以下、『チャッピー』と日本が誇る名作『ドラゴンクエスト/ダイの大冒険』のネタバレがあります。
あらすじ
チャッピーは工場生まれギャングスタ育ち悪そうな奴らはだいたい友達

南アフリカからやって来た地獄のギャングスタSF
傑作『第9地区』で流星のごとくデビュー、その後『エリジウム』で大気圏に突入して燃え尽きたニール・ブロムカンプの新作である。その衝撃の第3弾は、初心に立ち返るようなギャングスタSFに仕上がっている。
粗筋はシンプル。どうしても意志を持ったロボットを作りたかった人が、レッドブルを飲みまくって意志を持ったロボット「チャッピー」を完成させる。しかし色々あって、チャッピーはギャングのニンジャ&ヨーランディに育てられることになり、ギャングスタロボNo.1を目指して非行街道を突っ走ることになる。そこに完全に脳みそがショートしている戦闘ロボ製作者のヒュー・ジャックマンが絡んできて大変なことに……というお話だ。
本作はいわゆる意志を持ったロボット系の話である。『鉄腕アトム』『ブレードランナー』の頃から語られ続けているお題である。しかし、本作はそういうロボットものにありがちな、「意識とはそもそも何なんだ?」「魂とは単なる情報なのか?」「データさえ保存しておけば人は無限に生きられるのか?」「それは生きていると言えるのか?本当の生とは?」みたいな、ややっこしい話については「魂をデータ化してコピペすりゃ無限に生きられるんじゃね?」というライトな解答を叩き出し、あとは必死こいて生きようとするチンピラ(チャッピーもその中に含まれる)たちのサスペンス・アクションにしている。これが功を奏したのか、『第9地区』『エリジウム』で見せたマイケル・ベイを超えるノンストップ感で突っ走り切っている。特にクライマックスの巨大ロボ「ムース」との激闘は白眉だ。ド迫力の銃撃戦に、『男たちの挽歌』のチョウ・ユンファばりにキメキメの姿を見せるチャッピー。そしてFPS廃人みたいな感じでムースを操るヒュー・ジャックマンも素晴らしい。確かに『第9地区』には及ばないかもしれないが、ブロムカンプが切り開いたギャングスタSFの快作であると同時に、ロボットアクションの快作でもあると断言できる。しかし、しかしである。確かに見ている間は面白かった。設定の穴なども、後になって冷静に考えれば……という感じだった。それ以外の、もっと根本的な部分で何か鑑賞後にモヤっとしたものが残った。私は本作で『第9地区』のようにスカッとした気分になれなかった。このモヤモヤは何なのか?

ポップの母の名言
上に書いたように鑑賞後、何かモヤっとしたのは事実だ。そのモヤっとした感じの正体を探っている内に、私は日本の少年漫画史上に残る傑作『ダイの大冒険』を思い出した。皆さんはポップというキャラをご存じだろうか?ポップは魔法使いなのだが、ただの人間で、臆病で、お調子者というキャラクターだ。何度も戦いから逃げ出したり、ボロボロにやられたりするが、それを糧に成長していき、最後は人間の身でありながら魔界の神バーン様に主人公のダイと2人で立ち向かうのだ。そして物語のクライマックス、限りなく不老不死に近いバーン様に、ポップがこんな話をする。「子供の頃、『死』について考えているうちに怖くなってきた。そして泣きじゃくりながら母親に聞いた。人はなぜ永遠に生きられないの?」と。するとポップの母が答えた。「人間は誰でもいつか死ぬ。だから、一生懸命生きるのよ……」と。劇中屈指の名場面である。こういうのを思春期に見ているわけである。これが前述のモヤっとした感じの理由だ。つまり私は「命は有限で、だからこそ尊い」みたいな価値観を子供の頃から刷り込まれているので、「データをコピペすりゃ楽勝ヨ。無限に生きられるっしょ」というライトな考えと、死んだ人間の魂をデータ化して機械の器に移せば全て解決バッチリOK的な展開がどうにも受け入れがたいのである。もちろん、これは私のロボット感/死生観的な話であるし、『ダイの大冒険』が好きな人間の意見だ。古い考え方と言われても反論はできない。三十路だしなぁ。っていうか『ダイの大冒険』の魔界編始まんねぇかなぁ。ゴラクでやろうぜ……。

総評
最後になったが、本作は役者陣が良い仕事をしている。チャッピーの「両親」を演じたニンジャ&ヨーランディーは、本職はラッパーなのだが、見事な(あるいは素なのか)チンピラ演技を見せている。と言うか本作はニンジャ&ヨーランディーのユニット「Die Antwoord」のPV的な面もある。劇中ではDie Antwoordの曲がかかりまくるし、二人のアジトの美術なんて、Die AntwoordのPVそのものだ。芸名が役名になるというジャッキー的なアプローチをしてくるとは、なかなか見どころのあるグループと言えよう。シガニー・ウィーバーは、まぁいつもの感じだが、脳ミソがショートしているとしか思えないヒュー・ジャックマンは怪演の域だ。FPS感覚で人間を惨殺するところなど、新たな一面と言ってもいいかもしれない。そしてチャッピーを演じたシャールト・コプリー。これも見事である。チャッピーは見ていて「守ってあげたい!」という気分になる。イジメられるところなんか涙が出そうになった。
本作は確かに問題がある。設定なんかも冷静に考えると「?」となる箇所があるし、「それでいいのか?」と思うところもあるだろう。上記に書いたように、その思想を素直に受け入れられない人も多いと思う。だが、その問題に目をつぶれば、これはアクション映画の快作だと言えるだろう。

【チャッピー】…★★★☆☆

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