それは、ひとつの醤油差しから始まった物語である。
魯山人から譲り受けた醤油差し。
その中に入れるのにふさわしい醤油は無いものか?
湯浅醤油なら、奇跡の醤油を造れるだろう。
魯山人が追求した美食を後世に残したい、と設立した魯山人倶楽部株式会社では、添加物三昧の現状に嫌気が差し、昔のような醤油がないのであれば、自分たちで作ってしまおうと考えた。
それが「魯山人」醤油のはじまりである。
『本物』といえる醤油造りをどこがしてくれるだろうかー?
そこで魯山人倶楽部が選んだのが、和歌山・湯浅に蔵を構える湯浅醤油だった。
日本の醤油発祥の地・湯浅。
その地で今も昔ながらの木桶を使い、5代目・新古敏朗は若いながらもその伝統を守っている。
「この蔵なら本物の醤油を造れるだろう」ー魯山人倶楽部は湯浅醤油に白羽の矢を立てたのだった。
原料は大豆、小麦、米、塩のみ。
今では当たり前のように醤油に入っている添加物。
それらを一切加えず、北海道で無農薬・無肥料で自然栽培された大豆、小麦、米と、長崎・五島灘の塩のみで作ったのが、この「魯山人」醤油。
ちなみに醤油製造であまり見られない「米」が使われているのは、昔はそれを用いていた、との記述があったから。
魯山人の時代(大正〜昭和初期)の逸品を復活させたいーとの思いは、こんな細かい点にもあらわれている。
醤油の発祥地・湯浅の醤油職人が木桶でつくる。
最近の醤油は速醸(温度をかけて速く造る)が一般的だが、「魯山人」の名をつけるのだからと、現代とは逆行するような手間暇をかけて造っている。
職人がていねいに造り、ステンレス製の桶が一般的な中、昔ながらの木桶で熟成させて完成を待つ。
「魯山人」醤油は、魯山人が関西の薄口醤油を好んでいた、という嗜好にあわせて薄口醤油を目指し、薄い色に仕上げたいので木桶で8ヶ月(大手メーカーだと2ヶ月で完成させる)寝かせる。
一般的な薄口醤油より長く寝かせているためか醤油の色は濃いが、その分旨味成分が一般の醤油よりも1.6倍ほど高いものとなった。
美味しいものを食べるのではなく、美味しく食べる。
一口味わうと、まず甘みが感じられ、醤油独特の辛さが後を追ってくる。
但し、その辛さは舌に残らず、口内でパッと消える。 「キレが良い」とは、このことなのである。
雑味がなく、ナチュラルな風味は、まさに魯山人の美食を彷彿させるかのよう。
かつて魯山人が発した「美味しいものを食べるのではなく、美味しく食べる」 が実践できる。
(湯浅醤油ホームページより)