090511
朝は6時に起床。
朝ご飯を食べる。ご飯の量は夕食よりも多めだった。

宿のおばさんとTVを見つつ話をし、
しかしそう盛り上がりもせず、早々に部屋に戻る。

今日は10時の船で石垣に戻る。
港の前の「日本最西端の商店」と書いてあるお店で
お昼用の食料を買っておく。
沖縄ではメジャーなおにぎり、ポーク玉子と、
ソーセージ入りのパンを買う。

船の前の小さな受付の小屋で、乗船名簿に名前を書いて船に乗る。
週に2便しか出ない船なので、行きの顔ぶれと、割と同じだ。
帰りの船は、ほぼベンチの上で昼寝していた。

14時半に石垣についたら、そのまま港をぐるっと回って
反対方向にある、黒島行きのフェリー乗り場へ行く。
ピストンでここからまた黒島へ行くのだ。
チケットを買って15時半発のフェリーで黒島へ向かう。
小さいフェリーで、25分で黒島に到着。
今日はほぼ船の移動で一日を使ってるなあ。

黒島での宿は、「みやよし荘」。
宿に着くと、宿のオーナーが簡単な地図をくれて、宿と島の説明をしてくれた。
一通り説明してくれた最後に、
「島には、牛と孔雀とカラスがいる位で、何もないです。」
と言った。
そこには、何も無いことこそが、この黒島の特徴なのだ
というひそかな自信が感じられて、
うんうん、なかなか良いトコロにやってきたぞ、と思った。

自転車は宿の庭に停めてあるのを自由に使ってよいというので、
早速自転車で島をまわってみる。
それにしても、本当に何もないので、建物など目印となるものがあまり無いので
地図をみながら進んでも、いまいち合ってるのかどうかとか、
どっち方向に進んでいるのかなどが把握しずらい。
まあしかし、そんなに大きな島でもないから
迷ってもいいか、と気軽に道を進む。

しっかし本当に黒島には牛がそこらじゅうにいっぱいいる。
なんてったって、人口が200人くらいなのに
牛は2000頭と、人口の10倍の牛が住んでいるらしいのだから。

細い道に入っていこうとしたら、手前にいたおじさんが
「孔雀がどうのこうの」と言ってるような気がしたけど
よく聞こえなくて、どんどんその道を進んでいったら、
いきなり目の前に、孔雀がいるのに気がついた。
そこでようやく、そうか、おじさんは、
「孔雀が羽を広げてますよ」と言っていたのだ、ということに
気がついた。しかしもう遅かった。
孔雀は羽を閉じて、逃げていってしまった。
せっかく羽を広げていたそんなところに
ズカズカ自転車で入り込んでしまって、、ゴメンね。おじさんと孔雀。
でも、そんな普通の道端に、平然と孔雀が羽を広げているなんて
ホントにすごい島だ。

一応、街の中心地で栄えてる?と言われてる東筋というところに行ってみたけど
そこまで来ても、どっちの方向に何があるのか
いまいちわからないような、栄えてない具合。
空いてるのか空いてないのかわからないようなお店がポツポツと
家が少しある程度の、ののどかな集落。
そこの、島で唯一の商店「たま商店」でビールとカキピーを買って、
海岸に行ってみる。
引き潮のようで、リーフの上をみんな歩いて足元を見ている。
私は岩場に座って、その風景を眺めながら、ビールを飲んだ。
オリオンビールも発泡酒や第3のビールなど各種出てきているので
この旅の間でもビール以外のものを飲むことが多かったのだが、
黒島では売っている種類が少なかったので、
ずっと発泡酒ではなくてビールを飲んだ。

少し前まで寒かったらしいのだけど、今日の黒島は湿気があって暑い。
日が暮れてきたら宿に戻って、シャワーを浴びてさっぱりした後、
夕食の時間まで、宿の本棚から漫画をもってきて、読む。
ここにいる間に、あだち充の「ラフ」を全巻読んでしまった。
久々にあんな青春モノを読んだなあ。。

19時から夕食。
今夜の客は、私のほかに、千葉の野田からきた男の人が一人だけだった。
大人しい人で、話ししても会話が途切れがちだった。
夕食のメニューは、豪華だった。
魚の煮付けに、刺身が赤白2種、アーサ、フーチャンプルー
などなど。おなかいっぱい。
冷蔵庫からビールを取り出してきて、ビール飲みながら食べる。
宿のビールや泡盛などは、勝手に取り出して、
壁にかかっている自分の部屋の帳簿に記入しておくというシステム。
昔は泡盛は飲み放題だったらしいのだけど
このご時勢で、有料にしたようだ。
でも、東京に帰ってきてから、宿にあった泡盛と同じモノが
売られているのを見たけど、宿での料金の方が安かった。

食べ終わった頃、宿の子供がやってきたので、
ちょっと一緒に遊んでいた。
そして、泡盛を飲もうかなー、と、各種取り揃えてある泡盛を
品定めしていたら、ひょろっとした、髪を一本に結わいたおじさんがやってきて
「泡盛飲むか?」と聞いてきた。
「はい。」
「じゃあ、ご馳走してあげよう。」
そういって、ひょろっとしたおじさんは、キープしていたっぽい
泡盛の瓶をコップに注いでくれた。
私は氷だけ入れて飲もうとしていたら
「え。水で割らないの?!さては、相当飲むな。」
と、素性がバレてしまった。

このおじさんは、
そういえば、宿にちょろちょろ現れて、
TV見てたり、庭でタバコ吸ってたり、
自転車でその辺に出かけていたりしていた。
宿の人なのかな?と思ったけど、
伝票も特別なところにこの人用のものがあったし、
宿で働いているわけでもなさそうなので、
長期滞在者なのかもしれない。
なんとなくその辺のことも名前もちゃんと聞かない雰囲気で、
謎に包んだままだったのだけど。
キープしていた瓶や伝票に「S.Iwa」とレタリングして書かれていたので
心の中で「Iwa」さんと呼ぶことにした。

Iwaさんと飲んでいたら、白いひげを生やしたおじいが入ってきた。
「おー、哲ちゃん、今日は遅いご出勤で。」とIwaさんは言い、
そしてその哲ちゃんと呼ばれたおじいも一緒に飲み始めた。
哲ちゃんは一升瓶をキープしていた。
そいえば、哲ちゃんのものらしき伝票もかかっていた。
後で聞いたところによると、哲っちゃんはこの宿のオーナーのお父さんで、
元オーナーのようだ。

黒島には、昔居酒屋が無かったので、
飲むときは民宿か、商店に集まって飲んでいたのだそうだ。

ここで飲みながら話した話は、なんだかとっても貴重な体験で、
普段「なんだかな」「ほんとうはこうなんじゃないかな」
と思っていたことが、みごとに語られていて
こんなところで、こんなに立て続けに聞くことができるなんてと、感激で、
普段は飲みの席の話なんて、かなり聞き流して適当な相槌が多いのだけど
この日は、聞き漏らさないように、とても大事な話を聞くように、聞いた。


どこが見所ですか、とよく聞かれるけれども、
見所は、自分で見つけるものだ。

黒島には、何も無いけど、都会に無いものが、全部ある。

黒島では、家に鍵をかけない。玄関もいつも開けている。
悪いことする人がいないから。
警察もいない。

沖縄では、古い家は南向きに玄関を作る。
だから道に迷ったら、古い家の玄関を見れば方向がわかる。
最近は、特に都市では、効率のために道の両方向に玄関を作るけど。
全部南向きだけの家になると、家の前の道路がきれいになる。
なぜなら、前の人の塀のところまで自分の範囲として掃除するから。
向かい合わせの場合、どこまでが自分の範囲かがあいまいになる。


Iwaさんは早めに眠くなって部屋に戻って寝てしまい、
哲ちゃんおじいも机につっぷして寝てしまったので、
宿のオーナーと飲んだ。
「(哲ちゃんは)いつもこのパターンなんです。
ここで寝て、いつのまにかそこの畳で寝て、気がつくと朝までに
ちゃんと家に帰って寝ている。毎晩そのパターン」


八重山諸島を旅するのが好きな人は沢山いても、
全部をくまなくまわるというよりも2種類の方向に好みが分かれるらしい。
西表、竹富、与那国派と、
黒島、波照間、小浜島派、
らしい。
それはどういう分け方なのかといいうと、
「見るところがあるところに行く派」と、
「何も無いところに行く派」
ということだそうだ。
確かにそれを聞くと、人が旅に求めるものって、
大きくこの二派で、違うのかもしれない。
いや、旅だけではないかもしれないけど。

私は、今回八重山諸島の中から黒島を選んだ理由は
「何もなさそうだから」だった。
観光名所は、見るべきポイントを押さえたという達成感はあるのだけど
それ以上のことは無くて、
むしろ観光名所とされているものを、そうであるものを見ることによって
パンフレットを見るのと同じ位の効果しか自分の中に起こせない
ような気がする。
だから、事前に調べていたものほど、実際に見たときに
「ふーん」とつまらなく感じてしまうことが多い。

だけど、そういう、設定されたものが無いところでは、
全部自分で見て、見つけて、感じとらなければいけないから、
なんだかすごく充実する。
だから、何もないところへの旅は、感受性が非常に忙しくなる。


夜の0時頃まで飲んで、
明日の干潮と満潮の時間を教えてもらい、部屋に戻って寝た。


※旅の写真はこちらで紹介しております。
こたびphoto「沖縄島めぐり」2009