自分としては珍しく比較的新しい製品。ストラトでテレキャスみたいな音の出ると言うふれ込みのPU、セイモア・ダンカンAPST-1 Twang Bangerを試してみた。実際ストラトにテレキャスのPUを載せると言う改造をする人もいる位で、アイディア自体は結構昔からある気はするけど、あんまりちゃんとした製品は無かった気がする。ディマジオのレッド・ヴェルヴェットと言う似たコンセプトの製品があるけどピックアップ大将によればイマイチなPUっぽい。だがそこはダンカン、きっとやってくれるに違い無いと思いつつ、とにかくギターに載せてみた。自分がこのトゥワング・バンガーを載せたストラトはボディがホワイト・アッシュの癖にイマイチ高音が抜け切らないギターで（ノイズ・シールディングが過ぎるのかも知れない）そのせいで何を載せても「シングル・コイルならもっと高域が出るだろ」と思ってしまう（アンプで鳴らしてもキンキンしないのは良いんだけど）、だがこのトゥワング・バンガーは遂にその高域を抜いてくれた。「それでこそシングル・コイル」と小躍りして喜ぶ。
このギターは最初はダンカンAPS-1 アルニコ�競廛蹇Ε轡鵐哀襦�3で綺麗でクールな音なんだけどちょっと音が甘過ぎる感じがあった。その後ディマジオ・ブルー・ヴェルヴェット×3になり、音は太くて存在感あって良いんだけどやっぱり高域が抜け切らなかった。その後リアだけダンカン・リル・スクリーミン・デーモンにしたんだけど、悪くは無いんだが純粋なシングル・コイルに比べると中域が盛り上がった分ちょっとレンジが狭くなった感じがしてた（多分500kΩのポッドの方が合うと思う）。だがこのAPST-1トゥワング・バンガーは上手い事ハマってくれた。いやこのPUはフロントとセンターとのマッチングを考えなければ良いよ。クランチで弾くとジャキジャキでとにかく暴れてくれて、やたらと攻撃的な気分になれる。高域も出るけど中域もあって太さも十分。普通のストラトのリアは心細い時があるがそんな心配は無用。普通のストラトの2倍の太さ（大袈裟か？）に感じる。自分の持ってるテレキャス（PUはフェンダーSCN、ボディはアルダー）と比べてみたが、テレキャスより中域が膨らんで、高域もやや出ている感じがした（ボディ材の影響？）。
クリーンはダンカンにしては憂いの無いひたすら弾けた明るい元気な音で弾いてて楽しくなってくる。こう言う書き方をするとパワーが有りそうに聞こえるが、実際は普通のシングルよりちょっとパワーがあると言う程度。フロント、センターのブルー・ヴェルヴェットと同じ位。なので非常に使い易いし音の分離も良い（サドルをKTSチタン・サドルにしているせいもある）。
歪ませるとクランチは本当に最高。中高域がガリガリと噛み付いてくる。もっとゲインを上げても音は潰れないし分離も悪くない。ただ純粋なシングルなので深く歪ませてもあんまり面白くない。なのでクランチでジャキジャキ言わせて弦の生な感じを味わうのが一番楽しいと思う。
いやこれ危険だよ。抜けの良いストラトに載せたら確実にハウリングする。キンキンと言うかギンギンの音。フロントとセンターが大人しめのPUだとリアだけ別ギターになる。多分バランスは取れない。この暴れ方は自分の持ってるギターの中では62年のジャズマスターに近い。最初にジャズマスターを弾いた時、余りに暴れるので手を焼いたがその感じに近い。実際弾き比べてみたら音はテレキャスよりジャズマスターに近かった。ただ構造的にジャズマスターよりストラトの方が音に安定感があるのでその分、弾き易い。まぁ自分の持ってるギターの範囲内なのであんまり比較にも説明にもならないかも知れないが。
このPUは人を選ぶなぁ。よくストラトの音をグラッシーなんて言うが、普通のストラトがパリンという感じならこっちはバリン。ガラスの厚さも厚いが割れた時の破片もデカイ。そんな感じ。あと前評判通りPUセレクターの音もトーンを回す音も拾う。あとノイズはちょっと多い。ただギターを向ける角度とかで大分違う。そういうテレキャスのマイクロフォニックな所をしっかり再現する辺りは非常にダンカンっぽい。もう繊細なんだか大味なんだか良く分からない。
いやもうアルニコ�兇�載ってた頃とは比べ物にならない暴力的なギターになったな。あの頃のクールさも捨て難いがあっちを立てればこっちが立たず。こればっかりは仕方無い。ただ思うんだが、このPUと合うフロントとセンターのPUをダンカンは発売すべきだと思うよ。普通のストラトにいきなりこれ載せると他と絶対バランスが取れない。思い切ってフロントとリアとか3発これを載せるのもアリかなと思うけど、それはもう恐らくストラトとは呼ばない。面白そうだけど。
