか、ビール1本で酔い、
すごく眠くなってしまって、部屋に戻ったらまだ21時くらいだったけど
横になっていたら、寝てしまった。

夜中に目が覚めたので、ちょっと外に散歩に出てみる。
集落から離れたこの宿は、星がよく見えるらしかったのだけど
満月に近づいていて月明かりがやたらと明るく、
最初、電灯に照らされているのかと思うくらいに、
何も無い道が明るかった。
なので、星はあまり見えなかった。

集落から、飲み屋で盛り上がっているおじさんたちの声がよく聞こえる。
ビルの上に設置された、ビアガーデン式の居酒屋があるせいだろうか。
宿の夕食をつけないで居酒屋に行ってもよかったかも、
と思ったけど、このヘトヘト具合ではあまり飲めなくてダウンしかねないので
これでよかったのかもしれない。



※旅の写真はこちらで紹介しております。
こたびphoto「沖縄島めぐり」2009