2010年07月05日
メリ誕その2
一日遅れなのは仕様です。
人名でどぞ。
「・・・」
やばい。
アーサーは慌てて壁によりかかった。目の前がくらくらする。
パーティが盛り上がりを見せる中、自分の身体が限界に来たことを感じる。だましだましこの1週間来たけれど。
色とりどりのクラッカーと、歓声の中、アーサーはそっと部屋の外に出る。
部屋の真ん中ではアルフレッドが笑顔で、バースディケーキのろうそくを吹き消していた。
今年は去年より、よかった。去年はその前よりよくなっていた。10年くらい前はこの時期になると起き上がることすらできなかった。
けれど、やはりつらい。
「アーサー?」
揺り動かされるのを感じて、アーサーは目を覚ます。
何故か彼はアルフレッドの家のリビングのソファーの上にいて、目の前には今夜のパーティの主役。
「あれ、お前、パーティ・・・」
「・・・?」
パーティ?と、アーサーの言葉にアルフレッドは首を傾げる。
言われてみれば、何となくアルフレッドの様子がいつもと違うことにアーサーは気付いた。
きっちり着こんだトラッドなスーツと蝶ネクタイ。
しっかりとクシを通した金髪。
そして、メガネのない顔。
「お前、アルフレッドか?」
アーサーの眉間に深いシワが刻まれる。
「彼」から敵の気配は感じられない。巧妙に偽装した他国の間者ではないのか。
「え?どうしたんだいアーサー。
俺はアルフレッド、君の弟じゃないか」
「・・・え?」
アルフレッドはポン、と自分の胸を叩くのを見て、アーサーは顔色をなくした。
やや、ぎょっとしていたかもしれない。
弟?
様子のおかしいアーサーをアルフレッドはソファーでもう少し休むように言いつけられた。アーサーから言わせるとおかしいのはアルフレッドなのだが、ここはおとなしく従うことにした。
ここからだと、キッチンで動いているアルフレッドの背中がよく見える。
「ん?」
ふわりと漂う香りにアーサーは、ん、と顔を上げる。
アールグレイ。
そして、その香りに彼はここがどこだか気付く。
ここはアルフレッドの家ではない。自分と小さなアルフレッドが過ごしていた家だ。
「もうすぐ紅茶が入るからね」
「ああ」
「サンドイッチ食べるかい?」
「あ、いや、サンドイッチはいい」
ゆるゆるとアーサーは首を振る。
その言葉にアルフレッドはキッチンから飛んできて、気遣わしげに彼の顔を覗き込む。
「アーサー、本当に大丈夫かい?
お医者様呼ぼうか」
こつ、とアルフレッドは額を合わせる。
「あ、アルフレッド!」
顔が近い!
アーサーは間近に迫るサファイヤの瞳に身体が熱くなるのを感じる。
「顔が赤いね。熱があるのかな」
「・・・ち、ちげーよ、ばか」
「ムリしちゃダメだよ。アーサー。
俺、君に何かあったら、どうしたらいいかわかんないよ・・・」
くしゃり、とアルフレッドは優しくささやきながら、アーサのくすんだ金色の髪の毛を大きな手ですく。優しく。
部屋中に充満する上等な紅茶の香り。
アーサーの好みに整えられた部屋。
そして、自分が思い描いたとおりの理想の弟。もしも、アルフレッドが自分から独立しなかったら、という下らない妄想の弟。
「あ、アルフレッド・・・」
ぐい、とアーサーはアルフレッドの身体を腕で押す。
優しくて紳士的で従順なアルフレッドの視線も手のひらも、この部屋全てが他人のもののようなのは何故だろう。
夢だから?いや、それだけじゃない。
「・・・あ、そーゆー気分じゃない、よね?」
アルフレッドは困ったように笑い、アーサーから離れていく。
「いや、待て、違うんだアルフレッド!」
アーサーは自分の叫び声で目が覚めた。
彼はホテルのベッドの上にいることを確認して、深くため息をつく。
「何だい?」
リビングからぎょっとした顔のアルフレッドが顔を出す。
ラフなパーカーに、顔にはテキサス。
そして、手にはコーヒー。
「お前、パーティーは?」
なんでもない、と手を振りながらアーサーは手のひらで顔を覆う。
まだ、少しドキドキする鼓動を何とか落ち着けようとする。
「もう終わったよ。
君が寝てる間に日付が変わっちゃったよー」
アルフレッドはベッドの上のデジタル時計を指さす。
「君、クライマックスにいなくなっちゃうんだもん」
ぶー、とアルフレッドは口をとがらせて、ベッドの上のアーサーに半ばタックルするように抱きつく。広いダブルベッドがぼよん、と揺れた。
「すまなかったな」
「全く。具合が悪いなら、言えばいいだろ!」
ぎゅ、とアルフレッドは抱きしめる腕に力を込める。
どこにも行かせない、という焦げ付くような執着。
「わりい、盛り上がってたからさ」
優しくアーサーはアルフレッドのつやつやした金色の髪の毛をなでてやる。
なでてもらいたいのはこっちなのに。本当にこいつは子どもだ。
「俺を独立させたの、まだ後悔してる?」
くぐもった声が聞こえる。
噛みつかれるような、そんな気になる声。
「・・・してるさ。
でも、もう慣れてきた」
「そっか」
「ああ」
アルフレッドはアーサーの身体をぎゅ、と抱きしめ、細い首元に噛みついた。
どこにも離さないように。
夢の中の弟の優しい手のひらより、その噛みつかれる首筋の痛みの方が嬉しい。ありもしない妄想より、欠点だらけで全身で自分にぶつかってくれる彼の方が愛しいのは当たり前だろうか。しかし、その妄想を熱望していた時期もあったのに。
「・・・アル。おめでとう」
アーサーは口の中で呟く。
いつかは7月4日に笑って言えるようになるのだろうか。
なんて。
「・・・」
やばい。
アーサーは慌てて壁によりかかった。目の前がくらくらする。
パーティが盛り上がりを見せる中、自分の身体が限界に来たことを感じる。だましだましこの1週間来たけれど。
色とりどりのクラッカーと、歓声の中、アーサーはそっと部屋の外に出る。
部屋の真ん中ではアルフレッドが笑顔で、バースディケーキのろうそくを吹き消していた。
今年は去年より、よかった。去年はその前よりよくなっていた。10年くらい前はこの時期になると起き上がることすらできなかった。
けれど、やはりつらい。
「アーサー?」
揺り動かされるのを感じて、アーサーは目を覚ます。
何故か彼はアルフレッドの家のリビングのソファーの上にいて、目の前には今夜のパーティの主役。
「あれ、お前、パーティ・・・」
「・・・?」
パーティ?と、アーサーの言葉にアルフレッドは首を傾げる。
言われてみれば、何となくアルフレッドの様子がいつもと違うことにアーサーは気付いた。
きっちり着こんだトラッドなスーツと蝶ネクタイ。
しっかりとクシを通した金髪。
そして、メガネのない顔。
「お前、アルフレッドか?」
アーサーの眉間に深いシワが刻まれる。
「彼」から敵の気配は感じられない。巧妙に偽装した他国の間者ではないのか。
「え?どうしたんだいアーサー。
俺はアルフレッド、君の弟じゃないか」
「・・・え?」
アルフレッドはポン、と自分の胸を叩くのを見て、アーサーは顔色をなくした。
やや、ぎょっとしていたかもしれない。
弟?
様子のおかしいアーサーをアルフレッドはソファーでもう少し休むように言いつけられた。アーサーから言わせるとおかしいのはアルフレッドなのだが、ここはおとなしく従うことにした。
ここからだと、キッチンで動いているアルフレッドの背中がよく見える。
「ん?」
ふわりと漂う香りにアーサーは、ん、と顔を上げる。
アールグレイ。
そして、その香りに彼はここがどこだか気付く。
ここはアルフレッドの家ではない。自分と小さなアルフレッドが過ごしていた家だ。
「もうすぐ紅茶が入るからね」
「ああ」
「サンドイッチ食べるかい?」
「あ、いや、サンドイッチはいい」
ゆるゆるとアーサーは首を振る。
その言葉にアルフレッドはキッチンから飛んできて、気遣わしげに彼の顔を覗き込む。
「アーサー、本当に大丈夫かい?
お医者様呼ぼうか」
こつ、とアルフレッドは額を合わせる。
「あ、アルフレッド!」
顔が近い!
アーサーは間近に迫るサファイヤの瞳に身体が熱くなるのを感じる。
「顔が赤いね。熱があるのかな」
「・・・ち、ちげーよ、ばか」
「ムリしちゃダメだよ。アーサー。
俺、君に何かあったら、どうしたらいいかわかんないよ・・・」
くしゃり、とアルフレッドは優しくささやきながら、アーサのくすんだ金色の髪の毛を大きな手ですく。優しく。
部屋中に充満する上等な紅茶の香り。
アーサーの好みに整えられた部屋。
そして、自分が思い描いたとおりの理想の弟。もしも、アルフレッドが自分から独立しなかったら、という下らない妄想の弟。
「あ、アルフレッド・・・」
ぐい、とアーサーはアルフレッドの身体を腕で押す。
優しくて紳士的で従順なアルフレッドの視線も手のひらも、この部屋全てが他人のもののようなのは何故だろう。
夢だから?いや、それだけじゃない。
「・・・あ、そーゆー気分じゃない、よね?」
アルフレッドは困ったように笑い、アーサーから離れていく。
「いや、待て、違うんだアルフレッド!」
アーサーは自分の叫び声で目が覚めた。
彼はホテルのベッドの上にいることを確認して、深くため息をつく。
「何だい?」
リビングからぎょっとした顔のアルフレッドが顔を出す。
ラフなパーカーに、顔にはテキサス。
そして、手にはコーヒー。
「お前、パーティーは?」
なんでもない、と手を振りながらアーサーは手のひらで顔を覆う。
まだ、少しドキドキする鼓動を何とか落ち着けようとする。
「もう終わったよ。
君が寝てる間に日付が変わっちゃったよー」
アルフレッドはベッドの上のデジタル時計を指さす。
「君、クライマックスにいなくなっちゃうんだもん」
ぶー、とアルフレッドは口をとがらせて、ベッドの上のアーサーに半ばタックルするように抱きつく。広いダブルベッドがぼよん、と揺れた。
「すまなかったな」
「全く。具合が悪いなら、言えばいいだろ!」
ぎゅ、とアルフレッドは抱きしめる腕に力を込める。
どこにも行かせない、という焦げ付くような執着。
「わりい、盛り上がってたからさ」
優しくアーサーはアルフレッドのつやつやした金色の髪の毛をなでてやる。
なでてもらいたいのはこっちなのに。本当にこいつは子どもだ。
「俺を独立させたの、まだ後悔してる?」
くぐもった声が聞こえる。
噛みつかれるような、そんな気になる声。
「・・・してるさ。
でも、もう慣れてきた」
「そっか」
「ああ」
アルフレッドはアーサーの身体をぎゅ、と抱きしめ、細い首元に噛みついた。
どこにも離さないように。
夢の中の弟の優しい手のひらより、その噛みつかれる首筋の痛みの方が嬉しい。ありもしない妄想より、欠点だらけで全身で自分にぶつかってくれる彼の方が愛しいのは当たり前だろうか。
「・・・誕生日、おめでとう」
アーサーは口の中で呟く。
いつかは7月4日に笑って言えるようになるのだろうか。
なんて。
やばい。
アーサーは慌てて壁によりかかった。目の前がくらくらする。
パーティが盛り上がりを見せる中、自分の身体が限界に来たことを感じる。だましだましこの1週間来たけれど。
色とりどりのクラッカーと、歓声の中、アーサーはそっと部屋の外に出る。
部屋の真ん中ではアルフレッドが笑顔で、バースディケーキのろうそくを吹き消していた。
今年は去年より、よかった。去年はその前よりよくなっていた。10年くらい前はこの時期になると起き上がることすらできなかった。
けれど、やはりつらい。
「アーサー?」
揺り動かされるのを感じて、アーサーは目を覚ます。
何故か彼はアルフレッドの家のリビングのソファーの上にいて、目の前には今夜のパーティの主役。
「あれ、お前、パーティ・・・」
「・・・?」
パーティ?と、アーサーの言葉にアルフレッドは首を傾げる。
言われてみれば、何となくアルフレッドの様子がいつもと違うことにアーサーは気付いた。
きっちり着こんだトラッドなスーツと蝶ネクタイ。
しっかりとクシを通した金髪。
そして、メガネのない顔。
「お前、アルフレッドか?」
アーサーの眉間に深いシワが刻まれる。
「彼」から敵の気配は感じられない。巧妙に偽装した他国の間者ではないのか。
「え?どうしたんだいアーサー。
俺はアルフレッド、君の弟じゃないか」
「・・・え?」
アルフレッドはポン、と自分の胸を叩くのを見て、アーサーは顔色をなくした。
やや、ぎょっとしていたかもしれない。
弟?
様子のおかしいアーサーをアルフレッドはソファーでもう少し休むように言いつけられた。アーサーから言わせるとおかしいのはアルフレッドなのだが、ここはおとなしく従うことにした。
ここからだと、キッチンで動いているアルフレッドの背中がよく見える。
「ん?」
ふわりと漂う香りにアーサーは、ん、と顔を上げる。
アールグレイ。
そして、その香りに彼はここがどこだか気付く。
ここはアルフレッドの家ではない。自分と小さなアルフレッドが過ごしていた家だ。
「もうすぐ紅茶が入るからね」
「ああ」
「サンドイッチ食べるかい?」
「あ、いや、サンドイッチはいい」
ゆるゆるとアーサーは首を振る。
その言葉にアルフレッドはキッチンから飛んできて、気遣わしげに彼の顔を覗き込む。
「アーサー、本当に大丈夫かい?
お医者様呼ぼうか」
こつ、とアルフレッドは額を合わせる。
「あ、アルフレッド!」
顔が近い!
アーサーは間近に迫るサファイヤの瞳に身体が熱くなるのを感じる。
「顔が赤いね。熱があるのかな」
「・・・ち、ちげーよ、ばか」
「ムリしちゃダメだよ。アーサー。
俺、君に何かあったら、どうしたらいいかわかんないよ・・・」
くしゃり、とアルフレッドは優しくささやきながら、アーサのくすんだ金色の髪の毛を大きな手ですく。優しく。
部屋中に充満する上等な紅茶の香り。
アーサーの好みに整えられた部屋。
そして、自分が思い描いたとおりの理想の弟。もしも、アルフレッドが自分から独立しなかったら、という下らない妄想の弟。
「あ、アルフレッド・・・」
ぐい、とアーサーはアルフレッドの身体を腕で押す。
優しくて紳士的で従順なアルフレッドの視線も手のひらも、この部屋全てが他人のもののようなのは何故だろう。
夢だから?いや、それだけじゃない。
「・・・あ、そーゆー気分じゃない、よね?」
アルフレッドは困ったように笑い、アーサーから離れていく。
「いや、待て、違うんだアルフレッド!」
アーサーは自分の叫び声で目が覚めた。
彼はホテルのベッドの上にいることを確認して、深くため息をつく。
「何だい?」
リビングからぎょっとした顔のアルフレッドが顔を出す。
ラフなパーカーに、顔にはテキサス。
そして、手にはコーヒー。
「お前、パーティーは?」
なんでもない、と手を振りながらアーサーは手のひらで顔を覆う。
まだ、少しドキドキする鼓動を何とか落ち着けようとする。
「もう終わったよ。
君が寝てる間に日付が変わっちゃったよー」
アルフレッドはベッドの上のデジタル時計を指さす。
「君、クライマックスにいなくなっちゃうんだもん」
ぶー、とアルフレッドは口をとがらせて、ベッドの上のアーサーに半ばタックルするように抱きつく。広いダブルベッドがぼよん、と揺れた。
「すまなかったな」
「全く。具合が悪いなら、言えばいいだろ!」
ぎゅ、とアルフレッドは抱きしめる腕に力を込める。
どこにも行かせない、という焦げ付くような執着。
「わりい、盛り上がってたからさ」
優しくアーサーはアルフレッドのつやつやした金色の髪の毛をなでてやる。
なでてもらいたいのはこっちなのに。本当にこいつは子どもだ。
「俺を独立させたの、まだ後悔してる?」
くぐもった声が聞こえる。
噛みつかれるような、そんな気になる声。
「・・・してるさ。
でも、もう慣れてきた」
「そっか」
「ああ」
アルフレッドはアーサーの身体をぎゅ、と抱きしめ、細い首元に噛みついた。
どこにも離さないように。
夢の中の弟の優しい手のひらより、その噛みつかれる首筋の痛みの方が嬉しい。ありもしない妄想より、欠点だらけで全身で自分にぶつかってくれる彼の方が愛しいのは当たり前だろうか。
「・・・誕生日、おめでとう」
アーサーは口の中で呟く。
いつかは7月4日に笑って言えるようになるのだろうか。
なんて。