「今の日本で一番怖い絵を描く漫画家は誰か?」この問いに対して、私は高港基資(たかみなと もとすけ)先生を推す。Jホラーの古典「女優霊」のコミカライズや、一昔前にコンビニに置いてあった「読者投稿心霊体験」シリーズなどを手掛けた方である。この人の特徴を言うと、とにかく不気味な絵を描くことにある。あまりにも貧弱な語彙であるが、不気味としか言いようがないのである。見た瞬間に「こうはなりたくないなぁ」「こんなの会いたくないなぁ」と思わせる説得力がある絵を持っている。どんな絵かと言うと、こういう絵である。見た瞬間に「フワァ!」となる上に、何か尾を引いてしまう業のある画だ。勿論、ただ絵が上手いだけでなく、その怖い絵を絶妙なタイミングでブチ込んでくる間の上手さも凄い。来るのが分かっていても避けることができない、高速の必殺パンチを持つボクサーのようだ。

そんな高港先生が、現在「鬼畜島(タイトルだけで100点満点である)」を絶賛連載中の外薗昌也(ほかぞの まさや)先生の実話怪談本「黒異本」をマンガにしてしまった。この「黒異本」、何が凄いって、怖い上に買った人が次々と恐怖体験をしていることである。その辺りは外薗昌也先生の公式ブログを読むと分かる。そんな曰くつきの本を、必殺の筆を持つ人がコミカライズしてしまったのだ。まさに悪夢のコラボレーションが此処に実現した。それが今回ご紹介する「黒異本」である。




もう表紙から嫌な予感しかしないが、その予想は的中した。全8篇を通して、まさに必殺のタイミングでブチこまれる高港先生の恐怖顔面描写のオンパレード。なぜ俺は夜にコレを買ったのか。正直に言うと、俺はこの本をさっき買った。そして怖いからJAM Projectをガンガンに聴きながらコレを書いている。書くという行為は、俺にとってセラピーのようなものなんだ(洋楽ミュージシャン風)。

本作は全8篇で構成されている。まずは重いジャブ程度のショック・シーンが炸裂する「独居死」。ショタ同士の美しい友情と、高港先生十八番の不気味すぎる造形が絡むハートフル&グロテスクな「赤鬼」。かわいい幼女からの(高港先生は女の子も可愛い)最悪の展開が最悪のタイミングで起きる「妹」。続け様に幼女で攻めてくる「2F」。個人的には絶対に埼玉県には近付かないでおこうと思った「ベビーカーの女たち」。もう本当に洒落にならない「障り」前篇・後編。そして不気味すぎる後味を残す「黒い団地」。怖いのは勿論、時にはハートフルに、時にはコミカルに、時には最悪の後味を残したり……本当に恐ろしい作品である。高港先生ファンである友人から「本当に怖い」と聞いていたので、かなりハードルを上げていたのだけど、それでも怖かった。それも尾を引く感じの、嫌な感じの怖さである。今、PCの画面越しに後ろを何かがよぎったように見えた気がしたが、もう気にしないようにしよう。

夏と言えば怪談。読んでいるだけで鳥肌が立ち、まさにクーラー要らず。寝苦しい夜には、さらに眠れなくなること請け合いだ。648円で買える極上に最悪な一冊。「うわぁ……」という気分になりたい方は必見だと言えよう。しかし今夜どうしよう、俺……。

【黒異本 (原作/外薗 昌也 作画/ 高港 基資)】…★★★★☆