January 19, 2007

司法修習卒業試験(通称「二回試験」)

司法修習卒業試験:落第者向けの追試を廃止 最高裁(毎日新聞)

「司法試験合格者が専門知識を学ぶ『司法修習』の卒業試験で落第者が急増しているが、最高裁の「司法修習生考試委員会」は落第者を救済するための『追試』を廃止することを決めた。法曹関係者の間に『司法試験合格者数が増加して質が低下しているのでは』と懸念する声があり、委員会も『最低水準に達していない修習生を追試で救済するのはふさわしくない』と判断した。」

じゃあ今まで追試を実施していたのはどうして?と突っ込まれそうな理由ですね(笑)。まあ、これまでは司法修習生には国から給与が支払われておりいわば税金で勉強をさせていたわけですから、たまたま二回試験に落ちたとしても、それは病気などによる試験当日の体調不良のせいかもしれないしもう一度チャンスを与えないと2年間ないし1年半の間にかけたコストが水の泡になっちゃって返って国民の皆様に申し訳が立たないということだったんでしょう。

Wikepediaの「司法修習」の説明によれば、この司法修習生への給与が貸与性に切り替わるのは2010年度からのようなので、その意味ではまだ追試を続ける必要性があるのではないかという気もしますが、近時は二回試験受験時の体調不良やうっかりミスをたまたましてしまったというパターンではなく、教官が日常の起案を見ていて「これは救いようがない」と思うことが多くなってきて、その結果「最低水準に達していない修習生を追試で救済するのはふさわしくない」という判断に至ったのでしょうか。

司法修習終了試験、過去最多の16人不合格(Nikkei Net)

「司法試験の合格者が法曹(裁判官、検事、弁護士)となるために義務付けられている司法修習の2006年度(59期)修了試験で、16人が不合格となったことが18日、分かった。過去最多で、不合格者が2けたに上ったのも初めて。
 (中略)
 06年度の修了試験は昨年9月に実施され、まず受験者1493人のうち10人が不合格、97人が合否留保となった。合格留保者は追試を受け、91人は合格したものの、残る6人は不合格が確定した。
 不合格者は修習生が700人台だった1997年度(49期)から2000年度(52期、53期)まではゼロで、修習生が約1200人に増えた04年度(57期)が5人、05年度(58期)は2人だった。」

確かに、私の時代(52期)のときは合格留保になった人も3名程度で追試に落ちた人に至っては聞いたことがないくらいだったので、合格留保が107人にものぼったというのは驚きです。59期の前も、57期、58期とそれぞれ50人、30人程度の合格留保者が出て追試を受けている。確か昨秋の最高裁のコメントだと二回試験の合否基準は変えてないということなので、これらの数字をみて「司法修習生の質の低下」と一般的に評価されてしまうのも仕方ないかもしれません。

でも、それは司法試験の合格者人数を増やしているのだから当たり前の話かと。合格者数は、52期が750人、53期が800人、54期〜56期が1000人、57・58期が1200人、59期が1500人。

司法試験は人数による相対評価である一方で、二回試験は絶対評価(しかも合格者拡大にかかわらず基準変えず)。こうしてみると合格者1200人あたりからは1年半に亘る修習教育による実力の底上げもむなしく、こぼれ落ちる人が大量に出てきてしまうというなのでしょう。

ちなみに、民法の司法試験委員をしていた私の大学時代のゼミの教授によれば、私の時代でも「到底合格できる基準に達していないと思ったけど、合格者人数が決まっていたから仕方なく合格させていた」ということらしいです(手厳しい!)。

誰かが「資格試験というのは絶対基準であるべきで、相対基準を採っている日本の司法試験は資格試験ではない」と言っていたのですが、日本の司法試験に関しては、むしろ相対基準にしているがために絶対基準にするより多くの合格者を輩出していたというのが実態だったのかもしれません。

話がそれましたが、司法修習は、類をみないほど丁寧かつ質の高い教育システムだと思いますが、それでもここまで合格者の底辺層が拡大してしまった今、1年半という期間では限界なのかもしれませんね。せめて修習期間が52期までのときのように2年あれば、合格留保者もこれほど大量には出ないだろうにと思います。修習期間の6ヶ月の差は非常に大きいし、二回試験の試験範囲も膨大であることを考えると修習の後期日程が4ヶ月か3ヶ月かでは準備にも大きな差が生まれますし。

それを考えると、今後旧司法試験合格者については1年4ヶ月、新司法試験合格者(ロースクール組)についてはたった1年の修習期間になってほんとに大丈夫なのかと不安になります。ロースクール教育が研修所機能の一部を代替するということらしいですが、あの司法研修所ほど丁寧かつ質の高い教育をできる機関は他にないだろうと思うのです…。

まあ、フタを開けてみないと分かりませんので、ここはロースクール教育に期待しましょう。これで不合格者(追試はないから今の合格留保者=即不合格者ということになるのでしょう)が恒常的に大量に出るようだったら、3000人体制は再考して司法試験合格者を適正な数まで絞るべきなんでしょうけど、そんなことは文科省の顔に泥を塗るようなものなのでできないでしょう。そうすると現実的には不合格者が大量に出ない程度に二回試験の合否基準を下げることになるんでしょうか。最高裁はそういうところについて政治的に対応してくれるところなのか見所であります。

と書いてて今思ったのですが、新司法修習制度に移行する段階で二回試験の合否基準をあっさり見直してそうですね。ロースクール制度の失敗は許されないでしょうから関係各所からそこまでの根回しが行われていそうな気がしてきました。

hibiya_attorney at 13:37│Comments(0)TrackBack(1)clip!法曹界 

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