2005年02月07日

【第2話】因縁の放課後(2)

の周りには無数の人間が倒れていた。
例外なく顔面に鮮血をおびた人間たちが。
森田が倒れ、ほとんどの人間がその空気を読んでいた。

「この男には触れないほうがいい。」

しかし、何人かのこの空気を読めない愚か者たちが、
こうして玉砕することになったのである。

はその青く積み重なった人の山から一人を無造作に選択すると、
その頭をグイっと引っ張り上げ、言った。
はどこだ?」

瀕死のその男はとてもしゃべれる状態には見えない。

すると、の後ろから声がした。

「た、さんなら『FAITH』だぜ。」
森田が上半身を震わせながら精一杯の力を振り絞りながら出した声だった。

『FAITH』とは聖逆高の不良が好んで通う喫茶店の名前である。
とは言っても喫茶店というのは表向きで、そこはヤクザが経営している店であり、
聖逆の不良は上納金を組に収めることで、店では女を連れ込み、
薬を吸うなど好き勝手やっている。

森田は続けた。
「いまごろ、あの顔グロ女を一発やってる頃だ。俺たちは所詮時間稼ぎなんだよ!馬鹿め!」

森田の横に立つと、静かな声で言った。

「忘れたか?」

・・・ガゴンッ
森田の頭に右足を蹴り下ろし、再び森田の顔面は床に叩き付けられた。

が聖逆高の校門を出ようとすると、赤いオープンカーが急ブレーキでの前に止まった。
車内には、英二涼子の姿があった。
涼子と目が合うと、
しばっちは!?」と聞いた。
「なんで来たんだ?」はめんどうなことになったといった感じで舌打ちをした。
その横で英二の顔をジッと見ていた。

・・・
『FAITH』は聖逆高から5分も歩かないところにある。
店内にはしばっちしかいない。
大抵、がこの店に来るときは他の人間は気を使い、そこは貸し切りとなる。

しばっちは口をテープで塞がれ、腕も腰の後ろで縛られている。
クロロホルムで寝かされ、店のソファーに横になっている。

はその横の椅子でタバコを吸っていた。
灰皿には既に吸殻となったタバコが5、6本たまっている。
しばっちを見ようともせず、代わりに学ランのポケットから一枚の写真を取り出した。

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そこには二人の男の姿があった。
中央の二人は笑顔で、二人とも聖逆高の青ランを着ている。

はいつもより深くタバコ吸ったあと、溜め息と共に煙を吐いた。
白い煙の向こうで、二人の笑顔が歪んだ気がした。  
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2005年02月01日

【第2話】因縁の放課後(1)

は『私立聖逆第一高校』の校門前に立っていた。
聖逆第一高校は、至極第三高校からは5キロ程離れている。
途中電車を使ったが、駅からも少しあるのでは息を切らしていた。

は一年前この校門を出た行った時のことを思い出していた。
二度とこの場所に戻ることはないと誓ったのに。

が一歩校門の中に足を踏み入れると、悪臭が漂ってきた。
何の臭いなのかは在学中も最後まで分からなかった。あの悪臭だ。

校庭にはゴミがばら撒かれ、校舎の窓は割れていないものを探すほうが難しい。壁には定番の落書きが書かれている。
はそんな中を慣れた足取りで歩くと、体育館のほうへ向った。

体育館の横には駐輪場がある。
そこには、改造されたバイクが何十台と置かれていた。
この中に奴らのバイクがあるのかは分からないが、は確信していた。

はここにいる。」

・・・
その時、体育館の窓ガラスが割れ、何かがの頭めがけて飛んできた。
はそれを無表情で意図も簡単にかわした。
まるで、それを予想していたように。
の後方5メートルほどでそれは落ち、鈍い音がした。古びた鉄アレイだ。

「ようこそ母校へ。先輩。」
体育館の中から声がした。
は体育館に中に入っていく。

体育館に中には聖逆第一高校の生徒が100人程集まっていた。
生徒と言っても男子ばかり、そう聖逆は男子高なのである。
しかも、彼らは手に鉄パイプ・金属バットを持ち、明らかにを待ち受けてたといった感じである。

その中心に銀色のヘルメットがいた。
先程の声の主も彼のようだ。
しかし、しばっちの姿はそこにはなく、もいない。

「女は?」
が言うと、銀色のヘルメットは狂ったように笑った。
「先輩!勘弁してよ!あんたがあんな女を気づかうなんて!」
そう言ってしばらくの間笑っていると、急に黙り、
「まったく失望したぜ。あんた聖逆を出てって正解だ。」
と言った。

「俺が中学の頃は、あんたは聖逆の伝説だった。俺たちの憧れだったよ。
それが今は女取られてほいほい追っかけてくるような男とはな。」
銀色のヘルメットは、またげらげらと笑い出した。

さんも何考えてんだか。こんな男連れ戻して何になるってんだ?」

はこの言葉にだけは少し反応を示した。

・・・
「てめーらまだ1年か?どーりでガキ臭ぇと思ったよ。」
は口を開くとそう言った。

「何だと?」銀色のヘルメットはヘルメットと取った。その顔は怒りに満ちている。
「ああ、お前、港南中の森田だな。
タイマンもろくにできねぇガキだって有名だぜ。」

「てめぇ…」森田に近づいてきた。
すると、の目の前でうつむきながら立ち止まった。

「先輩… …てめぇの時代は終わったんだよぉっ!!」

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森田は袖に隠していたナイフをすばやく取り出し、の喉元へと向けようとした。
しかし、は上体を反らしてかわし、
右足でナイフを持った森田の左手を蹴り上げた。
手から放たれたナイフは宙に舞い上がった。
のその高く蹴り上げられた足は、そのまま森田の脳天へと突き刺さった。
森田の顔面は体育館の床に叩きつけられ、鮮血に染まり、前歯が2、3本折れた。
その森田の顔をかすめるようにナイフが通り過ぎ、そして床に刺さった。

・・・
森田はピクリとも動かなかった。
その森田を見下しながらは言った。

「俺の前に立ったら、そうやって頭下げてろ。」

体育館は一瞬にして静まりかえった。
  
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2005年01月29日

【第1話】伝説の休み時間(5)

涼子はまだ呆然としていた。
の姿はもう校庭から見えない。
いつの間にか校庭は騒然としてきていた。
校舎からは教師が何人も校庭へ駆け出してきた。
授業を受けていた生徒は校舎の窓から身を乗り出すようにして校庭を見つめている。
救急車とパトカーも呼ばれたようだった。
それは何でもない日だった。何でもない日常。

涼子の言葉を思い出していた。

「お前の友達は必ず連れて帰る。」

なぜか涼子の言葉を信用することができた。
なぜかは分からない。今日会ったばかりのを、周りであたふたしている教師達よりも信頼できると感じたのだった。

涼子はグッと唇をかみ締め、が去っていった方向を見つめた。

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しばっち。待っててね。今助けにいくからね。」
涼子は涙を拭くと、校門を出ていった。

・・・
ニヤついた男は、大通りの脇に車を止めた。
隣には30代であろう女が座っている。
ニヤついた男は眩しいばかりに輝いた高級車を出ると、慣れたようにその女をエスコートし車から降ろした。
ニヤついた男は女を大通り沿いの店まで送った。どうやら女が経営する画廊のようだ。
女は財布から10万円ほど取り出すと、二つに折り曲げニヤついた男の背広のポケットに入れた。
ニヤついた男は満面の笑みで手を振った。女もそれに応えた後店へと消えていった。

その時、店の前の大通りをバイクの群れが爆音を鳴らしながら通り過ぎていった。

「今どき暴走族か?昼間っからうるせーな。」
ニヤついた男はうっすら笑みを浮かべると、タバコに火をつけた。

・・・
短くなったタバコを地面に捨て革靴で踏み消すと、ニヤついた男は携帯を取り出した。

「あ、英二です。お客様送り終ったんで、今から店戻ります。」

一言二言電話の相手と言葉を交わすと英二は車に乗り込んだ。
ふとサイドミラーを見ると、後ろから体操着姿の女が走ってくるのが見えた。

「君、そんなに急いでどこいくの?」
英二は両手を広げて涼子の前に現れた。涼子は一瞬立ち止まるが、すぐに
「どいて下さい!」と言って走りぬけようとする。
すると、英二涼子の腕を握り、涼子の顔を覗きこんだ。
「やっぱり、今朝うちの学校の前で見た子だ。」
「え?あなたうちの学校の生徒なんですか?」涼子は怪しげに英二の顔を見た。
「そ、昼間っから学校さぼってこんなトコにいるけどね。二年ダブってるけど至極第三高の三年だよ。ほら学生証。」
英二はポケットから学生証を取り出すと、涼子に見せた。

「いま、学校が大変なんです。それで、それでしばっちが…」
涼子はまた泣き出しそうになっている。
「落ち着いて。さっき通り過ぎてったバイクとなんか関係があるのかな?」
「バイク!そのバイクどこへ行きました!?」
「分からないけど、あれは聖逆の制服だよ。」
英二はバイクを乗っている奴らが着ていた青い学ランを思い出していた。
「聖逆高校…ありがとうございました。」涼子は頭を下げると立ち去ろうとした。
「待って!走って行ったんじゃ結構距離あるよ。車に乗って。」
英二は車を指さした。
「でも…」涼子が躊躇うと、「早く!急いでるんでしょ!?」と英二は強い口調で言った。

涼子を車に乗せると英二はエンジンキーを回した。
うつむく涼子を見ながら、英二は不気味な笑みを浮かべた。

午後の授業は終わり、長い休み時間に入ろうとしていた。
  
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2005年01月25日

【第1話】伝説の休み時間(4)

。二度と口にすることはないであろう、そう思っていた名前。
はこの名前を口にした瞬間、吐き気がする程の憎悪とどこか懐かしいような
不思議な感覚に苛まれた。
は校庭へ向かう為、階段を降りていった。

・・・
その頃校庭では。

「こらぁっ!何だぁキサマらは!?」
白川はバイクの群れに向かって怒鳴った。
しかし、その声はバイクのエンジン音でほとんど聞こえない。
30人から40人いるであろうそのグループは、そんな白川を見てへらへら笑っている。

白川はとうとう橘の前まで歩みより、
「お前らどこの生徒だ?」と眉間にしわを寄せて問いただした。

その瞬間。

・・・
白川は何が起こったのか理解できずにいた。
体が宙に浮いたかと思うと、2・3度回転した後地面に叩きつけられた。
白川は今年で40歳になるが、体育の教師である。
運動神経には自信があり、体格も190センチ近い身長に90キロ程度の体重があった。
白川は自分の頬に赤い液体が流れ落ちる感覚を感じると、その後で酷い激痛に襲われた。
鼻、頬、顎の骨がすべて粉々に砕け散ったように思えた。
遠くで生徒が「先生っ」と呼んでいる気がして、次第に意識を失った。

涼子しばっちは今自分の目の前で起こった出来事が
まだ信じられなかった。
体は凍ったように動かすことができず、声もあげられなかった。
他の生徒も大半が同じだった。

何人かの男子が誰か助けを呼ぼうと校舎の方へ走っていった。
すると、すかさずバイクが4・5台周り込んだ。
バイクに乗っていた人間が男子生徒を持っていた鉄パイプやバットで殴った。
鮮血が飛び、数人の男子生徒が校舎の前に広がる芝生に倒れた。

しばっちはその光景を見て、悲鳴を上げた。
は、冷たい目でしばっちの方を見た。

「さらえ」
がそう言うと、後ろにいた数人がすばやく動きだした。
以外が全員ヘルメットをしているが、皆と同じ制服を着ている。

「いい女じゃねーか」銀色のヘルメット涼子しばっちに近づく。
二人が逃げようとすると数人がこれを囲んだ。
銀色のヘルメット涼子の腕をつかみ、力任せに連れていこうとする。
しばっちがその腕に噛み付いた。

「いっ、このアマ。」銀色のヘルメットが一瞬ひるむ。
「逃げて!涼子!!」

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しばっち涼子の手を掴んで逃げようとした瞬間、
銀色のヘルメットしばっちの髪を掴み、そのまま平手打ちを喰らわした。
「俺は女に噛まれて喜ぶ趣味はねーんだよ」銀色のヘルメットは息を荒くして言った。
しばっちはフッと目を閉じ、意識を失った。
しばっちを数人が抱えバイクに乗せた。

・・・
が校庭に着いた時、そこには両膝をつき泣き崩れる涼子
意識を失った白川、ケガをして苦しむ数人の男子生徒、そして呆然と立ち尽くす生徒達がいた。

涼子のもとに走り寄る。
「何があった!?」
涼子は泣いていてまともに話せる状態ではなかった。
「おい!あいつは?いつも隣にいる茶髪の・・・」
そうが言うと、涼子は我にかえり
「警察・・・警察呼ばなきゃ」と校舎に向かって走り出した。

「やめろっ!」は叫んだ。
涼子の足が止まる。

「俺が行けば済む。お前の友達は必ず連れて帰る。」

「行くってどこへ!?」
男はその涼子の問いには答えず、学校を出て行った。

行き先は決まっている。
俺がこの『県立至極第三高校』に来る前にいた場所。
地獄・・・『私立聖逆第一高校』
は逆らえぬ運命に引き戻されようとしていた。  
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2005年01月23日

【第1話】伝説の休み時間(3)

「誰だ?てめぇ」は言った。
「何、殺気だってんの?お兄さん。先に質問したのはこっちだよ。」ニヤついた男は呆れたように肩を少し上げた。
「知り合いじゃねーよ。」
「あっそ、んじゃいーや。あ、いけね、時間だ。」ニヤついた男はバイバイと手を振りながら
学校とは反対の方向に歩いていこうとした。
ニヤついた男高校に来たわけではないようだ。
それもそのはず、ホストのような格好をしている。

「おい。」

は握った左拳のやり場が去っていくのを許さなかった。
拳が的確にニヤついた男の顔面を捕らえようとした瞬間、
ニヤついた男はそれを右手で軽々と受け止めた。

「君とはまた会うよ。」ニヤついた男はそう言って去っていった。

は呆然と立ちつくしていた。
ニヤついた男が最後に言い残した言葉も気になったが、
何よりも自分のパンチを止められたことが信じられなかった。
何十、何百という人間を眠らせてきた拳だ。それがいとも簡単に。
それに、ニヤついた男に握られた左手は震えて力が入らない。

「痛てぇ」は地面に唾を吐いた。

がやっと職員室に入った時、周りは既に二時間目が始まっていた。
教頭と少し話をしたが、教頭がビビっているのは明らかだった。
と目を合わせようとはせず、ここでは問題を起こさないように、みたいなことを言っている。

はこの『県立至極第三高校』が二つ目の高校である。
その前までは、別の県立高校に通っていた。
数々の問題を起こしはしたが、すべてもみ消してきた。
世の中で好き勝手やっていきたいと考えれば、
警察に捕まり、少年院で無駄な時を過ごすのはナンセンスだ。

職員室を出ると、は教室には行かず、屋上へと向かった。
授業に出る気分じゃなかった。
あのニヤついた男のことが頭から離れない。

ふと校庭に目をやると、さっきの涼子しばっちがランニングをしている。
二人はふてくされたようにトロトロ走り、それを見た教師が怒鳴っている。
どうやらあれが白川という教師らしい。
思えばあの涼子のこともニヤついた男との出会いで
スッカリ頭から消えていた。

その時、爆音を鳴らしてバイクが30台近く校庭に入ってきた。
涼子しばっちも走るのを止め、それを驚いたように見ている。
群れの先頭にいた男がヘルメットを取ると、
は何かを悟ったように目を閉じ、再び目を開くと小さな声で呟いた。

・・・



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2005年01月20日

【第1話】伝説の休み時間(2)

は思わずたじろいだ。
「もうチャイム鳴っちゃいました?」
そう聞いただけで鬼のような形相で睨まれたのだ。無理もない。

は思わず「いや・・・」と言い訳めいたことを言った。
俺らしくないな、とは思う。
は「すいません」と言い、その後すぐに「なんで私謝ってんだろ?」と首をかしげた。

その時、離れたところから声がした。
茶髪の女が二人に近づいて来る。
涼子なにしてんの?遅刻するよ。体育の白川怒ったらマジ怖いんだから。」茶髪の女は息を切らしながら言った。
しばっちだって遅刻じゃん。」涼子はあきれたように笑った。
このしばっちという女は現代の女子高生の代表のような女だ。
格好や雰囲気からはそう感じた。

二人は急いで校舎の中へと入っていく。
涼子は一瞬の方へ振り返り、軽く頭を下げた。
は何もできず、走り去っていく背中を見ていた。

・・・
「君さあの子の知り合い?」

まったくおかしな日だ、普段はビビッて誰も話しかけてきやしないのに。
は声のするほうを見た。もちろんいつでも殺れる準備は忘れずに。

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そこにはニヤついた男が立っていた。
男は生理的にこのニヤついた男を嫌った。
なぜかは分からない。
だが嫌な胸騒ぎがしたのは間違いなかった。
  
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2005年01月19日

【第1話】伝説の休み時間(1)

は校門に立っていた。
もうかれこれ5時間もこうしている。

は昨晩なかなか眠りにつけず朝になって眠るのをあきらめ家を出た。
時計を見ようと思い、左手を上げるが時計はない。
思えばは普段から時計をしない主義だ。
それなのになぜそんな行動を取ったのか解せない。

やはり緊張しているのか?

無理もないが普通の高校に通うのは初めてだ。
普通の高校・・・男女が共に学び、切磋琢磨しながら成長していく学び舎。
にとっていままでの高校は、いや学校はそんな場所ではない。

にとっての学校は、まさに地獄。修羅場。

そんなに声をかける奴がいた。
「馬鹿な奴だ。」そう心の中で呟き、男は左拳を握り締めた。
は普段からそうする癖が付いていた。
そうすることで生き抜いてきたのだ。あの地獄を。

は睨みを利かせ振り向いた。

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・・・
だ。

しかも、地獄を見てきた男にとって、あまりにも眩しく美しい。
  
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