May 06, 2009
債権法改正の基本方針−気になった点
本日ランカウイ&クアラルンプールから無事帰国して明日から仕事モードです。
さて、出発前日の29日には、債権法改正の基本方針シンポジウムにもきっちり出席。18時半までしっかり聞いてきました。どの先生もプレゼン上手でしたし、質疑応答では熱意を非常に感じました。法務省はまだ民法改正を公式に決定したわけではないということなので、これがベースに民法改正の話が進むのかどうかは分かりませんが、仮に進む場合にはこれだけの学者が集まって出した改正案なので大いに参考にされることでしょう。
いくつか気になった点。
1.債務不履行責任が「契約において債務者が引き受けていなかった事由により債務不履行が生じたとき」には負わない(3.1.1.63)とされている点。これは条文案ではないということですので具体的に条文に落とすときにはもっと工夫されることになると思いますが、このままだと企業法務の契約書では、債務者からの不合理な抗弁を許さないためにも債務者が何を引き受けているかについて細かく規定することになり大変だと思われます。
2.契約解除
「事業者間で結ばれた契約において、契約当事者の一方が債務の履行をしない場合、相手方が相当の期間を定めてその履行を催告し、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし催告に応じないことが契約の重大な不履行にあたらないときはこのかぎりでない」(3.1.1.77(3))
前提として、重大な不履行があるときは無催告解除ができるとされています。したがって、催告解除は、相手方の不履行が重大な不履行ではない場合ということになりますが、催告しても相手方が履行しなかった場合でも必ず解除が認められるというわけではありません。催告解除の場合は「催告に応じないことが相手方の契約の重大な不履行」に該当する必要があるのです。
事業者間契約においては、立証責任の転換による配慮がなされているのですが、それでも相手方が「催告に応じないことが契約の重大な不履行にあたらないこと」を立証したときは、解除の効力が後から否定される可能性があり、これは法的安定性を害すると思います。また、「催告に応じないことが契約の重大な不履行にあたらないこと」の概念が不明瞭ですし、その対象がよく分かりません。
たとえば、家を1億で売ろうとしたが9800万円しか支払われていない場合に、2週間の期間を定めて催告したが履行の提供がなかったので解除してその家を第三者に売却した場合、この解除は認められないのでしょうか。不履行の額はわずか200万円ですので、重大な不履行にはあたらず無催告解除は認められなさそうですが、催告解除も認められないのでしょうか。売主が一定期日までに1億円の資金調達の必要があり9800万円の調達では他の契約においてデフォルトになってしまうといった事情があった場合にはその点は加味されるのでしょうか。
3.瑕疵担保責任の損害賠償の範囲が信頼利益に限定されないことになった。
4.不実表示が取消原因とされたこと(1.5.15)。これはM&Aの表明・保証責任との関係で問題となり得ます。これは強行規定という位置付けになるでしょうから、この条項にひっかからないようにするべく表明・保証文言の趣旨・性格について契約書において説明するなどの工夫が必要になるのでしょう。
5.役務提供契約という新たな典型契約の創設。請負や委任の定義も変わるようです。確かに実務上は準委任契約がかなり多くなっていたと思われますので、役務提供契約というカテゴリーはありかと思います。印紙税はどうなるのかしら?
6.ファイナンス・リースも典型契約として創設。フルペイアウトが要件とはならないようです。
会社法の制定のときよりは大変ではない気がしましたが、徐々に勉強していきたいと思います。やる気を出させるためにも早く法務省の方向性を出して欲しいですね(笑)。
さて、出発前日の29日には、債権法改正の基本方針シンポジウムにもきっちり出席。18時半までしっかり聞いてきました。どの先生もプレゼン上手でしたし、質疑応答では熱意を非常に感じました。法務省はまだ民法改正を公式に決定したわけではないということなので、これがベースに民法改正の話が進むのかどうかは分かりませんが、仮に進む場合にはこれだけの学者が集まって出した改正案なので大いに参考にされることでしょう。
いくつか気になった点。
1.債務不履行責任が「契約において債務者が引き受けていなかった事由により債務不履行が生じたとき」には負わない(3.1.1.63)とされている点。これは条文案ではないということですので具体的に条文に落とすときにはもっと工夫されることになると思いますが、このままだと企業法務の契約書では、債務者からの不合理な抗弁を許さないためにも債務者が何を引き受けているかについて細かく規定することになり大変だと思われます。
2.契約解除
「事業者間で結ばれた契約において、契約当事者の一方が債務の履行をしない場合、相手方が相当の期間を定めてその履行を催告し、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし催告に応じないことが契約の重大な不履行にあたらないときはこのかぎりでない」(3.1.1.77(3))
前提として、重大な不履行があるときは無催告解除ができるとされています。したがって、催告解除は、相手方の不履行が重大な不履行ではない場合ということになりますが、催告しても相手方が履行しなかった場合でも必ず解除が認められるというわけではありません。催告解除の場合は「催告に応じないことが相手方の契約の重大な不履行」に該当する必要があるのです。
事業者間契約においては、立証責任の転換による配慮がなされているのですが、それでも相手方が「催告に応じないことが契約の重大な不履行にあたらないこと」を立証したときは、解除の効力が後から否定される可能性があり、これは法的安定性を害すると思います。また、「催告に応じないことが契約の重大な不履行にあたらないこと」の概念が不明瞭ですし、その対象がよく分かりません。
たとえば、家を1億で売ろうとしたが9800万円しか支払われていない場合に、2週間の期間を定めて催告したが履行の提供がなかったので解除してその家を第三者に売却した場合、この解除は認められないのでしょうか。不履行の額はわずか200万円ですので、重大な不履行にはあたらず無催告解除は認められなさそうですが、催告解除も認められないのでしょうか。売主が一定期日までに1億円の資金調達の必要があり9800万円の調達では他の契約においてデフォルトになってしまうといった事情があった場合にはその点は加味されるのでしょうか。
3.瑕疵担保責任の損害賠償の範囲が信頼利益に限定されないことになった。
4.不実表示が取消原因とされたこと(1.5.15)。これはM&Aの表明・保証責任との関係で問題となり得ます。これは強行規定という位置付けになるでしょうから、この条項にひっかからないようにするべく表明・保証文言の趣旨・性格について契約書において説明するなどの工夫が必要になるのでしょう。
5.役務提供契約という新たな典型契約の創設。請負や委任の定義も変わるようです。確かに実務上は準委任契約がかなり多くなっていたと思われますので、役務提供契約というカテゴリーはありかと思います。印紙税はどうなるのかしら?
6.ファイナンス・リースも典型契約として創設。フルペイアウトが要件とはならないようです。
会社法の制定のときよりは大変ではない気がしましたが、徐々に勉強していきたいと思います。やる気を出させるためにも早く法務省の方向性を出して欲しいですね(笑)。