090512
朝6時半起床。
牛、ヤギ、鶏、虫、その他様々な鳥などの
生き物たちの声と風の音。
最高のBGMでα派全快で目覚める。

昨日宿のオーナーに教えてもらったところによると
今日の干潮は1時〜3時頃で、その頃に海に行くと面白いというので、
海は午後にして、午前中は自転車で島を回ってみようと思う。

まず、入館料無料のビジターセンターへ行ってみる。
島の歴史とか展示品などを見る。
昔使われていた、ホラ貝のやかんなどもあって面白かった。

次に、「黒島研究所」に行ってみる。
ここには、ウミガメなどの黒島の生物が飼育、展示されている。
ほんっとに飲食以外にお金の使い道の無いこの黒島の中で
この「黒島研究所」は唯一お金を使う施設だ。
とはいえ、入館料300円。
すごい博物館みたいなトコかと思ったら
プレハブみたいな建物で、青いのぼりの「黒島研究所」のハタが
はためいていて、なんだかその建物のたたずまいが、すごく良かった。

そんなかんじの概観ではあるが、展示品は充実していて、
各種ウミガメの剥製や、サンゴや貝などの種類も豊富に展示。
鳥の剥製は「これは職員手作りなので、メンテ可能なので、触ってもいいです」
という寛容っぷり。
ウミガメやヤシガニや魚などもさりげなく飼育されているけど
けっこう充実してるのだ。
夢中で見てしまいました。

その後は、島を一周しようと自転車を走らせる。
細い道になるといまいち方向がわからなくなって迷ってしまったり。
まあでもなんとか、だいたい島を全体的に1週まわることはできた。
やっぱり牛がいっぱいいたなー、という感想。
つくづく何も無さ加減がすばらしい。

お昼は宿の近くの「はとみ」というお店へ。
暑い中自転車を走らせていて、喉がかわいていて
生ビールを飲みたくてたまらなかったので、
野菜そばのほかに生ビールを注文。
期待通り、冷たく冷えたオリオンビール生が出てきた!。
暑い中のビールはうまい。
野菜そばは、炒めた野菜がたっぷりと乗った沖縄そば。
ニラが効いていて、美味しい。ビールのつまみとしても意外に合っていた。
お店のご主人は、日に焼けたスキンヘッドにハチマキで、
一見コワモテなおじさんなのだけど、喋ってみるとマイルドで
優しそうな人であった。

さて、午後はいよいよ海へ。
ここの海岸は浅瀬なので、干潮は、ほんとにかなりリーフが出現して
遠くまで歩いていける。
一体どこで泳げばいいのだ?
とよくわからなかったけど、かろうじて泳げうなエリアに入ってみる。
水は温かかった。
サンゴもけっこうあって、その周りに魚がいっぱいいた。
近づいても逃げないし。
しばし水の中で泳いで魚を見ていたけど、
どうもこの海は上から見た方がいいのではないか?
と思って、水から上がって、サンダルでリーフを歩いてみることにした。
浅いところにもけっこうキレイな魚がいるので、
地上からも十分魚が見れて、楽しめる。
うん、ここの海は、干潮に上から見るものなのだな。
サンゴが多いせいか、海の色もエメラルドグリーンでとてもキレイだし。
干上がり具合の高低差で小さく滝のようになっている場所なんて
「神の海だー」と思うような光景。すばらしい。
こんなの、いくらお金かけても人工的に作ることはできないよなー
と、自然のすごい美しさを見るたびに、思う。

海を十分に堪能したあと、宿に戻ってシャワー浴びて、
夕食まで部屋でビール飲みながら、漫画を読む。
各部屋ごとに、籐の椅子があって、
窓辺に座って風にあたりながら読書すると
すごくくつろげるのだ。

昨日泊まっていた男性は、今日のお昼の船で帰ってしまったので
宿泊客は今日は私一人。
一人分だからか、今夜の夕食はよりボリューミー。
宿のオーナーがメニューを説明してくれる。
「冬瓜と鶏肉の煮物、豚のしょうが焼き、まぐろの刺身紅白、
魚の甘酢あえ、そしてこれが、コウコウセイという名の魚の味噌汁です。」
「こ・・高校生?」
「はい。そう呼ばれていますね。正式な名前はわからないんだけど・・」
ふーむ。謎の魚。高校生。
骨っぽい白身の魚で、あまりにも骨っぽいので、
身は食べずらかった。
こういう汁もののダシにするのがいいのかもしれない。

食後、外に星を見に散歩に出る。
月がまだ出ていないので、暗くて星がよく見えた。
早いうちだと、月がまだ昇ってなくて
月明かりがそんなにまぶしくないんだな、なんてことも理解した。
近所をゆっくりウロウロして戻ってくると、
哲ちゃんさんがテーブルに座ってTVを見ていた。
そして「お酒、飲みますか」と誘ってくれたので
哲っちゃんさんの一升瓶の泡盛をいただいた。
しばし二人でテーブルで飲んでいたら、
外に飲みに行っていたIwaさんがやってきて
「一緒に飲みに行こう!みんなで飲んだ方が面白いでしょ」
と誘ってくれたので、哲ちゃんさんと一緒に
Iwaさんが飲んでいた店に出かけていった。

連れていかれたのは、昼ごはんを食べた「はとみ」だった。
テーブルには、スキンヘッドの店長と、もう一人おじさんが座って飲んでいた。
もう一人のおじさんは、黒島の小・中学校の校長先生らしい。
ちなみに子供の数の少ない黒島では、小・中学校はくっついて一つなのだ。
そんな黒島のおじさんたちメンバーと一緒に飲むことになった。
これは面白い話ができそうだぞー、とちょっとワクワク。

テーブルの上には、食べかけのつまみ料理の
貝のバター焼きが乗っかっていた。これがバターまろやかで美味しかった。
「これ、何の貝?」と聞かれて、スキンヘッドの店長は
「貝!」と答える。
「貝は貝だ。やれ何貝だ、何産だ、どうのこうの、と能書きを言わないと
ダメな人が多いけど、何なんだろうねえ、あれは。」
「そうそう、魚は魚。以上でいいんだよねえ。」
「ブランドをつけないとダメ、というのは、一体何なんだろうねえ、あれは。」
うーん。好きなかんじの哲学理論になってきたぞー。
いいないいな。
黒島の人と話した話は、根本の考え方の方向性が合っていて、
初めて話するのに、非常に深い話ができる。
昨夜に引き続き、今夜もとっても貴重な会話が出来た。

席が隣だったこともあり、スキンヘッドの店長さんと
けっこう話をした。

この島では、お金を使うところが無い。
お店のヘルパーさんには、月に6万出すんだけど、
使うところが無いから、それでもたまる。
1万使っても、まだ5万も残るし。

「観光化」はさせないようにしたい。
観光化すると、人間が変わってしまうから。
目先の欲に向いてしまうと、人間は変わってしまう。
黒島の人は、今、いい人ばっかりだから、そのままがいいから。

贅沢をしないように、と思えば、どうにでもなる。
自分も、利益を出そうとは思ってやってはいない。
余った分は、還元すればいいと思う。

日本は、実質「社会主義国」だから、
言われたことをその通り、みんなで同じようにやるだけ。
自分の頭で考えてやってない。
でもここでは、自分で楽しいこととかを見つけないといけないからね。

世の中は、何かと「お金を使わせよう」としているから。

この島は、牛の産業で8割はもってるから、観光に力を入れなくても
大丈夫なんだよ。だからこれ以上に観光とかに力入れるのは
過剰になるからね。
この島は、やろうと思えば時給自足もできるから。


今、こんなに何も無い状態を保持できるのは、
かえって努力が必要なのかもしれない。
ほおっておくと、人は目先の利益にまどわされて
「儲かればいい」に目的がシフトしてしまって
そのために「お金をいかに使わせるか」に努力の方向が向いてしまう。
そして、観光地化するっていうのは
「ここがこういう見所なんですよ」っていう定義づけをしてあげることで
見る人の、自分で見つけ出す能力を低下させているといってもいい。

私も、いまいち観光地化されたところが好きでななくて
特に、わざわざそのために建てたようなところは面白くないと思っているのだけど
それは、なんだかそういう、人にモノの見方を強制されて
そのとおりに反応しなくちゃいけないことの
面白くなさ加減が嫌だったのかもしれない。

だけど、さっきの「どこ産のどんな貝」とか言わないと
その貝を味わうこともできないというか
そういう強制が無いと判断ができない人も多くいるのも事実。
いや、そういう方が多いから、そういう方向に走るのか?
でもそれは、元々の資質もあるけど、
どちらかというと、判断能力をなくす方向に洗脳されてしまっている、
というところもあるんじゃないのかなあ。


眠くなったIwaさんと校長先生は先に帰り、
残った3人でもう少し飲んでから、哲ちゃんさんと一緒に帰る。
お店から宿までは歩いて数分の距離。
月は真上の方に上がっていて、月明かりが明るい。
別にそんなに酔っ払ってはいなかったけど
こんな島では、たとえ酔っ払っても、
夜にふらふらしてても危なくなさそうだし
モノが無くなっても出てきそうだし、
電車のホームに落っこちることもなさそうだし
なんだか平和で安心だなー。
とか思った。


※旅の写真はこちらで紹介しております。
こたびphoto「沖縄島めぐり」2009