エヴァンゲリヲン新劇場版の続編の制作が
再スタートするというニュースがありました。

あとどれくらい待てばいいかはともかく、
ようやく次作が見られる可能性に
心躍らせている方も多いはず。

僕もその一人です。


このブログでも、エヴァの使徒の原型を
何点か担当させてもらったことは
幾度も触れています。もうしつこいくらい。

制作したものが少なく、ネタがなかったことが
そのほとんどの理由ですが、
僕にとって使徒の制作というのは
非常に思い入れの強いものだったのも確かです。

というのも、原型師に憧れた自分にとって、
20代前半は立体物を作るという行為そのものよりも、
作ったものが商品として世に頒布される
という「事実」そのものに憧れていたフシがあります。

自己顕示欲というか、何もないちっぽけな
自分という存在が、何とか世の中に
「自分は存在しているぞ!」
くさびを打ちたかったのかもしれません。

だから、どんなフィギュアを作って、
どのように受け取り手に伝えるか?ということよりも
とにかくなんでもいいからフィギュアを作って、
何としてでもこっちを向いてもらいたい。
という想いに支配されていました。

だからフィギュアを作ってるときの感覚は
「この船さえ作れば、大海原に打って出れる。」

どんな船を作るか?
海の先には何が待っているか?
などなど、そんなことはお構いなし。

その先の生産の工程なんて興味なかったし、
色すら塗りたくもない。塗れる気もしない。
ましてや、買った人に喜んでもらいたいという
気持ちも皆無。

とにかく海に出れさえすればよかったのです。

何だか書いていると我ながら恥ずかしい限りです。
まったくもって、自己満足の自己中心。



でも。



これなんです。


今の自分はもう持てない感覚。


これこそが僕にとっての紛れもない
「初期衝動」なんです。


なにせ、弟子時代も曲がりなりにも
自分の作ったものが世に出るチャンスは
何度かありましたが、そのすべてが見事に
お蔵入りの繰り返し。

今考えると当然のことなんですが、
大海に漕ぎ出したくて仕方ないのに
一向に海に出れないわけです。

だからこそ、CCPに入って初めて
もらった商品化のチャンス。

海に出られないフラストレーションの塊の僕が
「初期衝動」を爆発させずに
いられるわけがありません。

それが『エヴァンゲリヲン』のリリスだったわけです。

●プラチナリリス

●リリス60号MサイズH135cm×W255cm 2

多分延藤社長は軽い気持ちで
やってみるか?と声をかけたと思います。
正式なオファーでもなく、
作業中の会話程度の誘い。

でも僕にとっては、ビッグタイトルのキャラ。

実はエヴァも全然見てなかったし、
リリスって何?状態。

でも、やはり海に出たい一心で、
必死に勉強しました。
必死に造形しました。

毎日深夜に仕事から帰宅後、コツコツと、
それこそ虎視眈々と、
次こそは「海に出れる」
野心ギラギラに作っていたのが
このリリスだったのです。


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今見ると人体的な知識も乏しいですし、
生産的に何も考えていない部分もたくさんあります。

でも、僕にとってこのリリスは
「初期衝動」にあふれている作品。

分からないながらも、何とか海に出て一旗
挙げてやろうという野心に満ち満ちており、
執念が宿っている気がします。

これはもううまい下手の問題ではない気がします。

この頃から多分7~8年経っていますが、
今の自分も、この「初期衝動」には勝てない気がするのです。

この「初期衝動」は創作人生において、
ある最初の一時期しか持ちえない一過性のもの。

今だって日々、足りない悔しさや、
もっともっと上手くなりたい一心で
毎日机に向かっていますが、
やはり、知識や経験を少しでも重ねると、
この「初期衝動」というのは変質していくものです。

だから、僕にとっては「こんな初期衝動をもっていた」という
記念碑的な作品でもあるわけです。



何でいまさら、こんな話をしているかっていうと
エヴァの続編のニュースもそうなんですが、
実は最近、このリリスをぜひ商品化してくれないかという
問い合わせを何件かいただいたんです。

もう何年も経っているのに、ここ最近急にです。

だからこそ、思うわけです。

これはうまい下手を超越した、ある種の
「執念」が、作品を通じて、見ている人に届いたんだと。

当時、届けようなどとまったく思わず作っているわけですが、
それが僕にとってはものすごく感慨深いわけです。



実は、色々あって、この原型は納品にすらなっていません。

なんと、この原型でも、大海原に漕ぎ出すことは
結果としてできなかったのです。
嗚呼、かわいそうな若造。
(この後作った第4の使徒で念願のデビューを
果たすことにはなりました)

だから、色々な後押しもあって、
何だか無性にこいつを海に出してやりたくなってるんですよ。

映画も作られるし、この機会に何とかもう一度
このリリスの商品化を模索してみようと思い、
今年時間とって、これを複製して彩色見本を
作って売りこめないかと画策してるわけです。

「初期衝動」を取り戻すことは不可能ですが、
「初期衝動」を商品化して、大海原に放つのは
不可能ではないはず。

だから、これは商品化の要望を出してくれている方々へ
感謝を込めての覚書。

まずは時間見つけてデコマスを年内に。

やることはいっぱいありますが、
過去の絶望的な自分を救済するつもりで
ちょっとやってみます。


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↑果たしてシリーズに加えることはできるのか!?