October 26, 2010

証拠制限契約

前回のエントリーについて、コメントまでいただいていたのに長らく回答を放置しており本当に申し訳ございませんm(_ _)m

で、「本契約は、各当事者の適法に授権された代表者によって署名された書面によらなければ、改定され得ないものとする。」という契約書の改定条項の効力について、裁判所が制限するとすればその根拠は何でしょうか、という問いの答えですが、それは自由心証主義です。

契約書の改定条項は、契約書の改定の効力発生要件を定めたもの、すなわち実体法に関する規定と解することもできますが、「契約書の改定があったことの立証は、各当事者の適法に授権された代表者によって署名された書面によらなければならない」という趣旨の証拠制限契約と捉えることもできます。

証拠制限契約については、学説上一般に有効と解されていますが、判例上は下級審ですが「弁論主義が適用され当事者の自由処分が許される事項に限り、裁判所の自由心証主義に抵触しない範囲でこれを許容しても何ら妨げられないから、その限度において」適法かつ有効と解されていて(東京地判昭和42年3月28日判タ208号127頁)、一定の留保がなされています。

したがって、この下級審の立場によれば、裁判所の自由心証主義に抵触する場合は、証拠制限されないということになります。すなわち、どんなに書面のみによってしか改定し得ないと謳ってあったとしても、口頭であろうと確実に契約改定の合意がなされたという裁判所の心証が形成される場合には、裁判所はそのように事実認定できるということになります。

このような観点から、しっかりした法律事務所の意見書では、契約書の改定条項の効力については、意見留保されているのです。

「適法に授権された代表者」という日本語は確かに変でしたね。まったく深く考えずに勢いで書いてましたのですみません・・・。


hibiya_attorney at 22:59│Comments(1)TrackBack(0)clip!企業法務 

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この記事へのコメント

1. Posted by 徒然法務   October 27, 2010 21:35
5 お待ちしておりましたー。

民事訴訟、勉強しなおしてきます。。。

契約書(完全合意条項付き)によって合意された事項であっても、時間が経過すると、事業部門同士で(法務部門が感知しないところで)、契約と合致しない新しい合意や事実が形成されているケースは往々にしてありますね。
もしも揉めたら、自由心証主義で判断されたら、、、と考えると、契約書があったとしても冷や汗ものですね。。。

実態を監査部門とも連携して継続的にチェックしていくことが
重要でしょうか。

寒くなってきておりますのでご自愛くださいね。

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