September 28, 2006

クッシング症候群 (副腎皮質機能亢進症)

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ノア動物病院のHPより参照 

1、クッシング症候群
副腎皮質ホルモンの分泌を促す副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を過剰分泌させる脳下垂体の異常(過形成や腫瘍)が原因となり大量のステロイドホルモンが長期にわたって分泌されるために調子が崩れてきます。副腎皮質機能亢進症のうち約80〜85%を占め、犬種としてはボクサー、ダックスフンド、ミニチュア・プードル、ビーグルに多いと言われています。

2、原発性副腎皮質機能亢進症
副腎自体にできた腫瘍などの病変が原因となり、その影響によって副腎皮質ホルモンが過剰分泌されるものを言います。副腎皮質機能亢進症のうち約10〜20%を占め、犬種としてはジャーマン・シェパード、トイ・プードルに多いと言われています。

3、医原性副腎皮質機能亢進症
副腎皮質ホルモンの過剰あるいは長期投与に起因するものを言います。


症状:
症状は非常にゆっくりと経過しますが、本症だとわかったときにはかなり症状が進行していることが多いです。初期には尿の量が増え、水を大量に飲むようになったり、異常にたくさん食べる、元気がないなどの症状が現れ出します。
進行すると、肥満が目立つようになり、また筋肉が弱くなったり、皮膚が薄くなったりして、お腹が太鼓のようにふくれ、足が細くなります。皮膚は毛が乾いて弾力性がなくなり、痒みを伴うことなく脱毛します。また、皮膚に色素が沈着して黒ずんだ皮膚になったりします。

診断:
以前にステロイドを投与したことがあるかどうかを確認します。そして症状、血液検査、尿検査、などから総合的に判断しますが、確定診断には、副腎皮質機能検査が必要となります。

治療:
原因によって、内科療法あるいは外科療法のいずれかが選択されます。脳下垂体の異常が原因ならば、外科的な切除は非常に困難で、また危険性が大きいので、副腎皮質ホルモンを分泌する副腎の細胞を破壊する薬剤を一生涯投与していく内科療法を行います。 副腎腫瘍が原因の場合は、切除可能ならば外科手術が第一選択となりますが、切除不可能な場合は副腎皮質ホルモンの合成を阻害する薬剤を用いて、内科療法を行います。そして、医原性の場合には、ステロイドの投与を中止しますが、急に中止すると危険なこともあるので、普通は徐々に少なくしていくようにします。

※ステロイドホルモンについて
ステロイドホルモンはインスリン(膵臓から出るホルモン)の作用を低下させます。インスリンは血糖値を下げる働きをするので、クッシング症候群の動物は糖尿病になることが多いと言われています。同時にステロイドホルモンは体の免疫力を低下させるので、クッシング症候群の動物は細菌やウイルスといった様々な病原体に感染しやすく、また症状も非常に重くなります。

 

生存にかかわる文献 

■獣医専門医による副腎皮質機能亢進症の診断

イントロダクション

背景:イヌの副腎皮質機能亢進症の診断検査を評価した報告が多数あるにもかかわらず、最も確かな診断検査の一致する見解はいまだない。スクリーニング試験には、低用量デキサメサゾン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)刺激、尿コルチゾール:クレアチニン比がある。鑑別検査に、内因性ACTH濃度、高用量デキサメサゾン抑制試験がある。
目的:この研究目的は、イヌの副腎皮質機能亢進症の獣医内科医、皮膚科医により使用される診断プロトコールを比較した。

サマリー

方法:43人の獣医皮膚科医、または161人の内科医から、副腎皮質機能亢進症の診断方法に対する206の質問の答えを評価した。
結果:回答の26%は、副腎皮質機能亢進症の臨床症状がなく、検査所見の疑いもないイヌに対し、副腎皮質機能亢進症のスクリーニング検査を行うだろうと述べた。残りの74%は、そのようなイヌのスクリーニング検査をまれに、または実施しないだろうと述べた。86%は、血清アルカリフォスファターゼが正常範囲内ならば、副腎皮質機能亢進症を除外するだろうと述べた。専門医の55%は、低用量抑制試験をスクリーニング検査として好んで使用した。
副腎皮質機能亢進症に一致する臨床、検査所見がほとんどなければ、68%の回答者が最初の検査が陽性ならば2回目のスクリーニング検査を実施するだろうと述べた。副腎皮質機能亢進症の診断が確立された後、多くの専門医は鑑別試験を望んでいた。内因性ACTH測定または高用量デキサメサゾン試験の好みは明確ではなかった。腹部超音波検査はよく使用されるが、CTまたはMRIはあまり使用されないとはいえ、専門医の半数以上がどちらか、または両方を利用していた。

結論:低用量デキサメサゾン抑制試験は、副腎皮質機能亢進症の最も一般的に使用されるスクリーニング検査である。

臨床への影響

正常な血清アルカリフォスファターゼ活性のとき、副腎皮質機能亢進症の診断を多くの専門医に思いとどまらせることはないが、イヌへの2週間以上のグルココルチコイドの生理学的以上の投与は、イヌの存在するステロイド誘発アイソザイムのため、一貫して血清アルカリフォスファターゼの顕著な上昇を起こす。臨床症状が認められるとき、血清アルカリフォスファターゼ活性は、正常範囲上限のほぼ4倍以上は常に認められる。
臨床症状に沿ったこの内因性生物活性(血清アルカリフォスファターゼ活性)は、利用可能などんな単一スクリーニング検査よりも信頼がある。その特異性は低いが、感受性は、医原性副腎皮質機能亢進症と同様、自発性副腎皮質機能亢進症のイヌで非常に高くなるはずである。血清アルカリフォスファターゼ活性の上昇が高率に見られないと報告する過去の回顧的研究の診断基準は、今日厳密ではない。過去の研究の多くは、副腎皮質機能亢進症の臨床症状が見られないものも含み、特に特異性の低い単回静脈投与低用量デキサメサゾンなど1回のスクリーニング試験をもとにした。
正常な血清アルカリフォスファターゼ活性の副腎皮質機能亢進症を疑うイヌは、副腎皮質機能亢進症の診断に行き着く前の症例に疑われる他のものより、より完全に調査すべきである。自発性と医原性副腎皮質機能亢進症の検査所見で不同性の理由は、いまだ確立されていない。(Sato訳)
■トリロスタンによる下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の治療


イントロダクション

背景:イヌの副腎皮質機能亢進症のほとんどの効果的な治療は、副腎皮質の束状帯と細網の選択的溶解を起こすため、ミトタンが投与されている。効果的であるのだが、ミトタン投与の副作用は、一般的で時には深刻である。ケトコナゾールやトリロスタンのような副腎ステロイド合成阻害剤は、深刻で不可逆的なミトタンの多くの副作用もなく効果的かもしれない。

目的:この研究目的は、下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の治療で、イヌのトリロスタンの効果と安全性を評価することである。

サマリー

方法:78頭のイヌで、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)刺激試験と低用量デキサメサゾン抑制試験、内因性ACTH濃度、副腎の超音波検査などの検査を組み合わせ、下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の診断を下した。9頭の内分泌検査結果は、決定的ではなかったが、臨床症状、臨床病理学所見、他に考えられる疾患の除去、超音波での副腎所見をもとに副腎皮質機能亢進症の診断を下した。
体重をもとに以下の投与量のトリロスタンを1日1回イヌに投与した。5kg以下は30mg、5-20kgは60mg、20kg以上は120mgとした。平均開始投与量は5.9mg/kgで範囲は1.8-20mg/kgだった。
投与後、10日目、4、12、24週目、その後3-6ヶ月ごとにイヌを再評価した。評価は、経過、身体検査、ACTH反応試験、必要なときは生化学検査を行った。副腎皮質機能亢進症の臨床症状の持続、特にACTH後血漿コルチゾール濃度が250nmol/l以上ならば、1日1回を2回投与することでトリロスタンを増量した。副腎皮質機能低下症の症状があり、ACTH後コルチゾール濃度が20nmol/l以下ならば、トリロスタン投与を2日間中止し、それから次のより低い投与量に減量した。

結果:23頭の投与量は、開始投与量から125%-400%増加した。9頭の投与量は、25-83%低下した。6ヵ月後の最終のトリロスタン平均投与量は11.4mg/kgで、範囲は3-27.3mg/kgだった。2頭でトリロスタン投与は2ヶ月、3ヶ月目に中止し、その理由は、基礎、そしてACTH後コルチゾール濃度が2頭で低く、また1頭は高カリウム、低ナトリウム血症のためである。それら2頭は、追加の治療もなく副腎皮質機能亢進症の臨床症状がなく、1.8年と2.7年維持した。
多飲多尿、多食は、通常投与中1回目、2回目の評価でそれら症状を呈するイヌの70%が解消した。皮膚異常は、62%が3ヶ月以内に顕著に改善、または解消した。2ヶ月以上投与した8頭だけが臨床症状をうまくコントロールできなかった。
平均基礎、ACTH後コルチゾール濃度の有意な低下は、投与中の各評価で認められた。ACTH後コルチゾール濃度は、投与中最初の評価時81%のイヌで250nmol/l以下に低下し、他15%のイヌは約4週間後に低下した。投与中1回の評価しかしなかった3頭と複数回評価した3頭は、ACTH後コルチゾール濃度が250nmol/l以上だった。
軽度高カリウム血症が6頭、軽度高窒素血症が2頭、軽度高ビリルビン血症が3頭、軽度高カルシウム血症が2頭見られた。臨床上副腎皮質機能低下症が2頭で発症した。1頭は1ヶ月15mg/kgで投与し、もう1頭はトリロスタン投与量をモニターしなかった。高カリウム血症、低ナトリウム血症、低コルチゾール血症、ACTHに対する最小反応が両症例で認められた。
1頭はトリロスタンの中止や支持療法によく反応し、もう1頭はトリロスタンの中止とプレドニゾンの投与後死亡した。別の2頭は、トリロスタン投与中に死亡し、そのうち1頭は、治療開始後2日目に原因不明で、もう1頭はトリロスタン投与開始後2日目に起こった病気の経過2日目に死亡した。後者のイヌの検死時、心内膜炎、肺水腫、胃潰瘍が認められた。研究終了時、78頭中51頭が生存していた。死亡した17頭で、生存期間中央値は549日だった。

結論:トリロスタンは、イヌの下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の効果的で安全な治療である。

臨床への影響

ミトタン治療を評価したものとこの研究の比較を下に、トリロスタンは下垂体依存性副腎皮質機能亢進症のより安全な治療であることが分かる。治療の反応が完全に述べられていないので、トリロスタンの治療効果は不明である。血漿コルチゾール濃度抑制の持続期間はほんの数時間のため、1日2回の投与でより良いコントロールが得られるかもしれない。トリロスタンはグルココルチコイド同様ミネラルコルチコイドも抑制し、少数のイヌで、副腎皮質機能低下症の臨床症状や、低ナトリウム血症と高カリウム血症を示す。副腎皮質機能低下症は、この研究の少なくとも1頭で認められたように、トリロスタンの中止で可逆的と予想される。トリロスタンは北アメリカで使用認可はなく、入手もできない。(Sato訳)
■トリロスタンで治療した下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の犬の副腎の超音波像変化

3ベータ-ヒドロキシステロイド脱水素酵素阻害剤のトリロスタンは、イヌの下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の治療で、ここ数年うまく使用されている。下垂体依存性副腎皮質機能亢進症のイヌ19頭の前向き研究で、トリロスタン療法開始前と開始後6ヶ月以上経過してから副腎を測定した。右の副腎の長さ、尾側柱の厚さそして左副腎尾側柱の厚さが有意に増していた(p<または=0.05)。左副腎の長さは優位な変化が見られなかった。トリロスタン療法中の副腎の拡大は、コルチゾール産生に影響する負のフィードバックメカニズムの抑制を結果として起こすのかもしれない。(Sato訳)

1錠中 トリロスタン 60mg(デソパン錠)
■犬の副腎皮質機能亢進症の外科的治療


副腎皮質機能亢進症は機能的脳下垂体または副腎皮質の腫瘍から起こる犬の病気としては一般的である。副腎皮質機能亢進症の犬の症例の80〜85%が脳下垂体の前葉または中葉どちらかの腫瘍が原因である。鑑別検査(たとえば内分泌検査、進んだ画像調査)が脳下垂体依存性副腎皮質機能亢進症か副腎依存性副腎皮質機能亢進症かを鑑別するために考えられている。治療で内科または外科が選択される。しかしながら腫瘍切除手術は治癒、癌化の恐れ、腫瘍の転移の恐れ、侵襲性増殖の恐れの排除へ最も強い可能性をもつ。(Dr.Massa訳)
■クッシング症候群に見られる凝固性亢進状態に対する生化学的基準


背景:副腎皮質機能亢進症に比較的よく見られる合併症は血栓塞栓症で、特に副腎摘出後に良く起こる。血栓症の原因は、ウィルヒョウ三徴候により簡単に図解され、その要因は血流、凝固、血栓の形成を促進させる相互作用である。副腎皮質機能亢進症に関連する血栓症の原因は今のところ分かっていないが、凝固因子産生増加、抗凝固因子の欠乏、高血圧性血管壁損傷、血小板機能不全が可能性のある原因として挙げられる。

要約:56頭のイヌで、病歴、身体検査、通常検査所検査、尿中コルチゾール:クレアチニン比、ACTH刺激試験をもとに副腎皮質機能亢進症と確認した。詳細な診断は成されず、下垂体依存性疾患、または副腎腫瘍により副腎皮質機能亢進症が起こっているのか明らかにされなかった。凝固因子II、V、VII、VIII、IX、X、XI、XII、ヴォンウィルブランド因子、トロンビン-抗トロンビン複合、抗トロンビン、フィブリノーゲン、プラスミノゲン、プラスミノゲン活性化因子抑制因子-1の身体検査をもとに健康と判定した30頭のイヌをコントロールとした。
副腎皮質機能亢進症のイヌの凝固因子II、V、VII、IX、X、XIIそしてヴォンウィルブランド因子の平均活性は有意にコントロール犬よりも大きかった。第IX因子を除いてその変化は軽度だった。副腎皮質機能亢進症のイヌで抗トロンビンは有意に減少したが、正常範囲の確立に使用した貯蔵血漿の値100%よりもわずかに大きいだけだった。トロンビン産生とその凝固活性化の指標であるトロンビン-抗トロンビン複合体は、副腎皮質機能亢進症のイヌで有意に顕著に高いものだった。フィブリノーゲンも有意に増加したが、プラスミノゲンとプラスミノゲン活性化因子抑制因子に2群間の差はなかった。著者は、潜在的な血栓症は副腎皮質機能亢進症のイヌで良く起こり、凝血促進性因子の増加と抗トロンビンの減少によるものと締めくくる。

臨床への影響:いくつか凝固因子の増加は、副腎皮質機能亢進症のイヌで以前から知られている。この所見のみからは血栓症と説明されやすく、抗トロンビンのわずかな減少があるにもかかわらず、繊維素溶解の減少は明確に示されなかった。フィブリノーゲンの上昇はかなり見られ、凝固性亢進の重要な要因となりえるものである。高血圧による血流、内皮、血小板機能、繊維素溶解などの他の要因の変化は、凝固性亢進状態を起こしやすくする。特定の原因が見つかるまで、臨床家はクッシング症候群の患者に対し血栓症の徴候を入念にモニターし、ハイリスクな患者の抗凝固治療を考慮すべきである。(Sato訳)

■イヌでミトタンの投与に反応する下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の評価


背景:イヌ下垂体依存性副腎皮質機能亢進症(PDH)の治療は、抗副腎ホルモン剤のミトタンを使用することでほぼ効果的に達成する。最初の導入治療の期間は、個々のイヌで広く変化する。ミトタンの過量投与は副腎皮質機能低下症などの重度副作用をもたらすので、副腎皮質機能亢進症のコントロールに必要な治療期間を正確に予測する方法は有益となるだろう。

要約:下垂体依存性副腎皮質機能亢進症のイヌ14頭は、適切な組織学、血液学、血清生化学変化の存在、そして尿コルチゾール:クレアチニン比の上昇により診断された。下垂体依存性副腎皮質機能亢進症と副腎腫瘍との鑑別は、デキサメサゾン0.1mg/kg8時間毎の3回経口投与で、基本サンプルの50%以下になる尿コルチゾール:クレアチニン比の低下を基に成された。
全てのイヌは25mg/kg1日1回経口投与で治療された。尿コルチゾール:クレアチニン比を治療中2-5日ごとに評価した。尿コルチゾール:クレアチニン比が正常(10×10[6]以下)になった時投与を中止した。ミトタンの維持療法は、25-100mg/kg/週の投与量で達成し、その間尿コルチゾール:クレアチニン比は4ヶ月ごとに調査した。最初の処置前の尿コルチゾール:クレアチニン比と最初のミトタン治療の期間を相関させようと試みた。
13頭で最初の治療期間の中央値は14.5日、範囲は10から20日、1頭はその期間が64日必要とした。治療前の尿コルチゾール:クレアチニン比と最初の治療期間の間に相関はなかった。治療1年以内に21%の犬に副腎皮質機能亢進症の再発が起こった。著者は高コルチゾール血症の管理に必要なミトタン治療の期間は、尿コルチゾール:クレアチニン比で予測できないと締めくくる。
臨床への影響:ミトタン治療をモニターするため、尿コルチゾールとクレアチニン比の評価を行った過去の研究では、副腎皮質機能低下症を誘発する過剰投与は検出しないが、高コルチゾール血症の管理に十分な治療を継続しているか、判定するのに有効であるということが解った。その研究で副腎皮質機能低下症に一致した症状を呈したイヌはいなかった。尿コルチゾール:クレアチニン比と、ACTH刺激に反応した血症コルチゾール濃度の結果の比較はなかった。また、臨床症状の改善は上記研究で治療後評価していなかった。副腎皮質機能亢進症の治療をモニターする効果的な方法は、臨床症状の評価とACTH刺激試験の実施である。(Sato訳)

 


 
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原文 
 


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