090510
昨日は早く寝てしまったので、
日の登りたて早々に目が覚めて、朝食前に散歩に行く。

ティンダハナタという、自然に出来た岩の展望台を見に、
遊歩道を歩いて小山を登る。
20分くらい歩いて、その展望台に到着。
せっかく自然にできた展望台なのに、しっかりと柵で囲まれて
何だかわからなくなってしまっているのは、残念。
しかしここからは集落が一望できて、なかなか眺めはよい。
ここは昔、与那国の女酋長が住んでいたらしい。

宿の朝食は、パンがサービスと言っていたけど、
食堂に行くと、パックに入ったクロワッサンが二つと、
サーターアンダギーが置かれていた。
この食堂、テーブルと椅子は白いプラスチックの
海辺のテーブルセットみたいなもので、
夜はいまいち雰囲気が無いなと思ったのだけど、
朝は、窓から差し込む光と相まって、気持ちが良かった。
なので、しばし朝食後もそこでコーヒー飲みながら
日記書いたりしていた。

今夜は港の方に宿を変えるので、荷物をまとめたら車で送迎に来てもらった。
今夜の宿は、「太陽」という意味の「てぃだん」という民宿。
居酒屋と併設している。
人が少ないので、料金そのままで一番いい部屋にしてもらった。
海の見える角部屋の、バストイレ、TV、冷蔵庫付きの、ツインベッドの部屋。
と書くとなんだか豪華そうだけど、まあ普通の民宿。

昨日の自転車はさすがにヘトヘトになったので、
今日はバイクを借りることにした。
与那国は割りと大きいので、周るのは意外と大変なのだ。
6時間2000円で、原チャリを借りる。
うーん、日差しは強いけど、バイクで走ると風が気持ちよい!

しばし港近くの久部楽という街をウロウロしてみるけど
祖納に比べて更に栄えていなくて、お店もあんまり無い。
昼食を食べようと思ったけど、閉まっていたりしたので、
「ユキさんち」というカレーやさんに入った。
ここまで来てカレー?というのと、
お店もちょっとお洒落ちっくだったので、どうかなあ、と思ったのだが。
しかし、入ってみたら、古民家を改造したその店内は意外に居心地が良かった。
壁は開放的に開けていて風の通りが良くて涼しいし、
緑に囲まれて、濃い茶の木のそのままの形のテーブルとか
なんとなくバリのリゾートっぽくて涼しげで落ち着く。
お客さんたちも、つい長居をしてしまっているようだ。
いやあ、意外に良かった。

カレーは日替わりで1種類、なくなったら営業終了
という、なんともマイペースな営業スタイル。いいなあ。見習いたい。
飲み物はカレーとセットでも400、500円する。
ちなみにソフトドリンクも500円なのにビールも500円だ。
だから本当はビール飲みたかったけど、一応運転するのでやめておいたけど。
そういえば、てぃだんの居酒屋のメニューも、
ソフトドリンクとビールの値段が変わらなかった。
何だここは。ヨーロッパか?!

ご飯を食べたら、本格的に島の一周にとりかかる。
唯一、比川の海岸で泳ぐのが最適と言われているので、
暑いし、泳ごうと思って水着を下に来てシュノーケルも持っていったのだけど、
工事中で埃がいっぱいたってるし、
海も囲われてるしで、泳ぐ気になれなかったので、やめた。
この場所には、与那国を舞台に撮影された「Drコトー」のセットが建っている。
ドラマは見ていなかったので感慨は無いのだけど、一応見ておく。
ドラマを見ていた人なのか、男性が、セットと一緒に写真を撮ってくださいと
お願いされたので、撮ってあげた。

その後は海を見下ろす道路をびゅーんと走る。
宿でもらった「Drコトー診療所ロケ地マップ」によると
この道はコトー先生がタイトルバックで自転車に乗ってるシーンで使われたそうだ。
ドラマ見てないのであれだけど、このロケ地マップは大変よく出来ていて
持ってきていたガイドブックよりも、地図も場所の説明も詳しくて、
大変役に立ったので、与那国にいる間中、手放せなかった。
これに頼りきりで、あまりにも熟読したので、
見てもいないDrコトーのどんな場面がどこで撮影されたのか、
ということまで覚えてしまった。

道沿いの草原には牛や馬がいっぱいいる。
海もキレイだし空も晴天だし。
セミまで鳴いてるし、なんだか夏まっさかり!という雰囲気だ。

一応、与那国で一番標高の高い、宇良部山へ登ってみるけど、
特に何てこともなく、島を見渡してすぐに降りて、
そのまま近くの「アヤミハビル館」へ行ってみる。

アヤミハビルとは、与那国に住む世界最大の蛾で、
体長が30センチくらいもある。
この蛾は、オトナになったら餌も食べず、蜜も吸わず、
ただ、交尾して卵を産んで死ぬ、という
ただそれだけのために成人の期間を過ごすという、すごい蛾なのである。
なんてったって、メスは、羽化したら即、動きもせずその場で
フェロモンを出してオスを誘い始めるっていうのだから
蛾といってもなかなか侮れないのである。

アヤミハビル館で蛾と蝶の違いなどなどをじっくり学習した後(おもしろかった)、
祖納の集落方面へ走らせて、海岸に建つお墓郡を見る。
海岸沿いにすごい数の沖縄式にお墓が並ぶ。
しかしこの形のせいか、場所のせいか、お墓といっても
湿っぽいかんじが無い。

その後、与那国空港の前を通りかかったので、
入ってみてみたけど、本当に小さな空港だった。
飛んでくる飛行機も小さいしね。

そして、満タン返しにすべく、空港近くのガソリンスタンドに入るが
誰も出てこない。
建物の中を覗き込んで「ガソリンを・・」と、座っていたおじさんに声をかけると
「燃油?」と愛想無く言って、のっそりと立ってやってきた。
ほんと、商売やル気あるのか?というような反応の悪さ。
「カギ」と怒ったように言うので、渡すと怒ったようにガスを入れ、
入れ終わったらメーターを見て、そろばんで計算をして
「168円」と言った。
いまいち相場がかわらず千円札を握り締めて待っていたので
一瞬聞き間違いなのかと思ったけど、一応168円ちょうどの小銭を渡してみた。
おじさんは、ゆーっくりと手のひらに乗った小銭を数え、
「はい。」とだけ言った。
まあ、こういうおじさんなのであろう。

バイクを返すまでにまだ少し時間があるので、
最後にクブラバリを見ていく。
「日本最後の夕日が見える丘」の石碑の奥の岩地を進んでいくと
海沿いに大きな岩の割れ目が現れる。
幅が3.5メートル、深さが15メートルもあるらしい。
昔、人頭税があった時代に、人が増えると収める税金が増えてしまうため、
人へらしのために、ここを妊婦に飛び越えさせたという。
大抵は落ちて死んでしまって、うまく飛べたとしても
流産する者も多かったという。
ここから飛ぶということを想像するとぞっとするような大きさ。
なんだかいろいろ想いながらその岩を眺めていた。

バイクを返却して、宿に戻って部屋で買ってきたビールを飲みながら
夕食の時間を待つ。
夕食は併設の居酒屋でとるのだ。
出てきた夕食は、お刺身数切れと小さいさつま揚げみたいなの?
おかずが少ない!ご飯の盛りも少なくて
なんだかすぐに食べ終わってしまった。
夕食抜きにしてつまみと酒にすればよかったかなあ。
そして宿のおばさんも、団体のおじさんたちと喋ってるし
あまり交流もないまま、部屋に戻る。
離島の宿はどこもうるさいくらいに交流があるものと思い込んでいたけど
与那国はもしかするとあまりそうではないのかもしれない。
あと、泡盛の飲み放題とかも、普通ではないのかもしれない。
どちらかというと個人の自由重視、というところが
あるのかなあ?と2件泊まったところで思った。

ということで、夕食後、夕日を見に行く。
灯台は少し遠いので、今日はクブラバリの丘から見ることにする。
夕日を見ながら、
「あれー。私、何で会社辞めたんだっけ?」と思った。
もちろん色々思うところはあったのだけど、
そんなに、何年も勤めた会社を辞めるぞ!という行動に移すほどの
決定的な理由があったんだっけ?
と今更ながら、よく考えると、よくわからなかった。
ほんとに、何だったんだっけなあ?

夕日はだんだん沈んでいったのだけど、
今日は下の方の雲が多くて、
地平線に沈みきる前に雲に隠れてしまって
上手い具合の夕日を見ることができなかった。
昨日、バイクに乗せてもらって夕日を見ておいて良かった。
でも、雲の向こうだと、夕日が沈んでいるのは見えないけど、
その向こうでは着実に動いていっているんだよな。
目には見えなくても、物事は進行しているんだよな
なんてことを、隠れた夕日の空を見ながら、思った。
もっと言えば、向こうで夕日が沈んでいっているのではなくて
自分が動いているのだけれども。

日が沈んで、クブラバリの丘を戻って歩きながら、
「そうか。私は、“端っこ病”なんだ。」
と、唐突に理解した。
振り子の端っこまで思い切り振り切った後は、
徐々に反対に移行していくのではなくて、
その反動で一気にもう一方の端っこまでバーンといかないと
気がすまないというか。
その“端っこ病”のおかげで、私は会社を辞めたのだ、多分。

寝る時間とか食べる時間とかの自然の時間は全部無視して生活して
やることに意味があるのかなあという仕事を創出して
時間を無駄にいっぱいかけて仕事をして
精神が参るほど働くほど頑張ってると評価されて
何だかなと心の底で思いながらもその通りにやっていたのだけど
それをやり切ってしまった、端っこまで行ってしまったので、
今度は間逆の側に行くしかなかったのかもしれない。
そのとき、“端っこ病”でなければ、徐々に移行していく
とか、もっとゆるやかな手段があったはずなのだけど、
それができないのが、“端っこ病”なのだ。きっと。

船から与那国を見た時に、
「あー、日本の端っこに来たなあ」と思った時に出た涙は、
深層心理で、端っこに心が動かされる何かが
反応していたのかもしれない。

さて、暗くなる前に宿に戻って、
買ってきたビールと泡盛を飲みながら、
部屋でTVを見ながら一人飲み会。
久々にちゃんと見るTVが意外に面白くて
「うたばん」と、その後のドラマ「ぼくの妹」まで
夢中で見てしまった。


※旅の写真はこちらで紹介しております。
こたびphoto「沖縄島めぐり」2009