a6852635.jpg大分の地酒

南に位置する暖かい気候の土地ではあるが、冬場に寒冷になる盆地などで主に酒造りが行われている。

県内の酒造用米として、「若水」「クジュウ」などが挙げられる。

現在の醸造所数は約20。

「海の辛口、山の甘口」といわれ、海側と山側では甘辛は異なるが、酒質的には旨味が多いながら、軽快なタイプの地酒が醸される。

大分の代表的な地酒として、八鹿酒造の「八鹿 大吟醸」(やつしか だいぎんじょう)を挙げたい。

美しい九重連山を源として湧き出る伏流水、その豊かで清冽な水が流れ込む玖珠盆地の中、九重町にその蔵元八鹿酒造はある。
この蔵元が醸し出す清酒は全国ではまだあまり知られていないが、九州を代表する名酒の一つである。
日田から湯布院までの高速道路が未完成であった頃、湯布院に向かう道すがら必ずこの蔵元に寄り道をして「八鹿 大吟醸」を求めて宿に入るのを常としていた。
この「八鹿」という蔵の名前の由来には、蔵元と杜氏の互いの心意気を讃え合って名酒を醸し出した物語がある。
元治元年(1864)創業の八鹿酒造は、当時の名は「舟来屋」と称していた。
明治十八年、二十歳の若さで造り酒屋再興に燃えた麻生家三代目観八、三代目とともに生涯酒造り一筋に生き抜いた杜氏仲麻鹿太郎、その二人が精魂傾けて造った酒「龍門」が評判を取ったのを機に、「舟来屋」の名を改めることを決意した。
二人は互いの心意気を讃え、二人の名からそれぞれ一字を取り、酒に「八鹿」という名前をつけた。
長年にわたる銘酒造りの努力が報われ、名酒「八鹿」は全国新酒監評会で度重なる金賞を受賞している。

「八鹿 大吟醸」は食前酒として飲んでも良いが、夕食後、宿の部屋で酒だけを味わうのにも耐えるだけの旨味を備えた美酒である。