2011年02月10日

『夜回り先生』3(ひったくり)


『夜回り先生』↓
 

「暴走族」 というとほとんどの人は眉をひそめ、忌み嫌うだろう。

しかし私は彼らも被害者だと思う。

彼らだって、親や先生や社会から認められて、昼の世界で胸をはって生きたい。

それができなかったから、愚かな形だが、ひとつの自己表現として暴走している。

1人ひとり孤立してしまえば、社会からつぶされてしまうからだ。


たかしは3歳のときに母親を失い、父親からは折檻され続けてきた。

何か気に入らないことがあれば、すぐにタバコの火を押し付けられ、

そのせいでたかしの背中は一面火傷だらけだった。

それが原因でいじめられ、小学校へはほとんど行かなかった。


それからは常に社会や学校を斜めに見ながら、非行の道を突き進んだ。


たかしはひどく荒れていた。

交番の前でわざと挑発したり、パトカーにけんかを売ったりすることが日常で、その暴走行為は半端ではなかった。




貧しいたかしは暴走族に入ってもバイクを買うことができず、

いつも先輩のバイクの後ろに乗せてもらっていた。


でもそれでは満足できず、

「どうしても自分のバイクが欲しい」

暴走族の先輩に相談すると、

「引ったくりをやればいい」

と言われた。



郵便局から1人のおばあさんが出てきた。

たかしがおばあさんのバッグを引ったくる。

おばあさんは 「やめて!」 と叫び、必死でバッグにしがみつく。

結果的に、この小さな抵抗が命取りとなった。


おばあさんはそのまま7メートル引きずられ、ガードレールに頭をぶつけてしまった。


この事件は翌朝の新聞で報道された。

たかしは私を訪ねてきて、真っ青な顔でぶるぶる震えている。

「先生、どうしよう・・・・。先生、俺、自首する。警察に連れてってくれ」


私は首を横に振った。

「ちょっと待て。お前は犯罪者である前に、人間だ。

人間として、自首するより先にやらなきゃいけないことがあるんじゃないのか?」

するとたかしは

「先生、俺、謝りに行きたい。お見舞いにいきたい」

と言ってくれた。

私はとてもうれしかった。

たかしにもちゃんと人としての心が残っていたのだ。




たかしと一緒におばあさんのいる病院を訪ねた。

集中治療室の前の長いすにぽつんとおじいさんが座っている。


1目で家族だとわかった。

たかしはこのおじいさんの姿を見るなり、ワアアアッと叫んで駆け出し、おじいさんの足元で土下座した。

そして自分の頭を何度も床にたたきつけ、

「ごめんよ、俺がやったんだ、ごめんよ」

と謝り続けた。

たかしの額が切れて、床は血だらけになった。


治療のかいなく、おばあさんは亡くなった。

たかしはその後、強盗致死罪で裁かれ、罪を償っている。

そして一生をかけておじいさんに罪を償うことを覚悟している。



『夜回り先生』より

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毒になる親を持って、親から傷つけられた子供は、

(「毒になる親」 に育てられた子どもは、大人になってからどのような問題を抱えることになるのだろうか?ほとんどの場合、「1人の人間として存在していることへの自信が傷つけられており、自己破壊的な傾向を示す」・・・・・『毒になる親』3参照)


他の人を傷つける人になる。

(怒りや憎しみや拒絶を感じる人が、そういう人なのは―――そういうことをしたのは―――「その人も苦しんでいるのだ」と考えて、思いやりの気持ちを持とうと意識します。本人は気づいていなくても、人は自分が傷ついているとき、他人を傷つけようとするものです。・・・・・「脳にいいこと」だけをやりなさい3参照)



こんなふうに毒された人でも、根はいい人なんだね。

(暗い無明に覆われた凡夫と光り輝く仏とが、実は一体なのである。
人間には、極悪なものはいない。この世に生まれながら、真理を知っている人は少ないが、よく教えに従って、聖となる。・・・・・聖徳太子の言葉3参照)


罪の意識で青くなったり、

(どんな人であっても、何か美しいものをもっているものです。神は自分に似せて人間を創った・・・・・マザー・テレサの言葉3参照)


自首する前にお見舞いに行ったり、血が出るほど謝ったりしている。

(雨が降れば 人はなにげなく傘をひらく この 自然な心の働きに その素直さの中にこそ物事のありのままの姿 真実をつかむ偉大な力があることを 学びたい・・・・・松下幸之助の『道をひらく』1参照)


人間にはもともと他人を思いやる気持ちがあるっていうのは、本当なんだな。

(私たちはみな人間だ。だから、箱の外にいて他の人々を人間として見ているときには、それらの人々に対して、基本的に思いやりの感情を持っている。しかし、こういう思いやりの感情を裏切って、自分を箱の中に追い込んでしまう。それで人間関係につまづいていくのだ。・・・・・『自分の小さな「箱」から脱出する方法』4参照)



じゃあ、すごい極悪人は、他人を思いやれる気持ちがないのだろうか?


他人を思いやる気持ちはあるけど、私利私欲のために、言い訳して、自分の気持ちを裏切っているんだ。

(あなたを箱の中に追い込む「自分への裏切り」・・・・・『自分の小さな「箱」から脱出する方法』4参照)


自分に正直じゃないんだ。

(自分に正直になれ。内なる声に耳を傾けよう。正しいと直感したことのみを実行し、口に出そう。自分や他者に誠実に向き合っていれば、自分や他者の人格に敬意を払うようになる。自然に他人の尊敬も得られ、あなたの人間関係は質、量ともに豊かになるだろう。その人が正直であれば、常にあらゆる善を実践しており、行動に一貫性がある。・・・・・『「夢のリスト」で思いどおりの未来をつくる!』8参照)


過去のうらみにとらわれているのかもしれない。

(自分に対して不快なことをされた時には、「目には目を」と考え、同じやり方でやり返さなければならないと考える人がいます。
私は、人生を送るうえでこの考え方は決して健全な方法であると思いません。復讐に囚われた人の心は、過去を生きているからです。
成長や幸福を求めて生きるためには、生きるべき未来に向かって心が開かれているべきです。・・・・・バレンタイン監督の言葉3参照)



私は、他人を思いやる気持ちを大切にして、自分の箱から出て、

(自分が問題を抱えているということが、見えていないのを、 「箱の中に入っている」 というんだ。これこそが問題。
「箱」 の外に出るには、相手を攻めたりうらんだりすることをやめて、相手のために何かをしたいと思うことだ。・・・・・『自分の小さな「箱」から脱出する方法』1参照)


良心に責められることもなく、

(罪の意識は良心がもたらす。そして良心が自我を死に追いやることも多いのである。自我にとっては生きるとは、愛されること。良心に愛されることである。・・・・・ジークムント・フロイトの言葉参照)


生きていきたい。

(ただ存在するというのは、人生の質に関係なく、ただ日々を生き延びるのがいちばんの目標であることだ。
いっぽう、生きるというのは、やりがいのある自分だけの質の高い経験をすることが目標だ。質の高い人生を作り出すのに必要な技能は、人生の因果関係を理解し、コントロールする技能だ。・・・・・「史上最強の人生戦略マニュアル」4参照)







(『夜回り先生』の別の記事をもっと読みたい方は、『夜回り先生』1へどうぞ)


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hi_yo_ko1 at 19:41コメント(0)トラックバック(0) |  この記事をクリップ! このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

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